KREVA 撮影=西槇太一
KREVA CONCERT TOUR 2023『NO REASON』
2023.9.15 日本武道館
KREVAが有観客に加え、コロナ禍以降初となる有歓声を解禁し、自身の誕生日である6月18日に宮城・SENDAI GIGSを皮切りに大阪・Zepp Osaka Bayside、神奈川・ KT Zepp Yokohamaの3都市のライブハウスを巡り、各地でオーディエンスのコール&レスポンスやシンガロングが溢れかえる熱狂を巻き起こしたライブツアー『KREVA CONCERT TOUR 2023『NO REASON』』。その追加公演を9月15日、東京・日本武道館で行なった。本ツアーの締めくくりとなった最終公演の模様をレポートする。
これまでのライブハウスから会場の規模はいっきに拡大して、日本武道館での開催となった『KREVE CONCERT TOUR2023『NO REASON』』追加公演。有歓声になって以降、KREVA初の大バコワンマンということもあって、開演前から観客の期待感が膨らむ。
ライブの演奏をつとめるKREBandが煌びやかな音像で本ツアーのイントロを奏でると、オーディエンスの盛大なクラップに迎えられてKREVAが登場。ライブ終盤を最高に盛り上げていくおなじみの曲「Na Na Na~2019 Ver.~」でいきなり始まるという幕開けに、客席は大絶叫。客電がパッと全開になり、「Dr.K」とハンドサインを掲げながら声を響かせ、歌えなかった期間を取り戻すようにオーディエンス一丸となって“Na Na Na Na Na”を大合唱すると、大量のゴールドテープがキラキラ舞い降りる。「トランキライザー~2019 Ver.~」が始まると武道館は大揺れしながら、さらにボリュームを上げた盛大なコール&レスポンスが巻き起こり、ライブはど頭から早くもクライマックス並みの盛り上がりに包まれる。
「いきなり頂上見ました」。オーディエンスを誇らしげに絶賛した上で、KREVAは頂上はこの後、何度も訪れることを予告。だが、ずっと頂上だけのライブでは疲れてしまう。それをコントロールしていくのはMCの役目だと説明したあと「MCはダサいことはしない。常に最高を目指す。今ここにいる俺は昨日の俺よりもカッコいいはず」という発言がセリフのようにバシッときまった直後。OZROSAURUSへの客演で話題となった「Players’Player」のKREVAパートをいきなりブチかますというサプライズに、観客は驚愕!! そこから「基準~2019 Ver.~」のど迫力のラップで場内を沸かせ、さらにその熱をあげるようにロックな「Paradigm」を投下すると舞台上は戦場と化し、火柱が大迫力で上がり続ける。ここまで一気に畳み掛けたあとは、「Paradigm」でラップした“自分博”につなげて、オリコン1位を記録した2ndアルバム『愛・自分博』収録した「H.A.P.P.Y」のイントロを差し込み、「涙止まれよ feat.SONOMI」、「イッサイガッサイ~2019 Ver.~」とスマートにつないで、客席を楽しませていく。MCであるKREVAの粋な遊び心を感じさせる構成がなんともニクい。
ここまでシンガロングを続けていた観客たちを少し落ち着かせるように「ちょっと1回座って下さい」と着席を促すKREVA。こうしてライブハウスでは作れなかった光景を作り出したあと「アレ(コロナ禍のライブスタイル)を経て、見える世界があると思う」と提案。ライブが“新しいループ”に入ったことを告げるように「LOOP END/LOOP START」へと滑り込み、エレガントで上質なバンドサウンドに包まれながら「スタート~2019 Ver.~」、「かも~2019 Ver.~」、「変えられるのは未来だけ」など、ダウンテンポのメロディアスな楽曲を次々と歌唱。着席して聴く観客一人ひとりの胸に、じっくりとメッセージを届けていった。
「座ってから立つのって難しいんだよね。だから、思わず立ちたくなるような曲をやるから」と伝え「この曲、ライブでいつ歌ったのか記憶にないぐらい」といいながら、始まったのは「あかさたなはまやらわをん」のアクト。さっそく席を立ち上がった観客たちは、五十音を使った言葉遊びをコール&レスポンスで届ける。だが、こんなコミュニケーションもひとりではできない。次はコーラスのSONOMIのソウルフルな歌から始まる「ひとりじゃないのよfeat.SONOMI」へと展開。ここでは、SONOMIの合図でSONOMIパートをオーディエンスがシンガロング。KREVAとSONOMI、観客が歌唱力全開で美しいハーモニーを重ね、歌でコミュニケーションをとっていく。
