MindaRyn
2020年に放送されたTVアニメ『神達に拾われた男』エンディングテーマ「BLUE ROSE knows」からデビューし、2023年は7月から放送されている特撮ドラマ『ウルトラマンブレーザー』の前期エンディングテーマ「BLACK STAR」と、たて続けに様々な作品の主題歌を担当するシンガーMindaRyn(マイダリン)。メガネがチャームポイントのタイ出身のアニソンアーティストだ。今回は僕たちが知りたい、みんなに伝えたいMindaRynの素顔に切り込んでみた。どんな想いで日本に来たのか、どんなことを考えていて、どんなことをしたいのかを訊いた。ぜひ最後まで読んで彼女の決意と、思いと、孤独と、彼女の求める「ハッピー」を知って欲しい。MindaRynの今を詰め込んだ一万字インタビューをお届けする。
■デビューの時、YouTubeの仲間は
「大丈夫だから行け!」って送り出してくれた
――今回のインタビューはベースとしては『ウルトラマンブレーザー』の前期エンディングテーマ「BLACK STAR」のリリースに合わせたインタビューなのですが…まだMindaRynというアーティストのパーソナルな部分が日本のみなさんに全部伝わってない気が僕たちはしていて「MindaRynってどういう人なの?」っていうのを、もっと伝えたほうがいいんじゃないかと思ったんです。
確かにあまりパーソナルなことは話せていないかもしれないですね。私のことは「マイちゃん」と呼んでください! そのほうが気さくに話せるかも(笑)。
――わかりました、ではマイちゃん、今回は思っている事とか考えている事を聞ければと思っています。まず歌いたいと思った理由を聞かせてもらえたら。
一番はアニメが好きだからです。アニメを観る時ってオープニング曲が流れるじゃないですか。それを覚えてお兄ちゃんと歌った、ってたのが最初ですね。アニソンって他の楽曲と比べたら、凄く細かく作ってるなと感じて、そこからアニソンがどんどん好きになった感じですね。
――歌手になる理由って色々なスタートがあると思うんですが、歌を歌いたくてアニメに出会ったというよりは、まずアニメがあって、そこから歌いたいって気持ちになったんですね。
歌いたいと思ったのは後からですね。最初はアニメから。でも中学生くらいの時、シンガーソングライターのYUIさんを知って、好きになって、ギターとか始めて。その時、初めて自分が好きになった曲をみんなに聞かせたいな! と思うようになりました。でも日本の音楽はアニメの曲がきっかけで知ったので、やっぱりアニメが最初ですね(笑)。
――僕は正直タイのポップシンガーそんなに詳しくないのですが、タイの曲を歌いたいっていうよりは、アニソンとか日本語のが好きだったんですか?
そうですね。タイの曲はラブソングが多いんです。当時私は子供だったし、愛とか恋とか全然興味がなくて。だからラブソングもあんまり聴かなかったし。でもアニソンはアニメが好きだったし、曲も作品の事を歌ってるから、色々と物語やキャラクターを思い出せるじゃないですか。私はアニソンはそういう曲なんだなって思って興味が湧いて。
1st Single 「BLUE ROSE knows」
――アニソン、日本のアニメの曲はマイちゃんにとって外国語じゃないですか。でも日本の曲がいいっていうのは、やっぱりアニメの力なんですね。
当時は日本語が下手だったんですけど、ネットで翻訳してくれるサイトとかあって、それを読んで内容を理解して。アニソンの歌詞って凄くそのアニメの内容とリンクしてるから、それで理解できるようになりましたね。
――覚えている曲で「これは自分の中で凄い曲だ!」と思った曲とかありますか?
ほとんど全部のアニソンがそうですね(笑)。自分とリンクしていると思える曲はアニソンじゃないですけど、美波さんの「main actor」が結構自分とリンクしていると思いますね。
――元々タイでYouTuberとしてアニソンカバーしていて、そこから日本に来るようになったわけですが、アニソンシンガーとしてデビューするっていう話が来た時どう思いました?
