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筋肉少女帯、2022年ライブファイナル振替公演を開催「みなさんの熱気で無事に2023年を迎えられました」

アーティスト

PHOTO:コザイリサ

筋肉少女帯が2月16日に東京・恵比寿LIQUIDROOMにて<筋肉少女帯 Debut35th カウントダウンシリーズ「2022ライブファイナル」>を行なった。このライブは2022年5月から始まった<Debut 35th カウントダウンシリーズ>の2022年ファイナルとして、当初、2022年12月18日に同会場で予定されていたもの。ところが開催の4日前、橘高文彦(G)が新型コロナウイルス感染症の陽性となり、ライブは延期。約2カ月後の2月16日、ついに実現することになった。いわば、カウントダウンシリーズの2022年ファイナル公演であると同時に、デビュー35周年となる2023年に向け走り出すライブであり、橘高文彦の快気祝いライブという、おめでた三連発のステージである。

19:00、SEが響く中、ファンの振るペンライトのまばゆい光に迎えられステージに現われた筋肉少女帯。大槻ケンヂ(Vo)が橘高を指差したのを合図に、ギター・フレーズから始まったのは「トゥルー・ロマンス」。大槻の心地いい歌とメンバーのコーラスに合わせ、揺れる光とマスク越しでも分かるファンの笑顔。その光や笑顔に包まれながら、大槻、本城聡章(G)、内田雄一郎(B)、橘高も幸せそうに微笑む。愛情に溢れた表情でのコール&レスポンスは、開演から数分経たずしてもう始まっていた。ダンサブルな「バトル野郎~100万人の兄貴~」を決めたところで、大槻がファンに言葉を投げかける。

「今日は久しぶりに会えて、とってもうれしい。今日は来て良かったと思うよ。ものすごい盛りだくさん」期待感を煽りながらにそう言った大槻だが、実は大変なことが起こっていたこともばらしてしまう。開演間際にプロンプターがトラブり、今日は紙に書かれた発表事と共にお届けするという。

「今日のライブは2022年12月18日の振り替えライブでございます。だから筋肉少女帯は、まだ2023年にアップデートしてないんですよ。それどころか、ビジネス的にはデジタルから紙へ…。ハンコ文化に戻ってる感じがしますよ。とにかく、今日のライブでやっと年が越せます。ここに集ってくださったお客さんだけが筋肉少女帯と一緒に年を越せるんですよ。ライブに来なかった民どもは…、ヤツらは、筋少“年越し難民”ですよ!」

話し始めると相変わらず自由奔放な大槻。さらに話題は、本日限定発売の年末ならではの福袋のことなどいろんな方向へ飛び交い、そのたび拍手が起こり続けた。

「世の中も少しずつ変わってきたじゃないですか。恐らくは今日が、最後の声出しNGライブじゃないかと思うの。とにかく記念すべき日なんですよ。でも、この3年間に声出しNGライブで作り上げてきた我々の空間ってあるじゃないですか。それを満喫しましょうよ。2022年最後のライブにして、ふーみん快気祝い、ラスト声出しNGライブとして、コール&クラップ&ペンライトで今日は盛り上がっていってください!」

ファンのハンドクラップも筋肉少女帯の演奏に自然に加わった「ボーン・イン・うぐいす谷」、本日のライブ会場である“リキッドルーム”という一節も歌詞に交えて本城が熱く歌う「LIVE HOUSE」、橘高を中心にしながら狂おしい様式美のお城を建てていく「くるくる少女」など、そのふり幅や音楽的な引き出しの多さには、改めて驚かされるばかり。デビューからもうじき35年、個々のミュージシャンとしてはそれ以上。ここまでに培ってきた熟練のワザはもちろん、研ぎ澄ませ続けているセンスをいかんなく発揮していく。

「今日はお祝いと発表事がいっぱいあります。今年は<#筋少の日>、6月21日にLINE CUBE SHIBUYAでライブがございます。筋肉少女帯のデビュー35年記念です」

大槻がそう話していたら、内田の機材トラブルが発覚。思わぬ形でトーク・ライブへと膨らんでいった。そこで触れられたのは、新型コロナウイルス感染症から橘高が回復したこと。

「去年はいろんなものを振り替えせずに終われそうです━━と言ったんだけど、最後の最後に振り替えになって、すごく悔しくて。この悔しい気持ちを忘れないようにと思って、12月14日に反応が出たんだけど、その日からタバコをやめました。酒もタバコもやんない、つまんないロッカーになったけど、これからもよろしくお願いします」と橘高。

これには嫌煙家の大槻も大拍手。タバコをやめたことを祝して賞状も授与するという。大相撲の優勝力士への表彰でおなじみ、懐かしのデビッド・ジョーンズの物真似で。

「ヒョウショウジョウ。アナタ ハ コロナ ヲ 機ニ タバコ ヲ ヤメテ 偉イネ…」そんな文言などは紙に書いてあるはずなく、赤塚不二夫さんへ捧げるタモリさんの弔辞を意識した大槻のアドリブ。そういうのは自由自在にスラスラと出てくるが、発表事はしっかり紙を見て話す大槻。4月5日の<シンクロニシティ5・筋肉少女帯全員集合 決定!>の開催、<Debut 35th カウントダウンシリーズ>として5月に「UFOと恋人」の発売30周年を記念した再現ライブを2カ所で行なうことも発表した。

