生田絵梨花
アフリカからアメリカの高校に転校してきた田舎娘が、ひょんなことから“スクールカースト”トップの3人組、「プラスティックス」のメンバーに!? 大ヒット映画を原作に、2018年のブロードウェイでミュージカル化された『ミーンガールズ』が、生田絵梨花を主演に迎えて日本初上演。演出には小林香、共演にも田村芽実・石田ニコル・内藤大希ら最強のメンバーが揃った2023年の話題作について、ビジュアル撮影を終えたばかりの生田に聞いた。
「やりたい!」と口に出していた作品
――『ミーンガールズ』は、いつかやりたいと思っていらした作品だそうですね。
もともと映画を観ていて、女子のスクールカーストをコミカルに描いている点や、そのなかで自分らしさとは何かを問いかけるストーリーがすごく面白いなあと思っていました。舞台化されてると知ったのは4年前、トニー賞授賞式を中継する番組のナビゲーターをさせていただいた時。女の子たちがメインで、明るくポップな作品というのはあまり経験がなかったので、「やりたい!」と思ったんです。それからブロードウェイで舞台を観て、ますますやりたい気持ちが募っていました。そしたら今回のお話をいただいて。番組内で「やりたい!」と口に出していたので、もしかしたらどこかで誰かが聞きつけてくれたのかもしれないです(笑)。
――ブロードウェイでご覧になった感想をお聞かせください。
言葉は分からなかったけれど、観ているだけで、音楽を聴いているだけで心が躍るような作品でした。グッズの真っピンクのTシャツと、劇中に出てくる“バーンブック(クラスメイトの悪口を書いたノート)”みたいなメモ帳をお土産に買っちゃったくらい(笑)、本当にウキウキする経験でしたね。特に印象に残っているのは、まずは冒頭のシーン。主人公のケイディがアフリカの動物たちと一緒に歌う、という設定に驚き笑いました(笑)。あとは、レジーナ(「プラスティックス」のリーダー。日本版では石田ニコルが演じる)の登場シーンのカッコ良さと、「Revenge Party」という曲の楽しさも、記憶に強く残っています。
――演じられるケイディについては、今の時点でどんなイメージを持っていますか?
ずっとアフリカで育って、学校にも通ったことがなかった子が、急にアメリカのハイスクールに転校するという設定がまず面白いですよね。環境が変わることによって、外見だけじゃなく内面も変わっていくところを、コミカルさもありつつリアリティを持って演じられたらと思います。周りがイケてると、自分もイケてなきゃいけないんじゃないか、みたいに思っちゃうのって“女子あるある”かなと思うんです(笑)。誰しもがちょっとくらいは経験したことだと思うので、自分の感覚に引き寄せながら丁寧に演じたいですね。
――すでにビジュアル撮影をされたそうですが、ケイディの扮装をしてみた感想は?
“変身”する前と後の2パターンを撮ったのですが、別の人じゃないかって思うくらい違うビジュアルになりました(笑)。変身前のスタイルは、ファッションとかじゃなく「動きやすい服着てます!」みたいな感じ。それがミニスカートを履いて、肌見せしちゃって、髪もちょっと染めて巻いちゃって、みたいにすべてが変化するのが変身後のスタイルです。どちらも舞台ではあまり着たことがないスタイルなので新鮮でしたし、舞台上でどう「同じ人がこうなった」って見せていくかというのは、新たなチャレンジかなと思っています。
>好きな人にほど意地悪したくなる!?
好きな人にほど意地悪したくなる!?
――日本版の演出を手がけられる小林香さんとは、『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』(2019)でもご一緒されていますね。
そのあとにも、コンサートなどで何度かご一緒しています。私自身の変化にすごく繊細に気付いて、それを言語化してくださる方。『グレコメ』の時、私は自由奔放で無邪気な役をなかなかつかめずにいたのですが、香さんが一緒に突破口を模索してくださって。ご心配をおかけしていたのか、2年後くらいにお会いした時、「心に余裕ができてて安心した」と言ってくださったんです。今回は心配されないようにしたいですし(笑)、香さんがこういう近代的な作品をどう演出されるのか、すごく楽しみですね。
――キャストにも、大変魅力的な方々がそろった日本版です。このなかで、過去にも共演経験のある方は?
