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ホロライブの新プロジェクトBlue Journey、1stライブ「夜明けのうた」のオフィシャルレポート公開

アーティスト

©2016 COVER Corp.

今年4月、ホロライブの新たな音楽プロジェクトとして立ち上がった「Blue Journey」。キラキラしたサウンドアプローチと明るくポジティブなメッセージで聴き手を笑顔に導いてきたこれまでの「hololive IDOL PROJECT」とは異なり、Blue Journeyでは誰しもの心の中に存在する不安や葛藤、迷いといった不の感情を掬い取り、優しく寄り添いながら音楽を通して浄化していくことが1つの大きなテーマとなっている。ホロライブにとっても大きなトライとなるその方向性は、9月6日にリリースされた1stアルバム「夜明けのうた」で鮮烈に提示された。そして、そのアルバムを携えて開催されたのがBlue Journey 1st Live「夜明けのうた」だ。

9月13日。ホロライブの新たな表現の形を目撃しようと、ライブ会場となった東京ガーデンシアターには期待に胸を膨らませたファンたちが詰めかけた。客電が落ちるとステージ正面のスクリーンには無数の光の粒が渦巻き、溢れ出す。その中から現れたアキ・ローゼンタールが静かに語り始めた。
「僕らはどうして生きているのだろう。僕らはどうして笑っているのだろう。僕らはどうして怒っているのだろう。僕らは、どうして」
そこから大神ミオ、白銀ノエル、天音かなた、獅白ぼたん、博衣こよりが順番に言葉を繋ぐ。

「ごまかしたり、大人ぶったり、嘘をついたり、強がったり、素直になれなかったり、迷ったり」
「信じなかったり、矛盾したり、言えなかったり、傷つけあったり、失くしてしまったり、気づかないふりをしたり。どうしてそんなことをするんだろう」
「あの時、声を上げていれば。あの時、話し合っていれば。あの時、ちゃんと伝えていれば、何かが変わっただろうか。これはそんな僕の物語――」

この日のライブは朗読と歌を織り交ぜながら、1つの大きな物語を描いていくスタイルとなっていた。メンバーたちが感情を込めて刻んでいく言葉ひとつひとつが観る者の心を刺激していく。そこで語られるあらゆる感情が、自身の体験に重ね合わさっていく。だからこそ、そこにいたすべての人はこう思ったはずだ。「これから紡がれるのは“自分自身の物語”でもあるのだ」と。

痛いほどの共感を呼び起こし、ライブへの没入度を一気に高めた冒頭の朗読を経て、1曲目に披露されたのは湊あくあ、宝鐘マリン、角巻わためによる「僕は独りだ」。普段の活動とは違ったシリアスな表情を見せるパフォーマンスと、様々なものを失ってしまった後悔を嘆きつつ、“だから僕は独りだ”と切なくメッセージする歌声が強く光る。心の奥底に渦巻く感情を解き放つかのようなアッパーなサウンドが、主人公の救われない思いをさらに強く印象づけていたように思う。

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続く「君になりたかった」では、心の中に潜む劣等感と他者への羨望の狭間で揺れ動く感情をさくらみこ、宝鐘マリン、尾丸ポルカの3人が伝えていく。曲ごとに変化していくメンバー編成、その組み合わせによって各メンバーの新たなボーカリゼーションが引き出されているのがおもしろい。それぞれの相乗効果により、各自の持つ魅力が何倍にも膨れ上がっていく様に、客席からは大きなクラップが鳴り響いた。

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「Blue Journey 1st Live「夜明けのうた」へようこそ。今夜はみなさんとともに旅に出たいと思います」という不知火フレアによる短いMCを合図にスタートしたのは、不知火フレア、常闇トワ、尾丸ポルカによる「また傷に触れる」。主メロを歌うメンバーの後ろで、他の2人が違った歌詞とメロディを重ねていく多層的な構成を持つサビでは、主人公の心の中の思いまでもが鮮明に浮かび上がっていく。中盤の「♪ラララ」パートでは、「Blue Journey」のイメージカラーであるブルーやホワイトに灯されたペンライトが左右に大きく揺れる美しく感動的なシーンも生まれた。

