音楽、サウナ、キャンプ、そして日本の伝統文化、花火を融合させた新スタイルの花火音楽祭『Capsule -Mt.Fuji山中湖花火音楽祭-』が9月23日(土)、24日(日)の2日間、山中湖交流プラザきららにて開催される。尺玉(10号玉)を含む約10,000発の大迫力の花火が、花火大会エリア、DJ音楽フェスエリア、サウナ&キャンプエリアの3つのエリアを染め上げる本イベントを手がける実行委員長の櫻井翔太氏と音楽フェスプロデューサーT.ISHIHARA氏に、初開催となる新スタイルの花火音楽祭の見どころを訊いた。
――新スタイルの花火大会はいくつかの組み合わせがありますが、そもそもDJ音楽フェスと花火大会を融合させようと考えたきっかけはあったのでしょうか。
櫻井:日本の伝統文化である花火をフックにクラブカルチャーなど様々なカルチャーを掛け合わせることにより、日本独自のフェス、お祭りができるのではないかと思ったんです。そしてそれを最終的に海外に持っていくことができたら、日本の素晴らしさを世界に発信していけるんじゃないかと、この企画を思いつきまして。日本のクラブカルチャーと言ったらISHIHARAさんの他にはいない、という想いでご相談というか…、あるパーティでお声がけさせていただきました。日本で様々なカルチャーを牽引してきた、粋な先輩たちと、新しいものを作りたいという想いもありました。
『Capsule -Mt.Fuji山中湖花火音楽祭-』(左)実行委員長・櫻井翔太氏(右)音楽フェスプロデューサーT.ISHIHARA氏
――そんな『Capsule -Mt.Fuji山中湖花火音楽祭-』は花火大会エリア、DJ音楽フェスエリア、サウナ・キャンプエリアと3つのエリアで花火が楽しめるイベントになっています。
櫻井:ゾーニングという考え方で、花火の楽しみ方って人によってそれぞれ違ってもいいのかなというのがあって。従来の花火大会は、打ち上がった花火を観賞することに特化していますが、それ以外にも若者、子供、お年寄りまで様々な楽しみ方ができるイベントになってもいいのではと思ったんです。それぞれが選んだシチュエーションで花火体験ができるイベントがやりたいと考えて、さらにサウナ・キャンプという要素も加えて、今回はこの3つのゾーニングで企画しました。これまでの花火大会は、自治体による運営で、町の協賛、地元の方々のボランティアをはじめとする協力を得て成り立っているところがほとんどでした。しかし、コロナ禍でストップしてしまった花火大会をもう一度復活させるにあたって、運営方法を見直す団体も出てきています。きちんとした興行として成り立たせるために、単独ではなく複数のイベントで花火大会を共有すること、有料観覧制にすることで、より安定感があり、満足度の高い形で花火を提供するのがよいのでは、と思った次第です。
――櫻井さんからお声がけ、相談を受けたISHIHARAさんは、どのようにイベントに関わられているのでしょうか?
ISHIHARA:もう30年以上音楽フェスやクラブカルチャーを仕事にしてきたので、新しいものを立ち上げるなら10年先ぐらいを目標にしてやれるものじゃないとやりたくない、という話は最初にしました。ある程度年間カレンダーも決まっている中で、新しいプロジェクトを手がけるなら、僕の目指すスタイルもしっかり保った形でという想いがありました。花火と音楽のハイブリッドバージョンはあってもいい、やる意味があるか?と思ったのが、今回一緒に組んでやってみようと思った経緯です。いろいろな縁が重なって、以前から興味のあった山中湖での開催というのも決め手になりました。
櫻井:日本のクラブカルチャーを作ったレジェンドであるISHIHARAさんは、新スタイルの花火大会を立ち上げるうえで欠かせない存在です。賛同していただいたことで、大きく前進したと感じました。日本のクラブカルチャーを次の世代にバトンタッチできるようなイベントになったらいいなと思っています。
ISHIHARA:次の世代が親と一緒にイベントに来る、みたいなことは自分が手がけているフェスでも見られる光景です。僕としては若い人も呼びたいし、40代、50代、60代にも興味を持って欲しい。オールドスクールの人たちが集まる安心感も提供したいと思っています。お酒も出るので、売り上げにもつながりますし(笑)。そういったところも踏まえて、今回はちょっと濃いラインナップになっています。
――確かに若い世代に日本のDJカルチャーを知ってもらうには素晴らしい布陣です。
