Photo by/キセキミチコ
“KISHOW”こと声優・谷山紀章と、ギタリストとして活躍中の“e-ZUKA”こと飯塚昌明による2人組ロックユニット・GRANRODEOが全国ツアーGRANRODEO LIVE TOUR 2023 “Escape from the Iron cage”のオフィシャルレポートが到着した。2023年10月20日(金)に開催されたZeppDiverCity公演DAY1の模様になる。以下オフィシャルレポートを掲載する。
TVアニメ『文豪ストレイドッグス』第5シーズンのOP主題歌となった最新シングル「鉄の檻」を引っさげ、9月より全国6都市で現在開催中の全国ツアー「GRANRODEO LIVE TOUR 2023 “Escape from the Iron cage”」。その折り返し地点となる東京公演DAY1が、2023年10月20日(金)、東京・ZeppDiverCityで行われた。
“Escape from the Iron cage”=“「鉄の檻」からの脱出”と名付けられたツアータイトル、ツアーロゴにも、GRANRODEOからの特別な意味が授けられた。コンスタントにライブで実力を見せつけてきた彼らだが、全国ツアーとしては、2019年の「GRANRODEO LIVE TOUR 2019 “FAB LOVE”」以来の声出し解禁。約3年間、まるで何かに閉じ込められていたかのような閉塞感を、もみくちゃになってはしゃげるライブハウスだからこそ全て吐き出し、檻の中から蝶が羽ばたくように自由になろう!という想いが込められた。そんな想いをしっかりと受け止めたロデオボーイ&ロデオガールのはやる気持ち、抑えきれない熱気が、開演前からZeppDiverCityの隅々まで充満していた。
開演時間の18時。セピア色の時計の針が巻き戻され、荘厳な鐘の音が開演時間に合わせて6つ打ち鳴らされる。シンフォニックなBGMの中、KISHOW(Vo)とe-ZUKA(Gt)、サポートメンバーの瀧田イサム(Ba)とSHiN(Dr)に大きな拍手で贈られ、迎えた1曲目は、GRANRODEOにしか出せないグルーヴを聴かせるルーズでゴージャスなロックン・ロールナンバー「Don't worry be happy」だった。
今回のツアーを意識して、ファンとの掛け合いや合いの手をリッチに盛りこんだこの粋な新曲に始まり、オープニングブロックにはコール&レスポンスがたっぷり楽しめる賑やかなナンバーが居並ぶ。KISHOWが客席にマイクを向け、手を振り上げて叫び、e-ZUKAがギターのネックを客席に突き出して煽るたびに、オーディエンスが突き上げる拳とジャンプもどんどん激しく、高くなる。今日は、そしてこのツアーは、俺たちに負けずにお前らも声出して、全身全霊思い切り騒ぐんだぜ!というメッセージが、彼らが選んだ楽曲によって、雄弁に語られていた。
Photo by/キセキミチコ
「東京こんばんは!お待たせしました、GRANRODEOです!」と挨拶したKISHOWは、前公演の大阪から約1ヵ月のインターバルがあったことに触れ、「今日が2回目のツアーの初日のつもりでやっていきたいと思います!」と笑顔で語る。その1ヵ月の間、「暇で寂しくなるかと思ったらそんなことはなかった!皆さんに会うのだけが唯一の楽しみでした。張り切ってやります!」とe-ZUKAが声を張ると、オーディエンスもうれしそうな顔を見せる。
アルバムツアーと違い、今回のツアーはセットリストのバラエティに富んだチョイスも、お楽しみのひとつだ。これまで巡ってきた福岡、大阪の2DAYS公演はもちろん、東京2DAYSだけでも、初日と2日目ではセットリスト全20曲中、8曲が日替わりナンバー。今日はどの曲が聴けるのだろう?という楽しみもあり、各楽曲のイントロが流れた瞬間、オーディエンスからどよめきが起こる。
しかも選曲されているレンジも広い。リリースから14年を経ているという事実を感じさせないグラマラスな「カナリヤ」や「BRUSH the SCAR LEMON」は今も輝きを失わず、腰に響くサウンドを響かせる。ミラーボールの演出も華やかな「Y・W・F」では客席に扇子が舞い、ステージではKISHOW、e-ZUKA、瀧田の3人がアドリブでダンスを披露。1曲ごとに纏う空気を変えながら、そのどれもがオーディエンスの体を揺らす。GRANRODEOが長いキャリアで培ってきたライブバンドとしての実力と、“愛され曲”の多さを物語る。
Photo by/キセキミチコ
イベントライブでは味わえない、ゆったりした愉快なMCで笑いを誘うのも、ワンマンツアーならでは。e-ZUKAが、KISHOWが楽屋で弁当を3つ食べていたと密告したりと、サポートメンバーの瀧田、SHiNとKISHOW、e-ZUKAが冗談交じりの和やかなトークを繰り広げていたかと思えば、楽器隊の3人がテクニカルなソロを聴かせるジャムセッションから、KISHOWのフェイクを会場が一体になって声で追い掛けるコール&レスポンスでさらに気持ちを盛り上げる。
すかさず放たれるのは、重みのあるグルーヴを軽やかに熱く聴かせる「Treasure Pleasure」と「Punky Funky Love」。KISHOWの分厚い歌声が先導するキレのいいファンクも、GRANRODEOの得意技だ。今年3月の日本武道館公演を"Rodeo Jet Coaster"と命名していたGRANRODEOだが、とくに今回のツアーは、彼らのワンマンこそが、絶対にお客さんを飽きさせないアトラクションに次々と誘う、テーマパークそのものなのだと実感させてくれる。
Photo by/キセキミチコ
