2023.4.9(Sun) MyGO!!!!! 4th LIVE「前へ進む音の中で」@TACHIKAWA STAGE GARDEN
『バンドリ!』プロジェクト発・現実“リアル”と仮想“キャラクター”が同期するバンドMyGO!!!!!の4th LIVE「前へ進む音の中で」が、4月9日にTACHIKAWA STAGE GARDENで開催された。Vo.燈、サイドGt.愛音、リードGt.楽奈、Ba.そよ、Dr.立希の5人によるワンマンライブは2022年11月26日の3rd LIVE「声を抱えて生きる」から4カ月半ぶり、そして初めてファンがライブ中に歓声をあげられるようになった公演の模様と、アニメ化などの嬉しいお知らせが発表された瞬間の5人の様子をレポートする。
公演開始予定の18時を過ぎ、会場内で流れていたBGMが鳴り止み、客席の照明が消えるとTACHIKAWA STAGE GARDENには2000名超のファンから拍手や歓声が上がり、開演の喜びを表現する。一気に高まったボルテージを一旦落ち着かせるように、訥々とした燈のモノローグが聴こえてくると、声に合わせてステージと客席の間に張られた紗幕には言葉が浮かび上がる。「前へ進む音の中で 顔を上げて うたいたい」という言葉に続くように、照明が点灯し「名無声」でライブが始まった。
歌い演奏する5人は、客席のファンが持つペンライトの光やクラップ、シングアロングで熱気を高めていく。紗幕には曲に合わせて歌詞が表示されており、最初は黒地に白の文字というシンプルなものだったものが、曲のクライマックスに合わせて空を流れる雲の映像に切り替わり「MyGO!!!!!」のロゴが表示され「皆さんこんばんは、MyGO!!!!!です。本日はよろしくお願いします」と燈が挨拶すると客席からは歓声が上がった。
そのまま2曲目「ティアドロップス」(Poppin'Partyのカバー)へ。紗幕に表示される歌詞も表示の切り替わりなどに動きが加わり、タイポグラフィによる映像演出としてライブを盛り上げた。
MCでは、メンバー5人による自己紹介や、改めて「声出しOK」な公演であることを改めてアナウンスしつつ「MyGO!!!!!のライブ初めて来たよっていう人!?」「MyGO!!!!!のこと、好きな人!?」という問い掛けを行い、声の出方を確認する一幕も。
燈の「何も考えずに、踊りたい。みんなと一緒に。聴いてください『影色舞(シルエットダンス)』」という言葉で次の曲へ。内省的な歌詞の重めな楽曲が多いMyGO!!!!!のなかでは異色なダンスロックナンバーに合わせて、燈たちがステップを踏む様子や左右に揺れる客席のペンライト、紗幕に映る文字も踊るように動いていたのが印象的だった。
余韻を鎮めるように少し間をおいてから、「僕であろうとすることが どうしてこんなに痛いの?」とメンバーが歌詞を一節ずつ読み上げてから始まった4曲目「潜在表明」。「影色舞」の明るい雰囲気から一転し、重々しく不穏さを感じさせる演奏が始まると、燈によるポエトリーリーディングのような語り声、そしてサビでの引き込まれるような高音に観客は静かに耳を澄ませていた。
演奏が終わると、燈と楽奈が交互に客席へ言葉を投げかける。燈が改めて「新曲です」と紹介し、始まったのは「無路矢」(のろし)。燈の歌声に、楽奈の高音のホイッスルボイスが絡み合うように響くミディアムロック。歌い始める前に二人で交互に言葉を発したときのように、同じ歌詞、あるいは違う歌詞を交互に、あるいはユニゾンで歌い上げていく。
紗幕には荒涼とした大地を進んでいくような映像と、遠くに見える狼煙のけむり。そして、二人の歌声に合わせて浮かび上がっていく歌詞。寂寥感と強さを感じるような楽曲をツインボーカルで披露した。客席からの拍手を受けながら、続けて披露したのは燈による“歌ってみた”の第一弾として動画も公開されているDECO*27「二息歩行 (Reloaded)」。「これは僕の進化の過程の3ページ目です」という歌い出しに、また違った意味が加えられているような印象と、セットリスト構成の妙を感じさせた。
その後のMCでは、「無路矢」について。ツインボーカルを担当した楽奈と燈がともに「楽しかった」と語り、燈が書いたという歌詞には「MyGO!!!!!の音楽を通して皆さんと会話ができるような気がして、これからも一歩一歩大地を踏みしめて歩いて行けるように」という思いを込めたこと、楽奈の歌詞については立希のサポートもあってできたことなどが明かされた。