ISHIHARA:フジロックにしても、ライジングサンにしても、長く続いている音楽フェスに高齢化問題はどうしても出てきているようです。スマホがない時代、FAXやメールで情報を入れていた時代から続いている音楽フェスが、ネット、SNSがある世の中で、どう残っていけるのか。コロナ禍ではパソコンで音楽を楽しむのが当たり前になっていたけれど、状況が変わってきた中で、現場で聴く音楽は本質的に違うということを知ってもらいたい。そういう想いからこのラインナップになりました。
『Capsule -Mt.Fuji山中湖花火音楽祭-』実行委員長・櫻井翔太氏
――花火大会との掛け合わせが注目ポイントのイベントです。「ここが違う!」という推しポイントを教えてください。
櫻井:気持ちばかりの花火ではなく、DJプレイ中に尺玉含む10,000発の花火を、たっぷり1時間、打ち上げ続けるのは今までにないポイントだと思っています。花火を見ながら踊る、そんな体験ができます。ご協力いただいているのは、日本を代表する煙火店、株式会社マルゴーさんと株式会社齊木煙火本店さんです。株式会社マルゴーさんは昨年の大曲の花火大会で内閣総理大臣賞を受賞したり、今年の隅田川のコンクールで優勝したりと、輝かしい実績のある花火師さんで、今、一番勢いがあると言っても過言ではありません。僕にとっては、本当に理想的、まさに目指していた座組みで開催に向けて走り出せたことを心から嬉しく思っています。日本でしっかりと確立して、海外に持っていくためにも真剣に取り組んでいきたいと思っています。
――花火の有料観覧席もありますよね?
櫻井:はい。こちらは子供からお年寄り、ファミリー層まで、誰もが楽しめる内容になっています。日本国内外で活躍するJ-POPアーティストの楽曲に合わせて、ミュージックスターマイン花火を打ち上げます。ミュージックスターマインは、音楽と花火の融合なのでぜひ堪能していただきたいです。グループ指定席という5人席のチケットがあるのですが、富士山をバックに花火を至近距離で、大迫力の花火が楽しめる特等席です。それと同じような2人用のペア席もあります。ミュージックスターマインは音楽に合わせて花火が打ち上がるのですが、都会では見る機会の少ない尺玉も打ちあがるところも、こだわりの一つです。
――いずれは世界に向けたイベントにというお話もありますが、世界に向けて日本のDJカルチャーとしての独自性というかポイントはどのようなものなのでしょうか?
ISHIHARA:ダンスミュージックのジャンルも細分化がすごく進んでいます。実は日本のDJたちは海外でツアーを行ったり、フェスに招かれているという実績は意外とたくさんあるんです。日本人はいろいろな意味で繊細で礼儀正しいから信用されます。もちろん、成功には海外のエージェンシーやプロモーターとの出会いが大切になってきますが、何より重要なのは楽曲が作れること。海外で評価されるためには誰かの楽曲をかけるだけではなく、自分の楽曲があることが大きなポイントになると思います。例えばDJ KRUSHは「和」を前面に打ち出した彼の世界観があり、石野卓球は海外のスタイルを、彼なりの解釈で新たに表現をする。自分の楽曲があることが重要で、そこが海外に行ける、行けないの違いになってくるのかなと感じます。
『Capsule -Mt.Fuji山中湖花火音楽祭-』音楽フェスプロデューサーT.ISHIHARA氏
――なるほど。ではもう一つのポイントであるキャンプ&サウナについてもお聞きしたいのですが。
櫻井:キャンプ&サウナは、文字通り、キャンプをしながらテントサウナに入りいわゆる“ととのい”ながら花火を見ようという企画です。僕自身サウナが好きなことも取り入れた理由の一つですが、花火はもともと「悪疫退散」「無病息災」「鎮魂」などの意図で江戸時代に始まった興行でもあるので、“心が整う、浄化する”という共通点があると思っていて。最近のサウナブームもあるので、喜ばれる組み合わせかなと思っていましたが、今、一番人気のチケットはこのエリアなので、是非体験してみて頂きたいです。
――開催場所の山中湖、富士山麓周辺はキャンプ地としても人気がありますよね。では最後に一言いただければと。
櫻井:開催場所である山中湖は、遠いと思われがちなのですが、実は新宿や横浜から車で90分くらいですし、甲府など関東近郊からも近いエリアです。アクセスも良いですし、日帰りで尺玉が上がるような花火大会ってなかなかないと思うんです。もちろん、今回は泊まれるエリアもありますので、お好みのスタイルで山中湖の大自然を感じながら、日本の祭『MATSURI』を楽しんで頂ければと思っています!
ISHIHARA:フェスは初回で伝説になるか、継続して伝説になるか、もしくはならないか。少なくとも伝説になれるよう、皆様とご一緒できるよう、頑張ります!!
取材・文=タナカシノブ