2度目の朗読は癒月ちょこ、大空スバル、さくらみこ、角巻わため、常闇トワ、沙花叉クロヱが担当。

「こんなはずじゃなかった。言い聞かせるようにつぶやいた言葉が、やけに響いた気がした」
「適当に相づちを打って逃げてきた。なんとなく愛想笑いをして避けてきた。ごまかしてきた。見落としてきた。だから僕は独りだった」
「君みたいになりたくて、憧れて。でもなれなくて。嫌いになって」
「それが僕なんだっていうのはわかってる。それがお前なんだっていうのは、言われなくてもわかってる」
「必要かどうかは関係ない。大切かどうかなんてどうでもいい。他の人にとってはどうだかわからないけれど、少なくとも僕にとってはそうじゃない。僕が欲しいのは、そんな歌だ」

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角巻わための最後の言葉を受け継ぐように、「ラブソングはいらない」のイントロが流れ出す。青春時代の葛藤に苛まれながらも、その先の未来に思いを馳せる意志を白上フブキ、兎田ぺこら、雪花ラミィが放っていく。“メロディーすらない歌を6弦でかき鳴らせ”の歌詞に合わせて3人でエアギターをかき鳴らしてみたり、アウトロではコブシを突き上げて会場を煽ってみたりと、凛とした強さを感じさせるパフォーマンスが印象に残った。

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ステージ上方から蔦の絡まったブランコに乗った猫又おかゆ、白銀ノエル、天音かなたが登場し、披露されたのは「astro」。ふんわりとポップなサビを持つ楽曲が3人の声色にマッチ、別れの先にある希望の光を感じさせてくれる。中盤からはブランコを降り、星空をバックにしなやかな振りを交えながら歌唱するパフォーマンスも素晴らしかった。

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スリリングなピアノのイントロで会場を一瞬で掌握したのは戌神ころね、兎田ぺこら、姫森ルーナ、博衣こよりによる「不純矛盾」。今回のライブでは唯一の4人曲だけに、くるくると入れ替わる個性的なボーカルが楽曲をカラフルに彩り、ユニゾンのふくよかさにも特筆すべきものがあった。サビで見せる息の合ったダンスのキュートさによって、会場のテンションも大きく沸き上がっていった。

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白上フブキがコンテンポラリーダンスのような美しい動きをしながら、「遠ざかる景色の中、また夢を見ていた」という言葉を残した後、スクリーンには無数の泡が立ち上っていく水中の映像が映し出される。白上フブキ、アキ・ローゼンタール、鷹嶺ルイによる「泡沫」では、僕らの心の奥底へと、歌を通して深く、深く潜っていく。レーザーを用いた幻想的な演出や、水中を泳ぐようなメンバーたちのダンス、そして緩急をつけたエモーショナルなボーカリゼーションが圧倒的な世界を描き出した1曲となった。

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「夏を許せない」では大神ミオ、猫又おかゆ、鷹嶺ルイが大人になってしまうことへの戸惑いを、スタンドマイクを使ったパフォーマンスで届けてくれた。立ち位置がマイクの前に固定されているにもかかわらず、ハンドアクションを交えて届けられる歌声には揺れ動く感情がたっぷりと込められ、圧倒的な感動を生んでいた。曲中での大きなアクセントになっているセリフパートが、より生々しく、リアルに響いていたのはまさにライブならではだろう。

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「あの日、言えなかった僕らへ」という湊あくあによる短い言葉の後、パフォーマンスされたのは「あの日の僕らへ」。乱立するビル群や流れゆく川の映像を背負いながら、ステージの2階部分で湊あくあ、天音かなた、雪花ラミィが、後悔の滲む“あの日”を乗り越えながら“今日”に思いを馳せていく心の動きを丁寧に歌へと落とし込んでいく。間奏で姿を消した3人が、大サビで1人ずつ1階部分に現れ、1フレーズずつ歌っていくという演出も。広い会場を存分に活かした演出の数々が、オーディエンスの胸にたくさんのハイライトとして刻まれていく。

