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モップス、ユニバーサル ミュージックに残るアルバム3作品をSHM-CDで再発

アーティスト

モップス「モップスと16人の仲間」

1967年「朝まで待てない」でデビュー、日本のサイケデリック・ロックにおける草分け的存在として知られるモップスが、ユニバーサル ミュージックに残るアルバム3作品をSHM-CDで6月28日に再発する。

モップスは、俳優、タレントとしても活躍し2007年に亡くなったヴォーカルの鈴木ヒロミツ、現在も作曲家アレンジャーとして活動中の星勝ら4人編成のバンド。

今回アナログマスターからリマスターとなるのは、吉田拓郎作詞・作曲のヒット作「たどり着いたらいつも雨降り」収録の最高傑作との呼び声も高い1972年7月発売の5thアルバム「モップスと16人の仲間」をはじめ「御意見無用」「雨 モップス’72」の3作品となっている。

モップス リイシュー
ザ・モップス~日本における“ロック黎明期“の格闘史

文:平岡たかし

1960年代前半、ビートルズやベンチャーズの影響を受け、日本で一大エレキ・ブームが起こる。彼らはグループ(バンド)を組み、ゴーゴー喫茶などを舞台に活動を始める。1963年のビートルズ来日以降は続々とそういったグループがデビューし、いわゆるグループサウンズ(以下GS)ブームが巻き起こるのである。彼らはビートルズよろしく揃いのスーツに長髪(70年代に比べればそんなに長く無いのだけれど)でエレキを演奏し、ロマンチックなラブソングを熱唱した。そのスタイルは若者に熱狂的に支持される。タイガース、テンプターズなどがヒット曲を連発。GSは全盛期を迎える。中にはオックスのように「失神者続出」センセーショナルな現象のみが話題となる傾向もあった。

ただ、ロック・バンドとGSが同義語のような当時の日本では、一口にGSといってもスタイルやルーツはアイドル的グループから本格的ロック指向のグループまでさまざまであった。そんなムーヴメントの中、ザ・モップスは登場する。

1966年、ザ・モップスは星、三幸、村上、スズキ幹治の4人が結成したインストゥルメンタルバンドへスズキ幹治の実兄である鈴木ヒロミツがヴォーカリストとして加入。5人組バンドとして本格的な活動を開始。アニマルズのエリック・バードン、THEMのヴァン・モリソンなどに影響を受けた、鈴木 ヒロミツのヴォーカルを中心にブルース、ブルーアイドソウル色の濃いサウンドを指向する。1967年11月、シングル「朝まで待てない」でデビュー。いわゆるアイドル的人気のGSとは異なり、主としてジャズ喫茶、米軍キャンプなどでの演奏で活動。デビュー当初は当時世界を席巻していたサイケデリック・ロック色を全面に押し出し、ドアーズのカヴァーなど英語詞の楽曲も多かったが、レコード会社を移籍した、2nd以降は本来のブルージーでソウルフルなロックサウンドに回帰していく。星勝を中心にメンバー自身の手による作品も増え、グランドファンクばりにタイトかつヘヴィーにグルーヴする名曲「御意見無用」、音頭のリズムを巧みに取り入れた「なむまいだあ─河内音頭より─」、ヴォーカルの鈴木ヒロミツが出演し当時大人気を博したCM曲のカヴァー「気楽に行こう」,ブルースをコミカルに表現した「月光仮面」、そしてザ・モップス最大のヒットとなる吉田拓郎作詞作曲の「たどりついたらいつも雨ふり」など、次々と意欲作を送り出す。すでにGSブームは遠く去っていたが、もはやザ・モップスはGSの枠に収まらない、より 骨太な「ロック・バンド」へと変貌していた。

また、「日本語でロックを演ることは是か否か」という長年日本で議論されていた課題、いわゆる“日本語ロック論争"に関しても、ザ・モップスは、リズムや歌詞に「日本」濃密に取り入れ、インパクトのある楽曲へと昇華させることで、軽々とクリアしている。今聴いても新しくさえある。80年以降主流になる、要所に英語を散りばめた「英語の歌詞のように聞こえる」曲とはココロザシが違うのである。

今回リイシューされる3枚のアルバム「御意見無用」「雨/モップス’72」「モップスと16人の仲間」はザ・モップスがGS,フォーク、そして歌謡曲が支配した、60年代~70年代初頭日本のミュージックシーンにおいて、彼らがロックとブルースを武器に立ち向かった格闘の証(アカシ)であり、彼らのエネルギーとタマシイが詰まった名作である。ぜひこの機会にザ・モップス=日本語ロックの原点に触れてほしい。

1974年、ライヴアルバム「EXIT」をリリースして、ザ・モップスは解散する。メンバーはそれぞれ文字通りバンドを出て、それぞれの活動へと向かう。鈴木ヒロミツはタレントとしてTV,映画で活躍したが、2007年60歳で没している。星勝はバンド在籍時から、作曲家、プロデューサーとしてその才能を発揮、「氷の世界/井上陽水」「シングルマン/RCサクセション」「地下室のメロディー/甲斐バンド」など日本の音楽史上に残る名作をプロデュース。日本におけるポップミュージックのプロデューサー、アレンジャーの第1人者として活躍することになる。
(文中敬称略)

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