内藤大希さんとは『レ・ミゼラブル』で、松原凜子さんとは『レミゼ』と『グレコメ』でご一緒しています。内藤さんは、生命体として面白いなと思う人(笑)。これは誉め言葉なんですが、『レミゼ』の稽古場でも“異端児”だったんですよ。まずは先輩から伝授された通りにやってみる私たちと違って、最初から独特の感性とか軸で動くから、「え?そこでそう動くの?」「そこでそういう感情になるんだ」みたいな発見がすごく多くて。それが決して間違っていないから、演出家の方も「採用してみよう」ってなったりするんです。今回も私たちを引っ張りながら、はみ出し者のダミアン役として輝いてくださると思います。
凜子さんは、私の悩みとか不安に、いつも自分のことのように寄り添ってくれる方。『グレコメ』では歌の指導までしてくれて、本当に頼りになる方です。しっかり者の役が多いイメージなので、今回グレッチェンが凜子さんと聞いた時は驚きました! こういう少し弱い部分もあるようなチャーミングな役って新鮮だなと思って、今から楽しみにしています。
――ここで一つ、タイトルにちなんだ質問を。生田さんご自身のなかにある、“ミーン=意地悪”な一面を教えてください!
ふふふ、どうなんだろう(笑)。でもなんか、自分が好きだなって思う人にほど、ちょっと意地悪したくなっちゃうところはありますね。例えば、早く帰りたそうにしてるメンバーの手を握って離さないとか、「最近こういうことがあってね~」みたいな嘘のエピソードを5分くらい聞かせてから、「今の全部フィクション」って明かすとか(笑)。「ええ~!」って言われるのが、なんか嬉しくて楽しいんですよね。結構よく迷惑がられてます(笑)。
>簡単ではない理想に向かって
簡単ではない理想に向かって
――舞台のお仕事は、宮園かをり役を演じられた『四月は君の嘘』以来になるかと思います。反響の大きい作品でしたが、ご自身にとってはどんな作品になりましたか?
かをりちゃんは、もしかしたら今までで一番かも?というくらい大変な役でした。キラキラした青春を描く、全体的には鮮やかな作品ですが、彼女の人生に何回も幕を下ろさなきゃいけないというのはやっぱり、すごく大変な作業で……。全公演を走り終えた時は、久々に“燃え尽き”みたいになって、しばらくはボーっと過ごして回復を待ちました(笑)。でもとてもいい勉強になったし、私の生き方にも影響するような作品になりましたね。「今をどう生きるか」ということを、終わってからも考えさせられています。
――『四月~』以降は映像作品でお見掛けすることが多いですが、生田さんにとって今、舞台の仕事の位置づけややりがいとは。
今まではグループに在籍しながら舞台に立っていたので、舞台を観たことのなかったファンの方が興味を持ってくれたりして、そういう役割を担えたのはすごく光栄なことだと思っています。卒業した今も、そこは大切にしたい部分。そのためにも、もちろん舞台のお仕事は自分の軸の一つとして熱量をもって取り組みながら、他の場も経験することで、もっともっと実力をつけたいなって思うんです。舞台と映像で得たものをお互いに生かし合って、お客さんの層の橋渡しもできたら理想的ですね。簡単なことじゃないのは分かっていますが、そうなれたらいいなと思いながら、今は学ばせてもらっている最中です。
舞台と映像は、演技の方法が全然違う!ということではないのですが、映像の現場で「台詞が歌ってる」と言われたことがあって。ミュージカルの演技は歌がベースになりますが、映像では抑揚とかではなく、内側からにじみ出るものがどう音になるか、ということなのだと思います。サイズ感が違うから、映像の演技をそのまま舞台でできるわけではないけれど、“感情の核”を作って演じる経験は絶対に舞台にも生きるはず。映像のお仕事をたくさん経験したことが、この『ミーンガールズ』にも良いほうに作用したらいいなと思っています。
――さらにパワーアップした生田さんが観られそうで楽しみです! 最後に改めて、SPICE読者の皆さんにお誘いのメッセージをどうぞ。
女子のスクールカーストを描く作品ということで、ちょっとブラックなところも笑えちゃうような、そして女の子のチャーミングさ、キラキラした魅力とエネルギーがあふれたステージになると思います。女の子はもちろんのこと、男女問わずワクワクできる作品にできるよう頑張りますので、ぜひ楽しみにしていてください!
取材・文=町田麻子
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