続けて、初披露というカバー曲、Orangestarの「Henceforth」では、燈が「無路矢」で込めた気持ちとも重なるような歌詞とともに、ボカロ楽曲ならではの高いキーの楽曲を歌いこなす燈のキーの広さを感じさせた。
「猛独が襲う」(MyGO!!!!!カバー曲第2弾、一二三 feat.初音ミクの楽曲)を続けて演奏した。水を飲んだ燈の気管に水が入るというちょっとしたアクシデントがありつつも、愛音がしっかり間をつなぎライブは後半戦へ。「swim」(MyGO!!!!!カバー曲第2弾、04 Limited Sazabysの楽曲)では、疾走感のあるストレートな楽曲で、曲調は違うものの「無路矢」と同様のメッセージ性を感じさせるとともに、間に「猛独が襲う」のような悩みや迷いを表現した内省的な楽曲を挟むところにもMyGO!!!!!らしさが垣間見えた。続けて「音の中で叫びたい、みんなに届くように…迷子でも進めー!」という燈の“叫び”から、MyGO!!!!!初のオリジナル楽曲「迷星叫」へ。街の夜景や星空が映し出される紗幕の向こう側から伝わってくる力強い歌声と演奏に、観客は大歓声で応えた。
「ありがとうございます。次で最後の曲です」という燈の言葉から始まったMCでは、2nd Singleの表題曲「音一会」について込めた思いが語られた。「私一人では見られなかった景色」をたくさん見てきたこと、会場でペンライトを持っている観客一人ひとりや、配信で視聴しているそれぞれの場所で応援している人の存在があって、MyGO!!!!!がステージに立てているのだと語り、「これまでと、これからと、感謝の気持ちを込めて。この5人で曲を届けます」と宣言。5人がそれぞれ一言ずつ言葉を紡いで、演奏が始まった。メロでは燈の独白のような形で言葉が紡がれるが、サビでは燈の歌声にコーラスが加わり、よりバンドの一体感が感じられる。「そう君がいたから 『ありがとう』」というまっすぐな歌詞を歌い終えると、全員で拳を突き上げてライブ本編を終えた。
大きなアンコールの声に応じて登場したMyGO!!!!!は、「無路矢」を披露してからMCへ。「音一会」の感想を確認してから燈が「最初のお知らせです。映像がありますので、まずはこちらを御覧ください」と紹介して映し出されたのは、MyGO!!!!!始動時に公開された映像。「バンドリ!から生まれる現実“リアル”と仮想“キャラクター”が同期するバンド」と表示されたタイミングでビデオテープを巻き戻すような演出が入り、再び同じような映像が始まったかと思ったら、5人のフルネームと担当声優の名前が明かされ、歓声が上がる中でアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の制作が発表されるとさらに大きな歓声と拍手が鳴り響いた。立て続けに、5th LIVE「迷うことに迷わない」開催とアニメOPテーマがMyGO!!!!!の「壱雫空」(ひとしずく)だという映像が流された。
歓声がさらに大きくなるなか、ステージの前にあった紗幕が落ち、さっそく「壱雫空」が披露された。白と青のツートーンに薄い黄色のラインが入った衣装をまとった5人の姿がはっきりと現れ、ステージ後ろの液晶モニタには大きく「MyGO!!!!!」のロゴが映し出される。キャッチコピーにある「現実“リアル”と仮想“キャラクター”が同期」したような瞬間と、メロコア的な勢いのある楽曲の力強さもしっかりハマり、祝祭感のある時間が繰り広げられた。
続くMCパートでは、映像で告知されたアニメ化や5th LIVEの情報をおさらいしつつ、スマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』に「迷星叫」が追加されることや、1st LIVEから4th LIVEまでのライブ映像が有料配信されることが発表された。その後、ステージの後方にいた長崎そよ役の小日向美香、椎名立希役の林鼓子も前へ出るように促されて、5人それぞれがこの日のライブの感想などを語るMCパートへ。
千早愛音:立石凛
まずは、千早愛音役の立石凛が「この『バンドリ!』、MyGO!!!!!というコンテンツが声優の業界に入って初めていただいた大きなお仕事」で、まだ愛音を演じる上で「悩んだり落ち込んだりすることもあっても、メンバーのみんなが本当にお姉ちゃんみたいに引っ張ってくれて……主に鼓子ちゃんが」と実年齢では年下の林の名前を挙げる一幕も。「これからは、愛音ちゃんと私でMyGO!!!!!の魅力を皆さんに、もっと多くの方に伝えられるように頑張っていきますので、これからもMyGO!!!!!そして愛音ちゃんの応援をよろしくお願いします」と頭を下げた。
