ダンス力と演技力を活かし、舞台にドラマ、映画、バラエティと縦横無尽の活躍を見せる唯一無二のグループ「ふぉ〜ゆ〜」。単独舞台主演なども増えている彼らが揃って出演する公演は、彼ららしい抜群のチームワークと爆発力を活かしたハイクオリティなパフォーマンスが話題を呼んでいる。
中でも、2019年に初演が行われた、登米裕一脚本、ウォーリー木下原案・演出のオリジナル作品『SHOW BOY』は、歌あり、ダンスあり、マジックありの楽しく煌びやかなステージで多くの観客を魅了した。ふぉ〜ゆ〜演じる4人のキャラクターを軸にしたオムニバス形式の物語が進み、ラストに向かって収れんしていく見事なストーリーは大きな評判となり、2021年に再演。今回、新キャストとして小松利昌、大廣アンナ・森田みなも(Wキャスト)が参加し、3度目の上演となる。
開幕に先駆けて囲み会見とゲネプロが行われ、会見にはふぉ〜ゆ〜(福田悠太、辰巳雄大、越岡裕貴、松崎祐介)と中川翔子が登壇した。
――2021年の公演からさらに楽しさが増した気がしました。
福田:気がしただけじゃないです。本当にそうなんです!
――どういった部分が変化したか教えていただけますか?
松崎:根本的には変わっていないんですが、キャストさんであったりは当然変わりましたよね。細かいところをブラッシュアップしているのでさらにわかりやすくなったと思います。ストーリーに沿って、その瞬間に描かれたものをブラッシュアップですよね。さらに違ったものをお届けできる『SHOW BOY』になってるかなって思います。
辰巳:あの、マツ(松崎)の動きが激しい時は動揺している時なんです。最近「ブラッシュアップ」って言葉を覚えたんだよね。
松崎:ちょっと今、脳をブラッシュアップしてます。
福田:意味わかってないでしょ(笑)。
辰巳:この作品は5年前、ウォーリー木下さんが僕らのために原案を作ってくれた作品。当時と今の僕らを比べると、仕事内容も関係性も変わっています。年齢を重ねた今、当時のままやるんじゃなく、「夢を諦めずに続ける」といったメッセージ性など、現在の僕らに合わせたセリフやシーンをウォーリーさんが追加してくださいました。この作品は当時の僕らに当て書きしていただいたので、正直初演の鮮度に勝てるのかなという思いはあったんです。でも、新たに生まれ変わって、今の僕らの『SHOW BOY』になったと思います。
福田:こういうことを自分で言うのはちょっとアレかもしれないんですが、事実なので言わせてもらうと、ふぉ〜ゆ〜、当時よりちょっと売れてしまっているんです。“ちょっと”ですよ、そこは勘違いしないでください。あの頃よりちょっと売れている僕らがあの頃の『SHOW BOY』をやるのは不可能。でも、この5年で僕らがした演劇経験、ショービジネスに対する思いなどはブラッシュアップされているわけです。だからこそ深化したと思っています。お客様がより物語に入り込めるような作品になっていると思いますね。
越岡:ウォーリーさんが当時の僕らに当て書きしてくださった作品の、3度目の上演。今の感覚だとできないからと言うことで、ウォーリーさんが色々と中身を変えてくれました。これまでに観たことがある人も今回が初めての方も楽しめると思います。この作品、初演を見に来た堂本光一くんが「これは面白い、ずっとやっていくべきだ」と言っていました。今年も連絡して来てもらおうかと思います。
中川:この作品は音楽に歌にダンスに盛りだくさんで、人生が交錯する物語。 人生は嬉しいことだけじゃなく悲しいこともあってという、全てが詰まった作品です。私自身この作品のファンで、そんな中で支配人としてジャニーズの方たちに囲まれてセンターで踊る。作中の「ヤルシカナイネ」という言葉に励まされながらやっています。この夏は全て『SHOW BOY』にかけると決めています。世界中のどんな人に見せても「面白い!」と言われるような作品になるべく頑張るので、絶対にお見逃しなく!
