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DEZERT、「あなたたちにもDEZERTという物語の一部になっていただきたい」 メジャーデビューを発表した『SPECIAL LIVE 2023』オフィシャルレポート

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DEZERT 撮影=西槇太一

DEZERT 撮影=西槇太一

9月23日(日)にLINE CUBE SHIBUYAにてワンマンライブ『DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-』を開催し、2024年のメジャーデビューと日本武道館でのワンマンライブ開催を発表したDEZERT。そのオフィシャルレポートが到着した。


木は酸素を生みだし、伸ばした根で森の水源を守り、実をつけることもあれば、鳥たちの休み処や巣にもなるうえ、時には何かを記念する印として植えられたり、伸ばした枝葉の下には人々が集うこともある、どこか特別な植物だと言えよう。木は自らも年輪を重ねて生き続けながら、多くの生命を支える頼もしい存在でもあるわけだ。

このたび、9月23日にLINE CUBE SHIBUYAにて開催された『DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-』のアンコールにおいて、彼らが初披露した新曲には「The Heart Tree」というなんとも象徴的なタイトルが冠せられていた。

《本当はひとりじゃないんだって 信じたい そう信じたい ここはそんな心が埋まる場所〉〈この場所が あなたの居場所になりますように》

まだライブの場で1回聴いただけではあるものの、この「The Heart Tree」なる楽曲の中で歌われているのは、今現在のDEZERTが胸にしているのであろう真摯な願いと誓いの両方であるように思えてならなかった。というのも、この曲が奏でられる前にはフロントマンの千秋が近々のライブ情報などを報告したその流れで、かなり唐突かつサラリとではあったが以下の発表をしたからだ。

「来年、2024年の1月に日本クラウンからメジャーデビューします」(千秋)

あまりにしれっと、もとい自然な口調で告げられた重大発表であったため、オーディエンスの多くは当初やや当惑気味に「え? ん? えーっ?!」と、祝福モードというよりは驚きを含んだ雰囲気のリアクションをすることに(笑)。

「いや、別にしてもえぇやろ! なんや、あかんのけ。もう12年もやってねんぞ。それに、俺らどっちか言うたらメジャー寄りやろ? まぁ、別に曲調変えろとかは言われてないんで。もし、テレビに出たら「「殺意」」を歌うから(笑)」(千秋)

インディーズのフィールドで長く活動してきたとはいえ、今回のLINE CUBE SHIBUYA公演については見事に3階席も含めて全席ソールドアウトしており、ここまでには完成度の高い音源もコンスタントに生み出し続けていることなどをかんがみると、ともすればファンの方々の中には「今さらメジャーデビューの必要ってある?」的な疑問を感じる方がいるやもしれない。だが、そこについては千秋がこの場でこうはっきりと述べてくれたのだった。

「一緒に音楽を作りたい人と出会った、っていうことです。アルバムはもう録り終えてるので、乞うご期待」(千秋)

ちなみに、話は前後してしまうがこの夜のライブは「君の脊髄が踊る頃に」から始まった本編も聴きどころ・見どころ満載で、今年6月から始まり8月27日の大阪公演まで続いた『DEZERT LIVE TOUR 2023“きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”』を経てきた成果というものが、全編にわたり活かされていたと言っていい。

「大々的にはうたってないけども、俺たちはこの9月で結成12周年なんですよ。まぁ、わりと真面目な話をするとその中ではたくさん別れもあり、たくさん出会いもあり、でもそんなことはバンドを始めた時の俺はどうでもよくて。自分のことばっか、自分がどう幸せになるのかのために始めたバンドやねんけども、活動していくと否応なしに人が減って、人が増えてを繰り返していって、そのたびにキュッと心がしめつけられることもあるんですが、それでも俺を信じてくれる仲間がいるからね。今日はスペシャルって言っても俺らの全部を出し切るとかじゃなく、演出とかも含めた意味でのスペシャルなライブを楽しんでいってください」(千秋)

なお、このたびの『DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-』は3年前の2020年11月23日に開催された『DEZERT SPECIAL LIVE 2020 “The Today” 』とのつながりも持っていたという意味でもスペシャルなライブだったようで、千秋はこのような言葉もMCにて発していた。

「時が経つのは早いもので、2019年からの記憶をたどるともうあれが4年前なんですけどね。11月に『black hole』というアルバムを出して、2020年の3月からツアーが始まった頃に世界がちょっとああいう感じになって、ライブが出来なくなって、そこから初めてライブやった場所がここやってんな」(千秋)