「真っ暗で怖くて仕方ないんだ。真っ赤に腫れて、痛くて仕方ないんだ。まったく同じにはもう戻れない。まっさらだった頃の僕は、もう帰ってこない。曲がってしまった、折れてしまった、歪んでしまった、傷ついてしまった」
「それでも僕は、僕でなければならない。もう何も見たくない、もう何も聞きたくない、もう何も言いたくない。それでも明日はやってくる」

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不知火フレア、宝鐘マリン、姫森ルーナ、尾丸ポルカ、鷹嶺ルイによる朗読パートを経て、ライブはクライマックスへと突入していく。アキ・ローゼンタール、大空スバル、大神ミオがシリアスな表情で「光の軌跡」を届ける。感情を押し殺すような平メロを経て、大空スバルの「私は諦めない」の力強い一言を合図に、サビで放出される光に満ちたボーカリゼーション。それはすべてのオーディエンスを鼓舞し、一歩を踏み出すための勇気を奮い立たせるパワーを持っていた。

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続く「ツキノナミダ」では、大きな満月がスクリーンに浮かぶ中、角巻わため、獅白ぼたん、沙花叉クロヱがアッパーなロックサウンドとともにエネルギーに満ちたボーカルを飛ばす。それに呼応するように大きなクラップが巻き起こり、夜明けへと誘うペンライトの光が輝きを増していく。

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そして、沙花叉クロヱの「私たちとみなさんの旅がこれからも続きますように」という言葉と、大空スバルの「この曲は声出してくよー!」の煽りとともに、本編ラストとなる「サザンクロス」へ。癒月ちょこ、大空スバル、さくらみこ、常闇トワ、沙花叉クロヱの5人が放つメッセージに対し、オーディエンスは万雷の「Hi!」コールで応えていく。そして、エンディングに向かい興奮が加速していく中、メンバーそれぞれがこの日、辿って来た物語に込めた思いを届けてくれた。

「生きてれば楽しいことばかりじゃないのは知っているから」(癒月ちょこ)
「誰にも話せない悩みにだって共感したいから」(沙花叉クロヱ)
「輝きだけじゃない、陰とともに歩んでいく」(大空スバル)
「Blue Journeyはこれからも旅を続けていきます」(常闇トワ)
「誰かの心に少しでも寄り添えるように」(さくらみこ)

美しい空が広がる映像とともに、希望の光を浴びながらキラキラと輝くメタルチップが会場を舞う。そして、すべての人の不の感情を引き受けながら、それを圧巻の歌声で浄化していったメンバーたち。Blue Journey 1st Live「夜明けのうた」は、そのライブタイトル通りの“夜明け”を迎える形で大団円を迎えた。

「口にしてしまえば存外、簡単なもので。行動に移せば案外あっけないもので。それでもこの時間も必要だったんだと今は思える。思い出だけはいつだって綺麗だ」
「特別とは程遠いのに、周りとは同じになれない。普通の人のはずなのに、普通のことができていない。憧れていた何かにはなれそうもない。そんな僕にいったいなんの価値があるのだろう」
「正解でいたかった。できるようになりたかった。言いたかった。素直になりたかった」
「また会いたかった。みんなといたかった。キラキラした世界に憧れていた。ずっと一緒にいたかった」
「強くなりたかった。優しいままでいたかった。同じ空を見上げていたかった。ずっとそうしていたかった。悔しくて悔しくてたまらなくて。声にならない叫びを上げる。このままは嫌だ。雨が降っている」

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白上フブキ、湊あくあ、猫又おかゆ、兎田ぺこら、雪花ラミィによる朗読で幕を開けたアンコールでは、「Blue Jouney」の次の旅への気持ちが込められた新曲「水たまり」を、総勢23名のメンバー全員で披露。曲のラストでは「ラララ」の大合唱でハッピーな光景を描き出し、来るべきネクストライブへ思いを繋いだ。客席に溢れていたたくさんの笑顔。それは、このプロジェクトの存在意義を真っ直ぐに証明していたように思う。すべての人にとっての希望になり得る「Blue Journey」の意義ある旅は、ホロライブメンバーたちの熱い思いを抱きながらこれからも続いていく。

取材・文/もりひでゆき
写真/Takashi Konuma

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