その話の前に、まずはLantisの人と出会うエピソードがあるんです。私の事をネットで見つけてメールを送ってくれたんですけど、「Lantisの人間です」って書いてあって。私は昔からLantisの事を知ってたから、Lantisの名前を見ただけで凄いドキドキしちゃって(笑)。
――やっぱりチャンスと思いました?
いつかアニソンを歌いたいとずっと思ってたんだけど、アニソンシンガーになれるとは思ってなかったから。でもなんか、大きな夢をつかめるチャンスだとは感じました。
――そのチャンスのきっかけを掴んで、実際にデビューという話になりました。「やった!」って感じでした?
「やった!」ではないですね。「本当ですか?」っていう感じ(笑)。けっこう長い間信じられなかった。
――じゃあ「やった!」になった瞬間は?
デビュー発表の時です。歌もRECして、アニメのED映像とかも観て。でも「これ本当?」という気持ちがずっとあって。Lantisのサイトと自分のYouTubeで発表した時、みなさんからいっぱいお祝いの言葉をもらって……「あ、これ本当なんだ!」って手がめちゃくちゃ震えて、泣いちゃいました(笑)。
――タイの仲間というか、タイでYouTubeを一緒にやっていた人や、タイのコミュニティではデビューが決まった時って、どういうリアクションをくれたんですか。
「バイバイ!行けよ!」って感じ(笑)。
――そういう感じなんですね(笑)。
凄い仲のいい仲間なんです。これは私の夢ってことはみんなずっとわかってくれていたので、リアクションは「行け!」って感じだけど、心の中で私におめでとうを言ってくれているのは感じました。
――でも表向きは行っちゃえ行っちゃえ! みたいな。
理由として、友達であり、一緒に仕事をしている仲間でもあるから、私がいなくなることで、そういう部分(彼らの仕事環境)が変わっていくじゃないですか。
――それはそうですよね。
そのことを私が心配するだろうし、もしかしたら行きたくないと言い出すかもしれない、というのを気遣ってくれて。だから 「No worries!Just go!」みたいな感じで送り出してくれました。
――凄くかっこいいじゃないですか。
かっこいいんですよ。当時YouTubeを一緒にやってくれていた、ミュージックアレンジの人はインドネシア人なんですけど、最初はインドネシアに住んでいたんです。でも私と一緒にこのチャンネルを作るためにタイに移住してきて。他の音楽の仕事もやってるんですけど、半分は私のチャンネルの仕事だったんです。
――国をまたいで引っ越して来るのは凄いですね、マイちゃんに賭けていると言うか。
そういう風に色んな人とチャンネルを作っていたから、自分の都合で辞めたい時にすぐ辞めるというのは難しくて。私は色んな人のことを考えなきゃいけなかったし、その時はめちゃくちゃ心配してたんです。でも話したらみんなすぐわかってくれて、「大丈夫だから行け!」って。みんなめちゃくちゃかっこいいと今も思います。
2nd Single 「Like Flames」
■日本人はもうちょっと自分のハッピーを考えてもいいと思う
――YouTubeチャンネルには今現在110万人のフォロワーがいます。凄い数ですよね。
ありがとうございます。でも少し感じているのは、見た目の数は多いですけど、私のチャンネルをチェックしてくれている本当の数は、減っていると思っています。残ってる人も沢山いるけど、登録したままいなくなった人もいると思っていて。
――それは運営している体感として?
