からあげ弁当
MUSIC DIVE #1 supported by SPICE
2023.11.16(THU)新代田FEVER
令和の若きバンドたちが、ライブハウスに新たな渦を巻き起こす! イベント企画、制作を行う808株式会社が手掛ける、いまライブハウスを席巻する新進気鋭のバンドたちが全国を駆け巡るイベントツアー『MUSIC DIVE #1 supported by SPICE』が、仙台、名古屋、大阪、東京にて開催。ツアーファイナルとなる東京公演が、11月16日(木)新代田FEVERにて開催された。バンドとリスナー、バンドとバンド、そしてリスナーとリスナー。それらを繋ぎ、「MUSIC」に「DIVE」するイベントを目指しているという、『MUSIC DIVE』。東京公演に出演したのは、からあげ弁当、ガラクタ、パーカーズ、Laughing Hickの4組。彼らやイベントへの注目度の高さは、平日ながら10~20代を中心としたお客さんでしっかり埋まったフロアの様子を見れば一目瞭然。観客の期待が存分に高まる中、いよいよイベント最終日が幕を開ける。
■からあげ弁当
からあげ弁当
この日のトッパーを務めたのは、からあげ弁当。「『MUSIC DIVE』東京編、ブチアゲて帰るだけ! ストレート・ロックンロール!! 俺たちがからあげ弁当だ!!!」と焼きそば(Vo,Gt)が叫び、気合い十分に始まった「チキン野郎」で勢いよくライブの幕を開ける。こーたろー(Dr)のパワフルに突き上げるビート、バンドサウンドを重低音でどっしり支える春貴(Ba)のベース、そしてアグレッシブな歌とギターでバンドをリードする焼きそば。間髪入れずに新曲「バカ野郎」へ続き、三位一体となった音塊とエネルギーをぶっ放すと、フロアがどんどん熱を帯びていく。
からあげ弁当
聴く者の背中を押す「brother」、青春感ある「街を走る」をしっかり聴かせると、エモーショナルなミディアムチューン「again」へ。楽曲の表情を繊細に描く歌と演奏から、若さと勢いだけでないバンドの魅力がよく見える。ベンツと事故ってヒドい目に遭ったエピソードで笑わせたMCでは、12月6日に初のフルアルバム『I am hungry』を発売し、来年1月からは東名阪で『満腹になれツアー』を開催することを告知。
からあげ弁当
さらに『MUSIC DIVE』大阪編で音が出なくなったトラブルについて話すと、「焦ったんですけど、生のライブってええな、バンドってええなと思って。本当に思ってしまって。これからもそんな空間を大事にしていくんで、お互いに大事にしていきましょう」と告げ、「乾杯をしよう」へ。観客の手拍子に生のライブの良さを噛みしめるように歌ったこの曲から、「先週の借りを返します!」と始まった「美々」で熱のこもった歌と演奏を聴かせると、ライブはクライマックスへ。
からあげ弁当
いつの間にか上半身裸になってた焼きそばが「普段、頑張ってるあなたに向けて歌います」と告げ、《君だけの歌を歌いたい》と歌う「Your song!!」を届けると、メッセージに応えるように拳が上がるフロア。ラストは勢いある「衝動に身を任せて」でしっかり会場中の心を繋ぐと、「元気無くなった時は、ロックバンドを聴いて元気出して下さい。また会いましょう!」と短いライブ時間を駆け抜けた3人。まだまだ荒削りながら、彼らがロックンロールを通じて伝えたいことややりたいことがしっかり伝わってくる、とても良いアクトだった。
■ガラクタ
ガラクタ
続いては、ジャカジャーンと賑やかに始まり、「名古屋から来た、ガラクタです。よろしくお願いします!」という挨拶で始まったガラクタ。ポップでダンサブルな「貴方依存症」で観客の体を揺らし、はる(Vo,Gt)の耳心地良いハイトーンボイスで観客の心を掴むと、「どこかへ行こう」へと続き、フロアから自然発生的に起きた手拍子に、はるが「ありがとう」と嬉しそうに告げる。こた(Gt)やひろと(Ba)が独創的な世界観を丁寧に作り上げるバンドサウンドや、歌のメロディ感や語感を大事にした言葉の乗せ方が実に心地よい彼らの楽曲。ガラクタのライブを観るのは初めてだったが、バンドの持つ世界観にスッと入り込めたし、それがすごく気持ち良かった。