「ここからは俺が俺たる理由。俺はゴリゴリのラップもする。ラッパーなんだけどGOOD MUSICも作れる。そして、みんなの力になれるような曲も作れて、ラブソングも歌う。全部あるからこそ俺なんだと思う。ここからは俺らしさ全開でいく」と宣言したKREVA。そうして《今日は俺が俺の味方》に誰もが励まされた「アグレッシ部~2019 Ver.~」、《守るだけじゃ増えない居場所》というフレーズとともに「お前の、アナタの、キミの、そう、ここが俺らの“居場所”」とKREVAが叫んだ「居場所~2019 Ver.~」、そのあとはメロウでセンチメンタル全開のバラードナンバー「瞬間speechless」にみんなで酔いしれ、さらにソロになって以降、KREVAのGOOD MUSICの原点としてどんなときも欠かさず歌ってきた「音色~2019 Ver.~」を連続でアクト。ラップだけではなく、あらゆる音色と歌声、メロディーとラップが全方向から繋がって、ふくよかなGOOOD MUSICを作り上げている。それを自らの音楽で証明していったあと、KREVAはその最新作にして決定版とでもいうように「クレバの日」にリリースした新曲「Expert」を高らかにパフォーマンス。すると、観客たちは新曲とは思えないリアクションでKREVAと声を重ね、大合唱してみせた。
「新しい歌とは思えないくらい聴いてくれてありがとうございます。今まで並んできた歌と同じように、これから歌い続けて愛される曲になることを願っています。」と感謝の気持ちを口にしたKREVAは、オープナーを飾った「Na Na Na」について、どんなフェスだろうがやれば盛り上がる絶対的王者のような曲だが、コロナ禍で歌えなかった。歌えるようになったら、その時最初は絶対にファンの前で歌うと決めて、今回のツアーまであえて封印をしてきたことを明かした。「俺の曲はみんなの歌声があって完成する。あれも、これもできなかった。でも、全部やってやる!」と会場を煽った。そのあと「ちょっと俺の思い出話、聞いてもらっていいですか?」と語りかけ「30年前に渋谷のCD屋でジャケ買いした日本の1枚のCDのなかに、シングル曲じゃないのに俺の心に響いて、ずっといまでも聴き続けてる曲があって。そのご本人に登場してもらいます。私が一番興奮しています」といった後、ゲストの国岡真由美が登壇。KREVAの心に響いたというICEの「Mellow Blue」を心地よいメロウな演奏に包まれながら、とろけるような歌声で披露していく。アウトロの部分ではKREVAがボコーダーで加わり共演した。そうして、本物の登場に続いて、次はもちろんこの曲をサンプリングして作った「Have a nice day!」へ。さらに「OH YEAH」とつなぐと、ステージと客席はコール&レスポンスが生み出す一体感が果てしなく膨れ上がり、熱狂のなかでライブは何度も頂点超えを記録。そうして、オーディエンスが最後のキメの「無ーい!」を場内一丸となって歌うと、KREVAが「そうだ!!」と叫ぶ。その表情には、笑顔が広がる。だが、頂点はまだまだ、もっといけると「パーティーはIZUKO?~2019 Ver.~」で追い討ちをかけていく。ファンキーでゴージャスなサウンドにのせて、ハンドサインも交え“ここだ!”とノリノリで歌っていた観客に、KREVAが「次はラップしてもらいます」とリクエスト。後半はKREVAとオーディエンスがパートチェンジをしてこの曲をアクト! 観客たちの素晴らしいラップに煽られたのか《「もしかして今日?」~》からのラストをエモーショナルに歌い上げたKREVAは、このままみんなでもっと上がるぞという意思を込め「C‘mon, Let’s go~2019 Ver.~」を投下。曲中、アカペラでラップを畳み掛けていき、《同じとこ目指す仲間だから》というリリックのあと、バンドメンバー、さらには「ラストのメンバーはYOU、YOU、アナタたち」とオーディエンスを一人ひとりを指差して、場内に最高の一体感を作り上げてみせた。こうして、頂点を何度も更新しながら登り続け、最後は「人生」を今回は手ではなく、それぞれの声で思う存分歌って、本編は大興奮に包まれたなか終了。
アンコールはバンドメンバーからの熱いリクエストを受け、青森のねぶた祭りを題材に制作した「ラッセーラ」を初めて、バンドバージョンで披露。さらに「ここに集まってくれてるこの場所をつくって守っていく、そしてみんなをめちゃくちゃ楽しませたい。だから俺が音楽のパワー、見せてやるよ! 俺はみんなを楽しませたいわけ、1番」といって、このあとKREVAがKing & Princeに提供し、紅白でも彼らが披露されたあの「ichiban」のセルフカヴァーをライブで初パフォーマンス!! とんでもなく嬉しいサプライズに、場内はざわめき、はちきれそうな勢いで大興奮。KREVAとともに誇らしげに人差し指をかざしながら「ichiban」の歌唱に熱狂。そうして、興奮の渦に包まれた観客たちを日常に戻すように「Under the Moon」を届けて、アンコールはフィニッシュ。
KREVAがKREVAたる理由。そのすべてを詰め込んだセットリストで、オーディエンスの盛大なコール&レスポンス、大合唱とともに何度も頂点を極め、最強のライブを見せつけた追加公演はこうして大団円のうちに幕を閉じたのだった。
取材・文=東條祥恵 撮影=西槇太一