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「今はバンドの反抗期」ーーBBHFが皮肉とユーモアを表現手段に使った必然とは? 最新EP『4PIES』インタビュー

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BBHF

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現実ではあるけれど、高度に物語性を帯びた映画のような体験が従来のBBHFのライブだとすれば、2月に開催した一夜限りのライブ『愛のつづき』はバンドの肉体性がグッと前景化したものだった。その日披露された新曲に驚きの声も多かったのだが、いよいよEPとして届けられる『4PIES』の音像や歌詞に対面する時、したたかに生きることを鷲掴みにする新たなバンドのスタンスにさらに驚くはずだ。ライブ翌日の3人に、まずはその手応えを確認するところからインタビューをスタートしてみた。

――まずは昨日(『愛のつづき』2月8日 恵比寿LIQUIDROOM公演)のライブの感想をお願いできますか。

尾崎雄貴:過去一楽しかったですね。サポートのYoheyくんも含めて、DAIKIくんも和樹もそうだし、楽しそうにしてるなあっていうのがお互いステージ上で確認しあえる。で、お客さんもめっちゃ楽しそうで。“ただひたすら楽しい”っていうことを一番最初に感じるライブだったので、すごいなあと思いました。何も苦じゃないというか。

――今まで苦だったんですか(笑)。

一同:(笑)。

雄貴:一個一個緊張感を持って、自分たちの作ってきた世界観をちゃんとお客さんに伝えるっていうことに集中すると、やっぱり途中で疲れてきたりすることがあったんですけど……それはお客さんも一緒で、顔がぼーっとしてくるっていうか。今回は全くそういうのがなくて。しかもBBHFとしての表現したいサウンド感もそうだし、メッセージもちゃんと伝わったなと思うので、本当にいい一日だったなと思います。

――ライブのタイトル『愛のつづき』はDAIKIさんの思いつきっておっしゃってましたけど。

DAIKI:イアン・マキューアンっていうイギリスの小説家の方がすごく好きで。その人の新しい本を探そうと思ったときに、『愛の続き』っていう著作があって。ちょうど前回のライブが『LIVE LOVE LIFE』ということで、今回の新曲も愛について歌ってる曲があったり、テーマが愛だっていうのが根底に共通認識であったので、そのなかで“愛の続き”という言葉がすごく美しいなあと思って。雄貴くんに提案したら気に入ってもらって。

――その小説家の作品名だったんですね。

DAIKI:はい。作品のタイトルです。(イアン・マキューアンの小説『愛の続き』は1997年刊)

――セットリストが愛の続きになっていたと思います。あと、雄貴さんのハンドマイクとか。今回シンセは触らず、よりフィジカルなステージでしたし。

雄貴:うんうん、そうですね。歌に集中できるっていうのと、お客さんに対して真正面でいけるので。今後は自分がギターを弾かなくていい曲を増やしていきたいなと思っていたので、今回はやれてよかったなって感じです。

――そしてサポート・ベーシストのYoheyさんは、Newspeakのライブでも実感したのですが、日本のバンドでは珍しいぐらいの音像じゃないですか。

雄貴:リハの時点で、ベースの音を聴いて俺が海外のバンドのライブに行った時の音だなと思って。それもYoheyくんにいろいろ秘密を聞いたんですけど。

――これからライブは一緒にやっていくんですか?

雄貴:できる限りやっていきたいなと僕は思っていて。Newspeak、これから絶対忙しくなるので、スケジュール次第かなとは思うのですが。

尾崎雄貴

尾崎雄貴

――そして前回、Galileo Galileiとwarbearのインタビューの時にも話してもらいましたが、雄貴さんにとって三つのバンドの存在は自分の状況と分かちがたいと思うんです。

雄貴:はい。

――昨日のライブのMCでもありましたけど、愛というものに対する立ち向かい方が前回までのツアーとは違うっていう話もあって、そこで強いていうとBBHFでやることって何なのでしょうか。