そう、110万人凄いね! って褒められる時に嬉しい気持ちも勿論あるけど、でもそんなことないなぁ…というのもずっと感じてます。登録数と視聴数を比べたらそんなに並行ではないから。
――フォローはしてるけど、今は熱心にマイちゃんを追ってない人もいるという感じ。
そうですね。
――タイで自分のチームでMaindaRynというアーティストを作ってきて、それで生まれた110万人という数字が実際あって、それをある意味捨ててまで日本に来るって凄い勇気だと思うんです。それを選ぶに至る悩みはあったんですか。
凄くありました。フォロワーさんは私が人気のあるアニソンをカバーしてるからフォローしてくれてるんですよ。でもこれからはもうカバーがメインじゃないわけで。
――オリジナルソングを歌っていくことになる。
そうそう、みんなが私のカバー曲は好きだけど、オリジナルは好きかな…とか。私のパーソナリティーをみんなが喜んでくれるかなぁとかは結構悩みました。
――それはそうですよね。
でもその時考えたのは、今の状況がずっと続いてもいいんだけど、それじゃあステップアップすることができないじゃないですか。同じことをずっとやるのは上がらずに落ちていくしかないと思うから。自分の夢にもチャレンジしたいし、次のステップにも行きたい。また私のことを好きで、応援したいと思ってくれている人も絶対いると思ったから、一回リスキーな挑戦はしたいなって思ったんです。
――日本に来て、タイとのギャップを感じた部分とかもあるんでしょうか。
日本は厳しい国だと感じてます。厳しいというか真面目? 仕事だけじゃなくて、日本人の友達もできたんですけど、、、みんな寝る時間が短いなと思いますね。
――そうですか?
例えば私は、絶対毎日8時間は寝たいんです。でも日本の友達と話すと、8時間は長くない? って言われる。私にとっては8時間が基本だよって思ってるけど、みんな5時間寝れば十分。電車でも寝れるしって言われました(笑)。
3rd Single 「Shine」
――電車で寝れる、はたしかに言ってしまう時ありますね(笑)。
でも電車で寝るのは質の良い“寝る”じゃないんですよ。多くの日本人には結構普通のことかもしれないけど、私にはそれは普通じゃない。
――もっとタイの方がフランクというか、睡眠を大事にしている。
真面目じゃないわけじゃないけど、タイ人は自分のハピネスとライフバランスが一番大事なんです。それはいいことも悪いこともあるし、タイ人みんながそうではないと思うけど(笑)。
――ハピネスとライフバランス。
例えば会社で働いている理由は、この会社をトップにするためなんだ! という感じではなく、自分と家族がハッピーになるために働いてるとみんな思ってる。日本のみんなは会社のために働いているように見えますね。
――そういう人もいっぱいいますね。
そこの考え方はちょっと自分の国と違うなって。
――という事は今歌うことが仕事になってるマイちゃんも、やっぱりベースになってるのはハピネスのために歌う、という感じなんですか。
そうですね。私ももちろん他の人をハッピーにさせたい気持ちもあるんですけど、自分がまずはハッピーになりたいと思います。
――順番としてはマイちゃんのハッピーがあって、マイちゃんがハッピーだからみんなもハッピーになるっていう感じ?
そうですね。
――日本人だと、まず会社のために身を削ってっていう人はいますね。
それは感じてます。
――それはマイちゃんからしたら変だなぁと思う?
変では無いですけど、凄いなぁって。でももうちょっと余裕を持って、ハッピーになってもいいよと思ったりもしますね。
――もうちょっと自分のハッピーを考えてもいい。
そう!Everyone Stop!って感じ。5時間睡眠はヤバイよって思う(笑)。
――そういう文化的な違いって、辛かったりしんどいなって思うことはないですか?
しんどいまではないですけど、やっぱりわからないなという事はあります。それは日本にもっと長い期間住めばわかるようになるかもしれない。
4th Single 「Daylight」
■「みんなもっと幸せになって!」っていうメッセージを伝えたい
――僕は日本人なので、日本語でものを考えるし、日本語で喋ります。マイちゃんは基本的にものを考える時ってタイ語で考えるんですか?
