Chilli Beans. 撮影=仲原達彦
自身2度目の全国ツアー『Chilli Beans. TOUR 2023「for you TOUR」』をまわりつつ、全国各地の夏フェスに出演。さらに12月13日にリリースされる2ndフルアルバム『Welcome to My Castle』に向けて楽曲制作も……と、怒涛の夏を駆け抜けたChilli Beans.。多忙な日々を過ごす3人に時間をもらい、近況を訊いた。
――今日はファンクラブライブの開演前にお邪魔していますが、今年の夏はワンマンとかフェスとか、いろいろなライブがありましたよね。
Moto(Vo):フェスは自分たちのことを知らない人も多いから緊張するんですけど、今日はワンマンだし、ファンクラブだし、多分、みんな曲を知ってくれているだろうなと。安心するというか、すごく楽しみです。
Lily(Gt,Vo):めっちゃ開放感あります。
――今年の夏はワンマンツアーがあり、全国各地のフェスにも出演し、アルバムに向けた制作もあり、忙しい日々を過ごしていたんじゃないかと思います。特に印象に残っているライブはありますか?
Maika(Ba,Vo):ツアーファイナルでは、ずっとやりたいと思っていたLEDを後ろに置いて、シルエットっぽく見せる演出ができたのが嬉しかったです。ライブをやっている最中もすごく楽しかったですし、後日映像を見て、すごくいいライブだったなと改めて思いました。
Lily:私は『FUJI ROCK FESTIVAL '23』です。山の中のフェスっていう環境がすごく面白かったし、いろいろ衝撃的でした。自然の中で音楽を聴くと、本当に、心から楽しめるんだなって。来ている人みんな自由な感じで、いろいろな音楽が好きな人が集まっている感じも印象的でした。私も、普段あんまり聴かないジャンルのライブを観に行ってみたりして、「カッコいいな」と刺激を受けました。
Moto:私は、ツアーの大阪と、『SWEET LOVE SHOWER 2023』です。ツアーは毎公演みんなの熱気がすごかったんですけど、大阪は特にすごくて楽しかった。『ラブシャ』はすごく好きなフェスなので、1年前から楽しみにしていたんですよ。それなのに私が体調を崩してしまって、声が上手く出なかったので、自分の中でずっと悔いが残っていて……。
――来年以降リベンジしたいですね。
Moto:はい。
Moto(Vo)
とにかく目まぐるしかったんですけど、「こういうことがしたい」「こういうものを作りたい」というものを見失わずにいられた。
――一番スケジュールが詰まっている時って、どんな感じでした?
Maika:8月の下旬ですかね。8月24日にツアーで金沢に行って、25日は移動で、26日に仙台でワンマン。しかも27日の『ラブシャ』がトッパーだったので、ほぼ寝てなくて。その時期が一番大変だったと思います。……いや、8月は全体的にヤバかったかもしれない。その前の週は台湾に行っていたし。さらにその前の週は、北海道で『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2023 in EZO』に出てからの広島でツアー初日……しかもその前後がレコーディングだったんです。
――うわあ……。
Moto:それで『ラブシャ』の時に体調崩しちゃったんですよ……(悔しそうな様子で、Lilyの肩にもたれながら)。
Lily:あれはしょうがない。
Maika:この夏はめっちゃ場数を踏んだので、今「成長した」と思えているわけではないけど、きっと後からそう思えるんじゃないかと思っていて。
――そうですね。Lilyさんはこの夏、いかがでしたか?
Lily:この夏はとにかく暑かったじゃないですか。私、人生で初めて足を攣ったんですよ。「水分が足りないからだね」と言われて、「そうなんだ」と思った覚えがあります(笑)。去年と違ったのは、ライブでいろいろなところに行っても、みんながウェルカムしてくれている感じがあって。今年はお客さんの声も聞けたし、それがめっちゃ嬉しかったです。
――Motoさんは?