雄貴:例えば僕がハンドマイクにしてみたり、スタンドマイクしてみたりっていうのもGalileo Galileiではできなかったし。あと、以前のBBHFっていう集まりだったらできなかったことでもあって。今、自分が本来やりたかったいろんな遊びに挑戦できるようになったのは、多分今このメンバーになって、さらにYoheyくんもそうだし、一時期やってくれた岡崎くんもそうですけど、新しいメンバーと一緒に上手くやっていく上で遊べるようになったのかなと思っているんです。それこそGalileo Galileiでは遊び方が違うし、warbearもそうなんですけど、BBHFが一番音楽を通して遊びつつ……遊びって例えばサッカーでもなんでもそうですけど、ゲームってやっぱり上達していくじゃないですか。それを目指していける雰囲気が今BBHFにあって。だから今回の楽曲もそうですけど、新しい段階にいけるっていうのがある。あと分かりやすいっていうのがありますね。その段階にグンと上がった瞬間っていうのがこのチームだとすごくわかりやすくて。

――自分の中で、超えている感じですか?

雄貴:そうですね。やっぱ今回の『愛のつづき』ってタイトルもそうなんですけど、まず愛があるんだっていうことが前提で、その続きの話なんで。でもそれってやっぱ少なくともお互いにお客さんもそうだし、僕らもそうだし、「愛を持ってるんだよ」っていうことが信頼関係というか。信頼できてるから、次の愛の続きに進めると思うんですけど。それが例えば生活的なところだったりもそうだし、一緒にその続きを見ていかなきゃ、やっぱりそこには居れないので、「愛はできたよね、じゃあそこにいましょう」って話しではないんで。そういうこともBBHFって自分たちの関係性から体現できてるなと思うので。本当にナチュラルに楽しい場だなと思っています。

――Galileo Galileiも始動する背景っていうかモチベーションが「大丈夫だ。安心して任せとけ」って感じでしたけど、BBHFにもしたたかさを感じるんですよ。そのムードってすでに前回のツアーファイナルや、その途中にもありました?

雄貴:そうですね。でも徐々になっていったっていう感じの方が強くて。きっかけってそんなになかったかなって僕は思うし。あとそのGalileo Galileiで言ってる「大丈夫だ」っていうのは職人気質な感じなんですよ。あのメンバーも含めて。だから真面目な、音楽やり始めの頃の「こういうのやりたい、ああいうのやりたい」っていうのを職人たちが集まって童心に返ってやっているっていうのがGalileo Galileiの特徴だと思っていて。BBHFはちょっとまた違って。Galileo Galileiって、どっちかっていうと今なんだけど、過去でもあり、空想の中でもあり……自分の中でもびっくりするぐらいスパンと分かれて。始めてみたら分かれちゃったので、なんかいい感じだなあと思っています。

――では今回の『4PIES』に関しても、今のこのモードに関しても、実際に手を動かしてみて新しい曲の気配が出てきて見えてきたのでしょうか?

雄貴:そうだと思います。

――日常的に作ってらっしゃるので、何がきっかけになったのかなって。

雄貴:基本的に和樹と僕が札幌にいて、日々の活動をやってるんですけど、Galileo Galileiでの活動をしている中でも、「今日できた曲、warbearかな」とか、「BBHFの曲、今日書こうかな」とか、混ざってしまってたんです。でも、BBHFの曲を作ったり、それをBBHFの曲だって決めるときに、DAIKIくんのことを思うようにして。DAIKIくんが楽しく、いいギターを入れられる曲っていうのがBBHFの曲だなとに思っていて。今回は特に作る側として意識してやっていたなと思いました。それが今バンドの味になってるんじゃないかなと思います。

――それは思います。具体的にはどの曲の断片とか、結構しっかり形になってたとかありますか?

雄貴:「メガフォン」はもともとwarbearの曲として書いてたんですけど、結局「メガフォン」はwarbearのアルバム『Patch』に入らないなって置いといたんです。でもDAIKIくんにギターを入れてもらったら、「本当はこうしたかったんだな」っていう形にたどり着くなあと思って。で、DAIKIくんにワンワンスタジオに来てもらって一緒にやって。あれ変わったよね?

