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『TOKYO CALLING 2023』Day2
2020.9.17 下北沢
昨年までの人数制限や声出し禁止といった規制もない、完全体で行われた『TOKYO CALLING 2023』。2日目の舞台は下北沢。ロックと演劇の街として知られ、東京のライブハウスシーンや音楽カルチャーを支えてきたこの街。現在も若手バンドが出演するのにちょうど良い“小箱”と呼ばれるライブハウスが多く、下北沢を拠点に活動するバンドは多数存在。そんなロックの街・下北沢の11会場に103バンドが出演したこの日。その中から厳選した、次世代を担う6組の新進気鋭バンドのステージをレポートする。
■帝国喫茶/at 下北沢シャングリラ
帝国喫茶
2日目、シャングリラのトップバッターを務めたのは帝国喫茶。開演前、本番さながらのリハでしっかり空気感を作っていた彼ら。観客の拍手に迎えられて、1曲目「貴方日和」でライブが始まると、優しく温かい楽曲世界が、会場を一瞬で帝国喫茶色に染める。続く、「夏の夢は」の夏の終わりを彩るメロディで、この季節にぴったりな爽やかな風を吹かせると、MCではまだみんながマスクをしていた頃、東京で初めてサーキットに出演した時の思い出を語った、杉浦祐輝(Vo&Gt)。
帝国喫茶
帝国喫茶
「いまが当たり前じゃないんだというのを忘れずに、大切なことを大事にしていきたいと思って作った曲です」と、「君が月」を噛みしめるように歌い上げる。10月に最新アルバム『帝国喫茶II 季節と君のレコード』がリリースされることを告知すると、ライブは後半戦。エモーショナルな歌声と哀愁のギターが胸締め付ける「じゃなくて」、どっしりしたリズム隊と痛快なギターが心地よい「カレンダー」、パワフルで疾走感ある曲調に拳が上がった「ガソリンタンク」と畳みかけ、大きな盛り上がりを見せる中、「時間がオーバーしてしまったようで、ここで終わらなければいけないようです」と名残惜しそうに終演。多くの観客が「え~!?」と残念がっていたが、「もっと見たい!」というモヤモヤが残るのは、サーキットあるある。この続きは11月から開催される、ワンマンツアーで体感しよう。
【セットリスト】
1. 貴方日和
2. 夏の夢は
3. 君が月
4. じゃなくて
5. カレンダー
6. ガソリンタンク
■Sorry Youth/at 近松
Sorry Youth
台湾・台中の音楽フェス『浮現祭 Emerge Fest.』とのコラボステージとして近松に登場した、台湾のスリーピースオルタナティブバンド、Sorry Youth(拍謝少年)。台湾のフェスでヘッドライナーを務めたり、日本でも『SUMMER SONIC』に出演していたりと、知る人ぞ知る存在である彼ら。日本では貴重な彼らのステージを心待ちにする観客が集う中、「你愛咱的無仝款」でライブが始まる。
Sorry Youth
Sorry Youth
Sorry Youth
クールな印象の中に秘めた熱い想いを感じさせる歌と演奏、台語の響きや一曲の中に物語性を感じる曲展開。バンドの違った表情を見せるトリプルボーカルも実に面白く、ライブが進むに連れて観客がステージに惹きつけられていくのが分かる。
Sorry Youth
「我們苦難的蘋果班」に続くMCでは、マンガが好きで下北沢に憧れていたことを明かしたウェニー(Gt&Vo)。ライブ中盤は美しいバンドアンサンブルで聴かせた「踅夜市」、エモーショナルで哀愁ある「歹勢中年」と続いて、会場を自身の音楽世界で染め上げていく。巧みな演奏と豊かな表現力で魅せたラストナンバー「暗流」の壮大で幻想的な演奏は、いつまでも浸っていたいと思わせるほど引き込まれた。超帥的!
【セットリスト】
1.你愛咱的無仝款
2.我們苦難的蘋果班
3.踅夜市
4.歹勢中年
5.暗流
■Bentham/at 下北沢SHELTER
Bentham
ステージに立つ4人の堂々とした姿に貫禄さえ感じた、Bentham。1曲目「タイムオーバー」でライブが始まると、超満員のSHELTERに大きな歓声が起きる! タイトなグルーヴに映えるオゼキ タツヤ(Vo&Gt)のハイトーンに酔いしれていると、ドライブ感ある「FETEMOTION」、軽快な曲調に優しさや温かみが滲み出る「初恋ディストーション」と続き、拳を上げて手拍子を合わせるフロアがどんどん熱を帯びていく。
Bentham
Bentham
MCでは10月29日に新宿ロフトで『Bentham Presents 「FASTMUSIC CARNIVAL」』を開催することを告知すると、「大変な時期をみんなで乗り越えて、目の前にみんながいることがとても幸せです」と喜びを語ったオゼキ。
Bentham
Bentham
後半戦は7月にリリースしたばかりの最新曲「and」の感傷的な歌声で魅了すると、「TONIGHT」の前のめりなほどのアグレッシブな歌と演奏でフロアをブチアゲる。「ありがとう、Benthamでした。楽しんでくれましたか?」とオゼキが笑顔を見せ、「狂っていこうぜ!」と始まったラストは「クレイジーガール」。観客の手拍子で賑やかに始まると、演奏力の高さや表現力豊かなボーカルで魅せ、最後は会場中が掛け声を合わせて一体感が生まれる。Benthamのライブバンドとしての強さと貫禄を改めて見せつけるライブだった。
【セットリスト】
1. タイムオーバー
2. FATEMOTION
3. 初恋ディストーション
4. and
5. TONIGHT
6. クレイジーガール
