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五条院凌が創りだす慈愛に満ちた空間「どれだけつらいことがあっても、わたくしの音楽は常に側にいることを忘れないでほしい。」

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五条院凌

五条院凌

『So Fabulous Autumn Concert 2023』2023.09.29(fri) 江東区江東公会堂(ティアラこうとう)

わたくしとみなさまとのこの空間は、世界一自由で、そして麗しい空間でございます。みなさま、どうぞお現実を忘れ、心ゆくまでわたくしの音遣いにお浸りくださいませ──。

気品ある立ち振る舞いや、すべてに敬意を払う独特な言葉遣い、そして何よりも、その圧倒的な演奏力で話題を集めているピアニスト・五条院凌。2023年は全国各地を精力的に廻っている彼女だが、春、夏に引き続き、9月からは『So Fabulous Autumn Concert 2023』と題したコンサートを開催。9月29日(金)には、江東区江東公会堂(ティアラこうとう)に降臨した。約5ヶ月振りとなる東京公演には、老若男女問わず、幅広い世代の観客達が会場に足を運んだ。

五条院凌

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鳥のさえずりが響く場内がゆっくり暗転すると、荘厳なストリングスの音色が流れ始めた。ステージ背面に大きな満月が映し出され、下手側にはグランドピアノ、上手側には赤色のキーボード、そして中央には大きなバラのモニュメントが置かれた舞台に、黒いドレス姿の五条院が姿を現す。客席から大きな拍手が上がる中、彼女はピアノの前に座り、柔らかな音色を奏で始めた。1曲目は「ARTEMIS〜美しきお月光に照らされ、君は何を想ふ〜」。コンサート当日は奇しくも、中秋の名月。なんともこの日にふさわしい選曲だった。流麗で幻想的でありながらも徐々に熱を帯びていく演奏で、早くも客席を陶酔させると、続く「TOCCATA」で、その空気を一変させる五条院。赤いスポットライトに照らされながら、身体を大きく後ろに反らせたり、鍵盤に顔を近づけて前屈みになったりと、情熱的かつ壮絶な勢いで指を走らせる。

五条院凌

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MCでは、ゆったりとした口調で観客とのコミュニケーションを楽しむ五条院。ワイングラスを手に取り、一口つけると「ところでみなさま、五条院のことを愛して、愛して、お愛しておりますか?」と話しかけると、ボカロ曲「愛して愛して愛して」をアレンジした「愛して愛してお愛して」を披露。可憐かつ優雅でありながらも、原曲が持つ悲哀や狂気のようなものも滲み出るアレンジがなんとも美しい。続けてAdoの「うっせぇわ」をアレンジした「おうっせぇわ」を、同じくAdoの「新時代」を交えたメドレー形式で披露。客席はもちろん、ピアノの左側に備え付けられていたカメラに目線を送りつつ、激情的に鍵盤を叩き上げているところから、一度ブライトな空気に変え、再びハードな形に戻すという緩急のつけた展開で駆け抜けた。続く久石譲の「人生のメリーゴーランド」でもドラマティックに音を届けると、客席からは鳴り止まんばかりの拍手が送られる。

五条院凌

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圧巻のカバー曲ブロックを経た後は、彼女の1stフルアルバム『Fabulous』の中から、お伽噺の世界をイメージして制作したという「Song of Fire〜炎の唄〜」「ILLUSION」「Rondo〜輪舞曲〜」を、3曲続けて披露。中世ヨーロッパをモチーフにした異世界を彷彿とさせる楽曲達は、赤、青、緑と各曲でそれぞれ象徴的なライティングが施されていただけでなく、ステージ背面には五条院が情熱的に鍵盤を奏でている影が大きく映し出されるようにもなっており、彼女が紡ぎあげていく幻想的な世界に深く引き摺り込まれた。そこから再び勢いを上げて、レディー・ガガの「Bad Romance」を勇壮に奏でると、Bring Me The Horizon ft.BABYMETALの「King Slayer」では、リズムトラックに合わせて勇ましく鍵盤を叩き上げるという、壮絶な演奏で第一幕は終了。音源や動画でも彼女の素晴らしい演奏は楽しめるが、大迫力で繰り広げられるパフォーマンスは、やはり生で堪能することで伝わるものがかなりある。