軽やかで華やかなライブ前半の熱狂の中で、楔のように激しく打ち込まれたエポックな楽曲。それはやはり「鉄の檻」だった。スクリーンに映し出されたのはモノクロの重い風景。そこに流れたアルバム『BRUSH the SCAR LEMON』に収録されていた現代音楽風のアバンギャルドなインストゥルメンタル「cage」は、次の楽曲への序章。続くBGMは次第にエスニックな匂いを立ち上らせる。ミステリアスなブルーのライトがステージを包み、新たな衣装に着替えたKISHOWとe-ZUKAが怒涛のような「鉄の檻」を放つと、一気にシリアスな空気が広がり、「背徳の鼓動」へと世界を繋ぐ。ダイナミックなバンドサウンドと、おそらく今年一番、絶好調を極めたKISHOWの歌声が、ZeppDiverCityを完全に支配した。
Photo by/キセキミチコ
全公演、1日ごとに異なる楽曲が歌われるアコースティックコーナーでは、トークも絶好調。e-ZUKAが流行のショート動画の話題をしたり、“ライブハウスのスタンディング席は背が低いと大変”という話題から、KISHOWが“前の人の背中の一点を見つめると必ずそこを掻く説”をテーマに見事な即興ソングを歌ったり、漫談さながらの楽しいMCに全員が大爆笑。しかし、いざKISHOWの歌とe-ZUKAのアコギだけで届けられた「delight song」が始まると、身じろぎもせず聴き入る客席は温かな静寂に包まれる。天上から降り注ぐような美しいメロディーと2人の息の合ったハーモニー。その緩急もGRANRODEOらしさだ。
Photo by/キセキミチコ
ひとときの安らぎの後には、またも激しい嵐が襲い来る。ここからは、振り上げた拳を下ろす暇などないハードチューンを連発。1曲1曲のイントロに再び歓声とどよめきが沸き上がる。日替わりナンバーだった「愛のWarrior」、「The Other self」ではオーディエンスもKISHOWに負けじと大声を挙げながら、高々とジャンプ。「NO PLACE LIKE A STAGE」では全員が跳ね、ZeppDiverCityを波打たせた。
自分も汗だくになりながら「Zepp、倒れてないですか? 酸欠とか大丈夫?」とファンを気づかうKISHOWは、未だ元気なオーディエンスを見回して「すげーな、キミら!」「皆さん最高です!」と笑顔を見せる。e-ZUKAも「いや~楽しいですね! こんな歳までライブをやらせてもらえて、ありがとうね」と感謝し、「自分で作っていて自信のなかった曲もありますが、KISHOWさんという方に歌っていただいて、昔の曲も未だにライブでできる。本当に嬉しいことです」と自分達を振り返る。そして、こうしてみんなとライブができることが、「必然のようにも感じるけど、偶然が結集して今ここにいます」と語るKISHOW。
そして「そんな偶然のひとつひとつ、1本1本のライブと出会いの大切さを、心から感じていきたい。そんな心持ちで作った曲です」と紹介されたのは、KISHOWが歌詞にロデオボーイ、ロデオガールへの愛を詰めたミドルバラード「どこかで知った偶然と」。KISHOWの想いを込めた歌声に導かれ、ZeppDiverCityに響き渡るアカペラのシンガロング。幾束にも連なったライトが客席に降り注ぎ、幾重にも重なった歌声が、光の中に溶けていった。
Photo by/キセキミチコ
止まないアンコールの声を受けとって、再びステージに登場した4人。鮮やかなライトを浴びて、“一番いいのはZeppDiverCityだろ!”とKISHOWが叫んだ「メモリーズ」が、もう一度、会場の熱を上昇させる。MCでは、ファンクラブ限定のアコースティックライブシリーズが「TEAM RODEO SPECIAL PROGRAM GRANRODEO Acoustics 2024 マッタナシ!プラグナシ!」と題して、2024年1月20日(土)に神奈川県民ホール 大ホールで開催されることが告知され、大きな歓声が挙がる。そして最高のクオリティで届けられた東京公演DAY1を締めくくったのは、GRANRODEOのライブアンセムの1曲「modern strange cowboy」。ステージを走り回り、跳び回るKISHOW、e-ZUKAとバンドの熱は、激しくうごめくフロアを吹き抜ける熱い熱い風となって吹き上がった。
Photo by/キセキミチコ
新旧の名曲を詰め込んで、古参ファンから新たなファンまで全員を満足させるセットリストを届けている “Escape from the Iron cage”ツアーは、11月11日(土)・12日(日)は宮城・Sendai PIT、11月18日(土)は北海道・Zepp Sapporo、12月1日(金)・2日(土)はワンマンのファイナルを飾る愛知・Zepp Nagoya公演へとまだまだ続く。
Photo by/キセキミチコ
さらに、11月5日(日)にはTVアニメ『文豪ストレイドッグス』の主題歌アーティストの3組――GRANRODEO、SCREEN mode、ラックライフが初めて一同に介する対バンライブ「GRANRODEO LIVE TOUR 2023 "Escape from the Iron cage" meets 文豪ストレイドッグス」が東京・Zepp Hanedaで。12月10日(日)には海外でも注目を集めるASH DA HEROとの2マンライブが、神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催される。
キャリアを重ねて今もなお、“最高のライブ”を更新し続けるGRANRODEOのステージを、ぜひその目に焼き付けて欲しい。
Text by/阿部美香