『木村達成コンサート -Alphabet Knee Attack Vol2-』(左から)川久保拓司、木村達成、須賀健太
2023年12月8日(金)大阪・松下IMP ホールにて、『木村達成コンサート -Alphabet Knee Attack Vol.2-』が開催された。そのコンサートレポートが到着したので紹介する。
何が飛び出すか分からない。そんな破天荒な魅力を秘めた木村達成が、30歳という節目の誕生日である12月8日(金)、『木村達成コンサート -Alphabet Knee Attack Vol.2-』を大阪・松下IMP ホールで開催した。
木村にとっては初の大阪ソロコンサートで、昨年末の10周年記念コンサートに続く第2弾。MCは昨年好評だった川久保拓司が再び担い、大阪のみサポートする予定だったが、木村のリクエストで急遽、12月20日(水)・ 21日(木)にヒューリックホール東京で行われる公演にも出演が決定。楽しく安定感のある進行で、東京公演も盛り上げる。
舞台を中心に映画やドラマでも活躍し、近年はミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』『四月は君の嘘』に主演するなど、ますます注目を集める木村。 2023 年も 『 マチルダ 』『 新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる』『スリル・ミー』と、幅広い演目で存在感を発揮したが、その頼もしい成長と、30歳の等身大の木村の魅力がストレートに伝わってくるコンサートとなった。前半は歌謡曲やJ-POPがメイン、後半はミュージカルの大ナンバーが続き、途中サプライズゲストとして木村と親交の深い俳優の須賀健太も登場した、記念すべき大阪公演をレポートする(ネタバレあり)。
ステージ中央の白いピンスポットのなかに木村が静かに現れ、アカペラで歌い出す「リンダリンダ」( THE BLUE HEARTS )からスタート。曲が激しいロックサウンドへ変化すると、ときにジャンプしながら「フォー!」と雄たけび。カラフルなペンライトに染まる客席からは、「キャー!」という歓声が。さらに美空ひばりの「真っ赤な太陽」をバンドメンバーと笑顔を交わしながら洒落たアレンジで届け、一気に場内のヴォルテージが上がる。
オレンジ色のシャツがまぶしいカジュアルなスタイルの木村は、「無事30歳になることができました。ありがとうございます!」と挨拶。観客の大きな拍手に、「こんなにたくさんの方に祝ってもらえて嬉しいです」と喜び、何度も「照れますね」と口にした。
その後も、昭和歌謡やJ-POPが好きという木村らしい選曲が続く。「大阪に向かう新幹線でふと聴きたくなる」という「大阪 LOVER 」( DREAMS COME TRUE )。事前に公式 X (旧Twitter )で募集したリクエスト曲で、自身も「テンションが上がる」と言うチェッカーズの曲より「ジュリアに傷心」を披露。
俳優としてスマートな役も演じ切る彼が、男前な声で弾けたパフォーマンスを見せる姿に引き込まれる。
そしてMCで登場した川久保拓司から、誕生日祝いの花束をサプライズで贈られ「花束って嬉しいっすね。どうやって飾ればいいの?」と喜ぶ木村。さらに昨年のコンサートで大きな反響を巻き起こしたaikoの「カブトムシ」に続き、今年も女性アーティストの曲を2曲歌う。宇多田ヒカルの「First Love」はファンからの多数のリクエストに応えたもので、沢田知可子の「会いたい」も、「好きな曲で、自分に合うキーを探しあてて歌った」と打ち明ける。切ない心情にそっと寄り添うような透明感あるボイス、柔らかい息遣いや、木村が放つメロウな世界観に場内はうっとり。再び登場した川久保が「なんて甘い歌声。あまーい!」と叫ぶと、「ハッピーバースデイ!」と、誕生日ケーキとともに須賀健太が現れ、知らされていなかった木村は驚きのあまり目を丸くして硬直。「何やってんの 」と叫び、喜びを爆発させた。
ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』『血の婚礼』などの作品で木村と共演し、親交の深い須賀健太は、パーソナリティを務めるラジオ番組で木村に誕生日サプライズを仕掛けられた「仕返し」として、今回わざわざ東京からやって来たと告白。須賀の本気のサプライズに木村は「マジ、ありがとね」と降参し、その後二人の夫婦漫才のような掛け合いに場内は大いに盛り上がった。須賀は木村のことを「人に対して真っ直ぐ」と表現し、「自分にないものをたくさん持っている人。尊敬している」と、最大級の賛辞を送った。
いい感じにテンションが上がった木村は、全編英語の「It's My Life 」(Bon Jovi) に挑戦。激しいギターチューンにパワフルなシャウトを乗せ、最後は川久保も加わり、波長の合う二人ならではのロックを聴かせる。
後半はミュージカルコーナー。フォーマルな黒の衣装にチェンジした木村が客席から登場し、今年出演した 『 マチルダ 』 で演じたミス・トランチブルのナンバー「 The Smell of Rebellion 」(邦題:反乱のニオイ)を歌い出すと、客席から「キャー!」とひと際熱い歓声が。筋骨隆々な元スポーツマンの鬼校長。歌いながら観客ににじり寄り、高圧的な表情を見せると笑いが起きる。ジャジーにアップテンポに、そしてバラード調にと何度も転調する大ナンバーを、クセのあるしぐさも交え、笛も吹いて披露する“ザ・エンターテイナー”の木村に拍手喝采が送られた。
続いて、主演ミュージカル『四月は君の嘘 』より「僕にピアノが聞こえないなら」を。フランク・ワイルドホーン作曲の骨太な美しいメロディを、ロングトーンを駆使して届ける。歌の巧さ、表現力が際立つのは、次の『ジャック・ザ・リッパー』 の「もう止められない」も同じ。優秀な外科医から愛のために狂気の淵へと落ちていくさまを、振幅のあるサウンドに乗せて全身全霊で届ける。歌い終わると腰を折り、呼吸を整えるほどの熱唱。「みんな僕が苦しんでいる役、好きでしょ?」と、闇を背負った役も魅力的に演じる木村ならではの発言が飛び出し、観客は拍手で応える。
そして今コンサートの最後の曲に選んだのが、これもまた大ナンバーと言えるミュージカル『モーツァルト!』の「何故愛せないの?」。昨年のコンサートでは、自身が出演した『ラ・カージュ・オ・フォール~籠の中の道化たち~』 より「ありのままの私」を披露したが、木村は「30になってもその気持ちを忘れず進んでいきたい」と、今回のラストナンバーを選んだと話し、「最後に僕の心の叫びを聴いてください」と、ヴォルフガングが自分の道を歩んでいくんだと決意をぶつける楽曲を熱唱した。 まさに、いつわりのない自分で、これからも突き進むという想いが伝わってきた本コンサート。最後は共演者と肩を組み、「30歳の木村達成もよろしく!」と爽やかな笑顔を残し去っていった。彼の自信に満ちた表情に、これからの輝かしい道が見えるようだった。
東京公演は12月20日(水)・ 21日(木)の2日間、ヒューリックホール東京で開催される。大阪公演を経てパワーアップした木村が、誕生日とはまた違う歌声、表情で楽しませるに違いない。
TEXT:小野寺亜紀
PHOTO:松本 いづみ