Moto:ワンマンツアーがあって、フェスにもいっぱい出て……やることがたくさんあって、とにかく目まぐるしかったんですけど、前までのように「もう無理! ついていけません!」という感じではなく、一つひとつの出来事を覚えているし、ちゃんと向き合えた感じがします。「こういうことがしたい」「こういうものを作りたい」というものをちゃんと見失わずにいられたし、“頑張る”というよりも“楽しむ”という感じで過ごせました。
――それは頼もしい。忙しい時期を乗り切るためのリフレッシュ方法などはありましたか?
Lily:私は、ドーナツを食べることですかね。クリスピークリームドーナツで売っている、チョコスプレーのかかったドーナツがあるんですけど、あれがお気に入りなんです。食べ物だけは私を裏切らないんですよ。絶対においしいし、しかも自分からいなくなったりしない。「君だけは私を癒してくれる」みたいな感じ?(笑) そういう安心感、絶対的な信頼感がドーナツに対してはあって。『フジロック』から帰ってきた日も、帰り道で買って帰りました。むしろ、買っただけで癒される、「手に入れたぞ!」って(笑)。
Maika:私は、一人でボーッとすることかな。静かなところでYouTubeとかを見ます。
――そういう時はどんな動画を見るんですか?
Maika:新しい動画じゃなくて、何度も見た動画を見ます。5周目の『トークサバイバー!』とか(笑)。もうオチまで全部覚えているんですけど、それを見たりする。
――それもある意味安心感なんですかね。この動画は私を裏切らない、という。
Maika:そんな感じです(笑)。変わらないでいてくれるな、って。
――Motoさんは?
Moto:えー、何だろう……。ひなたぼっことか?
Lily:「帰ってきたら必ずこれをする」みたいなことってないの?
Moto:ラーメン食べる。その瞬間だけ幸せな気持ちになれるから。だからこの夏は、各地のケータリングに癒されていました(笑)。あとは、新幹線に乗る時に、新幹線になりきったり。
――新幹線になりきる?
Moto:前に、飛行機に乗るのが怖くて嫌だって言ったら、Lilyから「大丈夫だよ、飛行機に乗っているんじゃなくて、自分が飛んでいると思えばいいんだよ」と言われて。それと同じような感じで、意思を持つと「また移動か」ってつらくなるから、新幹線に乗る時は新幹線になりきる。
――Motoさんはそういうことをやっていたと。
Moto:いや、3人全員でやっていました。
Lily:フェスに出演するときはトッパーが多かったから、移動がちょっと大変だったんですよね。だから飛行機では絶対にコンソメスープをもらって、「おいしい!」って、小さな喜びを感じてみたりとか。そうやって自分の機嫌をとっていたようなところはありました。
――曲作りも、移動時間を活用して?
Lily:移動中とか隙間時間に、3人で曲について「こうしよう」とか「どう思う?」って話して。それを各自で持ち帰って、作り始めるような感じでした。
Lily(Gt,Vo)
最近、実機の良さ、ギターの生音の良さに改めて気づいたんです。レコーディングをしながら、私ってやっぱりギターが好きなんだなと実感しました。
――なるほど。アルバムリリースに先駆けて、10月11日に配信された「I like you」は、どのように作り始めた曲ですか?
Moto:今、12月に出るアルバム『Welcome to My Castle』を作っている最中なんですけど、そのアルバムに入る曲として作り始めた曲で。
Maika:アルバムのラストに入れる予定の曲なので、「こういう情景がいいよね」という話をみんなでしました。どういう情景なのかは、アルバムの内容に繋がっちゃうので、まだ言えないんですけど。
――ドラマの主題歌だけど、ドラマに寄せたわけではなく?
Moto:ドラマの主題歌の話をいただいたときには、もうある程度出来ていて。何曲か提出して、この曲を選んでもらいました。
――それは意外でした。SFっぽくて浮遊感のあるサウンドと、恋心を唄った歌詞の組み合わせが、ドラマにぴったりだなと思っていたので。「こういう曲にしたい」というイメージはありましたか?
