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「大阪にはShionがある」、指揮者・佐々木新平を迎えて、交響吹奏楽団・Osaka Shion Wind Orchestraが『ドラゴンクエストコンサート』を関東初開催

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佐々木新平

佐々木新平 撮影=高村直希

1923年に誕生し、「Shion(しおん)」の愛称で親しまれている日本最古のプロの交響吹奏楽団・Osaka Shion Wind Orchestra(オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ)が、関東では初の『ドラゴンクエストコンサート』を開催する。文字通り、すぎやまこういちの作曲で知られる大ヒットRPG『ドラゴンクエスト』のBGMを演奏するコンサートで、指揮に佐々木新平を迎える。各地で完売御礼が続く『ドラゴンクエストコンサート』についてはもちろん、関東では初の公演となる3月21日(火祝)千葉・浦安公演にむけて、そしてShionや吹奏楽の魅力を佐々木新平にたっぷりと語ってもらった。

佐々木新平

佐々木新平

Shionは明るい音色のオーケストラ

ーーまず、佐々木さんから御覧になったShionの魅力を教えてください。

Shionさんは歴史が長いオーケストラなので、音に深みもあるし、その歴史があるからこそ、いろんな要求にも柔軟に応えてくれますね。いろんな引き出しを持っている楽団だと思います。

ーー楽団によって音色が違ってくるかと思うのですが、佐々木さんからみてShionはどういった音色でしょう?

その名の通り、大阪を本拠地にしている吹奏楽団で、楽団員に関西の人がどのぐらいいるかは別として、雰囲気はすごく明るいですね。出てくる音も明るい音がするオーケストラという印象です。

ーーこの取材の前もリハーサルをされていたと聞きました。翌日は静岡・浜松で『ドラゴンクエストコンサート』ですね。

『ドラゴンクエストコンサート』はShionさんと何回も演奏しているので、リハーサルでは、今回はこういうふうにしたいとか、お互いの方向性をすり合わせる作業をしました。「ここはこうしたい」という要求もあるのですが、それは本番のお楽しみとして置いています。お互い、隠し玉として持っておこうと。何回も演奏する曲は特に、本番でいかにエキサイティングできるかということが重要になってくると僕は思っているので、できるだけ出来レースにならないように、隠し玉も持っておきます。

ーーそういう駆け引きもあるんですね。

やはり自分たちが常にフレッシュな気持ちでいなくてはいけないと思うので、お互いにそのフレッシュさをいかに保って、いい緊張感を持って本番に臨めるか。そのためには、リハーサルではこういうふうにやったけど、本番は全然違うことをやっても大丈夫という信頼関係を作っておくことも大切です。

Osaka Shion Wind Orchestra (C)飯島隆

Osaka Shion Wind Orchestra (C)飯島隆

ーーShionの本番での隠し玉とは、どんな感じでしょうか。

ひとつは爆発力です。個人個人の演奏でも「本番ではこういうふうに来るだろうな」と、全部じゃないですけど、大方は予測はできているので。そうすると、楽団員が来た来た!と盛り上がっている様子をお客さんも感じてくれる。それをまた楽団員たちが感じながら演奏していて。その盛り上がりですよね。

ーーShionの関東での『ドラゴンクエストコンサート』は3月21日(火・祝)の千葉・浦安公演が初めてになります。関東のお客様にどのようにShionさんをご紹介されますか?

まずは先ほどもお話したとおり、大阪のオーケストラということで明るさですね。そして一番歴史が長い交響吹奏楽団ということで、歴史が見せる音というか、柔軟性ですね。それともうひとつ、明るさと似ているかもしれませんが、それぞれの楽器のプレイヤーの個性も感じられる楽団だと思うので、そこも楽しみにしていただきたいなと思います。

ーー佐々木さんのツイッターでは「Shionにも勇者や姫がいる」とありました。

この『ドラゴンクエストコンサート』では僕がMCをするので、コンサートで必ず紹介しますが、勇者はいますよ!(笑)。

ーーどのタイミングでご紹介されるのでしょうか?

『ドラクエⅠ』から『Ⅵ』の楽曲を演奏するのですが、その方が主役になるときにご紹介します。

古典から現代音楽まで、すぎやまこういち氏の楽曲の魅力とは

『ドラゴンクエストコンサート in 浦安』

『ドラゴンクエストコンサート in 浦安』

ーーでは、『ドラゴンクエスト』の楽曲の魅力は、どういうところに感じますか。

まずは、すぎやまこういち先生の音楽そのものの魅力ですよね。すぎやま先生はいろんなCMや歌謡曲を作曲なさっていて、心にスーッと入ってくるキャッチーなメロディーが多いのですごく懐かしいと感じるものもあります。その一方、相反するように、たとえば洞窟の音楽で現代音楽的な不協和音も絶妙に使われていて。そういったメリハリのある音楽であること。あとは、表現の仕方はクラシックの手法を結構使っていらっしゃるので、新しい音楽でありながら、既存の音楽とうまくマッチしていると思います。だから吹奏楽やオーケストラですっと演奏できるのだと。加えて聞き手が『ドラクエ』のストーリーに感情を乗せられるというところもありますね。

ーーなるほど。今の解説も興味深いですね。

そういうお話もMCでしますので、お客様も「なるほど~」と思っていただけるところはあると思います。僕も新旧問わず、いろんなゲーム音楽のコンサートをやってきましたが、その中でもすぎやま先生の曲はすごくクラシックに近いというか。下地はクラシック音楽でできていると思います。

ーー「この作曲家に近い」という楽曲もありますか?

