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ザ・シスターズハイ、リアルな感情を奇想天外な発想で落とし込んだ最新EP「凶天使Vitaる」と今を語る

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ザ・シスターズハイ

ザ・シスターズハイ

新潟発4ピースネオパンクロックバンド、ザ・シスターズハイが2nd EP「凶天使Vitaる」を完成させた。ぶっちぎりの勢いで畳み掛けるキラーチューン「真里」や中毒性の高いキャッチーなショートチューン「天使のごめんね」にとどまらず、心の内側を吐露したスローバラード「C♯memorial」もあり、彼ららしい奇抜さは研ぎ澄ましながら、よりポップで深みのある作品に仕上がっている。メンバーが勢ぞろいしての初インタビューということもあり、新作のみならず、バンドの成り立ちからその発想力の根本までじっくりと迫ってみた。

ザ・シスターズハイ

ザ・シスターズハイ

いちばんいいアイデアを絞り出していったら、あのときはセーラー服が一番だった

ーー昨年8月に1st EP「disLOVEる」をリリースした後、ツアーも含めて、とにかくライヴをしてましたよね。戦略的にライヴを絞るようなバンドもいる中、勢い重視な感じでしたよね。

まさやんぐ(G):今のバンドとかは東名阪だけに絞ってる場合も多いんですけど、レーベルが「1回やってみよう」と提案してくれて、「これは頭がおかしくて最高だな」と思いました(笑)。

ーー実際にやってみた印象は?

まさやんぐ:お互いのことが以前よりも知れるようになったかもしれないです。

カイ(Ba):たしかに。

まさやんぐ:(これだから女子供はは)美へのこだわりが強かったり。風呂上がりにめっちゃ化粧水をつけてて(笑)。

これから女子供は(G.Vo)​:大事だから(笑)。

まさやんぐ:髪とかもめっちゃ高いクシでといてて、意外やなと。

ーーこれだから女子供はさんはそんなことを無視して生きてる気がしてました。

まさやんぐ:人よりも大雑把なところも多いんですけど、こだわるところはこだわっていて。

カイ:僕はシスハイに入って間もなかったし、2人は結構隙がないイメージだったんです。歳上だし、バンドも年数やってるし、その差がデカいかなと思ってたんですけど、まわってく中で僕も成長していったのもありつつ……。

ーー思ったほど差がなかったとか?(笑)。

カイ:いやいや(笑)。意外と大雑把な部分もあったりして、メンバーとして距離がより縮まりましたね。

これだから女子供は:気づいたことは……疲れましたね。

まさやんぐ:たしかに疲れたな。

ーー昨夜の深酒で疲れが顔に出てますけど、ツアーで酒に飲まれた回数はどのくらいありました?

これだから女子供は:いや、飲まれたことないっす。今も飲まれてないし、全部の物事と戦ってるんで。

まさやんぐ:本人の基準だから、飲まれてないって思えば飲まれてないっていうね(笑)。

ーーじゃあ、周りから見たら飲まれてるなって思われてそうなのは?

これだから女子供は:ほぼ全部そうでした(笑)。

ーー簡単に想像できます(笑)。シスハイは曲名や作品名も奇抜だし、何がどうしてこうなったんだろう、という疑問があるんですよ。

まさやんぐ:ネーミング関係はほとんど女子供の仕事なんですけど、独自のボキャブラリーがあって。

カイ:理由はホントにわからないですね。『disLOVEる』に収録された「pink pink vibration」のMVでは、これだから女子供はさんはセーラー服を着てるし、そういう奇抜なことも躊躇なくやってて。

これだから女子供は:気づいたらそうなってた、みたいな。ホントにそうなんですよ。

まさやんぐ:そのときにいちばんいいアイデアを絞り出していったら、あのときはセーラー服がいちばんだった、っていう。

自分自身が初心者から始まってるし、辿ってきた道を教えれば同じ人間なんでやれないわけがない

これから女子供は(G.Vo)​

これから女子供は(G.Vo)​

ーーそもそも、結成の経緯はどういった流れだったんですか?