尾崎和樹:うん。全然違う感じになってる。

雄貴:僕ももちろんギターを弾くんですけど、DAIKIくんのギターはめちゃくちゃ色濃いし、それが好きで僕はDAIKIくんにギターをお願いしてるので。今回ほぼ全曲かな? 僕はギターを弾いてなくて。なので、ギター周りはほぼ任せて、自分はベースを弾いてる曲もあるし(笑)。DAIKIくんのノリとかフレージングとかっていうのは僕らに全くないものなので、それもちょっと……Galileo Galileiの名前をだして申し訳ないですけど、Galileo Galileiに関してはみんな似通っているものがあるから、予想外っていうのはそんなに起こらないんですけど、BBHFはやっぱDAIKIくんにお願いすることでそれが起こるんですね。こんなに人に任せるっていうか、その人に投げかけて、それでできたものをよしとするっていうのって、今までの僕だったらできてなかったことなんですけど、こんなにできる相手っていうのはギタリストではDAIKIくんしかいないんです。今回それがすごく強く出てるんじゃないかと思います。

DAIKI

DAIKI

――DAIKIさんはBBHFが人間だったら、今どういう年齢とか、どういう性格だと思いますか。

雄貴:BBHF擬人化(笑)。

DAIKI:(笑)。俺はある種の反抗期でもあるかなと思って。BBHFが発足してからの流れだと、結構うっそうとした感じというか、わだかまりのようなものがあったと思うんです。そこから腹が割れて、今は俺も反骨精神持ってんだぞ、反発できるんだぞっていうパワーを徐々に持ち始めてる。それが最近、ライブや音源に反映されてきてるのかなと思っていて。SNSとかでは伝わっていない部分もあると思うんですけど、みんな本当にユニークでいつも冗談ばっかり話して、ゲラゲラ笑っていて。それが徐々に外の方にというか、聴いてくれてる、見てくれてるみんなにも伝わってきてるかなっていうのがあって。今回のライブとかもリラックスしてるけど、ある意味あんまり虚勢を張らないでいいなって思えるようになってきたのが、今パワフルにできている、こういう雰囲気につながってきているのかなと思ってはいます。

――確かにそうですね。「メガフォン」は、一番イギリス的な皮肉が効いてるっていうか、アレンジもそうなんですけど、雄貴さんが作った大元の形からDAIKIさんは何を膨らませていったんですか?

雄貴:ギターは全然違うよね? 俺が最初デモで入れたやつと。

DAIKI:俺はデモ聴いてなかったな。

雄貴:そっか。だってYouTubeにポンと上げただけだからね。

DAIKI:それで札幌行って、「こういう曲をやろうと思うんだけど」っていう本当にベーシックなアイディアだけで進めて。元の曲を知らなかったからああいう形になったかなってのもあるかもしれない。

――ギターもそうですし、和樹さんのドラムも反抗期ですよね(笑)。

和樹:何やってんのか自分でもわかってない感じだったり(笑)。ライブでやる時も大変でした。

雄貴:「タムうるさいから減らして」って(笑)。

和樹:あんまりやらないんだけどね(笑)。

――肝を押さえるような最近の和樹さんのドラムからすると、めっちゃロックンロールバンドに戻ってきたような感じもありますからね。

雄貴:「メガフォン」は確かDAIKIくんに、グレアム(・コクソン)みたいな感じでって言って。僕はギターを弾かない曲にしたいなと、すでに作ってる時点で思ったので、ギタリスト一人で完結できるようなフレージングにしてほしいっていうことも話した覚えがあって。この人、すぐできちゃうんですよね。できるだろうと思って言ったらできちゃうので、本当にすごいなと思って。グレアムって言っても、グレアムのあのギターの感じではなくて、どういうふうにバンドサウンドに関わってるのか?っていうところでちゃんと伝わってて、そういう部分も楽しかったです。

――ギタリストで挙げるんですね、バンドというより。

雄貴:そうですね。DAIKIくんに対しては特にそうかもしれないですね。和樹とかにはバンドとかで言うけど。

――今回のEPで全体的に思ったのが、バンドで音数をどんどん減らしてミニマムな傾向からのアゲインストというか。BBHFにとってだけっていうんじゃなくて、そういう潮流というか、ミニマムなものへの反動という感じも受けました。そのあたりはどうですか?

