TOMOO、FM802DJ 加藤 真樹子
大阪のラジオ局・FM802で放送中の、平日のお昼を彩る『UPBEAT!(毎週月〜木/11:00〜14:00)』に、シンガーソングライターのTOMOOがゲスト登場。DJの加藤真樹子と共にスタジオを飛び出し、TOMOOが大好きなスパイスカレーのお店へ。そこで繰り広げられたTOMOOの1st アルバム『TWO MOON』についてのトークを完全版でお届け! 10月31日(火)のOAはタイムフリーでぜひチェックしてほしい。
大阪の人気スパイスカレー店「創作カレーツキノワ」でインタビュー!
9月にリリースされたMajor 1st Album『TWO MOON』のリード曲「Super Ball」が、2023年10月度邦楽ヘビーローテーションに選ばれたTOMOO。『UPBEAT!』に登場するのは今回で3度目だが、昨年8月の初登場時に「TOMOOをワクワクさせるもの」のひとつとして、「スパイスや香りが複雑に織り混ざった食べ物」を挙げていたこと、そしてアルバム『TWO MOON』のタイトルにちなんで、人気のスパイスカレー店「創作カレーツキノワ」にやってきた。
「創作カレーツキノワ」は、大阪メトロ堺筋線「堺筋本町駅」から徒歩5分、長堀鶴見緑地線「松屋町駅」から徒歩7分の距離にある。昆布・鰹・いりこから丁寧にとった和風出汁をベースに、隠し味にお味噌を使ったコクのあるスープと、独自にブレンドしたスパイスで仕上げたルーが特長で、出汁カレーのパイオニアと言われ、大阪のスパイスカレーシーンを黎明期から支えた名店だ。
店主の菅尚弘さん
お店はレンガ造りの階段を上がったビルの2階にある。店内はカウンター10席のみでこじんまりとしているが、店主の菅尚弘さんの朴訥とした佇まいも相まって、温かな雰囲気が漂っていた。元々音響関係の仕事に就いていた菅さんは音楽・アート界隈との繋がりも深く、壁には数々のアート作品とバンドやライブのポスターが飾られていた。棚の上の様々な動物の置物も良い空気を醸し出す。カウンターにはステッカーが所狭しと貼られ、中にはこれまで出店したであろう音楽フェスのリストバンドの一部が丁寧に飾られていた。こんなところからも店主の優しい人柄が伝わってくるようだ。
厨房には色とりどりのスパイスの瓶がずらり。入店した瞬間に鼻をくすぐるスパイスの香りが最高だ。定番の「チキンカレー(1000円)」や「キーマカレー(1000円)」はもちろん、オリジナリティあふれる日替わりカレーも人気メニュー。ちなみにこの日の日替わりカレーは「キノコとサーモンのハーブポン酢カレー(1100円)」だった。トッピングは6種で、辛さも7段階から選べるようになっていた。TOMOOと加藤がお店に到着すると、早速インタビュー収録がスタート!
TOMOOのオーダーは「チキンカレー+トッピング全部乗せ」
加藤:FM802からお送りしています、『UPBEAT!』。ランチタイムでございます。すごく良い匂いがしています。今日はお昼にカレーを食べに行こうよということで、この方と一緒にカレー屋さんに来ています。お声を聞かせてください!
TOMOO:TOMOOです、こんにちは。
加藤:どうもこんにちは。いつもご機嫌だけど、今日はよりご機嫌よろしい感じですね。
TOMOO:そうですね、カレーの匂いの中で(笑顔)。
加藤:そう、今日はカレーの匂いの中でインタビューを送ろうと。この番組へのインタビュー出演は3度目となりますが、まさに1回目からそんな話をしていたので、今日はこの場所なんです。まず10月ということで、TOMOOさんを今月のFM802邦楽ヘビーローテーションアーティストとしてお迎えできたのも、すごく嬉しい。ラジオでめちゃめちゃかかってますよ。
TOMOO:おかげさまで、そこから聴いて初めて知りましたと、コメントもいただいてます。
加藤:それはまた嬉しいなぁ。FM802を毎日彩ってくれているヘビーローテーション曲ですけれども、先月Major 1st Album『TWO MOON』がリリースになったということでスタジオを飛び出し、TOMOOさんを連れ出してしまいました。今私たちがいるのは、大阪・堺筋本町にある「創作カレーツキノワ」さんです。最初から言ってたんだよね、好きな食べ物の話を。
TOMOO:初めてお会いした時に「スパイスカレーが好きです」って。
加藤:そのお話をしていたことと、アルバムのタイトルが『TWO MOON』だったので「2つの月」というところから、ツキノワさんにお邪魔することになりまして。ご快諾いただきありがとうございました。
TOMOO:ありがとうございます!
