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川井郁子、和楽器奏者を率いたニューヨーク公演の日本凱旋ツアーは「音楽と映像で別世界へお連れしたい」オフィシャルインタビュー到着

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川井郁子

川井郁子

バイオリニストの川井郁子が10月7日(土)の新歌舞伎座公演を皮切りに、ツアー『川井郁子×Orchestra響 ニューヨーク公演凱旋記念コンサート』を開催する。川井へのオフィシャルインタビューが到着したので紹介する。


昨年、CDデビュー20周年記念コンサートを機に、和楽器と洋楽器の混合編成による「オーケストラ響(ひびき)」を誕生させたヴァイオリニスト・川井郁子。今年9月には、その和楽器奏者を率いてニューヨーク公演を大盛況のうちに終えた。興奮も冷めやらぬ今秋、『川井郁子 × Orchestra響 ニューヨーク公演凱旋記念コンサート』ツアーが新歌舞伎座を皮切りにスタートする。和と洋という概念にとらわれず、すべての音が共鳴しあうオーケストラ響の結成やコンサートへの思いを聞いた。

川井郁子×Orchestra響

川井郁子×Orchestra響

――まず、ニューヨークのリンカーンセンターで行われたコンサートの反響を聞かせてください。

ヴァイオリンは西洋の楽器で、その伝統文化は脈々と受け継がれているのですが、和楽器と組み合わせることによって新しい化学反応が起こる。今回、北斎の名画やダンサー、役者、桜などをモチーフにしたホログラム、プロジェクションマッピングを使いながら演奏したことも、すごくインパクトがあったみたいです。私や響のメンバーも、ものすごい高揚感に包まれて。公演を実現させるまで色々と大変だったので報われた気持ちでした。現地の人からは音楽を目指す学生さんに真似されちゃうんじゃないの? 言われましたが(笑)、そうなってくれると逆にうれしいですね。

――響は、笛や尺八、筝、琵琶、鼓、和太鼓、笙などの若手の和楽器奏者が揃います。

1+1=2ではなく、壮大感が何乗にもなるような可能性がある組み合わせだと思います。すごくドラマティックで、舞台で演奏していると、どこまでも別世界に飛んでいけるような飛翔力がある。和楽器だけで聴いているよりも、洋楽器と混合することでその鮮烈な音色が引き立つんです。メンバーから、演奏してこんなにゾーンに入ったのは初めてだと言われましたし、私もそんな境地に入りましたね。

――ゾーンに入るとどんな感じなのでしょうか。

立体感がすごくて、普通のオーケストラでは味わえない、光と影のようなものを感じるんです。その中で弾く感覚ですね。ソロで弾く時は、どこかに絶えず自分の思考があり、自分を鼓舞する必要もあるんです。響ではその必要が全くなくて、幸せ感しかないですね。

川井郁子×Orchestra響

川井郁子×Orchestra響

――響のこれまでの活動を教えてください。

去年6月にプロジェクトを立ち上げ、コンサートをしましたが、あくまで今まで温めてきた私が出したかった音を奏でてみたという感じだったんです。そこですごく手ごたえがあったので、年末にアルバムを作りました。本格的に活動したのは昨年の暮れからですね。2度の国内演奏を経てその後がニューヨークだったんです。ニューヨーク公演のオーケストラは現地の方々でした。オーケストラは世界中どこにでもあるので、色んなところで結びついてコンサートができるなと自信になりました。和楽器奏者の皆さんとのチームワークも固まってきています。

――和楽器奏者のメンバーはどのように選ばれたのですか。

奏者の紹介で自然に集まった感じです。若手トップの実力派ばかりで恵まれていますね。ひと昔前の和楽器奏者は、西洋楽器と一緒にやるのはどんなに名手と言われる方でも、音程やリズムから楽譜まで全部違うので大変だったんです。今回のメンバーは小さい時から色んな音楽を聴いて育っている世代なので、垣根なく一緒にやれる。それが何より有り難いですね。

