IN THE FLIGHT設立7周年ファイナル下北沢ADRIFTはsumika[camp session]、kojikojiら所縁のアーティス トが集う奇跡の夜に

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IN THE FLIGHT 7th Anniversary Advent Calendar

IN THE FLIGHT 7th Anniversary Advent Calendar

IN THE FLIGHT 7th Anniversary Advent Calendar  2023.9.27  ADRIFT

下北沢にあるキャパ300入るかどうかのハコ・ADRIFTにsumika[camp session]が出るという、極めてレアかつセンセーショナルなイベント『IN THE FLIGHT 7th Anniversary Advent Calendar』。以下のテキストはその当日のレポである。

IN THE FLIGHT 7th Anniversary Advent Calendar

IN THE FLIGHT 7th Anniversary Advent Calendar

sumika[camp session]のライブがこの規模、この距離感で体験できるといったら、もはやちょっとした事件だ。なぜそんなことが実現したのかといえば、sumikaとsumika[camp session]のスタイリストでありメンバーが"カリスマ"と呼び慕っている兄貴分でもある加藤 runpe 将氏が、ここADRIFTのイベント企画に携わっているから。そしてこのイベントが加藤氏の会社・IN THE FLIGHTの設立7周年を記念したシリーズのファイナルだからである。なお、同社はオープニングアクトのUEBOが所属する事務所でもあり、もう1組の出演者であるkojikojiも過去にADRIFTが主催するライブに何度か出ているなど関わりが深い。

DJ SHOTA

DJ SHOTA

DJ SHOTA / YAMORI

DJ SHOTA / YAMORI

アトリエやミュージアムを思わせるモダンな建物に入り、フロアへ向かうとDJプレイが始まっていた。DJバトルのチャンピオン経験者、数々のEDMフェス等にも出演する実力者・DJ SHOTAが、R&Bやスタンダード感あるポップスなどをメインに心地よく場内を揺らしていく。ウェルカムパフォーマンスから豪華すぎる人選だし、音響システムにもこだわっているハコだけあって、キレのあるスクラッチから建物を震わす重低音までとにかく音が良い。開演10分ほど前になると、もう一人加わってヒューマンビートボックスとDJプレイの応酬に。リズム部分だけでなくホーンなどの上物やボーカルまで一人で担い、エレクトロやポストダブステップ的な音像を構築していくのは、"ヒューマンビートシンガー"を自称するYAMORIだ。筆者含め初見の人も多かったと思うが、視覚と聴覚の情報が整合しない離れ業を次々と繰り出して喝采を浴びた。

UEBO

UEBO

UEBO

UEBO

すっかり温まったステージへと上がったUEBOは、オープニングアクトではあるもののたっぷり全7曲を演奏。なお、この日は全組が7曲ずつ(sumika[camp session]のみアンコールで1曲追加)のセットリストで、これはIN THE FLIGHTの7周年にちなんだものと思われる。登場するや「めちゃめちゃたくさん人おるー!」とはしゃぐなど溌剌として明るいキャラクターだが、一曲目に弾き語った「Sign」のコード感やタッチはさらっと洒落ているというギャップが面白く、レゲエやサーフミュージックのニュアンスも感じるサウンドは洋楽的でもありつつ、日本語詞がメインで聞き取りやすいため情景もよく浮かぶ。「Moonlight Wedding」で唐突に自分の名前を「UE」と「BO」に分割したコール&レスポンスを仕掛け、即座に反応した観客たちのレスポンスの良さに無邪気に喜んでみせる、といった人懐っこい振る舞いもあってか、ごく自然に受け入れられていた印象だ。語りかけるような調子でおだやかに届けた「Title」を経て、自らのレーベルのボスである加藤氏について「面倒臭い奥にとんでもない優しさがある人」と語り、最後に披露したのは「めんどくさいや」。この日のセットの中でもとりわけポップスとしての強度とセンスが光る一曲でライブを締め括った。

