『井上道義 指揮 NHK交響楽団演奏会 ヴァイオリン:服部百音』
2024年6月29日(土)東京・サントリーホール、6月30日(日)大阪・フェスティバルホールにて、井上道義 指揮による『NHK交響楽団演奏会』が開催される。そしてソリストとして、ヴァイオリニストの服部百音が出演することが決定した。
2024年12月で指揮活動の引退を表明している井上道義。マーラー以降の最大の交響曲作曲家のひとりとして知られるショスタコーヴィチを「僕自身だ」と語り、2007年には日本とロシア、5つのオーケストラとともに「日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト」を実施したことでも知られる井上が、初共演から46年、2008年からは毎年共演を重ねている盟友・NHK交響楽団と、ショスタコーヴィチの音楽に挑む最後の演奏会を行う。
井上道義×NHK交響楽団というラストイヤーにふさわしい公演のソリストとして登場するのは、ヴァイオリニストの服部百音。服部もショスタコーヴィチに傾倒するひとりであり、2016年に16才で発表したデビュー・アルバムに、ショスタコーヴィチの「ヴァイオリン協奏曲 第 1 番 イ短調 作品 77」を、アラン・ブリバエフ指揮のもと、ベルリン・ドイツ交響楽団と共に披露した音源を収めたことも話題となった。彼女自身が思いを寄せるショスタコーヴィチ、その音楽を日本で広めた功労者である井上との時間、さらに服部のデビュー作と同じ楽曲を演奏するという今回の公演は、観客にとっても特別なものとなるだろう。23年12月の『STORIA III』での共演を前に井上は服部に対し、「服部百音は、何故か音楽的にも人間的にもそりが合う。50歳という年代差を超えてコンチェルトをやるのが楽しみだ。激しく、深く、緊張を持続させてのクラシック音楽の深みに生きる道を見出していてつまらん遠慮がない」とコメントを寄せており、2人が愛して止まないショスタコーヴィチを、日本最高峰のオーケストラであるNHK交響楽団と贈る最後の2日間を楽しみにしよう。
井上道義 コメント
普通、指揮者がソリストを指名してコンサートを企画するのだが。服部百音は逞しく激しく、普通あり得ないような企画を思い立ち、何とか実現させるエネルギーを持っている。…細い鶴みたいな体でよくやると思う。
勿論ジジイとしては最も愛する作曲家の作品でもあり、また今の日本人ヴァイオリニストの中では最もショスタコーヴィチにふさわしい奏者であるので、文句なく引き受けたコンサートです。ロッシーニはドミトリーの最も憧れた作曲家で、彼のように軽やかでありたいと思ったようです。
人は無いものねだりするものです。2番の協奏曲のテーマと似ているというだけの私の軽薄な選曲です。2番をも楽しんでいただきたいので!
お許しください。
服部百音 コメント
ドミトリー・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチは不思議な存在で、生身の彼に会った事は無くとも私は幼少期から曲を通じて幾度となく心を助けて頂きました。交響曲やコンチェルトや室内楽を弾いて聴いて彼の音楽の中にいる時は人間誰しも持つ”孤独”という感情に丸ごと共感、同調される様な不思議な安心感を持ったりしたものでした。ドミトリーの2つのコンチェルトを、前代未聞唯一無二の演奏をもって遺したい。という私の音楽家としての生涯を通じた使命と言える、思える事の大きなひとつがこのような形で現実になるとは思ってもみませんでした。彼の、生命体がもつ精神性の独自性、愛というものの必要性、人間を人間たらしめるもののエネルギー、この世の真理が音になっている真の音楽が世界一相応しいNHK交響楽団、そして自らショスタコーヴィチの先駆者となられその真髄を日本中に広めて下さった井上道義マエストロ、とても特別な彼らと共に協奏曲2曲全てをゼロから構築し遺す事ができるこの歓びと感慨深さは執筆に尽くしがたいものがあります。
初対面がN響共演での高輪の練習場の楽屋だった道義マエストロの心の友でもあるショスタコーヴィチ。
そして服部と、N響と、引退を控えた道義先生との正真正銘最後の演奏となります。魂からの感謝を持って、私達の演奏をドミトリー・ショスタコーヴィチに捧げたいと思います。
聴いて下さい。