祝福と歓喜の拍手の中、曲は「愛のリビドー(性的衝動)」へ。この切なく悲しいラブソングに続くのはスラッシー・ナンバー「カーネーション・リインカネーション」。曲調こそ対局にある2曲だが、どちらも恐ろしく練り込まれた構成とアレンジでドラマを描き出していく。メンバー個々の主張と絡み合いの妙は、デビューから35年やってきたバンドにしか作り出せないもの。ただし35年間ずっと活動し続けていなかったことは、ファンでなくともご存じだろう。

筋肉少女帯は99年に活動を凍結させている。そしてメンバーはそれぞれバンドを俯瞰し、自己を分析したり、あるいはもがいたりもした。ある意味、凍結前の筋肉少女帯や自分自身と対峙する日々でもあっただろう。その結果、彼らは2007年に再始動した。今はメンバーそれぞれが筋肉少女帯でしか生まれないバンド・マジックを存分に楽しみながら、各曲に愛情も注ぎ込んでいく。本日は35年間の様々な時期を行き来する選曲で、長い時間、共に歩んできたからこそ思いは深い。だから伝わる。

「若いころのオーケン、カッコいい。当時の俺はいい男だったなぁ~。でも自分で気が付かなかったんだよね。若き日の自分の美形をいかして生きるべきだったね」と初期の自分を分析しつつ、大槻が弾き語りで披露したのは「日本印度化計画」。バンド・サウンドとは違うスタイルだが、コロナ禍の3年間でファンと作り上げてきたコール&クラップを確かめ合うために、急遽、加えられた曲だ。ファンとのケミストリーを大槻は感じながら、「声出しOKになったら、みんな、叫びましょうね」とか「あと、もうわずかだと思いますよ」と優しく言葉も投げかける。

また話し始めると、止まらなくなるのも筋肉少女帯のバンド・マジックというか、ならでは、だろう。5月の「UFOと恋人」再現ライブの話から30年前のツアーの思い出。昨日のことも覚えてないという本城の話から、今度は昨日の行動についてなど。「30年前のいろんなことを思い出していこう。30年前に来たことないって人は、思い出を作っていこう」と大槻が再現ライブへの気持ちも語った。

そこから続くのはアンプラグド・スタイルの「悲しきダメ人間」、様々な人生ドラマを投影させた「ドンマイ酒場」など、年齢を重ねた彼らだからこそ味わい深く聴かせる曲たち。大槻が気持ち良さそうに歌い上げた「夕焼け原風景」の後には、さらなる発表も待ち受けていた。

「オールタイム・ベスト・アルバムが2023年6月中旬に発売されまーす。タイトルがまだ未定。一文字でビシッといきたい。今のところ候補は『肉』っていう。さあ、この曲は『肉』に入るのか!?」

大槻がそう叫びながら突入するのは、デビュー・アルバム「仏陀L」からの「サンフランシスコ」。ペンライトで弦をハジく内田、ドラム・ライザーに乗って後ろまで見渡しながら言葉ひとつずつに気合いを入れて歌う大槻、三柴 理(Pf)と互いに挑発するようなアクションも見せながら掛け合いする橘高、長谷川浩二(Ds)と一体になってリフを刻む本城。続く「いくぢなし(ナゴムver. サイズ)」では、筋肉少女帯のアンダー・グラウンド・パンク時代もフィードバックさせながら、アバンギャルドにアグレッシヴに決める。そしてラストを締めくくるのは「Guru 最終形」。筋肉少女帯が再始動した1作目「新人」からのナンバーだ。サウンド的にもラインナップ的にも紆余曲折あった、筋肉少女帯の様々な時期の出発点を立て続けに披露。そうした時期を乗り越えてデビュー35周年に向かう筋肉少女帯は、今、タフな生命力と大きな包容力を持っている。「Guru 最終形」のコーラスでは、ファンの振るペンライトが光の波となってメンバーの表情をさらに輝かせていった。

「筋肉少女帯、みなさまと共に2023年がようやく始まることができました。ありがとう」これまでの活動で育んできたファンとの絆は深く、そして強い。

「メリー・クリスマス! よい、お年を!! 2023年もよろしくお願いします」12月18日に言いたかった挨拶でステージに再登場したのは橘高。お詫びも兼ねて1曲歌うという。しかし次の瞬間だった。

「俺の声が聴こえるかー!」と凄まじい気迫。そして突入した「アンクレット」では吠えるように歌い、弦を切り裂く勢いで弾きまくる。暴逆の貴公子がここに見参だ。ファンもヘドバンで激ノリするわ、ラストは大槻も加わり、狂気のカオスと化していった。

「みなさんの熱気で、筋肉少女帯、無事に2023年を迎えられました」大槻が改めて感謝しながらアンコールのラストを決めるのは、筋肉少女帯のデビュー・シングル曲であり、デビュー・アルバムにも収録された「釈迦」だ。ステージ上もフロアも狂騒。また次のライブからは多分、声出しも解禁になって熱さも倍増だろう。筋肉少女帯にとって2023年の幕開けは、とてつもなく縁起のいいものになった。

TEXT:長谷川幸信

セットリスト

  1. トゥルー・ロマンス
  2. バトル野郎~100万人の兄貴~
  3. ボーン・イン・うぐいす谷
  4. LIVE HOUSE
  5. くるくる少女
  6. 愛のリビドー(性的衝動)
  7. カーネーション・リインカネーション
  8. 日本印度化計画(大槻ケンヂ 弾き語り)
  9. 悲しきダメ人間
  10. ドンマイ酒場
  11. 夕焼け原風景
  12. サンフランシスコ
  13. いくぢなし(ナゴムver. サイズ)
  14. Guru 最終形

ENCORE

  1. アンクレット(橘高文彦 ボーカル)
  2. 釈迦

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