kojikoji

kojikoji

kojikoji

kojikoji

2番手のkojikojiは、「星を見上げる」「愛のままに」からスタート。いずれもBASIの楽曲をkojikoji流に仕上げたもので、シンプルなギターフレーズを浮遊感のあるウィスパー混じりの歌声を乗せていく。メロディアスな部分とラップ調のパートがシームレスに混じり合い、どんどんこちらを引き込み聴き入らせていく歌。曲によってアコギとエレキを持ち替えるが激しく鳴らすことはほぼ無いミニマムな演奏。両者が合わさることで生まれる、じんわりと沁み入る音に身を委ねる時間が続く。その一方で、MCになると急にたどたどしくなるのが微笑ましいkojikoji。中盤にはゆらゆら帝国の「恋がしたい」をカバー。20年前の、しかもロック色の強いアーティストの楽曲をチョイスした上で、ライブ上なんの違和感もなく並ぶよう彼女流に仕上げてくるあたりのセンス、バランス感覚も秀逸だった。後半には松任谷由実「ルージュの伝言」を一節歌ってから繋いだ「vibes」のグルーヴィな演奏で熱量を上げ、ラストはリリース前の新曲「金柑」を演奏。優しいアコギと歌が織りなすフォーキーな音を届けてくれた。

sumika

sumika

片岡 健太

片岡 健太

トリを務めるのはsumika[camp session]。転換が終わり幕が開くとメンバーが既にスタンバイしており、すかさず大歓声が起きる。溢れんばかりの期待に応えるように、1曲目の「知らない誰か」から、ポップで歯切れよいサウンドが場内を弾んで回る。荒井智之のドラムは通常形態での力強さよりも、自転車のペダルをスイスイ漕いで行くような軽やかな推進力でビートを刻む。続く「ユートピア」で小川貴之がジャジーな鍵盤ソロを決め、片岡健太(Vo/Gt)もさらっとテクニカルなフレーズを差し込むといった、各自の見せ場が距離の近いぶんよく分かった。片岡の歌に関してもいつも以上に親密に響いてくる。そこへ小川によるコーラスも加わり、キャッチーかつパワフルに歌われたのは「ソーダ」。さらに「ファンファーレ」とsumikaの楽曲もアレンジを加え演奏され場内を沸かす。

小川 貴之

小川 貴之

荒井 智之

荒井 智之

MCでは"カリスマ"加藤氏との出会いやエピソードなども明かした。彼との交流の中でファッションもライブの一部であるという認識を持つようになるなど、価値観そのものを変えてくれた存在であると片岡。ファッションに限らずアートワーク等も含め、sumikaとsumika[camp session]は音楽以外の部分までトータルコーディネートした打ち出し方で、自分たちの魅力を一層引き立たせ、打ち出している印象があるが、その源流は加藤氏との出会い・交流にあるのかもしれない。そして全体的にかなり饒舌で砕けたトークも全開だったことが、彼らと加藤氏の絆を何より表していた。ライブは後半へ向かい、荒井がカホンを担当してメンバー3人のみで披露したミドルバラードの「春風」は、音数の少なさとは裏腹に一際エモーショナルな仕上がり。「辛いことの方が個数としては多い」としながらも「楽しいことの質の方が大事だから、今日みたいな日があれば頑張れます」と告げた後の「言葉と心」では、大サビで回り出したミラーボールの光の粒が場内を巡る。盛大なクラップに後押しされたラストの「浮世パスポート」はとびきり明るく、フロアとの掛け合いも交えながら駆け抜けた。

sumika

sumika

アンコールに応えて再びステージに戻ると、どう考えてもやらないはずがないのにここまでやっていない曲……というか、この曲をやりに来たんでしょう?という曲、兄貴分に捧げる「IN THE FLIGHT」を満を侍してドロップ。レゲエ調の陽性なサウンドに乗って会場中が<IN THE FLIGHT>のリフレインをコール&レスポンスするという、ユーフォリックな締めくくりとなった。

一人のスタイリストとバンドとの出会いは約7年の時を経て、大人気バンドのライブを至近距離で味わえるプレミアムな一夜へと繋がった。その時点で充分素敵な物語ではあるのだが、この日の意義はそれだけではなかった。このライブがワンマンではなく対バンとして行われたことで、世代やジャンルのクロスオーバーの場としても、新たな音楽との出会いの場としても機能したに違いない。この日の音楽体験を、新たな扉を開くキーとして持ち帰ったリスナーも少なくないはずだ。

取材・文=風間大洋

sumika

sumika

 

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