GeG 撮影=大橋祐希
変態紳士クラブとしての活動の他、 様々なミュージシャンのプロデュースなどでも活躍しているGeGが、2ndアルバム『Mellow Mellow ~GeG’s Playlist vol.2~』を1月3日に配信リリースする。変態紳士クラブ 、Hiplin、JAGGLA 、kojikoji、MILES WORD、にしな、Rin音、SISUI、SNEEEZE、唾奇、VIGORMAN、WILYWNKA……親交が深い布陣と生み出した各曲は、本人の言葉を借りるならば「全曲がリード曲」だ。そして2024年1月20日(土)には、GeGがプロデュースした楽曲のみで構成したライブイベント『メロメロライブ~GeG’s Live Set~vol.3』が開催される。出演アーティストが非公開にも関わらず、先行チケットの売れ行きも好調で、一般発売されるチケットも即完必至だろう。アルバムとライブイベントについてGeGに語ってもらった。
――アルバムは3年ぶりなんですか?
“3年ぶり”と告知したんですが、4年半ぶりでした(笑)。
――(笑)。前作を出して、その辺りから音楽の仕事で生活できるようになったという旨をXで書いていらっしゃるのを見ました。
そうなんです。前作に「Merry Go Round (feat. BASI, 唾奇, VIGORMAN & WILYWNKA)」という曲が収録されているんですが、この曲は歌っているアーティストたちが“これで飯食いなさい”ということで僕にくれたんですよね。ほんまあの曲には助けてもらったな思っています。
――ずっとご活躍だという印象ですけど、活動が軌道に乗ってからそんなに経っていないんですね。
はい。でも順調というわけでもなくて、ここ数年くらいは、ほとんど何もできていなかったんです。止まっていた時間をここから動かしていこうと思っています。
――アルバム全体のコンセプトなどはありましたか?
“メロウ&ダンス”です。今の自分が好きなのが、そういうものなので。
――前作のコンセプトは“メロウ”でしたよね?
そうなんです。初めて好きになった音楽がやったんですよね。14歳、15歳くらいの青春の頃に聴いていた音楽で好みって作られていくと思うんですが、僕は最初ロックを聴けなくて、バラードを中心に聴いていたんです。その後に音楽を始めてからロックバンドやったり、レゲエバンドをやったり、ヒップホップをやったりするようになりましたけど、根本にあるのは“バラードが好き”っていうことなんですよね。音楽は泣けるからいいっていう感じがあって。あんまりパリピな音楽が好きじゃないというか。
――EDMとかいうタイプじゃないんですね?
そっちにはおそらく行かないと思います(笑)。行ったとしてもテクノなんやろうなと。
ここ3年くらいの約半分はスランプでした。評価されるのも怖くなって。1回ヒットを経験すると自分の売れ方に感謝できなくなった面もありました。
――GeGさんの根本にあり続けている“メロウ”に、さらに“ダンス”を加えたくなった経緯は何だったんでしょうか?
僕が聴く音楽がテクノとかに移動していったというのがあるんだと思います。“泣ける”っていうのは僕の音楽の大きなテーマですけど、もう1個は“踊る”。パリピって踊っているわけじゃないじゃないですか?
――“踊る”ではなくて“盛り上がる”“興奮する”とかですかね?
そうですねよね。“盛り上がれる”“騒げる”とかじゃないものを作りたくて。でも、“メロウ&ダンス”をコンセプトとして言うようになった理由が自分でもよくわかっていないんです。今回のアルバムに入っている「EDEN feat. にしな , 唾奇」を作った時にライターさんが“メロウ&ダンスな曲”って書いてくれて、“めっちゃいいな”ってなったんですよ。その影響なのかな? 多分、そうなんだと思います。
――前作から今作に至るまでの日々は、音楽の仕事で生活できるようになった他に、どのような期間だったと感じていますか?
特にこの3、4年はほんまに自分にとって悩みの多い日々だったというか。いろいろありました。
――順風満帆ではなかったんですね?
はい。最初はもちろん良かったんですけどね。ヒットが出ましたから。でも、それ以降は何をやっても“良い”としか周りから言われなくなったんです。売れている時って、何を作ってもそうなるんですよ。そういう状況の中で気がついたらめっちゃダサくなっちゃっていて。“何かが違う。何かがおかしいぞ”ってなっていた時、信頼してる先輩や後輩に相談したんです。そしたら案の定ダサかったみたいで!(笑) ある時WILYWNKAに“俺、ダサい?”って聞いたんです。そうしたら“ダサい”って言われて、“いつから?”って聞いたら“変態紳士クラブのどこどこの辺りからダサいと思ってたなあ”って。それでいろいろ気づくようになって、今回のアルバムができたと言っても過言ではないかもしれないです。
――作るものを全肯定される状況が生んだマイナス面とは、どのようなことでしたか?