日本語を喋る時には、日本語で考えてますね。
――そこでミスディレクションが起こる事って多いんですか?「そういうつもりじゃないのに!」みたいな事って多いのかなと。
うーん、多いですね。
――変な話イライラしたりしません?「なんで伝わらないんだよ!」みたいな。
いっぱいあります! リアルタイムではなくて後で理解することもあるし。言いたいことを100%を伝えたいんですけど、私の日本語のレベルだと50%だけ伝えられたかなって感じ。日本語は喋れるようになってきたけど、思いを伝えたいと思うとうまく行かないことも多いです。自分にイライラしちゃう瞬間はいっぱいありますね。
――YouTubeライブとかインスタライブとかを見させてもらって、もっと伝えたい事があるんじゃないかなって思ったんです。だから今回のインタビューを組んだんですけど(笑)。
そういう事はいっぱいあります。でもタイ語でも、自分の思っていることを伝えるのは得意じゃないタイプなんですよ。だから思いを伝えるというのは一番難しいですね。
――タイの友達とかにもあまり思ってること言えない。
言う時もあるけど、ストレート過ぎて怒られる(笑)。
――怒られるんですか(笑)。
例えば、友達が他の人の事を私に言うんです「私、あの子嫌いなんだよね」って。それに対して私は「大変だね、でも嫌いってその人に言った?なぜ私に言うの?」って返事しちゃう。
――直接嫌いって言えばいいじゃんって。
そうそう、私の思いとしては、その話聞きたくない訳じゃないけど、それを相手に言ったら「ああ、自分のここが悪いんだ!」って直せるんだよ。でも私に言ったらその子の悪いところは直せないよ? ってことなんです。だけど「あんたこの話聞きたくなかったんだね!」って友達に怒られちゃった(笑)。
――なんか凄い男性っぽい考え方な気がします。
そうですね、よく言われます。ストレートに物事言ってよっていうタイプかも。
――そういう部分って日本のファンには伝わってないかもしれないし、凄く話を聞いてて興味深いですね。
こういうことって伝えたほうがいいんですかね? あんまり可愛くない面じゃないですか?(笑)。
――今みたいに、こういう風に言わないほうがいいんじゃないかとか、日本のファンに対して、自分をどう見せればいいか迷ってる、みたいな部分はあるんですか?
うーん、ファンのみなさんにも私という人間を全部知られたら、嫌われるかもしれないっていう不安があるって感じですかね。
1st Album『My Journey』
――でも、マイちゃんが好きなファンって実際に沢山いて、その先にいるこれから好きになってくれる人たちって、たぶんどういう人か知りたいと思うんですよ。何かファンとかに対して伝えたい事ってあります?
伝えたい事はさっきの話です。「みんなもっと幸せになって!」っていうメッセージを伝えたい。みんな真面目さをちょっと下げて、もっとハッピーになろう!ってメッセージを伝えたい。
――歌ってる時はハッピー?
めちゃくちゃハッピー! もちろん悲しい曲を歌う時とかは、曲のメッセージを大事にして歌ってますけど。なんか私自身のパーソナリティーで皆さんをどう変えたいとかじゃないんです。私はタイ人だから100%日本人にはなれないし、理解できない部分もあると思う。でも日本のファンのみなさんに、タイっぽい考え方をちょっとだけ見せて、こういうのもありじゃない? と伝えたいんです。
――じゃあ、自分自身は今ハッピー?
はい、でもハッピーじゃない時もあります。
――例えば?
自分はまだ足りないなと思っていて、その部分はハッピーじゃないです。もっと頑張らなきゃいけない。それは私が日本に適応する事でもあると思うんです。日本はアーティストに求められるスタンダードがめちゃくちゃ高いと感じるから。
――タイと比べて?
みんな真面目だからスタンダードが高いんだと思います。だから日本で働きたいなら自分ももっと頑張らなきゃいけない。自分の持っているタイ人的なマインド100%のままだったら絶対足りないと思いますね。
5th Single 「Way to go」
■悔しかった二つのこと
――マイちゃんから見てこの人凄いっていう人いる?
リサさん! アニソンのLiSAも、K-POPのBLACKPINKのリサ(タイ出身)も、どちらのリサさんも凄く憧れています。
――アニソンのLiSAに関してはどんな部分が好きなんですか?
