Osaka Shion Wind Orchestra 100周年ロゴ
令和5年度に創立100周年を迎える日本最古の吹奏楽団・Osaka Shion Wind Orchestra(以下、Shion)が、2023-2024年シーズンに実施する記念事業を発表。⾳楽監督の宮川彬良と芸術顧問の秋⼭和慶らも出席し、来シーズンへ向けての抱負やShionへの思いを語った。また発表の前には、宮川彬良の指揮で『Fun,Fun,Fantastico!』と『マツケンサンバⅡ』を演奏したShion。きらびやかかつ軽やかなサウンドを響かせた。
記者発表の前に演奏を披露したOsaka Shion Wind Orchestra
創立100周年事業のキャッチコピーは「これまでも、これからも。」。ロゴは日の丸の赤とShionのテーマカラーであるオレンジを組み合わせ、五線譜やシオンの「S」を入れ込んだ。また、隣接する数字のゼロが末広がりの「8」や無限大の「∞」に見えることで、キャッチコピーにつながるデザインにした。
「2023-2024年シーズンの定期演奏会は、宮川音楽監督、秋山芸術顧問をはじめ、吹奏楽の醍醐味を存分に味わえる内容になっています」と代表理事の石井徹哉。秋⼭和慶、宮川彬良のほか、現田茂夫、ポール・ポピエル、齊藤一郎、ダグラス・ボストックを指揮に迎え、それぞれに趣向を凝らしたプログラムを組んだ。
(写真左から)理事長・石井徹哉、⾳楽監督・宮川彬良、芸術顧問・秋⼭和慶
9月、10月にかけては、現代アメリカを代表する作曲家、ジェームズ・バーンズの交響曲全曲演奏「バーンズ・チクルス」の特別演奏会を行う。残念ながらバーンズの高齢と体調不良から来日が叶わなくなったが、バーンズ直々の指名でポール・ポピエルが指揮を執ることとなった。「バーンズ・チクルス」は吹奏楽では稀なことから、石井代表理事は「Shionにとっても挑戦」と意気込む。
京都での定期演奏会や、住友生命いずみホールでのマーチのコンサートに加え、「100周年の目玉事業」と一層声に力を込めるのは、アメリカ・シカゴで開催される『ミッドウエスト・クリニック2023』での招待演奏だ。Shion創立100周年と大阪市とシカゴ市の姉妹都市提携50周年を記念しての招待で、Shion初の海外演奏となり、12月に渡米する。
そのほか、記念誌の発行や大阪市中央図書館での展示会(10月6日(金)~11月1日(水))、これら100周年事業のクラウドファンディングなど、様々な企画を用意。3月18日には100周年の特設サイトもオープンした。(https://shion.jp/100th/)
2023−2024年シーズン 定期演奏会プログラム
この日、今シーズンの定期演奏会を終えたばかりの宮川彬良音楽監督は、毎回勉強だったと、まずはこの3日間を振り返った。「すごく練習しても全然うまくいかなかった曲が、見違えるほどうまくいったり、これはもう楽勝だろうと思っていた曲が全然うまくいかなかったり(笑)。楽団の音楽監督を仰せつかっている作曲家というのは、日本のプロの楽団ではほとんどいないのではないかと思いますが、だからこそ、毎回、勉強であり、Sionの諸君も「作曲家のアプローチはまた違うものだな」と感じながら、精進の時を過ごしております」。
100年の間に様々な出来事があった。なかでも2014年の民営化は記憶に新しい。その以前から、前身の大阪市音楽団と交流のあった宮川は、「泳ぎ方も分からないのに、急に海に放り込まれたような感じだった」と当時の楽団を振り返り、彼らの一助になればと「契約金ゼロで10年間、(音楽監督を)やっております(笑)」と、時折笑顔を見せながら続けた。その原動力は、『マツケンサンバⅡ』をはじめ、Shionが演奏する自身の楽曲がなくなってしまうことが「耐え難いことだったから」という。
「音楽をなんとか生きながらえさせたいという一心から10年間、続いて、その間に僕は、作曲家だけをやっていたら到底知り得ない、いろんなことをShionから教わることができ、またそれが次の題材になり、創作の手がかりになっていってきました。今後、団員のみんなが方向転換を望む時期も当然来ると思いますが、その時までは僕は音楽監督という立場であり続けようと思っています」とさらなる意欲を見せた。
2023-2024年シーズンの定期演奏会は来年3月を予定している。「世の中をあっと言わせるような、面白いプログラムをきっと組めるのではないかとは思っています」と宮川、期待を込めた。
「Shionと関わり20年」という芸術顧問の秋山和慶は、「この楽団は100年という伝統を良い意味で守って、練習をしても音楽に真摯に食いついてくる。いい感じで真面目にぶつかってくださって、演奏会で結果をちゃんと出してくれます」とその個性を語る。
2023−2024年シーズン 定期演奏会プログラム
続けて宮川も「秋山先生のお話にもあったように、全力感というか、食らいついてこられるところなど、(吹奏楽指揮者の)丸谷明夫さんは、そんなオオサカ・シオンに「大人の本気」という称号を下さいました。「大人の本気」という音だと。そういう大いなるアマチュアリズム、部活マインドを持っている。それも特徴のひとつです」と話した。
また、J.バーンズ:交響曲第1番 作品35から第1楽章、第3楽章や、大栗裕:大阪俗謡による幻想曲ほかを予定しているアメリカ・シカゴでの『ミッドウエスト・クリニック2023』招待演奏。だんじり囃子のサウンドが印象的な『大阪俗謡』を選曲した理由を秋山は次のように語った。「『大阪俗謡』のような地域のカラーがふんだんに感じられる曲は、海外の方たちの反応が良く、大きな拍手をしてくれます。日本の良いものも持って行って、紹介するというのも、ひとつの役目だと思います」。
1923年に誕生以来、100年にわたり大阪市民とともに歩み、日本の吹奏楽の発展にも寄与してきたOsaka Shion Wind Orchestra。最後に石井代表理事がこう締めくくった。
「これからも、さらにその先の110年、150年、200年まで、この音を受け継いでいきたいという思いです。僕たちがShionの音楽をしっかりと、いろんな人に伝える。そのためには、なるべく多くの方が聴ける状況を作っていきたいですし、一つ一つの本番で、本気の音をぶつけていきたい。それこそがShionのアイデンティティだと思っています」。
取材・文=k.iwamoto
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