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bokula.『Phantom youth TOUR』 2023.12.04(mon)渋谷CLUB QUATTRO
10月29日(日)・千葉LOOK公演を皮切りに各地を巡った『Phantom youth TOUR』。対バン形式だった前半を経て、後半は東京、名古屋、大阪、広島の4ヶ所でワンマンライブが行われた。メジャーデビューが突然発表されて観客が歓声を上げた初日、12月4日 (月)・渋谷CLUB QUATTRO公演の模様をレポートする。
特大級の拍手を浴びながらステージに登場したえい(G・Vo)、かじ(G)、さとぴー(B)、ふじいしゅんすけ(Dr)。照明を浴びて輝かせた表情は、見るからにやる気満々。そして1曲目「アオトハル」の演奏がスタートした瞬間、渋谷CLUB QUATTROは凄まじいエネルギーで満たされた。フロア内で掲げられたたくさんの拳、打ち鳴らされた手拍子が、ステージから押し寄せる爆音と融け合う様が心地よい。「溢れる、溢れる」と「満月じゃん。」も怒涛の勢いで披露された後、「広島という田舎からやってきたロックバンドです。いろんな表情を見せます。よろしくお願いします!」というえいの挨拶の言葉を挟んで、「足りない二人」と「ハグルマ」も届けられた頃には、会場内の気温は開演前と比べて数℃上昇していたと思う。
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「俺たちだけの曲じゃなくなってる。聴かせてくれ!」とえいに呼びかけられて、観客が爽やかな歌声を一斉に響かせた「バイマイフレンド」。抒情的なメロディをじっくりと奏でていた「まみれて」「コイニオチテ」の後に迎えた小休止。「最近糖質をめっちゃ抑えて、ダイエットを頑張ってる。今日のケータリングも米抜いたから。お前ら(観客)よりも痩せてやるからな(笑)」という近況報告をしたえい。「ふじいしゅんすけさんからふじいしゅんすけになりました!」と、改名を発表して観客を沸かせたしゅんすけ。リラックスしたムードのMCタイムを挟んで、全力の演奏が再開された。「ここを夏に変えていいですか?」という言葉通り、季節を巻き戻すかのような熱量を生んだ「夏の迷惑」。飛び跳ねながら興奮を露わにする観客のエネルギーがフロアを震わせていた「こんな僕ですが、何卒」「ガールブレンド」。bokula.の曲は美メロの宝庫であることを再確認させてくれた「ナイトダイブ」……ステージ上で演奏する4人がかっこいいのはもちろんだが、盛り上がる観客で埋め尽くされたフロアの活き活きとした躍動感からも目を離せなかった。
えい(Gt&Vo)
かじ(Gt)
曲の合間にえいが語る言葉が強い印象を残してくれるのもbokula.のライブの醍醐味だ。「今日いろんな人が観に来てくれたと思うんです。初めての人もいるでしょ? 本当に嬉しいことです。独りぼっちで友だちなんかいなかったから。信頼してくれる人がいなかったから、自分には何もできないと思ってて。17歳の頃の俺はとがってたし、ひねくれてたし、自分を嫌いになりました。だけどこうして生きてる。バンドを続けられてる。好きなことを好きなだけやれてる。いろんな人の力と支えがあってやれてる。bokula.の音楽が支えになりますように」というMCを噛み締めた後に聴いた「少年少女」「HOPE」「愛わない」は、とてもまっすぐに迫ってきた。「みんなが熱くて酸素が薄いよ(笑)。全力で楽しんでるのが空気で伝わります。ありがとう!」とお礼を言ってから歌い始めた「この場所で.」は、盛り上がった観客が途中で勢い余って転倒。その様子を察知したステージ上の4人は演奏を中断。「けがしてないか? 助けてあげて」とえいが安全を確認したところ、無事であることがわかった。「メガネ落とした人?」という声が上がったりもしているフロアのムードが温かい。ライブハウスについて歌っている「この場所で.」は、このような観客と共に歩んできたbokula.だからこそ生み出せた曲なのだと思う。
さとぴー(Ba)
ふじいしゅんすけ(Dr)
「改めて言わせて欲しい。お前ら本当にかっこいい。何が君たちをそうさせたのかは俺にはわからない。ただ言えることは、俺たちは誠実にあなたと向き合ってきました。それが伝わらなかったら、届かなかったら俺たちの力不足。だけど今日は何か見えるものがありました。それはあなたが掲げた強い拳だったり、俺たちを見るキラキラな瞳だったり……。ここまでついてきてくれてありがとうございます。メジャーデビューします」――突然の発表を聞いて大歓声を上げた観客。「終わんねえから! 終わらせてたまるか! 金はないけどお前らがいれば幸せだよ!」とえいが叫んでスタートした「愛してやまない一生を.」は、フロア内でグチャグチャになりながら笑顔を輝かせた観客の大合唱が、メジャーデビューを心から祝福しているのを感じた。「メジャーデビューしてもやることは変わらない。これからもライブハウスを愛し続けるし、ライブハウスに居続けます。俺を、bokula.を独りぼっちから救ってくれてありがとな!」という言葉が添えられた「群青謳歌」。大合唱の嵐となった「満月じゃん。」……盛り上がりの極みをダイナミックに更新し続けながら本編は締め括られた。
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「この度、トイズファクトリーからメジャーデビューすることが決まりました。変わらずにやるからよろしくね。かなり異例だと思うんですけど……この後、24時にメジャーデビューします!」――数時間後にメジャーデビュー曲が配信リリースされることを知って、沸き立っていた観客。えいは、新曲について次のように語った。「大好きだった人がいて、バンドかその人か、どっちを選ぶか決断しないといけない時があって、俺はバンドを選んじゃったんだよね。それが良いのか悪いのか今でもわかってないし、あっちにとってもどうなのかわかってない。この曲を届かせたいとも思ってないけど、遺言的な感じでしっかり響けばいいなと思ってます」。そして披露された「最愛のゆくえ.」はツインギターの絶妙なコンビネーション、歌詞の心理描写とリンクしているように感じられる転調など、bokula.の作風が広がりつつあるのが伝わってくる新曲だった。
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えいの歌とギターからスタートした「愛すべきミュージック」は、観客の大合唱が曲を穏やかに彩っていた。《忘れない為に口ずさむミュージック 誰にも奪えない形じゃない宝物》という一節が響き渡るのに本当にふさわしい空間が、この日のこの瞬間の渋谷CLUB QUATTROだったのだと思う。ステージ上で歌っていたえいも感極まるものがあったのだろう。「本当はこの曲で終わるんだと思ったんだけど……」と言いつつ、突然の追加曲「満月じゃん。」を歌い始めた。この曲が披露されるのは今回のライブで3度目。荒っぽい爆音を交わし合うのを思いっきり楽しんでいた4人の姿が思い出される。「バンドって楽しい!」という無邪気な実感は、これからも変わらないbokula.の原動力なのだと思う。そんなことをメジャーデビューが発表されたライブのラストで感じられたのがとても嬉しかった。彼らはこれからも素朴なバンドキッズのスピリットを保ちつつ、さらに広い世界へと飛び出して行くのだろう。今後の活動も応援したくなる気持ちが高まる素敵なワンマンライブだった。
取材・文=田中大 撮影=aoi / アオイ
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