考え方ですね。やっていることはみんなのため。自分は最後って感じがするんです。先にファンやスタッフの事を考えている。そこが凄いなと思います。でも私はLiSAさんのファンだから、もっとLiSAさんを幸せにしたいという気持ちもあって。
――幸せになってほしいですか。
LiSAさんのドキュメンタリーを観た時、失敗して泣いてる時があって。それを見て「全然大丈夫! LiSAさんが幸せならいいんだよ!」って私は思っちゃった。やっぱりマインドがタイ人なんだなって(笑)。
――たしかにそうかも知れないですね。日本人は頑張れ! っていう気持ちになるけど、いいからハッピーになってよ! って思うのは感覚が違うかもしれません。でもその感覚でアニソンアーティストやってる人ってたぶんいないと思うんですよね。
そうですかね?
――仕事がら、色々な人とお話して、色々な人のライブ観ていますけど「ハッピーになろうよ!」っていうメッセージを持ってる人いっぱいいるけど「ずっとハッピーじゃなきゃ!」ってマインドを持ってる人ってそんなにいないと思うんです。日本のファンの人ってやっぱりどこかで「大変だけど頑張らなきゃ」っていうのがあるから。
あー、そうかもしれないですね。
――そういうマインドを持ちつつも、今は頑張らなきゃっていう気持ちは強い?
めちゃくちゃあります。もっと頑張ろうっていうより、足りない。
――何が足りない?
私の全部。私が上手にできれば全てをハッピーに出来るかもしれないけど、でも今はそのレベルまで行けてないから。そのレベルに達するにはもっと頑張らなくちゃいけない。だから今は努力するパートで、楽しいことではあるけど、大変でもあります。
――今そのハードなタイミングだとして、何をすべきだと自分で思われてますか? 例えば歌が上手くなるのか、日本語が上手くなるのかとか。
日本語のレベルは大事な事だと思ってます。自分にとって、思う事をちゃんと目の前の人に伝える力がまだ足りない。それと今ギターとかパフォーマンスとか経験が足りてないですね。私は正直、すごく恵まれていると思っているんです。YouTubeから始まって、声をかけてもらって日本でデビューさせてもらったけど、挫折? の経験がないと思っていて。
――挫折ですか。
例えばオーディションに落ちて悔しい、というのも今までないんです。逆に言えば今後オーディションに参加する時に、フラットな参加者の中で合格を勝ち取れるのかどうかが不安だし、怖いです。だからアーティストにとってのスキルを上げないといけない。
6th Single 「SURVIVE」
――凄く変な話、今回の「BLACK STAR」もその前も、タイアップが4本続いています。チャンスを貰っていると思いますが、その挫折の話も踏まえて、その意識はあるということですね。
もちろん! だから自分が足りないなと感じていて……。私よりも凄い人ががいっぱいいるのに、私はチャンスをもらってる。チャンスをもらう価値がある人だと思ってもらいたい。
――チャンスをもらう価値のある人間、ですか。
私は自分の中で反省しているエピソードが2つあるんです。1つはデビューする前にAFA(編集部注「アニメフェスティバルアジア」シンガポール等で展開される東南アジア最大級の日本ポップカルチャーイベント)があって、オープニングで出演することになったんです。その時はまだYouTuberだったんですけど、フォロワーも結構いたので、チャンスをもらえたって素直に思えたんです。でもステージに立ったら、上手くパフォーマンスすることができなくて。私はそれまでカメラの前だけで歌ってたんだなって。
――人前で歌った経験が少なかった。
そう。その時のAFAは本当に自分の中で失敗でした。タイ人からも凄い悪いコメントをもらっちゃって…タイ人のファンはみんなお金を払ってコンサートを観に来てるから。それが初めて自分が足りないと気づいたエピソードなんです。
――2つとおっしゃいましたが、もう一つは?
今はデビューしてチャンスをもらって、いっぱいタイアップをもらって。私はコメントは結構ちゃんと見てるんです。もちろんおめでとう、マイちゃん凄いね! マイちゃんはタイのアニソンカバーで有名な人だから! って応援してくれるコメントもたくさんもらうんですけど「このチャンスはもっとやるべき人がいると思うんだけど、なんでMindaRynなの?」っていうコメントもある。
――悔しい?