緊張をほぐすため、越岡の手に「人」を書いてあげる福田
――それぞれ見せ場がありますが、特に注目してほしいポイントはどこでしょう。
松崎:僕は中国人マフィアからディーヴァに変わるので、いかに女性らしく振る舞えるか。前回とは衣装も変わってパワーアップしているので、注目してほしいです。歩き方や動きを研究して臨んでいます。
辰巳:あとマツはずっと中国語なんです。
松崎:今回セリフが増えていたので、これはちょっとウォーリーさん! と言う感じ。でも楽しいです。
辰巳:稽古場でも中国語の先生とずっと話しているので、日本語で話しかけても反応しない。他の仕事の現場でも勉強していたんですよ。僕が見てほしいのはマジックですね。見習いなので、タネをバラさずに失敗しなきゃいけなくて。(マジック監修の)リアルマジシャンRYOTAさんと一緒に研究しているんですが、プロの人は失敗しないので本当に難しいんですよ。あと、お芝居のシーン。ウォーリーさんからは、お客さんが、「覗いちゃっていいのかな」と思うくらいのリアリティを持たせてほしいと言われました。ぜひお芝居にも注目してほしいです。
福田:元々やっていたものの、この作品をきっかけに本格的にタップをやり始めました。タップの先生に「ジャニーズで一番タップダンスが上手い」と言ってもらえました。僕は言ってないですよ、先生が言ってました。先生もびっくりするくらい上手くなってるみたいです。僕のライフワークになりそうなので、そこは注目してほしいですね。もし関係者の方でタップをやる作品があるよと言う方がいたら、オファーはジャニーズ事務所までお願いします。
一同:(笑)。
越岡:僕はギャンブラー役で、カジノでお金を失うんですが、僕自身は親が金持ちでそういう経験はない。それとどう調和していくかですよね。
福田:金持ちがお金をなくしていく姿。こんなに気持ちいいことはないな(笑)。
越岡:(笑)。冗談はさておき、この作品で初めてピアノに挑戦しました。2年前とは違う演奏や少女との連弾もあるのでそこが見どころかなと思います。今回は少女役がWキャストで、その違いも面白いのでぜひ見てほしいです。
中川:前回まではビシバシいく支配人でしたが、今回は結構どんくさくて自分でも気にしている役。ずっとテンパってるけど歌やダンスはバシッと決めるみたいな。前回は全ての公演でアドリブの内容を変えました。今回も毎回生だと言うことをお客さんに味わっていただくべく頑張りたいです。
空中に舞っていた羽を使って女性らしいふるまいを実演する松崎
――最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
中川:この夏一番熱い舞台がいよいよ始まります。絶対に後悔させません。本当に面白いです。命をかけて挑もうと思います!
越岡:ふぉ〜ゆ〜の取り扱い説明書と言っても過言ではない『SHOW BOY』、全力で挑みます。世界で一番ここが熱いと思います。ぜひ劇場で楽しんでください。
福田:東京公演は21日まで、その後大阪と名古屋にも行きます。とても感動できる作品になっておりますので、ぜひお越しください。
辰巳:オフブロードウェイに、ホテルを丸ごと使った『Sleep No More』という作品があるんです。役者さんがいる中を自由に見て回るイマーシブシアターで、1人1人にストーリーがあるので観客が見たいキャストの人生を追えるスタイル。『SHOW BOY』も、僕らだけじゃなく全員にストーリーがあるんです。僕はいつか、本当の豪華客船で、お客さんが自由に好きなキャラクターの人生を追える舞台をやりたいと思っています。マツはこの作品を一生やりたいって言ってるし。今回も熱い夏を楽しみたいと思います。
松崎:みなさん、聞いたことがあると思う方もいらっしゃると思いますが言わせてください。ショボいとは言わせねえぞ。シアタークリエに来てくりえ! ありがとうございました!
>(NEXT)ゲネプロレポート&舞台写真あり
フランスのムーラン・ルージュやクレイジーホースと並ぶ最高級キャバレーLIDOを彷彿とさせる、近未来のナイトクラブ。物語の舞台は東京湾に浮かぶ大型カジノ豪華客船。オリンピックを間近に控えた東京のエンターテインメントの象徴であるその客船は、水上を動くラスベガスと呼ばれている。
ある日、客船の目玉であるショーの開演前に、ディーヴァが牡蠣にあたってしまう。大急ぎで代わりの出演者探しを行う支配人(中川翔子)。裏方(福田悠太)は主演ダンサー(高田翔)が推薦するエンジェル(高嶋菜七)を探し回る。時を同じくして、船上では様々な物語が動き出していた。 カジノで全財産を失ったギャンブラー(越岡裕貴)は、大金を抱える少女(大廣アンナ/森田みなも)と出会う。日本人と取引予定の中国人マフィア(松崎祐介)は通訳(瀬下尚人)と顔を合わせ、控え室ではマジシャン見習い(辰巳雄大)が師匠(小松利昌)の前でマジックの試験中。
