ゴホウビ
ゴホウビ 5th ANNIVERSARY ONE MAN LIVE 〜GOHOBIRTH 2023〜
2023.11.02(fri) SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
2018年11月2日に結成された“男女混声豆腐メンタル4人組バンド”、ゴホウビ。今年は1月にメジャーデビューをはたし、ドラマ主題歌も担当するなど、様々なトピックがあった4人が、2023年11月2日(金)、まさに結成記念日当日に、『ゴホウビ 5th ANNIVERSARY ONE MAN LIVE 〜GOHOBIRTH 2023〜』を、SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて開催した。4人はゴホウビ最長のセットリストで客席を魅了し、早くも来年11月にワンマンライブを行なうことを発表。5周年の感謝の気持ちと、未来への思いを力強く高鳴らしていた。
心臓の鼓動音とフィンガースナップをビートに、メンバー達が美しいハーモニーを重ね合わせたオープニングの後、「いつまでもそばにいたいなら」のポップでグルーヴィーなサウンドで、客席を一気に揺らし始める。codyの柔らかながらも芯の強い歌声と、スージーのキュートでパワフルな歌声が絡み合うと、ハッピーな空気がどんどん膨れ上がっていった。休むことなくむんちゃが跳ね上がるビートを叩き始めて、「XYZ」へ。405のうねりまくるベースが躍動感を高めていくと、codyが「まだまだあげていきましょう!」と煽り、「ラブ≠∞」「ゴキゲンなLOVER」とダンサブルなポップソングを2連発。音源の時点でバンドが生み出すグルーヴが気持ちよかったのだが、生で体感するとかなり強烈。しかも楽曲は華やかでハッピーなのもあって、ただひたすらに楽しい時間が続いていく。
cody
405
「積み重ねてきた5年間を全部出し切って、ありったけのありがとうを届けたいと思ってます」と、codyが今日の意気込みを話すと、ゴホウビが初めて世に放った楽曲である「ミッドナイトコンビニドラマ」を披露。深夜にコンビニへ買い物に出かけるカップルの光景を、男女混声ボーカルのメリットをフルに活かして描いていく。4人の手にかかれば、日常にある些細な風景やなんてことのない瞬間が、まるでドラマのワンシーンのように輝き始め、愛しさが溢れ出してくる。
そんなハートフルな空気からガラリと切り替わったのが、「壊れたシャワー」。405のずっしりとしたベースフレーズに合わせて、スージーがチッ、チッと音を立てる。調子の悪い給湯器か、あるいは、苛立ちから発した舌打ちか。〈シャワーが壊れた ショックだったわ キミにつかれた嘘より〉と、憂鬱の底の底まで引きずり込んでいった。続けてサポートメンバーの山崎裕也が情熱的なギターソロを奏でると、そこにメンバー達が音を重ねてジャムセッションがスタート。ヘヴィでダイナミックなアンサンブルを豪快に放つと、そのまま「ヤコウチュウ」に繋げた。スージーが憂鬱をなぞるようにシンセを奏でれば、codyも鬱々とした感情を爆発させるように歌い上げ、そのまま「ラーメン」へ。男女の心のすれ違いを、柔らかながらも淡々と描いていくところに、胸が強く締め付けられる。ハッピーだけでなくメランコリーにもしっかり寄り添ってくれるのがゴホウビだ。
ゴホウビ
ここでライブはアコースティックコーナーへ。演奏に入る前、メンバー達がこの5年間の活動を振り返ると、様々なエピソードに客席からは笑い声が上がっていた。するとスージーが「小さいことってものすごく忘れがちだけど、頭でよく考えて思い出して、みんなで一緒に共有したときにくすくすって笑える時間は、すごく宝物みたいやなと思うんですよね。そんなことを思いながら書いた曲です」と話し、ゴホウビを結成して、初めてリハーサルスタジオで合わせた曲という「ドラマになれない僕らの日々は」を披露。むんちゃが叩くカホンの音色が、楽曲をより柔らかな手触りにしていく中、オーディエンスのシンガロングも温かく響き渡っていた。そのままアコースティック編成で「雨宿り」へ。codyがアコースティックギターを爪弾きながら歌を届けると、そこへメンバーがそっと音を重ねていき、親密ながらもドラマティックな演奏を繰り広げていた。
「それじゃあ心を丸裸にしておもいっきり楽しんでいきましょう!」というcodyの叫びから一気にギアを上げ、「一糸まとわぬアイを見せてよ」で後半戦がスタート。codyがステージを左右に歩きながら、拳を突き上げて声を力強く放つと、ディスコティックな「なんぼのもんじゃい」では、“なんぼのもんじゃい”のコール&レスポンスを巻き起こす。405のシンセベースが曲にアンニュイな表情を持たせた「SABISHINBO STREET」では、楽器隊がパワフルなソロ回しを繰り広げると、codyとスージーもアウトロで強烈なフェイクを轟かせる。“ゴホウビエクササイズのお時間です!”とcodyがフロアをリードしてなだれ込んだのは「ラムネ」。むんちゃが叩き上げる軽快なビートに合わせ、観客が両手を左右に上げ下げすると、スージーも持ち場を離れてオーディエンスを盛り上げる。そんな彼女が「まだまだ全然いけるよね!」と叫び、「NO RAIN, NO RAINBOW」へ。瑞々しさのあるピアノロックでエネルギッシュに駆け抜けていくと、5人の音からそれまで以上に情感が滲み出てきて、それをミディアムナンバーの「ハート」が、より濃密なものにしていった。