■ルサンチマン/at 下北沢シャングリラ
ルサンチマン
ど頭からテンション全開。爆音と演奏と北(Gt&Vo)の絶叫でシャングリラを埋める観客を圧倒すると、「いやいやいやいや!」の雄叫びから1曲目「いやいやいやいや」でライブが始まる。ダイナミックなビートや爆音の中に繊細さを併せ持つ聴き応えある演奏、心に刺さるフレーズと胸に迫る悲痛なボーカル。「知りたい」、「tsuki ochi」と畳みかけると、ライブが進むごとにフロアの熱気がぐんぐん上がっていくのが分かる。エモーショナルな「俗生活の行方」に続くインストナンバー「fossil」は、クーラーNAKANO(Gt)の表情豊かなギタープレイが光り、高い演奏力で激しくも丁寧に楽曲世界を描き、激情的な歌と演奏でぶっ放した「荻窪」は、《なんて言うなよ!》のフレーズを観客が合わせて、多くの魅せ場を作った彼ら。
ルサンチマン
ルサンチマン
ルサンチマン
ルサンチマン
ここまでMCもナシ。伝えたいことの全てを全身全霊の歌と演奏で届け、想いを受け止めた観客が全力で応えるという、ロックバンドとしてあまりに健全な姿勢を見せてくれた彼ら。残る力を出し切ったラスト「十九」に、会場中から熱い拳が上がる。短時間ながらその存在を心に刻み、強烈な印象を残してくれるステージだった。
<セットリスト>
1. いやいやいやいや
2. しりたい
3. tsuki ochi
4. 俗生活の行方
5. fossil
6. 荻窪
7. 十九
■シンガーズハイ/at 下北沢シャングリラ
シンガーズハイ
ライブを観たのは初めてだったが、4人がシャングリラのステージに並んだ瞬間に感じたのは良い意味の違和感。1曲目「ノールス」の独創性があるというか、クセの強い歌やメロディ、耳に残るギターフレーズや《足りないオツムで考えて》と耳に飛び込む歌詞も実に興味深い。ルックス含めて、ロックスター然とした存在感に俄然、興味が湧いたシンガーズハイ。
シンガーズハイ
シンガーズハイ
アップテンポな「エリザベス」に体を揺らし、疾走感ある「すべて」に拳を上げて、彼らの巧みなライブ運びに熱狂するフロア。「SNSだなんだいうけど、結局は人間だと思うんで。今日観ていいなと思うバンドに出会えたら言語化して、発信して欲しいんです」と、音楽ライターを喜ばせるMCから、歌詞もサウンドもトガリまくった「Kid」が聴く者の心を突き刺すと、「拙い言葉でいいから、何かを分かって欲しいって意思と気持ちがあれば十分だと思う」と「daybreak」を披露。
シンガーズハイ
「この曲を思い出深い下北沢で演れるのが本当に嬉しい」と語り、《どうか一つになりそうなくらい強く繋いでいてほしい》と、強い願いを込めて届けた「climax」でクライマックスを生むと、ファストチューン「我儘」を叩きつけてフィニッシュ。短いステージにギュッと詰め込んだ彼らの伝えたいメッセージやバンドの魅力を、しっかり受け取る事が出来たと感じられた濃密濃厚な時間だった。
【セットリスト】
1. ノールス
2. エリザベス
3. すべて
4. Kid
5. 情けな
6. daybreak
7. climax
8. 我儘
■3markets[ ] /at 下北沢シャングリラ
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「こんなに残ってもらえるなんて、信じられない気持ちです。そこで気付いたんですけど、もしかして俺、死んでんじゃねぇか……?って」とカザマタカフミ(Vo&Gt)が満員の観客を笑わせたのは、シャングリラのトリで登場した3maekets[ ] 。
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勇ましいドラムとギターイントロから、「レモン☓」でスタートした彼らのライブ。生きにくさを声高に歌う、共感度の高いこの曲で観客の気持ちを掴むと、「僕はクソみたいな人間なんですが……」と卑屈なトークを挟みながら、「サイゼ」、「底辺の恋」、「タイムセール」と続けて披露。彼の歌は誰よりもピュアで優しいからこそ歌える曲だし、“これは私の歌だ”と救われる人がどれだけいることか? などと考えながら、自分自身も歌に浄化されてる感があった彼らのライブ。グルーヴィーな演奏とキレの良いラップで魅せた新曲「カニ大好き」から、高い演奏力で魅せた「整形大賛成」と続いて会場をブチアゲると、《俺は社会のゴミ》と歌う「社会のゴミカザマタカフミ」で卑屈の極みを見せた彼ら。
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鳴り止まないアンコールに「1曲だけ」と、新曲「ね。」を披露して、『TOKYO CALLING』2日目を締めくくった。終演後、笑顔溢れるフロアには妙な一体感と“明日も頑張ろう”というポジティブな空気を感じ、3markets[ ] がトリに相応しいバンドだったのだなと改めて思わされた。
【セットリスト】
1. レモン☓
2. サイゼ
3. 底辺の恋
4. タイムセール
5. カニ大好き
6. 整形大賛成
7. 社会のゴミカザマタカフミ
8. ね。
取材・文=フジジュン
撮影=帝国喫茶*photo by マスダユウタ
Sorry Youth*photo by TAMA
Bentham*photo by マスダユウタ
ルサンチマン*photo by Ryohey Nakayama
シンガーズハイ*photo by 清水舞
3markets[ ]*photo by Ryohey Nakayama