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「Skaaiを殺さなきゃいけない」と感じたーーSkaaiがEP「​​WE’LL DIE THIS WAY​​」で決別したこと、これからの新たな歩みとは

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Skaai

Skaai 撮影=大橋祐希

Skaaiが前作『BEANIE』から1年ぶりとなる、2nd EP「​​WE’LL DIE THIS WAY​​」を9月13日(水)にリリースした。「決別」をテーマに、これまでのSkaaiの歩みと自身の変化を見つめ、新しいスタートを切る節目の1枚ともいえる本作。客演にはヒップホップシーンで頭角を現すラッパーのBonberoを迎え、プロデューサーには盟友uinをはじめ、ラップスタア誕生をキッカケに出会ったQunimune、プロデューサー/ギタリストのShin Sakiura、韓国からIamdl、HYESUNGが参加している。今作を制作する過程で「Skaaiは死んだ」とも語られているが、自身と向き合い殺すことで、新しいSkaaiとなる「許し」を得たという。いかにして本作が生まれたのか、そのストーリーと込められた想いについて話しを訊いた。

ーー本作の制作はいつ頃からスタートしたのでしょうか? 

去年のワンマンツアー『BEANIE TOUR』が終わって、12月に「Mermaid」をリリースしたあとですね。なので今年に入った段階で制作自体は進んでいたかもしれないです。一番最初は、Bonberoと一緒に作りたいという気持ちから「SCENE!」を作りはじめました。今回のEPはSkaaiが考えていることを時系列で表しているんですね。なので、一番最初の「PRO」はSkaaiが活動当初に考えていたことで、最後の「REM」は最近のSkaaiが考えていることを書いていて。だから1曲目の「PRO」や続く「SCENE!」のような曲は、ちょっと前の自分の言葉で。そういうアグレッシブで固いSkaaiから脱出しようという試みが今回のEPなんです。だからキャリアを経て、アグレッシブな言葉を培って生まれた曲というより、未熟ゆえにアグレッシブな言葉をつい言っちゃっていた自分から抜け出す、というイメージです。そういう意味でもEPを通して、より音楽を楽しむような方向にシフトしていると思います。

ーーEPを通して変化がありながらも、嘘をつかず、自分の持っているもので勝負する、という考え方やスタンスはこれまでの活動も、そしてどの楽曲でも共通していますよね。なので、「PRO」や「SCENE!」のような前のめりな姿勢や言葉は当時の想いではありながら、今も変わらずSkaaiの一部で。

全くそうですね。自分の思ったことや言ったことに対して嘘はないと思っています。なので、今もライブで歌えるんだと思います。

Skaai – PRO (Music Video)

ーー「SCENE!」でのBonberoさんとの制作はいかがでしたか?

初めてゴリゴリなラップを一緒にしたので、新鮮でおもしろかったですね。これまではBIMくんとかDaichi Yamamotoさんと一緒にやらせてもらったり、去年まではどちらかというとちょっとひねった曲をつくりたかったのでそういう曲が多くて。だけど今年はすごいトラップチックな曲でラッパーと一緒に歌いたかったので、大好きなラッパーのBonberoとできてよかったなと。ライブで「SCENE!」を歌う時はBonberoの歌詞も自分が歌うんですけど、そこが自分のバースより盛り上がるのがちょっと嫌なぐらい(笑)、やっぱりすごくかっけぇなと改めて思いました。実際に歌ってみると、どこで盛り上がらせるか自然とわかってるような、バースの書き方をするなと。あえてちょっと突き放しちゃうところも多くて、パンチラインやライブスキームを理解して組んでるなというのは感じますね。

ーー「SCENE!」含め、今回もプロデューサーでuinさんが参加されていますが、これまでの制作との変化などはありましたか?

特に変わったことはないですね。むしろ今まで通りというか、今まで以上にコミュニケーションコストもかからずに作れたかなと。

ーー今作がSkaaiさんのキャリアの時系列に沿っている点でいうと、3曲目の「F.N.A.P.」はEPの折り返し地点であり、タイトルトラック「WE’LL DIE THIS WAY」へと続くキャリアの中でもひとつの転換点となる楽曲のように思いました。

そうかもしれないですね。「F.N.A.P.」は新しいメガネを買ったという曲​​なんですけど、そこからどんどん新しい自分に繋がっていくいい転換ではあったのかな。

ーー前作「BEANIE」のジャケットではSkaaiさんの被っていたビーニーをマネキンに被せていて、同曲のMVでそのマネキンが燃えている……という演出がありましたよね。今作の「F.N.A.P.」もSkaaiさんのアイコンでもあり、これまで一緒にステージに上がってきたアイテムを新調する、というのは大きな気持ちの変化でもあったのかなと。

その通りだと思います。自分のSkaaiというキャラクターに対してイメージがあって、今年のイメージはハンチングだったりこの眼鏡だったり、ファッションでキャラクター付けをすることが多いので、それを一新する行為で気持ちも変わるし、キャラクターに対するイメージも変わると思います。

ーーそこからタイトルトラックの「WE’LL DIE THIS WAY」へと続きますが、この曲はどのタイミングで生まれたのでしょうか?

「F.N.A.P.」を作ったあとか、同じぐらいの時期かもしれないですね。「PRO」と「SCENE!」は今年の序盤に書き終えていて、EPで6曲ぜんぜんいけると思ってたら、そこから3〜4か月ぐらい全く曲が書けない時期があって。そこですごく悩んで、今の意識じゃまずいと。そんな時に、ある日プロデューサーのIamdlからビートをいっぱいもらったんですけど、この曲を聴いた瞬間にリリックが30分から1時間ぐらいで全部書けたんですよね。この数ヶ月の空白期間が嘘みたいに書けたので、もしかするとタイトル曲にするべきなんじゃないかと。

ーービートに引っ張られるようにしてできたんですね。Iamdlさんとは一緒に制作されることが決まっていたんですか?