雄貴:そうですね。音数がどうのっていう会話自体そんなになくて。結局出来上がった音源って一本だから、結果それがどういう感じか?でいいかなって最近は僕は思ってて。あと今回、急遽クリス・チュウ(POP ETC)にミックスしてもらうことになったんです。それまでは自分たちでどうせミックス、マスターやるんだろうなと思ってたので、なんか帳尻合うべっていう感じでやってたんですけど、思ったよりパンチをもう少し出したいなってなったので、クリスに頼んで。そしたらめちゃくちゃいいものが返ってきて。だから改めてバンドメンバーがミックスするのはあんまり良くないなって(笑)。人の目を耳を借りるのって大事だなと思いました。

――クリスが考えてることも5年前とかと違うんだなというのもわかりました。

雄貴:はい。クリスからLINEで「今回の曲マジでいい」って来て。結構気に入ってくれたのと、あとスムーズだったって言ってましたね。今までの曲より、どういうことがやりたいのかすぐわかったからって。

尾崎和樹

尾崎和樹

――ミックスで言うと「クリーチャー」の音像が面白かったです。資料にはリファレンスとしてピーター・ガブリエルの名前もありましたけど、リズムの処理が変わったんでしょうね。

雄貴:クリスのミックスもリズムを際立たせるっていうのがかなり強かったので、さすがだなあと思って。秘密を誰にでも聞くんですけど、「これどうやってやってるの」「コンプレッサーだよ」って教えてくれて。あと、ピーター・ガブリエルっぽいリズムの強度にしたいって伝えましたね。やっぱりそういうこともちゃんとわかってくれるので。あと僕たちは、曲を作る時やアレンジする時に映像をプロジェクトに入れて見ながら曲を作っていくことがあるんです。その曲だけ聴いてると、聴き飽きてきてわけわかんなくなってきちゃうんですけど、映像に合ってるかどうかで軸が決まるので。なんとなくの概要の設計図みたいな感じで映像を入れたりするんです。この「クリーチャー」はデヴィッド・ギルモアの「ラトル・ザット・ロック」って曲のめっちゃ宗教感のあるMVをプロジェクトに打ち込んで、それに合わせて作っていったんです。

――宗教感もリファレンスにあるかもしれないんですけど、ゾンビみたいな感じもします。

一同:(笑)。

――ゾンビの気持ちが分かる二人が惹かれ合ってるような感じ。

雄貴:最初はサイバーパンクのアニメの曲にしたくて、タイトルが「Lucy」だったんです。“月に行く”っていう歌詞だったんですけど、ちょっとずつこう自分の中でその「ラトル・ザット・ロック」に寄せて(笑)。

――結果的に皮肉であったりユーモアがこういう時だからこそ必要だっていうのもあると思うんですけど、曲ができて「そういう曲ばっかりになったな」っていう感じもあるんですか?

雄貴:どうだろう? 仮に今からまたあのテーマで曲を書いたら、もう別の作品を作りたいなと思っているので、また違うものになると思うし。僕は今はこのEPを出した後のモードとしては、やっぱ自分たちって皮肉が好きなんだなって。ユーモアもそうだし。音楽でそれを伝えるっていうのがすごく好きなんだなとわかりました。その上でなんだろう、音数を減らすっていう目的のためにそれをするんじゃなくて、ギターとドラムとベースで成り立つ曲とか、そういうのをやりたいなっていう。ボーカルがあって、シンプルな曲っていうか……ストーンズみたいな感じの(笑)。

――今のしたたかな感じはそうですね。

雄貴:はい。ポリスとかスミスとか、そういう曲。音数で勝負するんじゃなくて、楽曲やフレーズの強度で勝負するという。すでに人々の思い出に残る主な要素があるわけじゃないですか、全部が鳴った時。ああいうのがやれたらいいなぁって今思ったりしてます。

――このEPはBBHFの新たな一手として濃いものを出したっていう感じですか?

雄貴:出来上がった段階でも、この4曲って決まった段階でも、なぜか僕ら的にはそんなに濃いって印象はなかったというか。リリースすることとか、ファンに次の一手を指すということに対してそこまで重要性を感じていないっていうとアレですけど……「(曲が)できてるから出そう」というか。今作も正直そんな感じになるんじゃないかなって気はしてます。

――だったらなおのことマインドが強い(笑)。また曲の話に戻るんですけど、昨日はSNS上の感想でベーコンの絵文字がいっぱいで。

一同:あははは(笑)。

――みんなベーコンが耳に残ったんですね。

和樹:ライブでベーコンだけ聴き取れたんですね(笑)。 

――ベーコンに対するビーコン、いい語呂ですよね。ビーコンはそもそも標識っていう。

雄貴:はい、「置いたもの」。これはでも、僕的には昔お世話になったレーベルとのやり取りの中で生じていたプレッシャーについての曲だったんです。

和樹:(笑)。

雄貴:曲の概要はそのレーベルにいた頃に書いてて。で、その時にはこういう曲は却下されていたわけですよ。これじゃあリリースできないって言われて。そういうものに対しての怒りがこもってるんで、今回、どの曲もちょっとした怒りがこもってるんですよね。DAIKIくんがさっき言ってた反骨精神じゃないけど、やっぱり反逆したいなあっていうところで、今まで自分たちを抑え込んでいたものに対して。