Moto:穏やかで優しい雰囲気の、「ただ、そこにある」という感じの曲にしたいなと思いました。生っぽいサウンドというよりかは打ち込みっぽくしたかったので、まずは自分でドラムを打ち込むところから始めて、サウンド→メロディ→歌詞という順番で作っていきました。
――ということは、Motoさん主体で作っていった?
Moto:そうですね。アルバムを作る上でそれぞれ担当を決めているんですけど、この曲は私の担当でした。
Maika:さっきも言ったように、アルバムの最後の曲ということで、「こういう情景を描けたらいいよね」という部分は事前に共有していたので、Motoが作ってきてくれたサウンドを聴いた時に、「すごい、本当にそんな感じがするなあ」と思って。この曲、シンベ(シンセベース)で打ち込んでいるんですけど、「こういう音にしたい」と考えるのがすごく楽しかったです。
Lily:私も「ギター、早く入れたい!」って思いました。あと、歌詞もすごく好き。
――歌詞もすごくシンプルですよね。
Moto: シンプルな曲だから、歌詞も飾らない感じにできたらいいなと思って。いつもは「こんなひねくれたことを言ったら面白いんだろうな」とか「ちょっと逆に行ってみようかな」って思うんですけど、この曲はそうじゃなくて、今自分がいる環境や、関わってくれている人に向けた気持ちも織り交ぜながら、すごく素直な気持ちで書くことができました。
――タイトルが「I like you」なのは? 「love」ではなくて「like」というところに、こだわりを感じたのですが。
Moto:「love」って恋人とかに向ける気持ちじゃないですか。それだと、ちょっと距離感が近すぎる。「like」は相手のことをすごく大事に思っているからこそ、「近づかないけど、ちゃんと見ているよ」という感じ。「love」より「like」にした方が、無垢な感じ、素直な感じがより出るんじゃないかと思いました。
――あと、《君の嘘が好きだよ》《どんな嘘にも綺麗に溺れるよ》といった言い回しが印象的でした。
Moto:「嘘つかれた」と思っても、その人にとっては嘘ではない可能性もあるなと思っていて。例えば「その服かわいいね」と言ってくれた相手の顔が笑っていなかったとしたら、「あ、本当はかわいいと思っていないけど、気を遣って、嘘をついてくれているんだ」と思ってしまいそうになる。でもそうじゃなくて、その人は本当にかわいいと思っていて。こっちがただ疑っているだけかもしれないですよね。歌詞にある《嘘に溺れる》というのは、「言ったことは全部素直に信じるから、変わらないまま笑っていてよ」とか「嘘でも本当でも、どっちでもいいよ」っていう感じ。そういう気持ちでいるのは難しいんですけど、「こう思えたら理想的だよね」と思いながら書いてます。
Maika(Ba,Vo)
“聴く”というより“中に入る”という感じの、没入型のアトラクションみたいなアルバムだと思っていて。武道館にも、そういうつもりで来てほしいです。
――アルバムの制作の進捗はどんな感じなんですか?(インタビュー当時)
Lily:あと2曲です! ……え、すごくない?