まさやんぐ:もともと、自分は高校のときからバンドをやってたんで、大学でもまたやろうと思ってたんです。で、ヴォーカルをやりたい人はたくさんいたんですけど、いちばんヤバそうな人に声をかけたくて、大学構内を歩いてた女子供を誘いました。

ーー何がヤバそうだった?

まさやんぐ:格好が凄かったっすね。奴隷の足についてる鎖みたいなのを首に巻きつけてて。しかも、(女子供は)部活をめっちゃやってたんで、胸板も厚かったし。

ーー筋肉隆々で首輪つけてると、ホントに囚人みたいですね。

まさやんぐ:でも、オーラがあるなと思ったんですよ。

これだから女子供は:バドミントンをずっとやってて、大学でもやろうと思ってたけどそのバドミントン部が弱すぎて。雑魚すぎるからお前らとはやらんと思った帰り道、声をかけられました。普通に歌うのは好きだったんで「やりましょうか」と。

まさやんぐ:そこから前のバンドを一緒にやってたんですけど、他のメンバーは就職をすることになり。そのバンドが解散した後、この2人でまだバンドをしたいと思って、ザ・シスターズハイとして動き出しました。

ーーカイさんはその後に加入されたんですね。

まさやんぐ:バイト仲間が「ベースをやりたいって子がいるよ」と話を持ってきてくれて、ライヴに来てもらったんです。

ーーベースやバンドは長くやっていたんですか?

カイ:いや、そんなこともなくて。高校2年生からちょこっと軽音部でやってたぐらいでした。でも、音楽をやりたい気持ちはめちゃくちゃあって、同じサークルの同期がつないでくれたんです。

ーー2人としては何年かバンド経験があるし、新しいメンバーはすぐに動ける人が欲しいですよね。

まさやんぐ:そうでしたね。

ーーそうなると、ある程度は経験や技術を求めてもいいのかなと思うんです。

これだから女子供は:でも、オレが調教すればどうにかなるというか。自分自身が初心者から始まってるし、辿ってきた道を教えれば同じ人間なんでやれないわけがないし。もちろん、カイなりのペースはあるだろうけど、音楽をやる上で技術とかセンスより、人としての優しさや感受性の方が大事だと考えてるんですよね。カイは最初からそれがあったから大丈夫だろうな、と。

まさやんぐ:気持ちが強かったのがデカいっすね。オレらもキツいことを言ったりするんですけど、そこに負けないし。

ーーシスハイが動き出した当時、音楽的にイメージしたバンドはいましたか?

これだから女子供は:オレ、いろんなバンドが好きでいっぱい聴くんですけど、なるべくそういうバンドと同じにならないように、と考えてました。だから、(シスハイは)何にも似てないと思うし、これをオマージュしましたというのもないし。新しいことをやれてるんじゃないかなと思います。

どうせ逆張りするんだったら、振り切っちまえみたいなのもある

まさやんぐ(G)

まさやんぐ(G)

ーー歌詞の特徴として、感情や情景を描写する流れなのにいきなり突飛な単語が飛び込んできたりするじゃないですか。それは他にはないモノを生み出したいから、という。

これだから女子供は:オレは人間としてめちゃめちゃ不安なんです。人目が気になるし、それこそ音楽的センスがあるとも思えなくて。Vaundyや米津玄師みたく、誰が聴いても凄いモノを作れてないだろうし。もちろん、全部言いたいことは言ってるんですけど、普通に歌詞を書いてても「これは面白くない」と思われるんじゃないかな、と逆張りしちゃうんですよ。

ーーそのままの自分じゃつまらない、みたいな不安がある?

