福原みほが至福の歌と音楽で描き出した15年の軌跡　東京公演のオフィシャルレポート到着

『MIHO FUKUHARA 15th Anniversary LIVE』東京公演

※以下のテキストには演奏曲の記載があります。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

満員の恵比寿・The Garden Hallには、子ども連れのファミリーからご年配の方まで幅広い年代が集まっている。男女比もそんなに差がなさそうだ。MC中に個人名で呼ばれるくらいの常連と思しき人もいる一方で、「初めてきた人？」という質問にも結構な数の手が上がっていたから新規ファンも大勢来ていた。という観客の構成にもう、福原みほの歩んできた15年が凝縮されていたように思う。

『MIHO FUKUHARA 15th Anniversary LIVE』東京公演

セットリストにはメジャーデビュー以前の「恋はリズム -Believe My Way-」から最新曲「Mother」まで各年代の曲が並び、ソウルやR&Bを軸にしつつも曲によってファンクやジャズ、J-POP的なアプローチなど様々な要素を含むそれらを、オオニシユウスケ（Gt）、大神田智彦（Ba）、森俊之（Key）、沼沢尚（Dr）からなるバンド陣が鉄壁のアンサンブルで演奏。バックコーラスを務めるのはMARUと稲泉りん、さらに曲によってゲストとしてヴァイオリニストのNAOTOが加わったり、なんといっても同郷の大先輩である大黒摩季まで登場するのだから、なんとも豪華なライブである。

『MIHO FUKUHARA 15th Anniversary LIVE』東京公演

後のMCで、序盤は緊張のあまり動悸がすごいことになったと明かしていた福原だが、全くそんな様子は見せず、満面の笑みを浮かべながら、豊かで包容力のある中低音からファルセットの透明感、力を込めて張り上げる声のソウルフルな高揚と、どこを取っても流石の歌声を響かせていた。発声の変化も実にスムーズでさりげなく、聴く側としては心地よく全面的に身を委ねることができる。直前に着用を決めたというスパンコールをあしらったローブのような衣装もディーヴァ感があって良い感じ。1曲終わるごとに歓声を飛ばすフロアの熱量もとても高い。

『MIHO FUKUHARA 15th Anniversary LIVE』東京公演

チルでメロウな音像ながら、浮遊感よりも安らぎを感じさせるような地に足ついたグルーヴが印象的だった「絶え間なく」や、作った当時にかなり心血を注いだという紹介からアコースティック編成で歌った「優しい赤」、そしてデビュー曲にして大名曲「CHANGE」といったあたりの、デビュー前後の状況や心境と重なるであろう曲は、必ずしも今の彼女にピッタリはまるものではないかもしれない。にもかかわらず、どの曲もまったく色褪せる事はないばかりか、当時抱いていた未来への焦燥や不安、そして希望は、あれから15年分の人生を重ねてきた今の彼女が歌う事で、聴く者をエンパワーメントするような説得力や安心感へと変換されている。サウンド面に目を向けても、昨今のブラックミュージックを取り入れた音楽の隆盛ぶりと相性が良く、さらに要所に加えられたアレンジも秀逸だから、懐かしさはあるけれど「昔の曲を聴いている」という感覚にはならない。特に、平歌部分はよりタイトにファンキーになり、サビでは4つ打ちメインのダンサブルな推進力を獲得した「CHANGE」では、思わず身体を揺らさずにいられなかった。

『MIHO FUKUHARA 15th Anniversary LIVE』東京公演

大黒摩季が登場したブロックでは、わちゃわちゃとした絡みと和やかなトーク、そして大黒の30周年記念アルバムで共演した「I'm sorry, Cause I'm a woman」（ライブでは初披露！）での迫力あるパフォーマンスから、誰もが知ると言っても過言ではない「ら・ら・ら」へと繋いで会場中が大合唱で盛り上がり。一体感も祝祭感もMAXになったところで、NAOTOとともに届けたのは「Cry No More」だった。こういったじっくりと聴かせるバラードソングもまた素晴らしく、ドラマティックで王道感のある曲調と英詞がなんだか洋楽大物シンガーのコンサートみたいな雰囲気だ。バイオリンが入る事で低めの音域で奏でるギター、さらに下を支えるベースと、各楽器がバランスよく音を合わせ、その中央を抜けてくる福原の歌声が壮大なサウンドスケープを描いていく。

『MIHO FUKUHARA 15th Anniversary LIVE』東京公演

モダンでネオソウル調な音がかっこいい「Sun on my wings」やポップに弾むゴスペルナンバー「GRACE」あたりの、独立して以降にリリースされた近年のモードが色濃い曲に共通するのは、近年のトレンドとも呼応しながら、自身の原点・ルーツに向き合えている点。キャリアの積み重ねによる音楽的な理解度の深まりが、そこにさらなる奥行きを与えている。そして技術面もさることながら、さまざまな人生経験や見てきた景色も内包されたその歌声は、大地や風、陽の光といったイメージが自ずと浮かぶような生命力に満ちている。ライブ終盤、「歌、やっぱり好きだなとあらためて感じることができました」と彼女は言ったが、誰もが「こちらこそ」と返したくなったのではないだろうか。

『MIHO FUKUHARA 15th Anniversary LIVE』東京公演

アンコールも含めて全17曲。どこを切り取っても良い歌と良い演奏、良い曲ばかりの約2時間のライブを笑顔で歌いきった福原みほ。それを終始高い熱量で受け止め、歓声と拍手で返したオーディエンス。とてもピースフルで祝福に満ちた空間だった。16年目、さらには20周年、30周年へと彼女は音楽を通してもっとたくさんのものを得ながら輝き、ボーカリストとしての高みへ登っていくに違いない。直近の大阪公演は完売しているが、配信が決定。ビルボードライブ東京での追加公演もある。まずは15周年の今この瞬間の福原みほを目撃しておくべきだ。