大友克洋全集『AKIRA セル画展』
大友克洋全集『AKIRA セル画展』が、2023年8月10日(木)から8月31日(木)まで、東京・池袋のMixalive TOKYOにて開催されている。この記事では、会場の雰囲気や見どころの一部を紹介していこう。
※展示内容に触れているため、ネタバレを避けたい方はご注意ください。
会場エントランス
第1章 NEO TOKYO
展示風景
本展は1988年公開の劇場版アニメーション映画『AKIRA』の世界を、監督である大友氏私蔵のセル画、直筆レイアウトなどで体感するもの。迷路のような会場内は「NEO TOKYO」「NIGHT-MARE」「CATASTROPHE」そして「大友克洋全集」の4パートで構成され、展示するセル画の選定から会場内の配置に至るまで、大友自身がこだわりを持って手がけているという。BGMはもちろん『AKIRA』のサウンドトラック。ラッセーラー、ラッセーラー、が聞こえてくると否応無しにテンションが上がる!
世界観をぎゅっと凝縮したようなカラー原画
展示風景
物語の舞台となるネオ東京をイメージして、展示空間は鉄パイプで組み上げられている。未だかつて、これほど非常用消火器が展覧会とマッチしていたことがあるだろうか……。会場に一切の解説・キャプションは無く、びっしりとセル画が空間を埋め尽くすストイックな構成だ。
展示風景
セル画のほか、手描きのレイアウトも多数展示されている。『AKIRA』の代名詞とも言える有名なバイクのスライドブレーキシーンが見られるのでご注目を。
展示風景
第2章 NIGHT-MARE
展示風景
第2章は「NIGHT-MARE(悪夢)」と名付けられたゾーン。ちなみにこの、“ベッドで予言するキヨコ”はアクリルスタンドとしてグッズにもなっている。
明るくパキッとした赤がかっこいい金田
セル画実物を目の当たりにして最も衝撃的だったのは、“赤色”の凄まじさである。漠然と『AKIRA』といえば赤のイメージ、主人公が真っ赤な服で真っ赤なバイクに乗っている印象は強かったものの、赤ってこんなにあったっけ! と感動してしまった。目の眩むような鮮やかな色彩は、ぜひ会場で実感してみてほしいポイントだ。
一方の鉄雄
一方の鉄雄。本展キービジュアルにも採用されている、右上の腕を失った鉄雄が痛々しくもかっこいい。
他の何とも違う、血液の赤にハッとする。
展示風景
本展では、画面に映る部分だけを額縁に納めて見せるのではなく、元のサイズのままの背景・セル画を重ねて展示しているのもこだわりだという。枠外の背景画の勢いだったり、指示の書き込みだったり、クリエイターたちがデスクで見ていた状態をそのまま体感できて面白い。多くの手作業を経て、技術を文字通りに重ねてひとつのシーンが作られていくのだと思うと、改めて『AKIRA』の途方もなさがわかる気がする。
ナイトメアからのナイトベア
展示風景
NIGHT-MAREのゾーンの最後には、本展のために製作された体感型フォトスポットが。その名も「NIGHT-BEAR(ナイトベア)」である! ベッドに迫り来る巨大なクマ。作中で鉄雄を襲うアレである。
展示風景
これまで名前が無かったものの、フォトスポット用に再現するにあたって「ナイトベア」と正式に命名されたらしい。会場内は基本的に撮影はNGだが、ここはOK。ベッドに座って鉄雄気分で記念写真を収めるのもいいだろう。ぬいぐるみが寄せ集まったクマはただでさえ不気味なのに、大友自ら行ったという仕上げのペイントが気持ち悪くてたまらない。こう……内側から汁が滲み出ている感じが……。
ナイトベア
う……うわああああああああああ!
ナイトベア
第3章 CATASTROPHE
展示風景
第3章はCATASTROPHE(破滅、破局)。改めて、展示総数600点以上というこのボリュームをご覧あれ。全て味わいながら見てまわるなら、劇場版と同じくらいの時間が必要かもしれない。
展示風景
展示風景
物語もいよいよクライマックス。力を抑えきれず暴走する鉄雄のシーンは、グロさ満点なのに目を逸らせない。じっくり見れば見るほど、超常的なモノを描いているはずなのにリアルに感じてならないのだ。なお、トラウマシーンとして名高いカオリの場面のセル画もしっかり最後まで展示されていた。
展示風景
『AKIRA』に関する展示は、ラストシーンの弾むようにバイクを走らせる甲斐と、水没した東京の風景で締め括られる。大カタストロフィーを経てなお、前進し続ける生き物。そこに希望と業を感じずにはいられない。
「OTOMO THE COMPLETE WORKS」を手に
展示風景
最後には大友克洋全集『OTOMO THE COMPLETE WORKS』のコーナーがあり、現在刊行中の10冊を手にとって見ることができる。自身が企画・プロデュースしている全集だけあって、まず本としてのスタイリッシュさにびっくりした。パラパラとめくれば、時間を忘れて見入ってしまいそうだ。
大盛り上がりの予感!
オリジナルTシャツ(全6種)
展示エリアを抜けると、オリジナルTシャツの見本コーナーが。
魅力的ラインナップのグッズたち
会期中はMixaliveの1階ポップアップストアにてグッズ販売が行われるが、混乱を避けるため、入場時に配布されるオーダーシートに購入希望品を記入した上で持っていくスタイルがとられるという(詳細は公式サイトで確認を)。一部商品を除いてはネットで購入もできるらしい。公式サイトの「お客様よりいただきました当初の予想をはるかに超える数のメッセージを参考に、物販運営の流れを変更」した……という文言を見るにつけ、ファンの期待と熱量の高さを感じてならない。本展は展示空間だけでなく、ポップアップストアも通販サイトも、大いに盛り上がりそうだ。
大友克洋全集『AKIRA セル画展』は、2023年8月31日(木)まで、東京・池袋のMixalive TOKYOにて開催中。チケットは残りわずかとなっているため(8月10日時点)、お早めにお求めを!
文・写真=小杉 美香