Aile The Shota
日本最大級のデジタル・クリエイティブフェス『J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2023』(以下、イノフェス)を、2023年10月13日(金)、14日(土)、15日(日)の3日間、有観客とオンライン配信のハイブリッドで開催された。
今回で8回目を迎える『イノフェス』。初日13日は開業したばかりの虎ノ門ヒルズ ステーションタワー内「TOKYO NODE HALL」で実施。14日と15日は六本木ヒルズにて開催し、大型の錯視効果LEDやARを用いた演出で、テクノロジーとエンタテインメントを融合した最先端ライブを六本木ヒルズより届けた。
2日目14日(土)は、イノベーター・クリエイター陣によるトークセッションを届けたほか、MIKU BREAK、Aile The Shota、花譜 × 理芽、imaseがパフォーマンスを披露した。本記事では、2日目のライブパートのレポートをお届けする。
なお、現在本イベントのアーカイブ映像が配信されており、配信視聴チケットはイープラスにて販売中。
MIKU BREAK supported by 田中貴金属グループ
秋の心地よい風が流れる、夕方の六本木ヒルズアリーナ。14日(土)のライブパフォーマンスはMIKU BREAKの圧巻のライブアクトからスタートした。冒頭からARを駆使した「Overture」でキックオフした本ステージ。リアルとバーチャルの境界線をブレイクし、初音ミクと共にダンスやラップ、HIPHOPに昇華された彼らの音楽は唯一無二の存在感を放っている。「最後まで楽しんでいきましょう」とSHUNが口火を切ると幕を開けたスキルフルなダンスパフォーマンス、その中心にはしっかりと初音ミクの姿があり、観ていると「ここは2次元なのか3次元なのか」と不思議な感情へと誘われるのだ。冒頭から畳み掛けるようにパフォーマンスしていく彼ら。それに呼応するかのように手を高く上げ彼らを支えるオーディエンス。「Do It Like This Remix」ではToyotakaの洗練されたビートボックスが会場を湧かし、次曲の「ヒャクセツフトウ」では、初音ミクとのダンスと洗練されたラップに会場は更なる盛り上がりを見せる。「Shower Remix by RYO」ではMPCを純粋に楽しむRYOの姿とZiNEZの圧巻のフリースタイルバスケットボールが披露され、ボールを回すパフォーマンスでは会場から大きな歓声が。「YOU」をしっとりと歌い上げると、間髪を入れずラストの曲である「BREAK OUT」へ。力強くも波に乗るようなSHUNのフロウに合わせるように踊りまくるメンバーたち。「御手を拝借」とクラップをオーディエンスに求めると、会場はこの日いちばんのクラップで包まれた。イノフェス・スペシャルバージョンの特別なパフォーマンスは、スキルフルで唯一無二の存在感を放っていた。
■セットリスト
1. Overture
2. SPACE
3. Do It Like This Remix
4. ヒャクセツフトウ
5. Shower Remix by RYO
6. YOU
7. BREAK OUT
MIKU BREAK supported by 田中貴金属グループ
Aile The Shota × AR三兄弟
続いて登場したのは、いま飛ぶ鳥を落とす勢いであるBMSGレーベルのAile The Shota。本ステージは、AR三兄弟とのコラボステージということもあり、ここでしか観ることができない特別なものとなった。落ち着いた様子で静かにステージへと登場すると「調子はどうですか?」とオーディエンスに声をかけ、ライブは「No Frontier」からスタートした。冒頭から透き通ったハイトーンボイスを披露すると、会場は自然と歓声と拍手が湧き上がる。洗練されたビートに彼の求心力のある歌声、そしてAR三兄弟が手掛けるテクノロジーを駆使した映像。ステージを思いのままに動きながら歌唱するAile The Shotaはどこか飄々としていて、非常にクールだ。「去年に引き続き、テクノロジーと僕の音楽を融合させて、パフォーマンスしようと思います」と宣言すると、1曲目とは異なるビートが会場に鳴り響く。「IMA」をスキルフルに歌い上げると、オーディエンスは彼の歌声に呼応するかのように手を高く上げ、さらに歓声を上げる。Aile The Shotaは、自ら生み出す空気と世界観で場の空気を掌握する。「一緒に歌える人は歌いましょう」と誘いながら「AURORA TOKIO」が始まる。オレンジの光に包まれながら優しく歌い上げオーディエンスの反応を見ると「めっちゃいいですね、さすがイノフェス」とひと言。「やっと温まってきましたか? でも、もう終わっちゃうよ(笑)」と悪戯な笑みを浮かべて、「素敵な景色をありがとうございます」と、ラストナンバー「LOVE」へ。では、ピースフルな映像も相まって、優しい時間がそこには流れていた。