曲によりますが、お城の音楽はバッハとか、その前のルネッサンスの作曲家を感じますし、ボス戦とか、洞窟ダンジョン系の曲は20世紀前半あたりの不協和音をガンガン使っている作風に寄ってますし、逆にロマンチックな楽曲だとドビュッシーとか彷彿させますね。

Shion作成・出演者紹介

Shion作成・出演者紹介

ーーちなみに、佐々木さんはゲームの『ドラクエ』はプレイされていましたか?

ずっとやってます(笑)。『ドラゴンクエストコンサート』をやるたびにゲームをプレイします。今回の楽曲で使う『Ⅰ』から『Ⅵ』も全部、クリアしてます。

ーーどれぐらいでクリアされるんですか。

『Ⅰ』は1日でクリアできます。『Ⅺ』は緊急事態宣言で自宅待機のときに家でやりました。いずれコンサートでやるだろうと(笑)。その時は1ヶ月ぐらいかかりましたね。『Ⅹ』もコンサートで予定されていたので、そのためにスイッチを買って、ちゃんとオンラインでやりました(笑)。

ーー楽曲によって各場面を思い出すのでは?

そうですね。お客様の中にはゲームの『ドラクエ』をやったことがない方も、もちろんいらっしゃると思いますが、『ドラゴンクエスト』のストーリーにも愛着があって、曲とストーリーが結びついてる方も多いと思うので、少なくとも指揮者はゲームをよく知ってなきゃいけないと思います。それは『ドラクエ』に限らずですよね。

ーー『ドラクエ』で好きなシリーズはありますか?

それぞれにあるんですけど、世代的に僕は「ドラクエⅢ」からドラクエ人生が始まったので、『Ⅲ』は何回やっても思い入れがありますね。

ーーコンサートではゲームにまつわるMCもあるのでしょうか。

トークは『ドラクエ』がお好きな方も笑っていただけるよう、小ネタも用意しています。常連の方々は僕のトークも楽しみに来てくださる方もいらっしゃるみたいです。逆に、クラシックのコンサートに来た経験があまりない方も多くて、最初はすごく緊張されているんですよね。そういう方のために、「もっと楽しいですよ」と徐々にほぐしていけたらと思います。

吹奏楽は表現の幅が広い音楽

佐々木新平

佐々木新平

ーー佐々木さんは吹奏楽の発展にも貢献されていますが、吹奏楽の一番の魅力はどういうところにあると思われますか。

これは今まで言ってきたことと矛盾しているかもしれませんが、歴史が浅いことだと思うんですよね。だからこそ、クラシックもできるし、『ドラクエ』のようなゲーム音楽もできる。表現できる曲のバリエーションがすごく幅広いので、それが魅力でもあると思います。でも何とかしなくちゃいけないとも思っていて。

ーー「何とかしなくちゃいけない」とは?

吹奏楽コンクールはすごく魅力的なイベントだと思うし、僕も含めてそれを目指してきたし、だからこそ上達してきたと思うのですが、吹奏楽にとって一番中心になるものを作らなくちゃいけないと思うんですよね。オーケストラの場合はモーツアルトとか、ベートーベンという確固たる作曲家がいますが、吹奏楽の場合はマーチでいうとスーザとか、アルフレッド・リードといった定番中の定番の作曲家がいるにもかかわらず、それを知らないまま吹奏楽をやっている子も全国的に多くて。そういうところは我々が何とかしていかなくてはと思います。演奏の幅が広い分、ちゃんと中心がないといけないなと。また、その魅力をプロの楽団が率先して広めていかなくちゃいけないと思っています。

過去公演時の写真

過去公演時の写真

ーー音色の面ではいかがでしょうか。

プロの吹奏楽の演奏家は本当にいろんな素敵な音を出すことができるんですよ。「美爆音」という言葉がはやって、吹奏楽というと大音量が魅力みたいなところがありますが、でもそうではないんですよね。そこをなんとかしていかなくちゃいけないなと思ってます。吹奏楽の音色の世界は広いものだし、「Shion」もそういうところに使命を感じて常に演奏会に取り組んでいるので、そういう部分も伝えたいなと思います

ーー吹奏楽は楽器と人間の体が一つになっている感じはしますね。

そうですね。それも吹奏楽の魅力のひとつでもありますよね。

ーー今後、指揮者としての展望は?

僕は、今はクラシックを主戦場にしていますが、オーケストラに対しても、指揮者に対しても時代が求めるものは日々変化していると思うので、僕は幸いにもクラシックから映画、ゲームと、いろんな現場に携わらせてもらっているので、もっと他ジャンルの橋渡しができれば。ゲーム音楽が好きな方にもクラシックに来てほしいし、クラシック好きの方にもゲーム音楽に来てほしい。どちらにもいいところがあるよとどんどん発信して、オーケストラにとってお客を呼べる指揮者になりたいですね。クロスオーバーな指揮者として認知してもらいたいなと思います。

ーー最後に改めて浦安公演に向けて意気込みをお願いいたします。

オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラは本当に素晴らしいオーケストラなので、彼らの新しい風を感じていただきたいと思います。大阪には「Shion」があるんだと、『ドラクエ』の音楽と一緒に楽団の魅力を感じてもらえるコンサートになると思いますので、楽しみにしていただければと思います。

佐々木新平

佐々木新平

取材・文=k.iwamoto 撮影=高村直希

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