店主:(笑顔でお辞儀)
加藤:お店の雰囲気はどうですか?
TOMOO:今カウンターに座らせてもらってるんですけど、カウンターでカレー食べるの良いですよね。待ってる間にうふふってなる。
加藤:作ってくださってる間、見てるのも良いよね。今日はカレーを一緒に食べて、プラス音楽の話もしようと思いますけれども。私聞いてますよ、TOMOOちゃんの注文。
TOMOO:え。
加藤:ベーシックなチキンカレーでしょ。で「トッピングはどうしますか?」って聞いたところ、何て言いましたか。
TOMOO:全部で(笑)。
加藤:「全部で」という答えが返ってきまして。でも面白いよねトッピング。
TOMOO:読み上げてもいいですか?
加藤:いいよ。何が気になりましたか?
TOMOO:「ミニキーマ」はキーマが好きで食べたいからなんですけど、「ライムアチャール」は初聞きだなと気になって。「サワークリーム」は「足すとちょっとまろやかになってスッとする感じが想像できる。食べたいかも」となり、「うずらスモーク」は人気ナンバー2と書いてあって、「確かにうずらって良いよね」となるじゃないですか、食感も楽しめるし。「マスタードソース」も「きっと美味しいのが分かるわ」という。(この日はトッピングの「プラムソース」が完売)
加藤:まさにTOMOOさんが好きと言った「色んな香りや味の感じが複雑な食べ物」が、今から目の前に登場します。
TOMOO:正直ちょっと欲張りすぎたなとは思ってるんですけど、でもせっかく来たし。なかなか来れないから(笑)。
加藤:そうしましょう。カレーを待ってる間TOMOOさんとお喋りしたり、食べた後も色々音楽の話をしようかなと思います。私は「チキンカレー」に「ライムアチャールとサワークリーム」というシンプルな感じでお願いします!
音楽を聴くのと、ご飯を食べる行為は似ている
加藤:(TOMOOさんは)お料理ってするんでしたっけ?
TOMOO:創作に行き詰まって曲ができない時とか、脳が「楽曲とは違う創作のできた感」を欲する時があるんですよ。そういう時、無性に料理したくなりますね。インスタで見つけた、ちょっとオシャレめの、これまた複雑な組み合わせをしてる系の、見たことない料理にチャレンジしたりします。
加藤:最近作ってみたお料理で、覚えてるものあります?
TOMOO:サラダなんですけど。ピスタチオとライム。ライチかな?ちょっと忘れちゃったんですけど、それとディル、アボカドを混ぜる。最早作ってると言わないんですけど(笑)。「これとこれを組み合わせるんだ」という発想が大人っぽいなと。
加藤:果物のサラダとか、私も好きです。
TOMOO:良いですね。好きなお店の再現みたいに、カレーを作る時もあります。
加藤:へえ。でも料理してる時は、ほんとに他のことを一旦忘れてここに集中するから、ちょっとリセットできる。
TOMOO:分かります。
加藤:刻んだり、細かい作業したくなったりしません?お料理と音楽作りが似てるという方、結構いますけど。
TOMOO:でしょうね! でも私、切ったりするのあまり上手じゃないんですよ、実は。
加藤:そうなんだ。
TOMOO:でも音楽を聴くのとご飯を食べるのは似てる。料理を味わう感覚は結構近いですね。
加藤:へー。それ考えたことなかったです、私。どの音が入ってるのかなとか、楽器が入ってるのかなとか。
TOMOO:素材とか、どの調味料のバランスでそうなってるのかなって。
加藤:確かにそうですね。それで味わいが変わるし、聴き心地が変わる。
TOMOO:はい。出汁がどのぐらい効いてるかで、土台のふくよかさが変わる。
加藤:その発想すごく面白い。あら! カレーがもう来た。
念願のカレーを実食!スパイスの香りと出汁の旨みに癒される
TOMOO:わ〜!