――怒りは過ぎ去ったとしても、やっぱりどこかに残ってたりするもんですね。

雄貴:はい。「やめちゃる」は、僕のまわりの人のことで言うと、自分がいる会社に対して不満や「辞めたい」ってずっと言ってる人がいるんですけど、辞めないんですよね。要するに、辞めたいっていう思いを自分の周りの人に振りまいてるだけで。で、「どうせ辞めねぇだろうな」っていう気持ちが僕にはあって。辞めたいなら辞めればいいのにっていう。でも辞められない理由が本人にあるから辞めないわけじゃないですか。だから全体的に誰しもにある苦しみだし、飛び抜けれないから辞めない。みんなでせーの!でやるんだったら、日本人の気質としてやってもいいかな、辞めてもいいかなってなると思うんですけど。それに対して、じゃあ僕の考えを述べたのか?というと、そういうわけでもなくて、その状態を曲にしてるような曲になっています。結局、自分がそのレーベルにいて不満とかもあったし、「もう辞めますわ」っていう話をしたこともあったし。それも含めて自分に対してもちょっと冷静な目で俯瞰で見てるっていうような曲になってます。「やめちゃる」は。

BBHF

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――そして「愛を感じればいい」ですが、前提として虚無があるというか。

雄貴:虚無時代。虚無世代。

――それはストーリーラインとして俯瞰して見てるんですか?

雄貴:そうですね。自分自身は虚無じゃないと思っていて、虚無だったらやっていないなと。ただでも、特にSNSとかですかね。本来だったら会いもしない人たちの同世代の状況とか、さっきの「やめちゃる」じゃないけど、愚痴みたいな。だから負のエネルギーを受け取ったときに「虚無だな」と思うから、その想いかな? 虚無ってあれじゃないですか、無いから。でも無いままじゃなくて、虚無って他の物を食い尽くそうとしている穴みたいなものだと思って。虚無だから何かに入れ込んで、吸収して周りを傷つけたりっていう、そんなものでもあるなと思って。そういうものに対してのアンチテーゼもあったり。唯一虚無じゃないのは自分の中にある……例えば両親のことが好きで心配している気持ちだったり、恋人に対して本当にこいつ好きだなと思う気持ちだったり、友達に対して一緒に飲んでる時に「あ、まじこいつが好きだ」っていうあたたかくてふわっていう気持ち。それだけはマジで虚無じゃないから、それを感じようねっていう歌です。

――お二人は今回のEPが出ることに対する面白さやワクワクのようなものはどの辺にありますか? それとも結構フラットな感じですか?

DAIKI:今までは、作品を完成させてそれをライブで披露するっていう形が多かったんですけど、今回はライブで完成したなって感じがする。やっぱり見てくれてる人たちの反応も、ぶっちゃけ過去一よかったなと思います。だから今まであんまりBBHFでは感じなかった、ライブで、しかも新曲を披露してこんなに盛り上がってくれるっていうか。ちゃんと受け入れてもらえるってことは珍しくて。こっちもやっぱりお客さんが楽しそうにしてるとすごく楽しくなれるし。そういう経験がBBHFにとって、こういう形もあるんだっていう、ある種この作品で愛を感じれたなと。この後につながる何か大きいヒントがあるような作品になったと思います。

――和樹さんはどうですか?

和樹:攻撃しにいくじゃないけど(笑)、今までみたいな「聴いてください」っていう気持ちよりも、タックルしに行くっていう思いの方が強いのは、たぶんその曲に対してのパワーを自分たちも感じてるからかなと思うんです。だから普通の気持ちではないです。このEPに対して今までと同じようなわけではない。『BBHF1 -南下する青年- 』よりも『13』よりも、もっと攻撃的な想いではあります。

――新しい風が吹き始めたので、ここから引き続き楽しみにしています。

雄貴:はい。ありがとうございます。

取材・文=石角友香

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