これだから女子供は:そうなんですよ。それに、どうせ逆張りするんだったら、振り切っちまえみたいなのもあるし。

ーーその振り切り方だと、作品を重ねるごとにより自由になってる印象があって。メリハリがついてるというか、リリースやツアーを通していい自信を手にしたのかなと想像してました。

カイ:たしかにそれはありますね。まだ知られてなかっただけで、こんな方向性でも受け入れてもらえることがわかったのはデカかったです。

ーーでは、今回の新作の出来栄えはどうですか?

これだから女子供は:本気というか、もうオレ、これ以上できないですね(笑)。

まさやんぐ:最後のツアーということか?(笑)

カイ:困りますね(笑)。

ーーただ、それぐらいの手応えがあるという。

これだから女子供は:ショートチューンを入れたり、バラードを入れたり、自分の脳みそをフル活用して、緻密にいちばんいい形を考えたし。

ーーたしかにバランスがいい作品ではあるんですけど、後付けでそう言ってるだけじゃないのか、という気がしちゃうのはバンドの奔放なイメージがあるからですかね(笑)。

これだから女子供は:でも、たまたまかも(笑)。

まさやんぐ:あと、緻密っていうのはちょっと盛ってますね(笑)。たしかに全体のバランスは最初に考えてから作ってはいるんですけど。

ーーカイさん、まさやんぐさんはどう感じていますか?

カイ:今回、編曲の部分にもしっかり関われたというのが自分の中で大きくて。ベースのフレーズ、コーラス、以前よりも幅が広げられたんです。昨年のツアーでいろんなバンドから学べたおかげかなと思ってます。

まさやんぐ:ツアーでいろんなバンドを観て感じたのが、メンバーが歌詞の意味を理解してるバンドはめちゃめちゃカッコいいな、と。だから、例えばこのパワーワードの後にギターソロがくるとカッコいいな、とか、歌詞の意味を踏まえてアレンジしていったんです。そういうところが傍から見たとき、曲の完成度や自由度が上がったというところにつながったのかなと感じてますね。

ーーシスハイの歌詞って、行間の読み方次第で解釈が何通りもありそうじゃないですか。そういったところで、メンバーへ説明はあったんですか?

カイ:ないです。各々が解釈してますね。

まさやんぐ:いろんな解釈がある中、自分がいちばんそうだと思うところを踏まえて弾いてやってます。

もし、嘘をついたり、綺麗事で曲を作ったとしたら、その後もずっと嘘をつかなきゃいけない

カイ(Ba)カイ(Ba)

カイ(Ba)カイ(Ba)

ーー新作から「真里」が先行配信されましたよね。ネジが飛んだように<真里真里真里真里真里真里真里真里真里真里真里>と連呼するキラーチューンですが、この曲をセレクトした理由は?

まさやんぐ:いちばん力がある曲な気がしてて。

これだから女子供は:あと、いちばんオレが頑張って作った、という。

一同:ハハハハ(笑)。

まさやんぐ:頑張り度で決まるのかよ!(笑)。

カイ:でも、ずっと言ってましたね、「この曲は絶対にリード曲がいい」と。これだから女子供は:作ってて、いちばん苦しかったんです。今まで曲を作ってて1回も嘘をついてなくて、ずっと自分のリアルを歌ってきてるんですけど、その中でもいちばん生々しかったというか。

ーーどうして、そこまで苦しみながらもリアルを歌いたいんですか?

これだから女子供は:もし、嘘をついたり、綺麗事で曲を作ったとしたら、その後もずっと嘘をつかなきゃいけないし。とにかく苦しくても自分の気持ちを素直に出せば、ライヴでやるときもそうだし、誰かに「こういう曲を作ったから聴いてよ」って言うときも100%の自信を持てるじゃないですか。それに音楽に限らず、恋愛も人間関係もそうですけど、本当のことをただ素直に出す方が絶対にハッピーエンドを迎えられると考えてて。

ーーそういう意味では、生々しく絶叫しながら感情を投影するスローバラード「C♯memorial」はグサグサくるエグさを感じました。

これだから女子供は:自分が作った曲で初めて泣けたんです。「真里」も本当のことではあるけど、オレの卑屈な部分を歌ってて、「これだから女子供は」として作ったというか。でも、この曲はひとりの人間としての気持ちを書いてみようと思ったんですよね。