Maika:すごいよね。
Lily:今聞かれるまで気づきませんでした。いつの間にかあと2曲という感じ。最近、実機の良さ、ギターの生音の良さに改めて気づいたんですよ。プラグインの音も好きだから、前までは実機に対する熱意ってそこまでなかったんですけど、アルバムに向けてレコーディングをしながら「やっぱり実機で録るって全然違うな。めっちゃいい!」ということに気がついて。その場の空気感が本当にそのままレコーディングされるし、ミックスした時の仕上がりも全然違う。やっぱり立体的だし、そこにちゃんと物語があるんですよね。そういうのがすごく楽しくて、私ってやっぱりギターが好きなんだなと実感しました。
――リリース後には、音色の違いも聴いてもらえたら嬉しいですね。
Lily:はい、こだわっているので絶対に聴いてほしいです。実機の良さにも気づけたし、プラグインのちょっとふわふわした音色もやっぱり好きなので、上手にくっつけて、表現できたら楽しそうだなと思います。
Maika:私もLilyと同じで、今、ベースを弾くのがすごく楽しいんですよ。今回のレコーディングではいろいろなベースを使っているし、シンベも買ったし、「シンセみたいだけど、実機で弾いてます」みたいな不思議なペダルを使ったりもしていて。1stアルバムを作っている時は「今自分の実機から出る生音が全て」という感じで、体当たりというか、ペダルにこだわることも特になかったんですよ。だけど今回はいろいろな手段を試しながら、音で遊べている感じがします。いろいろなベースの音が鳴っているはずなので、楽しみながら、聴いてもらえるんじゃないかと思います。
――今のお話を聞いて、アルバムがますます楽しみになりました。アルバムのタイトルは『Welcome to My Castle』。来年2月3日の武道館公演にも同じタイトルがつけられていますが、改めて、このタイトルに込めた想いを聞かせてください。
Moto:3人で駅のホームを歩いている時にふと「次のアルバムは、お城みたいな世界観で作りたいよね」という話になって。人の気持ちには波があるじゃないですか。荒れている時もあれば、穏やかな時もある。同じように、私たちのお城にはたくさんの扉があって、いろいろな世界に繋がっているので、ぜひ、このお城の中に迷い込んでください、という気持ちでいます。
――「お城にご招待します」ではなく「迷い込んでください」というのがチリビらしいですね。
Moto:招待なんて、そんな甘くないですよ!(笑)
――(笑)。どんなアルバムになりそうか、少しで構わないので、教えてもらえますか?
Moto:今できている曲を自分で聴いていても、かわいくて、カッコよくて、不思議な世界を体験できる曲たちだなと思うので、みんなにも、すごく楽しんでもらえるんじゃないかと思っています。日常におけるちょっとしたプレゼントじゃないですけど、そういう感じで楽しんでもらえたらすごく嬉しいです。
Lily:今回のアルバムは、音楽から見える景色があるというか、耳で聴く以上の情報があると思って。見える景色は人それぞれ違うと思うけど、自分自身と対話するような感じで、ぜひこのお城に迷い込んでほしいなと思っています。
Maika:2人も言ってくれたように、“聴く”というよりかは“中に入る”という感じの、没入型のアトラクションみたいなアルバムだと思っていて。武道館にも、そういうつもりで来てほしいです。
――因みに、「武道館決まったよ」とスタッフさんから報らされたのはいつ頃でしたか?
Maika:確か、1stワンマンツアー(2022年11~12月『Chilli Beans. one man live tour「Hi, TOUR」』)が始まる前だったと思います。「再来年(2024年)の2月3日に武道館が決まりました!」って。
Lily:再来年って言われて、「私、何歳になっているんだろう?」と真っ先に思いました(笑)。それくらい実感がなくて。
Maika:みんな「へぇー、すごい!」って感じでした。
Lily:「本当に? 埋まるの?」みたいな。
――当時はワンマンツアーもまだやっていなかったわけですしね。ライブの日が着々と近づいてきていますが、今はどんな気持ちですか?
Moto:楽しみです! アルバムをリリースしたあとだから、曲も増えるし、すごく楽しみ。武道館だからできることがないかと、今考えているところです。
Maika:この前のツアーファイナルで「空間演出ってめっちゃ楽しいな」と思ったところだったので。武道館はさらに規模が大きいから、どんなことができるかなと、楽しみにしています。
Lily:聞いたところによると、武道館ってお客さんが意外と近いらしいんですよ。ステージからの景色はどんな感じなんだろうと想像しつつ……「お客さんの顔もしっかり見えるよ」と言われたので、実はちょっと緊張しています(笑)。対策を考えないと。サングラスかけようかな。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=仲原達彦