はい、悔しかったです。足りてないからそう言われてしまった。それが反省の2つ目。だから今もらってるチャンスをちゃんと掴んで、認められるように、頑張りたいんです。
――さっき自分のことを知られたら嫌われるかもしれないと仰ってましたが、誤解を生むのが怖いというのもあるんでしょうね。
多分みんな私がどんな人ってあんまりわかってないと思うんです。だから日本語もうまくなって、もっとちゃんと考え方とかを伝えたいです。本当の自分じゃない部分を誤解されたまま好きになってもらうアーティストになりたくないんです。ちゃんと本当の自分自身を説明して、それを喜んでもらいたい。知られるのは不安もあるけど……。
■歌うことでみんなと友達になりたい
――常にアップデートしていかないと、未来がなくなっていく可能性もあるわけですもんね。
私がMindaRynチームの好きなところとして、私に全部正直に言ってくれるんです。良くなければ「今の状況はあまり良くないよ」ってはっきりストレートに言ってくれる。それは凄いありがたいですけど、言われて理解するからこそ頑張らなきゃいけない。
――焦りもプレッシャーもあるかもしれないけど、色々と活動していて、ファンに自身のマインドとか、言いたい事が伝わってる感じはあるんでしょうか?
少しずつですね。凄い結果が出てるわけではないですけど、ちょっとずつよく顔を見るファンが増えてきてる気がします。レスポンスはゼロではない。でもまだそんなに多くはないので、私はアーティストとしてこのスピードで間に合うかなという不安はありますね。
――今ここがマイちゃんのアーティストとしてのターニングポイントになる気が凄くしますね。心も体もハードでしょうけど、マイちゃんにはハッピーでいて欲しいなと思ってしまいました。
今は自分の幸せだけを考えられないのが本音ですね。みんなをハッピーにするアーティストになりたいですけど、今はそこまで大きな声で言える自分ではないから、チャンスに値する人になりたいという思いが強いですね。
――色々と伺ってきましたが、改めてマイちゃんにとってファンってどういう存在ですか。
今のファンとYouTuberの時のファンとはちょっと違うんじゃないかって感じてるんです。自分にとってファンは友達。私に憧れている人もいると思うんですけど、MindaRynを遠いイメージではなくて、もっと近い存在にしたいんです。
――YouTuberの時のファンと今のファンはちょっと違うんですか。
YouTuberの時のファンはずっと前からの友達や家族みたいな感じですね。私はYouTubeのおかげで自分の事をアップデートすることができたと思っていて。だからみんな(ファン)は友達、家族、先生。そういう私の大事な人っていう感じ。でも今のアーティストとして応援してくれているファンはそのイメージとちょっと違うって感じてます。それをもっと近い距離感にしていきたい。
――フラットでフレンドリーな存在になりたい。
はい。
秋葉原のゲーマーズで開催されたマンスリーミニライブの様子
――それってYouTubeだからなんでしょうね。普通のアーティストだとそのマインドにはいけないと思います。ハッピーになりたいし、今はハードだけど頑張りたいっていうのは伝えてほしいと思いました。秋葉原のゲーマーズで開催されたマンスリーミニライブも観させてもらいましたが、あの空間は凄いハッピーだったんですよ。お客さんが何百人もいるわけじゃないけど、マイちゃんの出すハッピーは伝わってた気がする。歌うのが楽しそうだったし。
本当ですか、嬉しい。凄い楽しかったです。ミニライブは私のために来てくれたファンばかりなので。とても安心というか。何をやっても盛り上がってくれるのは安心ですね(笑)。
――歌はYouTubeからスタートだと思うんですけど、YouTubeって基本的にカメラの前で歌う事が多いと思うんです。今は人前で歌う方が多いと思いますが、どっちが好きですか?
