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坂本龍一、特設サイト「私が好きな坂本龍一10選」に大貫妙子が登場

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Photo by zakkubalan ©2020 Kab Inc.

1月17日に70歳の誕生日、古希を迎えた坂本龍一。現在も闘病を続ける坂本龍一を励ます意味で、レーベルcommmonsが立ち上げたアニバーサリー・サイト「10 Favorites – Ryuichi Sakamoto | 私が好きな坂本龍一10選」第23回目に音楽家 大貫妙子が登場した。

同サイトでは現在、大竹伸朗、稲垣吾郎、吉本ばなな、高谷史郎、高橋幸宏、浅田彰、水原希子、細野晴臣、中里唯馬、村上龍、LEO、UA、福岡伸一、U-zhaan、李 相日、池田亮司、藤原ヒロシ、若林恵、渡辺信一郎、藤原帰一、中谷美紀、真鍋大度の選曲がメッセージとともに公開されている(敬称略、発表順)。

大貫妙子メッセージ

昔の出来事をよく覚えている人がいる。逆に昔のことを細かくは覚えていない人がいる。私は、後者。坂本さんも同じだと思う。「あの頃」なら、なんとなく思い出せるけれど、あの日あの時は、思い出せない。多分、今とその先にしか興味がないのかもしれない。
ただ、数少ない「その時」は、切り取られたように今もはっきり存在し続けている。1970年代〜80年代、坂本さんには数多くの曲をアレンジしていただいた。その後90年代の「LUCY」映画『東京日和』「ensemble」と、ご縁をいただいた。80年代の頃、スタジオでの坂本さんで、いつも思い出すのは、シンセサイザーのつまみを握って、指を動かしている姿。動かしているというより、触っているだけに見える、が正しい。
音色を決めるのはあまりに微妙な作業。顔を下に向けたまま、耳だけで呼吸しているような姿。声もかけられない。ふと、顔を覗くと涙を流している「涙がとまんない・・・」と言うのだ。
もちろん悲しいわけではない、私たちには聴こえない高域の音に反応しているのだった。「犬の耳を持っている!」と、驚嘆したのを思い出す。
それが、聴いた時にすぐ、坂本さんだ、とわかる音色の秘密なのです。スタジオでの食事は、出前と決まっている。シンセサイザーに張りついている坂本さんに、ご飯にしません?と、きりだすタイミングも難しい。一応メニューなど差し出しても、見向もしないで「かつ丼!」。注文はいつも同じ。それなら、聞く必要もないわけだけれど、一応聞いてみる。
かつ丼が届いて、さあ食べようかと思う頃、坂本さんは既に食べ終わっている。なんでそんなに早食いなの?と聞くと、「世の中、何が起こるかわかんないんだ!のんびりメシなんか食ってる暇はない!」と、バッサリ(あくまで、当時の話です、40年前の)。
DVD「CODA」の坂本さんはNYの自宅の庭を眺めながら、林檎をゆっくりゆっくり噛んで味わっている。その映像が私にとって、印象的なのはきっと、林檎を、そして、生きることを、彼がゆっくり味わうことにしようと、思ったからかもしれません。
たくさんの素晴らしい音楽を、ありがとう!

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