筋肉少女帯、「ツアー『一瞬!』~メジャーデビュー35周年記念」ファイナル公演が大盛況
メジャー・デビュー35周年を迎えた2023年、筋肉少女帯が「ツアー『一瞬!』~メジャーデビュー35周年記念」を開催。10月26日神奈川・川崎CLUB CITTA’を皮切りに、合計4本からなる東名阪ツアーとなった。全会場のチケットがすぐにソールドアウトというプレミアムなライブでもある。
そのツアー・ファイナルにあたるのが、11月22日=東京・Zepp DiverCityでのライブ。ほぼ定刻、会場が暗転する中、流れ始めたのは「ツアーファイナル」。今回のツアーの中でも最終公演のこの日だけは「ツアーファイナル」をSEに使用。激しくテンションの高いそのナンバーに、ファンの興奮も一気に高まり、熱狂の渦が早くもフロアに作られていく。そして大歓声に迎えられて登場した大槻ケンヂ(Vo)、橘高文彦(G)、本城聡章(G)、内田雄一郎(B)。さらにサポートの長谷川浩二(Ds)と三柴 理(Pf)。
フロントに立つ筋肉少女帯の4人は、客席に背中を向け、長谷川のフィルを合図にバンド・サウンドをとどろかせた。直後、全員が振り向き、客席を埋め尽くしたファンと笑顔でコンタクト。噂の開脚ジャンプこそ決めなかったものの、大槻が煽るように何度も声を張り上げ、三柴を指差した直後のこと。長谷川のフィルと三柴のシンセ・フレーズが炸裂し、突入したのは「サンフランシスコ」。デビュー35周年を記念したベスト・アルバム「一瞬!」のオープニングも飾る、激しさも狂おしさも切なさも共存するナンバーだ。
ステージ最前のギリギリのところに立ち、ファンの喜ぶ表情も確かめながらフレーズや歌で煽る筋肉少女帯の4人。三柴と橘高の掛け合いソロでは、ドラム・ライザーに駆け上がった橘高がピアノを弾く三柴を挑発し、今度は三柴がコンダクターのように手を振ってソロを弾く橘高を盛り立てる。そしてフロアでは、ファンの振るペンライトの光が波のようにうねり続け、ライブをさらに激しく演出。さすがデビューから35年、筋肉少女帯とファンの息もピッタリだ。広がる光景も胸を熱くさせていくばかり。
「イェー! 今夜はいい感じ、ありがとう!!馴染みの飲み屋に来たようで嬉しい。1~2時間、話を聞いてほしい。でもたいした話題は、なんにもない。ただひとつあると言えば、それはなにかと問うならば! 今夜はツアー・ファイナルですよ!! 今夜はもうひとつ、いいことがある。それがなにかと問うならば! なんと、なんと、全会場がソールドアウトですよ!! 筋肉少女帯、勢いに乗っちゃってるんじゃないの。ヤバいよ~、バンド・ブームじゃないの」━━大槻ケンヂ
そう話しながら、原稿ではカットさせていただいているが、随所に話題も放り込むのが大槻。このまま1~2時間、話し続ける勢い。だが、今回のツアーではしゃべり過ぎてノドが疲れたことを自覚したそうで、今夜は楽曲中心でガンガンやっていくという。と言いながら、延々とトークにいそしむ大槻である。本城からは「これは曲をやらねえな(笑)」とツッコミも入り、黙ってうなずく内田でもあった。
ともかく10分近く経ったとき、ようやく演奏が再開。充分にキャリアを重ねているバンドながら、やはりツアーを行なってきたことは大きい。全員が完全にライブ・バンドのモードに入っているんだろう。バンド・サウンドが一塊になったときの重厚さ、各メンバーの演奏のキレ、ファンを一瞬で引き込みながら頼もしく引っ張っていく大槻の歌と存在感。曲のたびに多彩な表情や表現力も発揮しながら、ファンの身も心も突き動かし続けていく。
言葉どおり、曲をガンガンと決めるライブだが、しかし、油断は禁物だった。MCになると、大槻のトーク・ショーと化す。しかも“ライブ・レポートに書かないで”と言いながら、おもしろい話題に入るというワザ。映像化した際にも収録されるのか、編集点を作るように話していたぐらいだから、今のところ不明だ。ともあれ、この場に来た者しか知り得ない秘密も共有し、筋肉少女帯とファンの絆はますます強まるばかり。衣装チェンジやメンバー紹介も兼ねたトークも挟みながら、様々な楽曲で楽しませ続ける筋肉少女帯だ。
また、デビューから35年ともなると、活動を凍結していた期間もあったとはいえ、オリジナル・アルバムはすでに21枚。膨大な曲数から選び抜いたのが、2023年6月に発表したオールタイムベスト「一瞬!」である。新曲や新録音曲も含めて32曲が収録されている。このツアーはその「一瞬!」を軸にしたもので、楽曲中心にガンガンやるとはいえ、ライブで全曲を披露するのは時間的に不可能。つまり、オールタイムベストからさらに厳選したナンバーで構成されているのが、今回のライブである。
時代を行ったり来たりしながらであるが、「一瞬!」にまとめたことで、どの楽曲も現在進行形として呼吸させたと思う。それをライブで演奏することで、メンバーそれぞれが培ってきたワザやセンスも原曲に散りばめながら、さらに楽曲を成長させている。それにライブでは意外な流れも作りながら、ふり幅のでかさをまざまざと見せつけてくる。音楽的にも、あとトークの話題も、昔からなにが飛び出てくるか分からない未知数なバンドが筋肉少女帯。35年経とうが、そこは一切変わることがない。いや、年齢を重ねたから今だからこその技術に裏打ちされた自由奔放さと、仲の良さが自然に滲み出るメンバー間のやり取りは、今の筋肉少女帯のとてつもない魅力になっている。
高い音楽性と説得力あるプレイやボーカルをたっぷり味わせながら、ライブ本編を締めくくったのは「Guru 最終形」。美しいメロディや曲構成が気持ちを酔わせ、ファンが光らせるペンライトが心地よく揺れる。そして曲がエンディングに向かうにつれ、サビのコーラスの合唱も自然に会場に広がっていく。さらに演奏しながら互いに表情を確かめ合うメンバーとファン。筋肉少女帯とファンが作り出す本物の感動が、ライブのラスト・シーンとなった。
しかしアンコールが鳴りやむことはない。何度も感謝しながらメンバーは再登場。そして大槻がバンドを代表して言う。
「みんな、ありがとう。2023年もあとちょっとですけど、2024年もいろんな活動していけたらなと思っています。タイミングが合うとき、みなさん、また会いましょう。ツアーの1本1本がまざまざと思い出として残っています。そして今夜もまた、永久に僕たち筋肉少女帯の心に刻みつけられることだろう」━━大槻ケンヂ
真面目なトーンで語るものの、客席から笑いも起こった。というのは大槻が、ライブ本編で“ツアーの思い出、なにひとつ覚えてない”と散々語っていたから。しかし演奏になれば、曲の世界にグッと入り込ませる筋肉少女帯である。プログレッシブ・ロックの組曲を彷彿とする「エニグマ」では、バンドの持つ底なし沼のような音楽性とプレイ・センスで圧倒。そして「先に言っとく。メリー・クリスマス! よいお年を!!」と大槻の言葉でアンコール・ラストは「釈迦」。ステージから放たれる音を全身で浴び、コーラスをメンバーと共に絶叫する全てのファン。そのエネルギーを受け止めながら、激情と衝動をプレイや歌で繰り出し続ける筋肉少女帯。激しい鼓動と熱が、ライブのエンディングを飾った。
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