加藤:すごい綺麗! ありがとうございます。ベーシックなチキンカレーに、トッピングの小皿が色々やってきた。
TOMOO:大きい惑星と小さい惑星みたい。衛星みたいになってる(笑)。
加藤:大きなお皿にたっぷりのカレーで、その横に小さい星がたくさん。トッピングが並べられました。まず見た目はどうですか?
チキンカレー+トッピング全部乗せ
TOMOO:まず出てきた時、カレーのお皿の中にエリアがあるから、既に全部トッピングが乗ってるんだと思ったんですよ。そうじゃなかった(笑)。すごい、ワクワクする!
加藤:後乗せで混ぜて食べていったらいいんですね。すごく良い香りがしています。
TOMOO:良いですね、このちょっと複雑な見た目。
加藤:シャバッとしたカレーの中に、ハーブも散ってるし。
TOMOO:ハーブ散ってるの好き。赤タマネギが刻まれて乗ってるのも好き。
加藤:いいですね。これはキャベツですか?
店主:そうです。
加藤:キャベツを漬けたものと……。
TOMOO:黄色いのは何ですか?
店主:お豆のカレーで「ダル」と言います。
加藤:ダルも最初から乗ってるんですね。すごーい。お出汁のカレーなので、お出汁のすっごく良い香りがする。では一緒にいただきましょう。
TOMOO・加藤:せーの。いたただきまーす!
TOMOO:うわあ、癒される。
加藤:うーん、美味しい。すごい。ほんとお出汁がうまぁ。OA終わりのカレー染みるわ〜(笑)(加藤は生放送を終えて収録にやって来た)。
TOMOO:日替わりカレーもすごく迷ったんですけど。
加藤:美味しそうだった。
TOMOO:ライムアチャールは辛いですか?
加藤:酸味がすごい。この赤は何の赤ですか?
店主:パプリカパウダーとチリパウダーです。
加藤:えー!
TOMOO:ほんとだ。めちゃめちゃ良い香り。
加藤:ダルカレーめっちゃ優しい。
TOMOO:ほんとだ! めっちゃ優しい。
加藤:複雑な味のもの食べてる時って黙っちゃうね(笑)。
TOMOO:普段の自分に戻ってます。基本的にひとりでカレー食べに来たりするんですよ。誰よりも早く黙々と食べて。
加藤:食べるの早めだね。
TOMOO:もう完食しちゃうかも。
加藤:暑い、発汗する……!
カレーで体が労らわれてる気がする(TOMOO)
TOMOO・加藤:ごちそうさまでしたー!
加藤:創作カレーツキノワさんで、チキンカレーにたくさんトッピングを乗せていただきましたが、TOMOOさんどうでしたか。
TOMOO:1口目は「何て滋味があるんだ」と思って。ほわっと出汁の香りが来て、「やっさし〜」となるんですけど、ぼやっとしてる優しいじゃなくて、しっかりスパイスも来る。味もちょうどいい辛さ。どこかで「毎日食べれる」みたいな声を聞いた気がするんですけど、それじゃんって。
加藤:まさに。
TOMOO:体が労らわれてる気がする。普段カレー食べてて、体が労られてる気がするってあまり思ったことないんですけど。刺激はあるけど、豊かさをたくさん享受しました。
店主:(恐縮しつつも嬉しそうな様子)
加藤:素晴らしい。でもほんとにトッピングも1個1個面白かったですね。
TOMOO:面白かったですね。
加藤:ライムアチャール、ビックリした。
TOMOO:ライムの輪切りのちょっと唐辛子ついたやつ出てくるのかと思ってたら。
加藤:真っ赤なペーストだったんですよ。
TOMOO:爽やかさと酸っぱ味が突き抜ける感じで。
加藤:チリパウダーの赤なんですって。
TOMOO:あとパプリカパウダー。そんなに激辛じゃなくて。酸味と刺激がぴゃーっと。
加藤:広がりましたね。
TOMOO:面白かった。そして今、胃が爽やかに燃えています。
加藤:(笑)。
TOMOO:殴られる感じとはちょっと違う、涼しげに爽やかに燃えている感じがします。
加藤:そうだね(笑)。その燃えている状態で音楽の話をしてもいいですか。
TOMOO:お願いします。
私はいつも、「間」にいたがっている
加藤:改めてTOMOOさんのMajor 1st Album『TWO MOON』が先月9月27日にリリースになりました。今回TOMOOさんはトッピングほぼ全部乗せでしたけれども、ここ何年のTOMOOさん、ほぼ全部乗せのアルバムですね。
TOMOO:そうなんです。きっとそういう性格なんでしょうね。
加藤:「全部乗せちゃえー!」みたいな?