――今年3月にはファーストアルバム「響」を発売されました。和楽器、西洋楽器と区別しなくていいと思うほど一体感が素晴らしく、すべての楽器の一音、一音の余韻も聴いていたいと感じました。

ありがとうございます。私は20年前にデビューして、2作目から和楽器を使っているんです。当時、サビのメロディーを尺八でとりたいなという思いが沸き上がってきて。そこからヴァイオリンと対峙する主役の楽器は和楽器が多くなりました。和と洋のコラボでやろうということではなく、自然に求める音が和だったんです。

――本当に自然な音色です。

一番大事なのはその音楽にとって必然ということだと思うんです。無理に頭で考えて割り振りをするんではなく、和楽器であることが100%自分にとって必要ということが大事。和を要素とすることにとどまらず、和と洋を超えて一つの大きな音楽。表現するために両方が混在しているようなアルバムにしたいなと思いました。

川井郁子

川井郁子

――今回のコンサートでは、川井さんのオリジナル曲「赤い月」「夕顔」をはじめ、ニューヨーク公演で初披露のニューヨーク凱旋記念曲も演奏されます。

ニューヨーク公演では、ウクライナ合唱団がゲストで出演し、「9・11」の前でもあったので、祈りに通じる曲をと思って作りました。日本の花火には鎮魂や魂を天国に戻す、慰霊するなどの意味があると、花火の映像を見てもらいながら弾いた曲です。今回は合唱団がいないので一部は違いますが、基本的にニューヨーク公演のままのプログラムでいきたいと思っています。最新技術を使った映像もお見せします。

――曲に合わせて見せる北斎の絵や桜などの映像も美しいですね。

このメロディーにはこの絵を出してほしいと、全部自分で選んでお願いしています。今回、演奏する「展覧会の絵」の響バージョンができた時は、ふと北斎の絵が浮かんできたんですよね。昔からバッハの時はルネサンスなど絵を見ながらその世界観で弾くというのがすごく好きだったんです。小さいころ、練習が退屈な時はそうやって弾くとすぐに時間が経ちました。言葉のない抽象的なもの同士がつながるのが好きなんです。

――演奏予定の「展覧会の絵」「さくら」など響の独特のアレンジやテンポも聴きどころです。

私はざっくりとした設計図しか描かなくて、それを和楽器奏者の皆さんに伝えて、皆さんが「こういうのはどうですか?」と色々と自分の色を出してきてくれて、積みあがっていったんです。曲によっては、ほぼ出来上がったものを弾いていただくこともあるんですが、演奏では「もっとこうかな」と必ず皆さんの力で積みあがっていく。ドンドンとブラッシュアップされていきますね。

――音楽舞台で細川ガラシャを演じたり、響を結成したり、色んなことにチャレンジされていますが、その原動力は?

チャレンジすることが好きなんです。もともと自分にしかできないものをやりたいという気持ちが人一倍強くて、ピアソラのような革命児に一番憧れますね。これまでにないものを作っていることにやりがいを感じるし、ワクワクするんです。とはいえ、自分のインスピレーションに従っていいんだと思えるようになったのはつい最近なんです。20年を経てようやく自信がついてきました。革命児になりたいといいながらも、気の弱いところもあるので(笑)。やりたいと思っても、なかなか言い出せない時もあったんです。今回のニューヨーク公演はすごく自信になりましたね。

――観客にメッセージをお願いします。

娘がニューヨーク公演に一緒についてきたんですけど、公演後、「日本人で良かった」と。私も現地で拍手をもらってすごく誇らしい気持ちになりました。お客さんにもそんな風に感じていただきたいです。また、芸術やアートを志す人のヒントにもなればうれしいですね。音楽と映像で翼を広げて飛翔し、皆さんを別世界へお連れしたいと思います。

取材・文=米満ゆう子

川井郁子×Orchestra響

川井郁子×Orchestra響

イープラスでの新歌舞伎座公演のチケットは、9月29日(金)18:00まで発売中。

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