残すところあと1曲となったところで、「悔しいこともあったけど、楽しいことのほうが圧倒的に多かった」と、改めてスージーがこの5年間を振り返る。
スージー
むんちゃ
スージー「幼馴染でも、学生時代の友達でもない、好みも個性もバラバラの人達が集まったから、まとまるのに時間がかかったけど、最近は少しずつ本当の意味でのバンドになれているような気がしてます。この5年間、本当に大切なものを失った経験も、メンバーそれぞれありました。でも、なんだかんだこうやって過ごしているのは、バラバラで全然違う人間が集まっているゴホウビだからこそではないかなと思います」。
そこからスージーは、“好みも個性もバラバラ”なメンバー1人ひとりを紹介していった。その無敵な明るさが嫉妬するほど羨ましくて、最初はちょっと苦手だったけれども、ライブ前に声の調子が悪くて不安だったときに「大丈夫じゃなくなったら、俺がなんとかするから大丈夫」と言ってくれたcody。10年以上の付き合いなのもあり、ほぼ毎日何かしらケンカしているけど、メンバーの誰よりも繊細な気遣いでバンドをフォローしようとしてくれている405。最初の頃は自分に自信がないと言いまくっていたが、最近は活動するのが楽しくて、メンバーの誰よりもファンの話を一番しているむんちゃ。いいところも悪いところも受け止めた愛のある言葉で3人のことを話すと、「心配をかけてごめんなさい。だけど、何にもなかった自分に、こんなにも特別な存在ができたこと。不安定でいろいろあるけど、なんだかんだ心から笑っていられること。それだけは安心して、どうかそばで見守っていてください」と、遠くで応援してくれている家族にもメッセージを届けた。
スタッフが作ってくれた特注のピアノ台を「武道館に連れていくのが夢」と話していたスージー。そんな彼女が今の想いをまっすぐに伝えた後、届けられたのは「好きなんだろ」だった。今は離れた場所にいる大切な人を思ったミディアムナンバーを、どこまでも遠くまで届くように、優しく、温かく、力強く奏でていくメンバー達。ポップで、キャッチーで、人懐っこさがあって、リスナーの日常に寄り添い、癒しやハッピーを与えてくれるのがゴホウビの音楽だが、その裏側にある不安や葛藤を、そしていつまでも音楽を続けていきたいという強い思いを感じさせる、エモーショナルな一幕だった。
cody
アンコールに応えて登場したメンバーは「We Are ゴホウビ!!!」を披露。再びハッピーな空気でフロアを満たしていく。しかしこの曲、サウンド感はハッピーながらも、codyのラップに目を向けると、〈楽しくいきたい 全ては自分次第 僕らはいつか証明したい〉と、自分達らしいやり方で進んでいきたいという強いメッセージが綴られている。codyは、客席に改めて感謝を伝えながら、今の気持ちを伝えていた。「俺達にはまだまだやりたいこと、達成していきたいこと、見たい景色、見せたい景色が山ほどあって。2024年は今まで行けていなかったところにも直接音楽を届けに行きたいし、みんながワクワクするような、みんなの期待を超えていけるような新曲もたくさんリリースして行きたい。これまで以上に、みんなともっともっと楽しんでいく年にしたいと思ってます」と宣言し、2024年11月15日に、渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを開催することを発表した。
cody「本当に埋めることができるか、不安な気持ちも正直あります。だからすごく悩んだけど、俺達は今までも、自分達の音楽を信じて、いつだって心が高鳴るほうを選んでやってきました。今回もそう。だからやるよ。絶対に埋めてみせる。この1年、死に物狂いで頑張って、絶対にパンパンになったクアトロをみんなに見せるので、2024年のゴホウビを楽しみにしていてください!」
そして、この日のラストナンバーとなった、メジャーデビュー曲の「好きな服」へ。〈光が照らす道を 好きな服で行こうぜ〉。決して完璧じゃなくとも、力強く、自分達らしく、一歩一歩前に進んでいきたい。そんなメッセージを、心がぐっと温かくなるバンドサウンドとメロディに乗せて熱く届けると、客席からは大きな拍手が送られていた。
5回目の誕生日を大団円で締め括り、次のステップへ歩み出したゴホウビだが、この日、自身のYouTubeチャンネルで「HOBI LABO〜ゴホウビ研究室〜」をスタートさせることを発表。この番組は、毎回ゲストを招き、アコースティックセッションやトークを繰り広げるものになるとのこと。この日披露されたアコースティックコーナーも素晴らしかったし、緩めなトークにもほっこりさせられたところもあったので、ゴホウビのいいところが凝縮されたプログラムになりそうだ。楽しみにしていたい。そして、2024年。4人はどんな音楽を紡ぎ出していくのか。1年後のクアトロワンマンと、その先の未来まで期待が高まる一夜だった。
取材・文=山口哲生 撮影=Kato Shumpei
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