TOMOO:かな。「これもこれもこれも私だし」みたいな。
加藤:合わせて13曲入ってますけれども、ライブで既に披露されていた曲もあれば、新曲もあれば、代表曲という曲もあればで。いやー、傑作ポップアルバムだと思います。
TOMOO:ありがとうございます。
加藤:「わーいポップー!」って聴いてたらザクっとやられるみたいな鋭さもある。
TOMOO:これもカレーみたいな話になっちゃうんですけど、角を削ぎ落として丸くなってるからポップというより、私が思うポップは、色んな要素が複雑に重なって調合されている。だから結果まろやかに感じることもあるかもしれないけど、そこには色んな要素がある。それが私の思うポップで、やっていきたいことなんですよ。
加藤:なるほど。
TOMOO:曲がいっぱい集まった状態で、私が思うものを今やっと見せられる感じですね。
TOMOO – Super Ball【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
加藤:なるほど。今、「丸」と言ったじゃないですか。私は今回、「丸」というワードがやっぱりどうしても気になって。「Super Ball」もそうですし、あと新曲の「Grapefruit Moon」にも<“角がないから”丸いわけじゃない>という歌詞があったり。色んな歌詞の中に「丸」が出てくるし、タイトルも『TWO MOON』だし、何の象徴なんだろうと思ってたんです。今の話を聞いたら、ポップスそのもののTOMOOさんの考え方の象徴ということ?
TOMOO:そうですね。曲中で「丸=ポップス」と思いながら歌ってるわけではないんですけど、丸については普段私が思ってることの1つではありますね。
加藤:色んな調合や色んな味があって。それって多分、曲の中では感情や景色、音色、色々あると思うし、今回もそれにこだわって作ったと思うんだけど。例えば前に「オセロ」で白と黒みたいな話を一緒にしたし。光と影であるとか、悲しいと希望であるとか、そのTOMOOさんの間(あいだ)がね、とても素敵なんですよ。
TOMOO:ありがとうございます。そうなんです、間なんです! 私はいつも間のことを歌ってるというか、間にいたがってるなと思います。
加藤:それはさ、答えを出したくないとかじゃなくて、出ないのがリアルということ?
TOMOO:多分そういうことだと思います。
加藤:出したくないわけではない。
TOMOO:うん、出したくないわけじゃない。
加藤:そうだね。答えがはっきり出たらいいものね。でもその間にいる時の感情が曲になっていくことが多いのかな。
TOMOO:多いですね。
加藤:揺れてるから?何でだろう。
TOMOO:例えば「こっちだ!」って一旦自分で決めたとしても、結局「いや、でもな」と思っちゃうんですよ。だからやっぱり間にいるんですね(笑)。
加藤:TOMOOさんは間にいるんですね。
TOMOO:「いよう」っていうよりは。
加藤:いるんだね。なるほどな。あとアルバムを聴いていて、すごく心を通わせたいという意思を感じました。「ガラスの向こうに青が見えてるのなら見てみたい」という感情とか、あと「君の隠れたダイヤを見たい」であるとか。人との付き合いの中で「開いてくれたらいいのに」と思うことは多いの?
