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Hilcrhyme、満員のツーマンツアーファイナル公演が終了 ハプニングも百戦錬磨のスキルで魅了

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Photo by 福政良治

Hilcrhymeがゲストアーティストを迎え、対バン形式で行われたライブツアー「Two Man」。加藤ミリヤを迎えた名古屋公演、ベリーグッドマンを迎えた大阪公演に続き、Creepy Nutsを迎えた東京公演が、4月23日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて行われた。

先行として登場したのはCreepy Nuts。「2way nice guy」「堕天」「よふかしのうた」とタイトにライブを展開し、会場のテンションを高めていくラッパーのR-指定とDJのDJ松永。そして2022年に行われた、Creepy Nutsの対バンツアー「生業」新潟公演でも共演したHilcrhymeとの思い出や、DJ松永は「シンプルに兄貴」と慕うTOCへの思いをMCでは展開していく。

「ラブソングの名手と言えばHilcrhymeです。僕らも自分達なりのラブソングを歌います。TOCさんもこの気持ちは分かって貰えるんじゃないかな」と、ヒップホップへの様々な感情を描いた「阿婆擦れ」や、刹那的な愛情を描いた「フロント9番」と、Creepy Nutsなりの愛情を形にし、この日のホストであるHilcrhymeへ「返歌」を形にする構成も興味深い。そして「僕らがデビューする前から見てくれているTOCさんには、僕らの芯の部分を見てほしいと思います。僕らにとってDJとラップという行為が何にも代えがたいことであって、生業なんです」という言葉から「生業」「かつて天才だった俺たちへ」と、これまでキャリアを形にしつつ、最後は「のびしろ」でCreepy Nutsのライブは閉じられた。

Creepy Nutsが舞台を下り、暗転した舞台に流れるハードなドラムビートと、オーディエンスの歓声と拍手に導かれて登場したHilcrhymeは、アップテンポな「Hill Climb」で会場の空気を一気にHilcrhyme色に塗り替える。そして「ルーズリーフ」では「東京!騒げ!」と会場を一体化させ、その熱気は更に高まっていく。「Creepy Nutsに大きな拍手を」という言葉に続き、「今回のツアーは、加藤ミリヤさんの時はラブソングを、ベリーグッドマンの時はポップさと、それぞれ別のテーマでセトリを組みました。そして今日はラップをテーマにしたいと思います」と、このツアーの裏テーマを明らかにするHilcrhyme。その言葉どおり、「射程圏内」「No.109」と、ライトなラップが映える曲を立て続けに披露し、そのラップスキルをライブの中でオーディエンスにアピールした。

MCでは、R-指定を彼がティーンエイジャーの時に組んでいたユニット「コッペパン」がネットに音源を上げていた時代から知っていたこと、そしてTOCのライブDJを務めていたDJ松永がR-指定とCreepy Nutsを結成した縁など、二組の深い繋がりを言葉にしていくHilcrhyme。そこから「New Era」に続く……はずが、歌詞を飛ばしてしまい、その非常に珍しい光景に、会場だけではなく、本人も思わず笑ってしまう。しかし、そこで予定のセットリストにも無かった「大丈夫」を急遽披露し、会場の心配を「大丈夫」と吹き飛ばすステージさばきの妙は、百戦錬磨のライブアクトであることを証明した。

そしてHilcrhymeにとって大きな節目となった事実をドキュメンタリーとして歌った「十二月一日」や、前述の「生業」でも披露されたCreepy Nuts「トレンチコートマフィア」の歌詞を、自分の歴史に置き換えたリミックスバージョンの披露など、これまでのキャリアをライブを通して形にしていく。Creepy Nutsのセットリストの楽曲名を折り込みながら、自分史を語るという粋な演出のMCから、ラストは「日本の名曲100選に選ばれているであろう、国民的ヒット曲で締めたいと思います」という茶目っ気たっぷりのアナウンスに続き「春夏秋冬」を披露し、会場との大合唱でステージを終えた。

アフターショーでは、今年デビュー10周年という節目を迎えるソロ・プロジェクトである「TOC」初のベスト盤である「TOC THE BEST」が6月28日に発売されること、そしてHilcrhyme/TOCの生誕祭が、10月4日に東京、9日に大阪の二箇所で行われることが発表され、会場からは大きな拍手が上がる。

また、2023年劇場公開の映画『尾かしら付き。』の音楽をHilcrhymeが務め、主題歌など3曲が書き下ろされたことも報告。その中から「15歳の頃に戻って制作した」と話すポップ色の強い「秘密 feat.Yue」、そしてドラマティックな展開が印象的な「走れ」の二曲が披露され、これからの動きにも大きな期待させながら、万雷の拍手に包まれ、Hilcrhymeはステージをあとにした。

縁の深い二組ならではの和気あいあいとした、そしてラップスキル/DJスキルの高さをお互いに遺憾なく発揮した東京公演は、こうして幕を閉じた。

Text by 高木“JET”晋一郎

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