ボブ・ディラン、4/12の東京公演でグレイトフル・デッドの「トラッキン」を歌う
ボブ・ディランが、4月12日の東京公演で、グレイトフル・デッドの「トラッキン」を歌った。コンサートでこの曲を歌うのは今回が初めてで、予想だにしなかったキャリア初披露は驚きをもって迎えられ暫し客席はどよめく。この意外な演奏曲が何の曲なのか、デッド・ヘッドは別としてなかなか判明せず終演後にはあちこちで情報交換がされる様子が見受けられた。
この驚きは世界中にいち早く情報が流れ、米Rollingstone誌でも掲載。ディラン・ファンにとって、この大きなサプライズは、この夜の大きなプレゼントにもなった。
グレイトフル・デッドの「トラッキン」は岩波書店から本日発売となった『ソングの哲学』翻訳本(佐藤良明訳)の中で取り上げた66曲のうちの1曲で、ボブ・ディランは以下のように書いている。
ミディアム・テンポのうただが、常にスピードを上げていく印象がある。最初のヴァースがすばらしくて、その魅力が干上がらない。いや、すべてのヴァースに第一ヴァースになる力がある。
中略
みんな同じ町の話だが、とにかくきみは移動している。フレーズが次から次へと積み重なる。だが意味は明瞭に理解される。うたはペースを変え、ペースを戻し、コーラスはまた三重唱に戻る。♪「トラッキン」――― これが呼び起こすのは単なるトラベルとは違って、苦難を含むものである。だがグレイトフル・デッドはスイングのダンスバンドだ。その旅に同行するのが大変だという気にはさせない。
このうたを歌う男は、自分を演じ、自分を語っている。他人の要求に応じてではなく。
(「ソングの哲学 / ボブ・ディラン」佐藤良明訳から抜粋)
『ソングの哲学』でボブ・ディランはソングライティングに関する技術や技巧についての講義を展開。それはディラン以外のアーティストの作品に焦点を当てた66のエッセイで、顔ぶれはスティーヴン・フォスターからエルヴィス・コステロまで、ハンク・ウィリアムスからニーナ・シモンまでと、幅広い。ディラン一流の散文体で書かれていくこれらのエッセイは、神秘的で機知に富み、時に辛辣であり、深遠であり、またしばしば、腹の皮がよじれるほどおかしなものでもある。貴重な写真約150点も掲載したこの『ソングの哲学』は、2016年にノーベル文学賞を受賞して以降、初の著書となるものだ。