TOMOO:開いてくれてないからそれをこじ開けたいというよりは、見えかけてる気がするからこのまま見続けたいというか。「今垣間見たかも」とか「その向こうに何かがうっすら見えてる気がする」という自分の感覚は、きっと合ってるんじゃないか、それを信じたい。そこにその人の真心や柔らかい心がある気がするのをこのまま見たい、みたいな感じですね。
加藤:普段のTOMOOさんがそうなんだ。音楽ではどうなの?音楽だとさ、ぼんやりしているイメージを掴み取りたいって苦悩するわけじゃないですか。それを突き詰めた結果が、今回全部入った?
TOMOO:そうですね。で、ピアノを弾いてる時は、意外とそこが曖昧なまま置いておけるんですよ。例えば炭だけで絵を描いたらどんな色かは想像に任せられるから、曖昧なまま置いておけるじゃないですか。それがピアノなんですよ。
加藤:ほうほう。
TOMOO:だけど、楽器でそれを表現し直して曲を完成させるのは、どちらかというと色を付けていくこと。「これはこの色なんです」って表現することだから、曖昧なままでいられない部分も増えていくんですけど、いかに曖昧な炭だけの絵だった頃の感じも残すかみたいな。そういう矛盾してることを、制作過程ではいつも悩んでる感じ。
加藤:なるほどね。歌うことは今の例えでいくと、輪郭を作るような感覚なのかな。
TOMOO:歌は何だ〜?別物ですね。
加藤:別物なんだ。
TOMOO:うーん、分からない。歌は人だからな。
加藤:待って、「歌は人だから」。
TOMOO:景色というよりは、私が歌ってて「人間」だから。例えば語尾をどうするかで空間や景色のイメージが変わると思うから、描写の役割を担うこともあるとは思うんです。ただ、フィジカルというかスポーツみたいな感じで歌い上げるというよりは、喋っている感覚に近い。私にとっての歌は、セリフじゃないですけど「人」って感じ。
加藤:歌は人だからって、ハッとした今。
TOMOO:名言っぽい雰囲気ありますけど、そんなんじゃないです(笑)。
加藤:そんなんじゃないんかーい(笑)。さっき言ってた色をつけていくような感じというのは、背景よりはもっと前にあるものだと思うけど、だとしたらその中にいる人が歌なんだって今、私は理解した。
安心感や自信が増して、やっと等身大になれたアルバム
加藤:今回のアルバムの曲でいくと、発表されて1番古いのが2021年3月の「HONEY BOY」だと思うんですけど、そこから2023年までの間と考えると、このアルバムの曲たちを作ってる間にもTOMOOさんの中に色んな変化があったと思う。それこそライブをやる場所がどんどん大きくなったり。どんな表現者になりたいか、より明確になった期間でもありましたか?
TOMOO:確かにそうですね。「HONEY BOY」「Ginger」を出した頃は、「私って元気なイメージかなー?」とか。その頃は結構、そういう曲を出してたんですよ。だから逆に自分のもう少し深めのところに溜まらせてるシリアスな表情や、ワードや考え方、感情って、世に出したとしてもどう受け止めてもらえるか分かんないみたいな不安というか。アクティブで元気でチャキチャキしてるのは受け入れられてるけど、そっちはどうだろうというところだったんですよ。でも去年になってそうじゃない側面、重かったり渋かったり苦かったりという面も出していく中で、返ってきたリアクションを経て、今はほんとに実像というか、等身大になれた。結局どっちも自分の中から出てくるものだから、やっと等身大が揃ってきたなって。そういう意味では、安心感や自信みたいなものは増えてきた気がします。
加藤:「これを出したところでどうなんだ」みたいなのがあったんだ。
TOMOO:ありました。「これ聴きたいかな?」みたいな。
加藤:でも出したからこそ、この粒揃いの13曲になってるわけだし。じゃあ今のまんまのTOMOOさんを私たちは聴けてるんだね。
TOMOO:やっとって感じ。
加藤:何かおめでとうございます!
TOMOO:ありがとうございます!(笑)。
加藤:うわ〜、そんな大事な13曲を聴いてるんだな。ほんとにありがとうという気持ちですよ。番組でお送りしてきた曲もめちゃめちゃあるし。
TOMOO:ありがとうございます。
加藤:最後に1個。曲順なんですけど。もうたまらん。私はこのアルバム、1つの物語だと思っていて。それぞれリリースされたのに、こんなふうに繋がるんだと思って。例えば<最寄り駅>というワードが2曲続けて出てきたり、<ダイヤ>の次に<宝石>というワードが出てきたり。最後の「夜明けの君へ」で1つのストーリーをバーッと見たみたいで、もう感動してしまって。
TOMOO:わああ。
加藤:すでに知ってる曲でもう1回こんなに感動できるんだと思って。
TOMOO:嬉しい。ありがとうございます。
加藤:(曲順は)悩みましたか?