人前で歌うのは、みんなと会いたいからって感じですね。例えばミニライブにいらっしゃる方は私のことが好きだから来てくれて、そういうファンの人達は家族みたいなものだと思ってるんです。私はステージがすごく怖いタイプなんですけど、みんなと会うためにはステージに立たないといけないじゃないですか。
――そうですね。
だから不安を飛び越えて、みんなに会いたいから怖いけど立って歌うっていう感じですね。
秋葉原のゲーマーズで開催されたマンスリーミニライブの様子
■心の距離が離れるのは、寂しい
――今回の「BLACK STAR」は『ウルトラマンブレーザー』の前期エンディングテーマです。ウルトラマンって世界的にも人気あるし、子供も聴くと思うので。そういう意味でも新しい人にマイちゃんを聴いてもらういいチャンスですよね。
そう思います。沢山お話しちゃってすいません。
――いやいや、面白いなと思いながら話を聞いていました。ではそろそろ最後です。ファンに伝えたい事を思いっきり話してもらえたら。
ファンに言いたいことは「友達になろうよ!」ですね。さっきも言ったけど、友達でいたいんです。仕事とか学校で嫌なことがあっても、私のライブを観る時は友達と一緒に遊ぶ感じで来て欲しい。「嫌な事を忘れて先に楽しもう!」って感じ。私といる瞬間はそう思ってもらいたい。
――本当にファンに対してフラットなんですね。
そうですね。やっぱり私はYouTube出身だからなのかもしれません。それがいい事か悪い事かわからないですけど、アーティストはファンとの距離感も大事じゃないですか。
――確かにそれはありますね。
でも私にとって“アーティストの距離感”はちょっと寂しいんです。
――マイちゃんにとってはその距離感は遠い。
自分がファンだとしたら、応援してる人を遠く感じてしまったら、寂しいと思うんです。正直、YouTubeのファンとは今、距離が遠くなっているんじゃないかって感じていて。ゲームをやっている様子をライブ配信していた時、私はゲーム下手なんですけど、「簡単な事なのに何でできないの!」っていうコメントをもらったんですよ。でもそれは文句というより、お兄ちゃんから言われているような身近な感じなんです。
――やっぱり距離が近いんですね、YouTubeのファンは。
みんなが私の友達や家族みたいな感じ。日本に来た後はその人達と前のようなコミュニケーションが取れなくなってきている気がする。私は元々YouTubeを作る前は友達がいなかったけど、YouTubeを作ったことでいっぱい友達ができた。でもアーティストになった時に、その作った友達と、繋がっていた心がどんどん遠くなっている気がして……。
――はい。
それがめちゃくちゃ寂しかった。ライブ配信することも、カバーも前みたいに簡単にはできない。ゲームの配信とかもそんなにできないし……だから寂しいです。新しいファンとも出会っていきたい、でも古いファンともずっと友達でいたい……それを同時にする事が難しいっていう悩みはあります。新しいファンとも、昔からのファンと同じ関係性を作りたい。みんなと友だちになりたいんです。
――心の距離が離れるのは、寂しかった?
うん、寂しい……寂しかった。
――ホームシックとかもありますか?
あります。これから新しい友達関係を作りたいと思ってるんですけど、文化もタイと日本では違うから、作り方も変えなきゃいけないのかなって。今までと同じやり方ではできない。
――今話してて思ったことだけど、そのままのマイちゃんを観に行きたいなと思いました。友達になりたいよって言ってくれてる人のライブには行きたいと思うし。少なくともワンマンのライブに来てくれた人は友達ってことじゃないですか。
そうですね、そう思います。
――「友達になろう!」っていうマインドがベーシックにあるって日本だとあんまりいないと思うし、素敵だと思いました。
ありがとうございます、友だちになりたいっていうのを伝える方法ですよね。どういう方法で伝えたほうがいいのかな。みんなに聞きたい(笑)。私に会いに来て下さい、そしてどうしたら友達になれるか教えてください。友達になろう! そしてみんなでハッピーになろう! 心からそう思っています!
取材・文:加東岳史
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