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マンドリン奏者・藤川亜依里インタビュー「楽器の魅力が伝わる公演に」 10月にピアノ・オーケストラとの公演開催

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藤川亜依里

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マンドリニスト、藤川亜依里。2018年、日本マンドリン独奏コンクールで第1位を受賞し、現在までマンドリン奏者として幅広い活躍を続けている。2023年10月13日・16日、神戸朝日ホール、東京・浜離宮朝日ホールにて『藤川亜依里 マンドリンの世界 ピアノ・オーケストラとともに』を開催する。今年発売されたデビューCD『Con amore』に収録された「ツィガーヌ」をはじめとして、作曲家・薮田翔一氏への委嘱新作となるマンドリン協奏曲など、ピアノ・オーケストラをバックに様々な楽曲を披露する。公演に先立ち、ソロ・マンドリニストとしての演奏への姿勢や、公演、演奏する楽曲に向けた思いをインタビューした。

――ソロのマンドリン奏者として活動される藤川さんですが、マンドリンを始めるきっかけは何でしたか?

マンドリンを始めるきっかけは、中学3年の時に部活に誘われたことでした。
マンドリン部に入っていた友達が部活やめる時の身代わりで連れて来られたんです(笑)。

――でもそこから部長も務めた位、中高生の時は部活として青春を謳歌しました。

高校生から先生に習い始めたんですが、大学に入った時、先生に勧められてマンドリンの独奏コンクールに出場しました。先生には「日本一をとりましょう」と言われた大会で、大学に入ってすぐの時期に遊ぶこともなく練習して出たんですが、関西地区で1位、全国大会で4位になりました。「絶対に次は1位を取る」と思って頑張って、その次の大会で全国1位を取ったんです。
その大会は同時に、1位を取れたらプロの道へ、取れなかったらプロにはならず普通に就職をしよう、と思っていたコンクールでした。ここで1位をとったことで、プロになることを決心しました。

藤川亜依里

藤川亜依里

――マンドリンというと、マンドリン・オーケストラのような団体で演奏するイメージもありますが、藤川さんは独奏で、かつ様々な楽器の曲を演奏されますね。

私は、とにかく好きな曲をやっているんです。
ヴァイオリンを先に弾いていたこともあって、ヴァイオリンの作品には好きな曲が多いんですけど、それをマンドリン奏者だから弾けない、というのはイヤなんです。
「楽器は道具」みたいに、そういう名曲に触れるための媒介が、私はたまたまマンドリンだっただけで、元の曲がヴァイオリンでもピアノでも、弾きたいと思った曲は積極的に演奏しています。

――オリジナルでない楽器で楽曲に取り組むことの難しさや、良さはありますか?

マンドリンでカバーする時には、その曲の良さ、オリジナルの楽器の良さ、そして自分の楽器の良さを全て把握した上で、マンドリンで何ができるか、を常に考えてます。
ピアノの曲だったら、楽器としては、ピアノは3本の弦を弾いて押して、マンドリンは2本の弦を弾いて押して、と原理は一緒だと思うんです。その共通点を活かすこともあれば、マンドリンにしかできないトレモロ(音を伸ばすためにピックを上下に素早く動かす奏法)で、艶っぽい感じの部分も出したりとか、そうした使い分けが楽器奏者としての腕の見せどころだと感じています。

あとは、物理的に演奏できない所とかは、マンドリンで綺麗に鳴らせるような形に変えてます。原曲の音は出ないけど、マンドリンのこの音色なら出せるし、こっちの方が良いじゃん、というような場合もあったりして、楽器が違うからこそ出せる魅力もあると思います。

例えば、CD『Con amore』にも録音したチャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』だと、ヴァイオリンなら弓を使って簡単に弾けるところもマンドリンではそうはいかないから、弾く労力がとにかく半端なかったです。でも、その労力ゆえにヴァイオリンで演奏するよりも音のエネルギーが増えた気がします。簡単じゃないからこそ、演奏するのに使うエネルギーが音楽のエネルギーとなって乗っかったんだと思うんです。
こういった、マンドリンで演奏するからこそ出せる魅力は、他の楽器のための曲を演奏する楽しみだし、聴いていただく方にもきっと楽しいと思ってもらえる部分だと思っています。

再生(k) 0:00 / 0:15 サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン

――藤川さんが思う、マンドリンの魅力は何ですか?