コロナ禍にあっても無観客配信ライブの類いを敢えて一切やらず、ようやく9ヶ月ぶりのライブとして行った『DEZERT SPECIAL LIVE 2020 “The Today”』で彼らがみせた勇姿は、今思い出してもつい胸が熱くなる。50%キャパ制限を遵守し、公演中には換気時間を設け、来場者全員の検温を実施。もちろん、場内ではマスク必須で声出しも禁止で規制だらけ。それでも彼らの気迫を感じる熱演は、どこまでもリアルだった。

「あの時は、初めて「ミザリィレインボウ」を本編の最後でやったんですよ。そこから2021年もずっとやり続けて、個人的には俺の心が救われた曲になったんでね。今日もその曲で本編が終われたので、ちょっと感慨深かったです」(千秋)

Miyakoの弾く温かなギターの音が沁みるように響いた未音源化レア曲「ともだちの詩」、Sacchanのクセツヨで最高にクールなベースワークがはじけた「モンテーニュの黒い朝食」、千秋がDEZERT初期の頃を彷彿とさせるようなパフォーマンスで聴衆を煽り倒した「infection」、SORAが上半身裸になってソリッドな筋肉美とその鍛えられた身体を駆使してパワフルなプレイを展開した「Dark In Black Hole」。

そして、観衆によるシンガロングで場内がいっぱいに充たされた「「遺書。」」に、千秋がわざわざ「バンドが綺麗事を歌わねぇで誰が歌うんだよ!」と訴えてから演奏されることになった「僕等の夜について」。今宵「ミザリィレインボウ」までの間に演奏された曲たちも、どれもこれもわたしたちの心を揺さぶり、惹きつけるものばかり。

「俺たちDEZERTの物語は、12年前から始まりました。いろんなことがあったけど、コイツ(※Miyakoを指差す)が入ってくれたり、SORAくんが支えてくれたり、Sacchanはまぁいいか(笑)。1度きりの人生、もう鬱々しく生きるのは厭なんで。本音を言いますと、あなたたちにもDEZERTという物語の一部になっていただきたい。きっと多分、また俺はダメなことをすると思うんだよ。そんな俺を支えてとは言わないけど、一緒にこの時代に生まれて生きてるんだから。あんたらもDEZERTになってよ。俺たちはそういうバンドだよ」(千秋)

さて。再びここで話は前後するが、アンコールでメジャーデビュー発表をしたあとに「The Heart Tree」を提示し、ひとつの意思表明をした彼らが当夜その直後に「「殺意」」を選曲していたことも実は非常に重要なポイントであったと思われる。なにしろ、ここでは本来《量産型の音楽だけ金に変えて生きる君を…君を~》と歌われる曲後半部分が、意図して《量産型の音楽だけ金に変えて生きる僕を…僕を~》と歌い替えられていたのだ。一見この自虐的にも思えるくだりは、つまり“絶対にそうはなるものか”という千秋自身による戒めであったと同時に、もしDEZERTのメジャー進出に対してなにかしら非を唱える者たちがいるのだとしたら、それらに向けてのシニカルな投げ掛けでもあった…とみるのは少々穿った考えだろうか。

「2020年、あの時ここに置いてきた何かを今日は拾いに来たんだけど。それが何かはわかんねーからさ。とりあえず、この曲をぶっぱなして素敵な夜にしようぜ」(千秋)

なお、ここで聴けた「TODAY」というのが実に不思議な曲で、これはその時のバンドの状況や、ライブの雰囲気によって、さまざまに聴こえ方が変わる特徴を持つものとなる。過去にはヒリついた緊張感、そこはかとない悲壮感、はたまた優しい包容力をも醸し出してきた曲だが、この時の「TODAY」に漂っていたのは圧倒的な頼もしさ。

「最後にひとことだけ。俺たちDEZERTは必ず! 近い将来、日本武道館でワンマンライブをしようと思ってます。そこを新しい出発点にするために目指してるんです。だから着いてこいとかは言わないよ。もし、その時が来たら最後は絶対に次にやる曲で終わるからさ。今日はその前哨戦だ!」(千秋)

実際に、このライブが終了すると同時にLINE CUBE SHIBUYAの舞台上LEDには“2024年 日本武道館”の文字とバンドロゴが踊ったというのに。アンコールの最後で彼らが投下したのは、三つ子の魂を感じさせる鬱屈激烈チューン「「切断」」。 

要するに。DEZERTを木にたとえるなら、葉は食用、樹皮は薬用、秋には観覧植物としても黄葉を楽しめる一方、枝や芽には外敵から身を守る鋭い棘を装備した針桐あたりに近いのかもしれないが。自らも年輪を重ねながら、多くの人々の心を支え、その木の下には人が自然と集うかのような存在感を持つバンドとして、ここからのDEZERTはさらに飛躍するべく枝葉や幹をより強く逞しく育んでいくことになるはずだ。

 
文=杉江由紀 撮影=西槇太一

 

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