ガラクタ
ガラクタ
性急なビートと高速ボーカルの「1分1秒」で序盤戦を駆け抜けると、「頑張ってるみんなに、今日がタカラモノみたいな一日になるように」と言って、優しいギターと甘い歌声で始まるミディアムバラード「タカラモノ」を披露。さらにたっぷり感情を込めた歌声に、こたの切ないギターも印象的だった「ラブレター」と続くと、「「ラブレター」のアンサーソング、新曲を歌います」と言って「相変わらず、愛変わらず」で会場を甘く切ない雰囲気で包みこむ。《ハートの隙間埋めるのは僕の歌でありますように》と美しく曲を締めくくるとと、フロアから大きな拍手が起きた。
ガラクタ
MCでは、「相変わらず、愛変わらず」の配信が始まったこと、「貴方依存症」のカラオケが配信されたこと、そして「相変わらず、愛変わらず」のMVが公開されることを告知すると、「最後にみんなにアイラブユーを埋めて帰りたいと思います」とはるが告げ、「アイラブユーが足りないの」を披露。曲中、「歌って下さい、めちゃめちゃデカい声期待してます!」の煽りにフロアからサビの大合唱が起き、会場に一体感が生まれて大団円でフィニッシュ! ……と思いきや、「最後いける?」と本日2度目の「1分1秒」を披露。さらに間髪入れずに3度目の「1分1秒」を放ち、予想外の展開にフロアが大きな盛り上がりを見せる中、今度こそフィニッシュ! 欲張るなぁ、ガラクタ!!(笑) 短い持ち時間で自身の世界観をしっかり構築し、観る者をたっぷり魅了した濃密濃厚な時間だった。
ガラクタ
■パーカーズ
パーカーズ
「『MUSIC DIVE』ツアーファイナル、楽しむ準備はできてますか? 一緒に楽しんでいきましょう!」と豊田賢一郎(Vo,Gt)が煽り、フカツ(Dr)の跳ねるビートと《君が好き 君が好き》というキャッチーなフレーズの1曲目「君が好き」で、ど頭からフロアをブチアゲたのはパーカーズ。手拍子を合わせる観客からは笑顔がこぼれ、明るく楽しい雰囲気が会場を包む。観客の手拍子と豊田の明朗な歌声で始まった「ハッピーをちょうだい」へと続き、「みんなの思う楽しみ方を出して、楽しんで下さい」の呼びかけに、掛け声を合わせたり飛び跳ねたりと、さらなる盛り上がりを見せるフロア。ステージ上のねたろ(Gt)やナオキ(Gt)も楽しそうな笑顔を見せながら、アグレッシブなプレイで観客を魅了する。
パーカーズ
パーカーズ
MCでは、『MUSIC DIVE』大阪編の話題から、「ちょっと聞いて下さいよ!」と話し始めたねたろが、パーキングエリアで置いていかれたことを明かすと、「本当にすみませんでした!」と素直に謝罪するメンバーに観客が爆笑。「みんな、PAに置いていかれたくないですか? 今日は誰ひとり置いていかないんで!」と豊田が告げ、勢いよく始まった「BERRY」で後半戦がスタート。
パーカーズ
パーカーズ
抜けのよいビートに心地よいギター、豊田の伸びやかな歌声。余裕さえ感じる堂々としたステージングに、いまのバンドの状態の良さと充実ぶりを感じたパーカーズのステージ。明るい曲調にセンチメンタルを調合した「Love is over」で胸を熱くさせると、代表曲「運命の人」へ。たっぷり気持ちを込めた歌声、奥行きを与えるギターアンサンブルをしっかり聴かせ、歌声と手拍子を合わせる観客と一体感が生まれたところで、ラスト「中華で満腹」をぶっ放す。
パーカーズ
疾走感ある曲調に観客がタオル回しを合わせると、「みんなとやりたいことがあるんですけど、大声出す準備はできてますか?」と呼びかけ、「麻婆豆腐! 油淋鶏! 回鍋肉!」と中華料理を注文するコール&レスポンスへ。観客からも注文を募って「海老焼売!」と会場中で掛け声を合わせて最高潮の盛り上がりを生み、「謝謝!」とフィニッシュ。持ち前の明るさや飛び抜けたポップセンスと、会場中を巻き込む求心力を持つパーカーズ。彼らのライブを観て今後、大型フェスなどでその力を発揮し、大活躍する姿を想像した。