4人の男たちの宝石のような小さな物語が徐々に結びつき――。
* * *
会見で「深化した」と語っていた通り、各キャラクターの心情、キャラクター同士の関係性がより深く描かれ、わかりやすくなっている。特に、それぞれが抱えるステージへの思いがより鮮明に伝わるセリフが増えたことでラストに向かうエネルギーが説得力を増している。芝居もパフォーマンスもハードなはずだが、ショーステージで輝く姿は軽やか。歌やタップ、ダンス、マジックといったパフォーマンスの楽しさだけがひしひしと伝わってきて、見ているこちらも自然と笑顔になってしまう。細かに修正されたセリフや歌詞、追加シーンも印象的で、ウォーリー木下のふぉ〜ゆ〜への信頼や愛情も見えるような気がした。
また、それぞれがチャレンジしているマジックや中国語、タップ、ピアノはもちろん、4人のハーモニーも2021年公演からさらに安定し、深みが増している。個々のスキルが伸び、1つ1つのパフォーマンスに余裕が生まれたことで、笑えるシーンと胸に迫る芝居の緩急がより強くなったと感じた。
裏方役の福田は、ステージに対する未練とひたむきな情熱をまっすぐに表現する。周囲の人間に振り回されながらも自然と世話を焼く人の良さ、ステージで見せる、弾けるような笑顔が魅力的だ。ダンスを披露するシーンも多いが、そのいずれもキラキラとした笑顔で軽やかにこなしていく様子が小気味いい。
ギャンブラー役の越岡は、情けないがどこか可愛らしくて憎めない「おじさん」を好演。ユーモアたっぷりな芝居で笑わせたかと思うと甘い歌声やピアノの演奏を披露し、エネルギッシュなダンスで魅せるなど、ギャップが楽しい。
松崎は、家族を愛する中国人マフィアの複雑な心境を見事に表現。背景に日本語字幕が出るのだが、字幕を読まなくても気持ちが伝わってくる声と表情にぐっと引き込まれる。ディーヴァの代役としてのアドリブを含めたパフォーマンスもキュートだ。
見習いマジシャンを演じる辰巳は、様々なマジックを失敗・成功問わず鮮やかに披露する。芝居の部分にも注目してほしいと語っていた通り、本音を吐露するシーンは真に迫っている。彼の気持ちがしっかりわかることで、師匠やエンジェルとの会話もさらに深く切なく感じられる。
彼らを取り巻くキャラクター達も、パフォーマンスと芝居それぞれで魅せるシーンが増えている。
中川演じる支配人は、不得手な仕事を懸命に頑張る不器用な人といった印象。個性的なショーキャストたちに振り回されつつ、弟である裏方と一緒にキャバレーを運営する苦労人っぷりを応援したくなる。一方で、堂々とした歌唱やユーモアたっぷりのMCは非常にクールだ。MCはアドリブ要素も多いので、何度か観る方も新鮮に楽しめるだろう。
高田演じる主演ダンサーは生意気さ全開。自信家で思い込みが激しい個性的なキャラが立っており、ちょっと厄介だが憎めないスターだ。福田・瀬下とともに披露するタップダンスも素晴らしい。
ゲネプロでは少女を大廣が演じた。溌剌として聡明な雰囲気の少女と情けないギャンブラーのコンビが微笑ましい。追加シーンもあり、2人の心の通い合いが魅力的に描かれている。
とある事情で中国人マフィアと共に船内を逃げ回ることになる通訳を演じる瀬下は、気弱そうに見えて意外とノリの良いキャラクターが楽しい。マフィアと共に過ごす中で友情が芽生えていく様子があたたかく、グッとくる。
今回新キャストとして加わった小松のコメディアンっぷりも見逃せない。マジシャンとしての見習いとのやりとりはもちろん、乗客などのモブとして登場している時もユーモラスな芝居で目を引く。長い年月を共にしてきた師匠として、随所から見習いに対する愛情が垣間見えるのも印象的だ。
エンジェル役の高嶋は、口と酒癖は悪いが愛嬌のあるショーガールを好演。 煮え切らないキャラクターが多い作品において、彼女の素直さがアクセントになっている。見習いが披露するマジックに目を輝かせる様子が愛らしく、2人のやりとりにきゅんとしてしまう。
さらに、各シーンに居合わせる乗客やスタッフの人数が増え、それぞれがより自由に行動している。メインのキャラクターたちに負けず劣らず個性的なキャラクターたちの関係性や背景を想像するのも楽しい。芝居だけでなくセットや衣装もグレードアップ。より船内の様子がわかりやすくなるとともに、豪華客船の賑やかさが鮮明に見えてくる。
3度目の上演にあたって細部までブラッシュアップされ、熱さと深みを増した『SHOW BOY』。キャストはもちろん、クリエイター、スタッフ陣の情熱が感じられるこの作品、1度観たら再度乗船したくなること請け合いだ。
本作は7月1日(土)~21日(金)まで日比谷シアタークリエにて上演。7月28日(金)から30日(日)まで大阪・新歌舞伎座、8月12日(土)に愛知県芸術劇場 大ホールでも公演が行われる。
取材・文・撮影=吉田沙奈
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