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3markets[ ]、過去イチいいライブだった! チケット完売続出のワンマンツアー『トビウオ祭 夏』追加公演を振り返る

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3markets[ ] ONEMAN TOUR 2023「トビウオ祭 夏」
2023.9.8(Fri) 渋谷Spotify O-WEST

3markets[ ] ワンマンツアー『トビウオ祭 夏』の追加公演である。ここのところファンから「チケットが取れない」という切実な声が上がっているせいか、ツアーファイナルの会場(新代田FEVER)よりも大きなところでの追加公演となったわけだが、案の定、本公演もすぐにソールドアウト。台風13号の客足への影響が危ぶまれていたものの、スタンディングエリアはぎゅうぎゅう詰めで、2階席から見渡した感じでは男女比は3:7ぐらい。若い女性が圧倒的に多い印象だ。TikTokで「社会のゴミカザマタカフミ」がバズった影響も大きいのかもしれない。

ステージの中央には黒い布が被せられた大きな箱のようなものが置いてあったのだが、ベースの田村亮が布をさっと取ると、なんと箱の中には無表情のカザマタカフミ(Vo/G)が! い、いつの間に……まさか開場時間からずっと入っていたのか……!? (※) 「きゃー!」という歓声よりは「ひゃー!」という悲鳴が大きかったような気がするが、江戸川乱歩の『人間椅子』を思わせる演出に、会場は冒頭から異様な盛り上がりを見せた。

オープニングナンバーはスリマの世界観を最も端的に表わしている曲「レモン×」。続いて「愛の返金」、そして「サイゼ」と、テンポが速くキャッチーな3曲が続いて場内は早くも興奮のるつぼ状態に。カザマは観客と「スリマのどこが好きか」などと気さくにやりとりしたり、自虐的なMCで笑いを誘ったりしつつも、「最愛(モアイ)」や「君が太るべきたった一つの理由」といった純愛ソングではとびきりエモーショナルな歌唱でしんみりさせたりもして、最近のステージ運びには余裕さえ感じられるようになった。

もちろんカザマだけではなくバンドの成長も著しい。「いらない」のジャジィなアンサンブルには豊かな音楽的知識に裏打ちされた大人っぽさが感じられたし、ブレイクが多くて緊張感がハンパない「OBEYA」も見事にピッタリ合わせてしまうし、「さよならスーサイド」の、お互い競うように疾走する演奏も最高だった。

毎回唸らされるのは、一人ひとりの技量の高さだ。特にギターの矢矧暁(やはぎあきら)が奏でるメロディアスなリフや、空を切り裂くようなアグレッシブなソロはライブの大きな見どころの一つでもある。また、曲の始まりはmasaton.のドラムが担うことが多いのだが、彼がパワフルかつクールに叩き出すビートは田村亮のうねるファットなベースと相まって、スリマのサウンドをガッチリ下支えしている。2022年5月に田村亮が正式加入してまだ1年ちょっとだが、バンドは今、間違いなく最良の状態にある。また、この日は2曲の新曲も披露したのだが、いずれもスリマらしさを保ちつつ、同時に彼らが新しい領域に入ったことを感じさせる力強い楽曲だった。

《言いたいほどの意見もないからわかるわかるって逃げている「レモン×」》《お前といるなら1人のほうがマシ「さよならスーサイド」》《そんなに仲良くないんだって 友達じゃないよ知り合いだって「拝啓、1メートル」》……カザマタカフミのことばは、私たちが円滑な日常生活を送るために封じ込めていた感情を呼び覚ます。無視し続けたネガティブな感情は“成仏”しないまま体内に垂れ込めて澱のように固まっているのだけれど、ライブでカザマのことばを浴びることで失った感情を思い出し、麻痺していた心には痛みが戻って、再び生きている実感が宿る。つまり、楽曲のネガティブなイメージとは正反対に、スリマのライブに行くことはとてつもなくポジティブな行為なのだと、いつも思う。

そんなことをしみじみ思いながら迎えた本編最後は、今やスリマの代表曲となった「社会のゴミカザマタカフミ」。複雑で性急なギターリフと自虐の極みのような歌詞が痛快なマリアージュ(?)を成すこの曲は、まさにライブの大団円にふさわしい。大喝采の中で終わったライブではあるが、当然興奮冷めやらないオーディエンスはすぐにアンコールを要求する。

1回目のアンコール「マイニッチ」が終わると、ステージ中央にスクリーンが下りてきて映像が流れた。そこには驚きの告知が二つ。一つは12月25日に六本木EXシアターで行なわれるイベント『ラブ・カザマタカフミ』。bokula.、なきごと、クジラ夜の街という交流のある3組が脇を固める自主イベントである。もう一つは2024年3月3日、Zepp Shinjuku (TOKYO)での単独ライブ。

それぞれ1700人、1500人規模の大会場で、スリマ史上これまでにないスケールのライブとなる。特にZepp Shinjuku (TOKYO)は単独公演なので、彼らにとってもファンにとってもエポックメイキングな公演となるだろう。ここがバンドとしての正念場だが、今の彼らならきっと、予想を遥かに上回る素晴らしいライブを見せてくれるに違いない。

この日の2回目のアンコールにしてラストナンバーは「裏セブンスター」。心にしっとりと染み入る歌。この余韻を胸に、家に帰る。今夜のライブは過去イチいいライブだった。そしてそれは今後ライブを重ねるごとにしっかり更新される予感もしている。

(※)あとで聞いたら実際、開場時間から小1時間ずっと箱の中でじっとしていたそうだ。カザマ曰く「最初にこの構想をメンバーに話したときにmasaton.が『イカレてるね』って言ったから、これはもうやるしかないと思って(笑)」。

取材・文=美馬亜貴子 撮影=ニイミココロ

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