TOMOO:すごく悩みました。皆で「これかな、これしかないよね」と相談しながらやったんですよ。でもやっぱり曲自体が組み合わせを持ってるんですよ。
加藤:曲のパワーとしてある。
TOMOO:はい。だから自然と「もうこれしかないな」と並べてこうなった。作為的にやったというよりは、 曲それぞれがそれしかない並びだった。でも結局私は、その時期に本当に思ってることを書いてるから、そりゃあ集めたら並ぶよねって。繋がっていくよねって。最初は「これバラバラすぎない?」と思ったんですけど、いざ並べてみたら、自然と曲が連なってた感じですね。
加藤:人ですね。じゃない?
TOMOO:(笑)。そうですね。
加藤:今思った。人生だし、TOMOOという人だし。今日のワードは「人」でした。
TOMOO:おお〜(笑)。
加藤:ほんと13曲、この順番でじっくり聴いてほしいな。
TOMOO:ぜひ曲順に聴いてほしいと思います。
加藤:そして、この曲たちがライブで聴けるということで、大阪は来年です。1月13日(土)は、大阪フェスティバルホールです。皆に「良いホールだよ」と。
TOMOO:めっちゃ言われます。まだ行ったことがなくて、余計楽しみなんですけど。
加藤:音が降ってくるように演者さんも聴こえるんですって。
TOMOO:わ〜楽しみだな。
加藤:絶対合うと思います。
TOMOO:嬉しい。
加藤:ではもう1曲お送りしてお別れです。今日はロケできて楽しかった。ありがとうございます。
TOMOO:めっちゃ楽しかった! こういうのちょっと夢だったかもー!
加藤:ほんとですか!
TOMOO:具体的に描いたことはなかったけど、多分薄ぼんやりと夢だったんだと思います。
加藤:メディアで外ロケみたいな。
TOMOO:そう! やっぱ最初はカレーであるべきですよね!
加藤:ずっと言ってたから、できて良かった。ありがとう。
TOMOO:こちらこそありがとうございました!
加藤:創作カレーツキノワさん、どうもごちそうさまでした。ではアルバムの最後に入っている「夜明けの君へ」を聴いてお別れしようと思います。
TOMOO – 夜明けの君へ【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
そしてここからは、収録が終わった後のトーク。「HONEY BOY」に出てくる<九段下>という歌詞について。
加藤:聞きたかったのに聞けなかったこと。<九段下>とか地名とか、具体的なワードを入れるのも、ちょっと意識したりしてるんですか。
TOMOO:それもリアルに九段下で思ったことがあるから入れてるんですよ。地名を入れたいから九段下を持ってきたという流れではないんだけど、人の歌詞を聞いてて「具体名が入るって良いよな」と思ってるから、最後は自分で「入れよう」って。結構無意識の方が強いんですけど、人が決定して意識してる。
加藤:なるほど、面白いわ……!
ほとんど無言でカレーを食し、まるで歌詞のように魅力的な言葉で食レポを紡ぎ出し、「歌は人」という名言も。そんな熱のこもったアルバムトークを繰り広げた、TOMOOと加藤。「美味しかったし楽しかった」と満足気な表情を浮かべていたのが、本当に印象的だった。最後はお腹も気持ちもいっぱいになって、ほくほくしながら撮影タイムに。
お店の滞在は約45分という短い時間だったが、その時がいかに充実していたかは、写真を見てもらえば一目瞭然。撮影が終わると、再びキャンペーンに戻っていったTOMOOだった。OAとradikoでは、厨房から聞こえる音も相まって、より色濃く雰囲気を感じてもらえると思う。ぜひ、タイムフリーでも『UPBEAT!』をお楽しみに。
取材・文=久保田瑛理 撮影=ハヤシマコ