要楽奈:青木陽菜
要楽奈役、青木陽菜は、名乗った直後に大きな歓声が返ってきたことに「ありがとう」と答えると「言葉で返せるって嬉しいですね」と率直な気持ちを語りつつ、2021年の夏からバンドの形で練習を始めたこと、楽器経験はあったもののバンド経験は初めてで戸惑いもあったと振り返った。迷うこともあったと明かしつつ「私としても、楽奈ちゃんとしてもまだまだギターを弾き足りないなと思っています」と意気込みを語った。「駆け出しのバンドなので、悩んだりとか迷ったりとかすると思うんですけど、そんなときに皆さんがペンライトとか、ライブのときに挙げてくださる手とかで『MyGO!!!!!こっちだよ』『ここにいるよ』って私達の目の前にいてくださると嬉しい」と、ファンとともに活動していきたいと語った。
長崎そよ:小日向美香
長崎そよ役の小日向美香は、メンバーから「泣いてもいいんだよ」と優しく言われながら、声を震わせて「長崎そよ役の、小日向美香です」とあいさつ。「名前を言ったりとかするのが初めてなので、涙が出てしまいました。涙がよく出るタイプです。泣かないって約束したんだけどね、ごめんなさい」と告白。「もともと『バンドリ!』が大好きで『バンドリ!』に日々を支えていただいていた、一人の女の子」だったと振り返り、MyGO!!!!!としてステージに立てていること、活動してこれたことをスタッフ、メンバー、そしてファンに感謝し、改めて「MyGO!!!!!の長崎そよ役、小日向美香でした、ありがとうとざいました」と、今度はしっかりと名乗った。
椎名立希:林鼓子
椎名立希役の林鼓子は、1st LIVEで本編最後の曲とアンコールでしかステージに立てず「立希を最初からみんなと一緒にステージに立たせてあげられなくて、それがすごく心残りというか悔しかった」と振り返り、「こうしてMyGO!!!!!として新たな一歩を踏み出す日に5人でステージに立てたことが幸せで最高の気分」と語り、会場のそして配信で視聴しているファンのおかげだと感謝した。楽器を演奏することは「大変なこともすごくたくさんあるけど、すごく楽しくて、バンドができて良かった」とし、「これから、きっといろんなことがあると思うんですけれども……、この5人なら。いや、燈、愛音、楽奈、そよ、そして立希。この10人で一緒に前に進めば絶対に大丈夫だと思っております」と前を向き、ファンが「もし道に迷うことがあったときに、皆さんの心に寄り添えるような音楽をMyGO!!!!!として作っていきたい」と語った。
高松燈:羊宮妃那
最後に高松燈役の羊宮妃那は「本当にさっきのさっきまで、MC何を話そうかなってずっと悩んでいたんです」と切り出し、今回アニメ化などの発表がどう受け止められるのかを考えていたと明かした。告知映像への反応として「すごく温かい声が聞こえてきて、私達も笑みがこぼれてしまうといいますか。言葉では例えようのない幸せな気持ちに包まれました」としつつも「ただ、やっぱり一人ひとり思っていることは違うと思うんです」「『よろしくお願いします』って言っちゃってもいいのかなとか、いろいろあった」と、ファンの気持ちを考えながら「このMyGO!!!!!っていうバンドを応援してくださっている皆さんだからこそ、一人ひとり、いろんな思いを抱えながら一歩一歩、一緒になって迷いながらでも進んでいけばいいじゃないかと私は思いました。この言葉は、感情もですけど、まとまっていないんですけど、今までどおりみんなで。私は燈ちゃん、みんなはみんなの担当するキャラクターと向き合って一緒に歩んでいきたいと思っております」と気持ちをぶつけた。
メンバーがそれぞれの楽器の位置に戻って最後の曲へ。羊宮が「皆さんも準備はいいでしょうか? 皆さんに、これまでと、これからと、感謝の気持ちを込めて届けます」と宣言し、今回の公演タイトルにもなっている「前へ進む音の中で」という歌詞が含まれている「音一会」でライブを締めくくり、最後に客席に向かってマイクオフで「ありがとうございました」と感謝を述べた。
繊細でありつつ力強い羊宮のMCに、MyGO!!!!!の歌詞とのリンク、「現実“リアル”と仮想“キャラクター”が同期する」という言葉の深さを感じさせられた。後で聴く「音一会」は、ファンのクラップや声援。そして新たな展開の発表や、それに対する暖かな拍手と歓声……様々な「音」がMyGO!!!!!とともに前へ進もうとしていること、そして新たな展開へ進もうとしている彼女たちを後押ししているようなライブだった。
レポート・文:藤村秀二