ーー聴いてて、触れちゃいけないような部分に触れてるようなところもあって。

カイ:そのまま過ぎますよね、歌詞が。

ーーしかも、軽快なショートチューン「天使のごめんね」の後にくるから、その落差も凄いし。

これだから女子供は:それも逆張りですね。

カイ:「天使のごめんね」は今までの色が濃い曲になってますね。

ーー「天使のごめんね」に限らずですけど、ギターはかなり自由に弾き倒してると感じました。

まさやんぐ:めちゃくちゃ自由っすね(笑)。このバンドのいいところで、自分が考えたフレーズを「最高や!」と言ってくれて、制限が一切ないんです。弾きたいように弾いていいよっていうスタンスでずっと作ってきてますね。

ーーお互いのアイデアをとにかく活かすという。

カイ:曲の雰囲気を壊し過ぎず、自分のエゴをどんどん入れて。

これだから女子供は:オレ、細かい部分がよくわかんないんですよね(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

これだから女子供は:作ってるときにイメージはあるけど、(メンバーは)しっかりやってくれるんで、全部良く聴こえるし(笑)。

まさやんぐ:オレらにしてみれば、天才に出会ってしまったから、ということですよ。曲にそういう力がある。

ちょっとでもいいから、何かその日なりのことをできたら

ーーアレンジに関してですと、「タンジェリン」の流れがいいなと思ったんです。だんだんと熱を帯びて、前のめりになっていくじゃないですか。ダメ押しみたく入ってくる合唱的なコーラスもいいし。

まさやんぐ:この曲はその合唱のコーラスをやりたくて作ったと女子供が言ってて、そこへ向けて盛り上がるようにアレンジをしました。

これだから女子供は:基本的に、オレはわからないから、基本的な知識やルール、気持ちいいと感じるのはこういう流れとか、そういう部分は全部まさやんぐがわかってるんです。だから、オレがクレイジーなモノをバンドへ持ち込んでもちゃんと整えてくれるし。

ザ・シスターズハイ

ザ・シスターズハイ

ーー4月からはリリースツアーが始まりますね。何か心がけることはありますか?

これだから女子供は:オレはずっと、極端な言い方をすると、ライブはパフォーマンスが大事だと思ってたんです。その日にしか観れないモノを、と。でも、それは自分視点だけでしか考えてなかったというか。お客さんの気持ちを考えたとき、ちゃんと演奏して歌うことも大事なんだな、と気づいて。例えば、オレが発狂しながらダイブすることなんて求めてないかもしれないし。そのへんのバランスは気をつけたいですね。

ーー昨年11月の地元である新潟CLUB RIVERSTで行った初ワンマンで「ヤリたい半分」を3人がそれぞれリードボーカルを務める形で3曲連続でやったという記事を読んだんです。随分とイカれたことをしてると思ったんですけど(笑)。

カイ:かなりイカれてましたね(笑)。

ーーただ、それはその日ならではのライヴを楽しんで欲しいって気持ちの表れかなとも感じたんです。

これだから女子供は:もちろん、やれることは全部やって、楽しんでもらいたいんですけど、あれは単純に持ち曲が足りなかったという(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

まさやんぐ:バラしちゃうんだ?(笑)

これだから女子供は:でも、もう大丈夫です!

ーー今回もツアーファイナルはワンマンなのでそこも楽しみですけど、まずはいいツアーをまわることですよね。

まさやんぐ:そうですね。ツアーのほとんどを来てくれるような人もいるし、「ずっと前から観たかったんです」っていう声もあったり、そういう人たちが楽しめるように、当日までにできる限りのことをするのがオレの仕事やなと思ってて。ちょっとでもいいから、何かその日なりのことをできたらな、と考えてます。

取材・文:ヤコウリュウジ 撮影=冨田味我

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