■セットリスト
1. No Frontier
2. IMA
3. AURORA TOKIO
4. LOVE
Aile The Shota
Aile The Shota
花譜 × 理芽
自然と拍手が湧き上がり、大きな歓声が上がる会場。バーチャルシンガー・理芽の登場だ。ライブ前からボルテージが上昇しているオーディエンスの熱気とともにメッセージ性の強いリリックが特徴的な「食虫植物」を情緒豊かに歌い上げると、「貴重なイベントに呼んでいただいて光栄です」と挨拶。2曲目は最新曲である「えろいむ」。不穏な空気纏うベースとドラム、そこにポップな理芽の歌声が乗るという絶妙なバランス感。魂、感情の乗った歌唱は圧巻の二文字。次に登場した花譜も同様に魂のこもった歌唱を続けていく。「海に化ける」を丁寧に歌い上げると、優しいピアノの旋律からスタートした「邂逅」。オレンジの光に包み込まれ、花譜の独白にも似たような歌唱は会場全体を包み込んでいる。そして、会場を沸かせた2人での歌唱は、キャラクターの異なる歌声を一度に楽しめるというお得感。「楽しく歌えたね」と理芽が問いかけると、「今日も楽しかったです」と花譜。最後にはイノフェス特別バージョンの「飛翔」を圧倒的なアンサンブルで披露し、特別なステージの幕を閉じた。
■セットリスト
1. 食虫植物(理芽)
2. えろいむ(理芽)
3. 海に化ける(花譜)
4. 邂逅(花譜)
5. 魔的(花譜 & 理芽)
6. 飛翔(花譜 & 理芽)
花譜 × 理芽
Aile The Shota × 山田胡瓜 × 川田十夢 "AIの遺電子"スペシャルトークセッション
この日は、ライブパフォーマンスの合間にトークセッションも行われた。登壇したのは、アニメ『AIの遺電子』の原作者 山田胡瓜と、主題歌を担当したAile The Shota、そしてMVを監修した川田十夢。アニメ「AIの遺電子」の話を皮切りに、AIと共存する未来、そして共栄するクリエイティブについて話された。主題歌「No Frontier」について、川田は「ショウタくんの世界観を拡張した音楽だったと思う」とベタ褒め。同時に、山田とAile The Shotaには共通項があると話す。それは、「いいことばかり(作品で)書きすぎると嘘臭くなってしまう中で、2人はそう感じさせないよう、ポジティブとネガティブをバランスよく配置している」こと。その言葉に対し、Aile The Shotaは「日常と音楽の距離が近いからこそ、人生のポジティブとネガティブを織り交ぜて楽曲を作ることが多いと思う」と返答。山田は「それが心地いいんですよね」と感想を述べていた。そのほかにも山田と川田の出会いの話や「AIの遺電子」の誕生秘話、「No Frontier」の制作時に山田がAile The Shotaへオーダーした内容など、ここでしか聞けない特別なトークを3人で繰り広げていた。
imase
「イノフェス2023」 2日目のトリを飾るのは、日本だけでなく世界各国でも人気を博すimase。小気味のいいギターカッティングからスタートする人気曲「Nagisa」から幕を開けたimaseのステージは、最後の最後まで多幸感に溢れるステージだったと思う。冒頭からオーディエンスは手を上げ、止むことのないハンドクラップ。「ありがとう〜」とimaseは会場全体を見渡し、ニコリと笑う。ピースフルな雰囲気が会場を包み込む。ファルセットを織り交ぜながら繊細かつスキルフルな歌唱をこれでもかと披露しながら、いまのimaseのベスト盤と言っても過言ではないセットリストで会場を掌握していく。「I say bye」では一度も鳴り止むことのないオーディエンスのクラップ。会場にいる全員がimaseの織りなすサウンドの虜だ。終盤には「Have a nice day」をAile The Shotaとコラボレーション。「ライブ、最高すぎるね」とAile The Shotaに言われ少しハニカムimaseだったが、演奏が始まると圧巻のハーモニーを披露。時折、目配せをしながら楽しそうに歌う2人。この光景を観ることができただけでも価値のあるステージだと感じる。ライブ直前、司会を務める川田十夢から「実証実験をしようと思っています。何かが起こります」とアナウンスされていた本ステージ。それは「NIGHT DANCER」のとき行われた。オーディエンスは各々事前に設定したスマホを掲げ、その画面からはステージの液晶と連動するように赤やピンク、緑、黄色など様々な色が投影され、オーディエンスもノリノリで“実験”を楽しんでいた。最後は「ユートピア」で締めくくり、最後の最後まで多幸感溢れるライブアクトで、今日という特別な1日の幕を閉じた。
imase
imase、Aile The Shota
Text by 笹谷淳介
Photo by アンザイミキ