五条院凌

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その感覚は、続く第二幕でより強く、深いものになった。幕が上がり始めると同時に未発表オリジナル楽曲「Dance of the Knights〜騎士の踊り〜」がスタート。ジャケットスタイルに衣装チェンジした五条院は、序盤から力強いタッチで客席に音を運ぶと、ショパンの「Edtude Op.10,No.12「革命」」を、その卓越したスキルでもって、堂々と弾きあげた。客席から湧き上がる喝采と、激しい雷鳴が場内に轟く中、五条院はステージ上手側に置かれていたキーボードへ移動。EDMやトラップ系のビートを擁した「INFERNO GATE〜煉獄の門〜」をアグレッシブに奏であげると、「それではみなさま、楽しいお戯れの時間でございます」と五条院。手拍子を始めた客席を見渡しながら、観客に手を振った後、清涼感のある「ENDLESS SUMMER」を披露。ダンサブルなリズムトラックの上で躍動感たっぷりにピアノを奏でると、ステージと客席の距離がグっと近づき、場内に親密な空気が漂う。

再びグランドピアノの前に戻った五条院は、様々な土地で演奏してきたことを振り返りながら、東京という場所について「わたくしの新しい挑戦を見守ってくださるような、包み込む温かさを、痛いほどに感じております」と話す。そして、どれだけつらいことがあっても、自分の音楽は常に側にいることを忘れないでほしいと、「Lento e cantabile」「おLOVE」「echo」の3曲を続けて披露。自分が音楽に、ピアノに救われたように、自分も誰かにとっての光になりたい。そんな思いを込めて作られたという楽曲達を、慈愛に満ちた柔らかな音色で届けて、客席とより深く繋がり合っていた。

五条院凌

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ライブは一気にクライマックスになだれ込む。キーボードへ移動した五条院は、ボカロ曲の「フォニイ」を披露。客席から手拍子が起こる中、性急なビートに乗って音を走らせると、「みなさま、お魂をお解放なさってください。お立ちなさって」と客席の興奮を高めながら、「ウ”ィ”エ”」をアレンジした「OVIE」を畳み掛ける。アッパーでダンサブルなサウンドに合わせて、五条院のパフォーマンスもより激しさを増していく中、「わたくしの“おアゲおバイブス”についてこれるかしら?」と挑発し、「CASTLE〜迷宮の城〜」へ。凄まじい熱量で畳み掛けていき、優雅なポーズでフィニッシュ。客席から万雷の拍手が降り注いでいた。

五条院凌

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この日も客席を深く魅了し続けた五条院凌は、10月25日(水)に1stカバーアルバム『お愛集』をリリースする。本作は、愛をテーマした昭和歌謡の名曲達に、五条院がアレンジを施した全13曲を収録。この日のアンコールでは、収録曲の中から山口百恵の「秋桜」が初披露され、情感豊かな演奏で客席を魅了していた。また、本作の発売を記念し、10月20日(金)には『1st Cover Album「お愛集」先行お視聴会』と題した生配信ライブが開催されることになっている。「みなさまぜひ、おワインを片手に楽しんでいただけたらと思います」と、この日五条院が話していたが、そこでどんなパフォーマンスを繰り広げてくれるのか、楽しみにしていたい。

五条院凌

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さらに、春、夏、秋に引き続き、『So Fabulous Winter Concert 2023』と題したコンサートの開催も決定。11月3日(金/祝)に熊本、11月23日(木/祝)に兵庫、12月1日(金)には大阪に降臨し、クリスマスイブの12月24日(日)には、成田国際文化会館 大ホールにて『So Fabulous Concert 2023 〜O Merry O Christmas〜』を開催する。この日は「まだまだお知らせしたいことがたくさんある」と話していたこともあり、ここからも精力的に活動を続け、TVやWEBだけでなく、コンサート会場で我々の前に降臨してくれるであろう。それまでのしばしの別れとして、この日最後に彼女が客席に届けたのは、「Rose Waltz」。軽やかで、優雅で、気品に満ちた、それでいてなんとも情熱的な演奏だった。客席からの拍手を浴びながら、「お幸なお時間をメルシー御座いました。みなさま、また必ず元気にお会いいたしましょう。また会う日まで、おやすみなさいませ」と彼女らしい挨拶と、心地よい余韻を残し、この日の幕は降りたのだった。

取材・文=山口哲生 撮影=伊東祐太

五条院凌

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