ビーチ・ボーイズ、名作「ペット・サウンズ」をドルビーアトモスで配信 グラミー賞受賞プロデューサーのジャイルズ・マーティンがオリジナル・テープからミックス
史上最高のアルバムの一つとして名高いビーチ・ボーイズの名作「ペット・サウンズ」が、グラミー賞受賞プロデューサーのジャイルズ・マーティンによってドルビーアトモス・ミックスされ、配信開始した。
1966年5月にリリースされたこの作品は、「素敵じゃないか」(Wouldn’t It Be Nice)、「スループ・ジョン・B」(Sloop John B)、「神のみぞ知る」(God Only Knows)、「駄目な僕」(I Just Wasn’t Made For These Times)、「キャロライン・ノー」(Caroline, No)といった名曲の数々を収録、ポピュラー音楽界でもっとも引き合いに出される影響力のある作品のひとつとして、時代を超えてその地位を維持している。
また、複雑なオーケストラ・アレンジ、テルミンやパーカッションにみたてたコカコーラ瓶など型破りな楽器編成、メンバーの完璧なハーモニー、そしてこれまで歌ってきたどの歌をも凌ぐ、奥深く、内省的な歌詞など、さまざまなものを取り入れたことで作曲と制作の両方で前人未到の音楽的領域に踏み込み、史上もっとも重要で愛されるアルバムの一つとして残っている。
1966年5月16日にオリジナル版がリリースされてから約60年、「MOJO」誌の「The Greatest Albums of All Time」ランキングで1位、「ローリング・ストーン」誌の「歴代最高のアルバム500選」で2位に選出されるなど、「ペット・サウンズ」は近代音楽におけるマスターピースであり続けている。
ジャイルズ・マーティン コメント
ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」は、ポピュラー音楽のあり方を変えた革新的で象徴的なアルバムだ。このアルバムに影響を受けたザ・ビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を作り、今度は「サージェント・ペパーズ~」に影響を受けたピンク・フロイドが「狂気」(The Dark Side of the Moon)を作った。ブライアン・ウィルソンという、アイデアやテクスチャーへの果てしない情熱を持った本物の天才が作ったからこそ、こんなに魅力的なレコードができたんだ。「ペット・サウンズ」をドルビーアトモスに移行するということは、そうした世界に完全に没入できる、その世界に包まれることができるということであり、これまでのレコードでは聞こえなかった楽器の音が聞こえるようになる、その音がその空間にあることを確認できるようになる、ということだ。古いビニール盤レコードを手にして、まるで「不思議の国のアリス」みたいに、ゆっくり穴に落ちていくような、私はそういうイメージが好きだったりする。それこそ没入型オーディオでやるべきことだ。自分の大好きなレコードに文字通り囲まれる。「ペット・サウンズ」はこれにうってつけだ。このアルバムは色彩、テクスチャー、イマジネーションにあふれていて、そのイマジネーションが、ずっともっと広がりのある空間領域で実現される。ビーチ・ボーイズからこのアルバムの仕事を依頼されたことは光栄この上なかったし、史上もっとも象徴的なアルバムのひとつをミックスできる機会が得られるなんて、本当に驚きでもあり胸がときめいた。