一緒に作ろうという話はしてて、「いいビートがあったら送るね」ぐらいの感じで。僕も「もうちょっと聞いてみたいから送ってよ」と言ってて、届いたので聴いてみたらめっちゃよくて。もともと型にはまってないこういうビートだったんですよ。変なことしてるような自由なビートだったので、そういう自由さが今のSkaaiには必要なんだろうなと思えたというか。

Skaai – WE'LL DIE THIS WAY (Music Video)

ーー「WE’LL DIE THIS WAY」のMVは、Skaaiさんご自身が初監督されていますね。

この曲で書いてることは自分しかわからないだろうから、MVも自分にしか撮れないだろうなと思って。

ーーカメラが向けられたSkaaiさんの表情や仕草にドキッとする緊張感もあったり、まさに制作過程の苦しみ、そこから抜け出そうとするところがドキュメントであり、新しいSkaaiへと向かっていくロードムービーのようでもあるなと。

ありがとうございます。でもまあ、初監督なのでわかりづらいところもあったなとは思います。普段からMESSくんと一緒に仕事をさせてもらって、監督をしてる姿とか見てるのでやっぱすげえなって思いました。もっと学ぶことがありそうだと。

ーー「TEMPO A」では、家族への言葉が綴られていてとても印象的でした。

このEPの中で最も時間をかけて、すごく苦労して作った曲ですね。「WE’LL DIE THIS WAY」は最終的に思い切りと勢いで書けたところがあったんですけど、「TEMPO A」はしっかりと内面をえぐるように自分自身と向きあって作ったので……。家族に対する言葉なんかを歌詞に入れる時はどうしても時間がかかるんです。それと、この曲のプロデューサーで迎えているQunimuneさんとは「ラップスタア誕生」以来だったからとにかく大事にしたくて、一言一言に意味を持たせることを特に意識しました。 大事に大事に作ったからこそ大好きで、トラックの中でも本当に1番好きなぐらい。

ーーそして最後は、より聴かせるような「REM」​​で締めくくられています。

この曲は締めというか、今回はコンセプトだったと言って終わろうかなと。作ってた当時はもうよくわかんなかったので、自分もこの悩みはどこに終着するんだろうなというところもあったので、そういう気持ちの揺れ動きを素直に吐露しているような曲になりました。

ーー「REM」でも<死>というフレーズが出てくると思うんですけど、今作を引っ提げてのツアータイトルも『Skaai DEAD TOUR』に。今作のテーマが「決別」で、制作過程で「Skaaiは死んだ」というメッセージも出されていますが、「WE’LL DIE THIS WAY」を制作されているあたりで強く「死」を意識されたのでしょうか?

決定的なキッカケみたいなのは特にないんです。だけど、「WE’LL DIE THIS WAY」からの3曲を作る過程で「Skaaiを殺さなきゃいけない」とは感じて。それはSkaaiの心の中の話で、外から見る僕はきっと何も変わってなくて。「これまでのSkaaiは死んだ」と言うと、 リスナーはちょっと突き放される感覚もあるかもしれないんですけど、これは僕の中だけで収まってる変化なんです。もちろん、意識が変わることによって作る音楽の雰囲気も変わることがあると思いますけど、いつでもスタンス自体は同じで、ずっとここで歌ってるというのは変わらないので。

ーー「死んだ」わけではなく、「殺した」ということなんですね。そうすることで、これまでの自分自身と「決別」して新しいSkaaiに。

歌い方とか具体的な技術面で生まれ変わるとかということではなくて。今の気持ちや自分が言いたいことは、ラップに当てはまるなと思えばラップをするし、歌の方が合うと思えば歌うし。ポップミュージックも好きだからポップなサウンドが今のテンションに合ってると思ったらポップも作るし。そういう意味で、自由にやっていきたいな、という気持ちの変化が強いですね。

ーー「決別」したことで変化というよりも、解放するような感じというか。

うーん、というよりも「許し」に近いかもしれないですね。今、Skaaiはこういう曲を出した方がいいとか、思いながら作っていたりしたので。そうやって自分の活動に課していた枷に縛られないで、やりたいことをやりたいようにやっても別にいいんだぜって。そういうメッセージもツアーで伝えられたらいいなと思っています。EPは重いコンセプトにしてはいるんですけど、ツアーは純粋に楽しんでほしいですね。自分がどういうタイミングでどういう曲を作ってという演出にしているので。ある転換を経て、今のSkaaiがあるんだというストーリーを伝えつつ、みんなと盛り上がったり歌ってもらったり、静かにノって楽しい時間を過ごせたらと思います。

ーーちなみに、ツアーを終えてからの次の展開もすでにイメージされていますか?

あまりSkaaiの活動を活発にするイメージではあんまりなくて。音楽活動を始める前のように、また音楽を楽しみたいなと。もちろん曲を作ってはいくんですけど、ひとりで作るとかプロデューサーとフィードバックしながら作りあげるというよりは、大勢で作ってみたりこれまでやってこなかったけどやりたかった音楽を作るとか。そういう試みをいっぱいやっていこうと思っているので、おもしろいことになるんじゃないかな。

取材・文=大西健斗 撮影=大橋祐希

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