■Laughing Hick
Laughing Hick
『MUSIC DIVE #1』東京編のトリとして堂々登場したのは、山梨発の3ピースギターロックバンド、Laughing Hick。ホリウチコウタ(Vo)の感傷的で色気ある歌声で始まった「愛してるって」でライブが始まると、「新代田FEVER、楽しんで行こうか!」とホリウチが煽り、フロアから手拍子と観客の手が上がる。たいち(Dr)とあかり(Ba)の安定感あるどっしりしたリズム隊に気持ちを委ね、感情を込めた歌とギターで魅せるホリウチ。「楽しむ準備できてますか? 一緒に盛り上がっていこうぜ」と、続いて始まった曲は「ホンネ」。《君 嫌われてるよね》なんてドキッとするワードが耳に飛び込みながらも、優しさと温かみのある歌とサウンドに会場中が手を振り合わせる。
Laughing Hick
「最低で最高なラブソングを」と始まった「女だから」は、感情をむき出しにした歌声にファルセットを巧みに混じえ、恋の苦悩を女性視点で歌った楽曲。ダンサブルな曲調に乗せた悲痛な歌声が、グサッと胸に刺さる悲痛なフレーズも共感に変えるから不思議。MCでは、「からあげ弁当、ガラクタ、パーカーズにめちゃくちゃ良い感じにライブしてきてもらってるので、めちゃくちゃやりやすいです。ありがとうございます!」と、ホリウチが対バンへの感謝を語り、たいちが11月に東名阪ツアーを行うこと、来年4月28日(日)渋谷WWWXにてワンマンライブを行うことを告知。
Laughing Hick
さらに「偉そうなことは言えないけど、十人十色、色とりどりでいいと思ってます。人それぞれ、そのペースで生きてて。遅くも早くもなく、きっとそのペースがあなたの最速だと思うので。周りなんか気にせず、あなたのペースで未来を染めて欲しいなと、そんなメッセージを込めました」と語り、始まった曲は「モノクロセカイ」。ゆったりしたビートに乗せた“君”に伝えたい思いを、一人ひとりに届ける歌声に胸が熱くなるこの曲。さらに力強いビートとしっかり気持ちを乗せた真っ直ぐな歌声で前向きなメッセージを歌う「ランプ」と続くと、早くもライブは終盤戦へ。
Laughing Hick
Laughing Hick
MCで「今夜、新曲をリリースします!」とホリウチが告げ、「人を愛することに臆病になった夜に、俺と同じようなヤツがいたら寄り添ってあげたいなと思って書きました」と始まったのは、新曲「さよなら恋人、おかえり恋心」。エモーショナルな歌声と悲痛なファルセットが胸を締めつけるバラードソングで観客を魅了すると、ラストは代表曲と言える「カシスオレンジ」で、彼らの音楽の奥深くまで観客をダイヴさせると、「最後までありがとうございました! 『MUSIC DIVE』、あなたと音楽ができてよかったです。またライブハウスで会いましょう」と言って3人が深く頭を下げて、ライブは終演。“バンドとリスナー、バンドとバンド、そしてリスナーとリスナーを繋ぎ、「MUSIC」に「DIVE」する”という『MUSIC DIVE』のコンセプトに相応しいラストとなった。
Laughing Hick
『MUSIC DIVE #1』東京編を観て改めて思ったことは、いまライブハウスで、この日出演していた4組のような令和の若きバンドたちが、大きな渦を巻き起こしているということ。コロナの3年間でしっかり力を蓄えたバンドと、我慢を強いられてきた音楽ファンがライブハウスで繋がり、交わることで巻き起こる大きな渦。その渦はさらに大きくなり、ここから日本全土を巻き込むものになるはずと、僕は勝手に予測して期待してる。近い将来、必ず開催されるであろう『MUSIC DIVE #2』で、そんな大きな渦の中心となっていく令和の若きバンドたちにまた出会える日が楽しみだ。
取材・文=フジジュン 撮影=大橋祐希