「哀愁」ですかね。もちろんいっぱいあるんですけど、一番は哀愁だと思います。
聞いていて懐かしい気持ちになる雰囲気があって、侘び寂びを大事にする日本人の美意識にもすごい合うような気がします。エモい感じ。笑

マンドリンは同じ弦が2本ずつ付いていて、同時に弾くんですけど、普通に弾くと一瞬遅れて同じ音が聞こえる。そういう意味だと、音に自然にディレイ(反響・残響音のような音響効果)がかかるような感じがあるのも特徴的だと思います。
トレモロもかなり原始的な音の伸ばし方ですよね。ヴァイオリンが長い弓を使って、ピアノがペダルを踏んで音を伸ばすのに対して、マンドリンはずっと弦を弾くことで音を伸ばすんです。
こういうマンドリンの楽器としての特徴が、「哀愁」の魅力につながっているんだと思ってます。

――公演についてもお聞かせください。前半はピアノ伴奏の作品、後半は弦楽オーケストラをバックに演奏するプログラムとなりますね。

コンサートの曲目は、本当にやりたい曲、好きな曲を選びました。
「哀愁」がぴったりなチャイコフスキーの「メロディ」などもありますが、「ツィガーヌ」など、結構好きな、技巧系、弾きごたえのある曲も入れたプログラムです。

 ――今回の演奏会では、薮田翔一さんへのマンドリン協奏曲の委嘱新曲も演奏されますね。

新しいマンドリン協奏曲を書いていただく作曲家として、サクソフォーン奏者の松下洋さんに薮田さんをご紹介いただいて、今回作曲をお願いしました。薮田さんの作品には、調性感もしっかりありつつ、そこに行くか!というような意外性があったりして、魅力を感じています。

新曲は「とにかく難しくしてほしい!」とお願いしました。
ソリストとして活躍する人が少ないマンドリンですが、その発展のためにはソリストが増えてくれればと思っていて、今回のこの協奏曲が、ソリストを目指す人が弾いてくれる曲になると良いな、と思っています。

作品はまだ制作中ですが(インタビュー時点)、完成するのがすごく楽しみです。

――共演されるピアニスト・黒岩航紀さん、そしてタクティカートオーケストラはいかがですか?

黒岩さんと初めて共演したのは、1年前ごろ、ピアノの曲をカバーでやってみたい、と思って、リストの「ハンガリー狂詩曲第2番を一緒にやってくれませんか」とお声がけしました。

黒岩さんは言わずもがな凄い方なので、初合わせの時も緊張したんですけど、その時から今まで、同じ目線に立って合わせていただいてます。また、マンドリンとピアノのバランスとか、楽器の音響とか曲についても語り合ったりして、一緒に演奏するのがすごく楽しいんです。
黒岩さんとは、共有できる範囲が広いというか、感覚が伝わるんですよね、今の演奏は面白くなかったとか、今のは良かった、とか、そういうフィーリングが一致するし、どんな曲でも一発で何もかも合わせてくれるんです。
こんなにすごい人なのに、寄り添ってくれる。私のやりたいことに最高レベルで合わせてくれるのが本当に嬉しいです。

タクティカートオーケストラも、出演している公演を見に行ったことがありますが、めっちゃ上手いなぁという印象です。弦楽オーケストラとの共演も初めてなので、とても楽しみにしてます。

――最後に公演への意気込みをお聞かせください。

マンドリンの良さが伝わる公演になれば良いなと思います。
私も頑張りますのでぜひご来場ください。

藤川亜依里

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