追求する気がなくなっていたというか。“自分が作ったものは全部OK”ってなっていたので。でも、音楽は仲間と一緒に追求しないとかっこいいものを作れるはずがなくて。そこが僕のこの3年くらいの悩みだったんやと思います。ちゃんと追求できるようになったので、作ったものに対する後悔がなくなりました。
――大きな変化ですね。
そうなんです。前までは作ったものを聴きたくなかったんです。気になるところがあったりしたので。今回のアルバムは、そういうのがない自信作になりました。
――GeGさんが壁にぶつかっていたというのは、気づいていないリスナーも多かったのかもしれないです。
そうですかね?ここ3年くらいの約半分はスランプでした。評価されるのも怖くなっちゃって。1回ヒットを経験すると自分の売れ方に感謝できなくなった面もありましたね。あんまり再生数がいかないのは恥ずかしいというプライドも出てきて、全然できなくなっていました。
――GeGさんは会社をやっていらっしゃるから、アーティストとしての活動とは別の視点もありますよね?
はい。僕はアーティストの活動は芸術やと思っています。けど、裏方の仕事はビジネスやと思っています。だから数字とかの部分で考える面もあるんです。よく“アーティスト”って言っていただけるんですけどね。変態紳士クラブってデビューするまでは2人組だったんですよ。メジャーデビューする時に“GeGくんも写真に入ってみようよ”ってなって3人組になったから、心の中ではずっと裏方の気持ちなんですよね。だから写真を撮られるのが今でも一番苦手です。
――このインタビューの後、写真撮影ですよ。
そうでしたね(笑)。ポーズとかをとるのが苦手なので、いろいろ指定してくれるカメラマンさんが好きです。
今回参加してくれたのは率直な意見を言ってくれる大切な仲間です。全曲がリード曲のアルバムやと思っています。
――今回のアルバム『Mellow Mellow ~GeG’s Playlist vol.2~』に参加していらっしゃるのは、親交の深い方々ばかりですね。
はい。最初は先輩や有名なみなさんにも参加してもらう構想もあったんです。でも、半年くらい前に新スタートを切って“アルバムを作ろう。誰とやろう?”ってなった時に、“俺には仲間がおったな。あいつらや!”と。だから今までもやったことがある人らばかりです。
――スランプはあったにせよ、これだけの方々とリスペクトし合いながら活動を重ねられているのは、本当にすごいことです。
ほんまそうですね。みんな友達過ぎて、その辺に関してあんまりわからなくなっている感じもあるんですけど、冷静に考えるとすごいですよね。恵まれてるなと思います。
――半年くらい前にアルバムについて具体的に考えたということは、制作期間はそんなに長くなかったんですね?
はい。「EDEN feat. にしな , 唾奇」を出してからなので。この曲、いつリリースしたんでしたっけ?
――今年の9月13日です。
だからそれくらいから作りだしたということですね。「EDEN」を唾奇といろいろ話しながら作ったんですけど、“やぼったいわあ”って何度も言われて。“やぼったい”の意味がわからなかったから検索したら“ダサい”って出てきて(笑)。腹が立ったからサビを何個も作って、最終的に“すごいかっこいい!”って2人ともなった時、“音楽の作り方ってこうやったな。なんでサビを1個作っただけで諦めてたんやろ?”と思いました。そういうことに気づかせてくれた曲が「EDEN」です。
――率直な意見を言ってくれる仲間は、ありがたいですね。
ほんまにそうです。今までちやほやされてきたので、衝撃やったというか。今回参加してくれたのはそういうことを言ってくれる大切な仲間です。全曲がリード曲のアルバムやと思っています。
――SISUI & GeG名義の「なっちゃうじゃん」は、去年リリースした曲をアルバムバージョンで収録しているんですね。
はい。SISUIはもともとストリートで歌っていた女の子で、バーとかでカラオで歌っているのを聴いていて、“お前、歌上手いなあ!”ってなったんです。彼女がやっていたバンドが解散したので、“なんか一緒にやろう”ってなって作ったのが「なっちゃうじゃん」。5曲くらい作って、まだ出していないのもあるんですけど。
――SISUIさんの歌の魅力は、どのようなところにあると感じていますか?
僕はMISIAさんが昔から大好きで、ファンクラブに入っていたくらいなんですけど、通ずるものがあるというか。SISUIには、歌声だけでわからせられる力があるんですよね。
VIGORMANが問題を起こしちゃった時は、人生でけっこうつらい時期でした。でも、俺らの音楽は別に変りないので。
――GeGさんの土台にあるのはJ-POP?
間違いなくそうです。音楽を始める15歳の頃まではJ-POPを中心に聴いていたので。音楽を始めてからロック、レゲエ、ヒップホップとかに行くようになりました。だから僕が作る音楽はポップスって言われるんでしょうね。
――アルバムには変態紳士クラブの曲「Let's get together again」も収録されますね。
変態紳士クラブの曲は、1年ぶりくらいです。
――《これまでした旅ならDigest》という歌詞の一節とか、ファンのみなさんがグッとくるポイントだと思います。
VIGORMANがこういうこと言うと、いいですよね(笑)。僕はあいつらの曲を一番たくさん作っているんです。VIGORMANとWILYWNKAが中学生くらいの頃から知っているから、家族みたいなもんですよ。8歳くらい下やのに、“お前”とか言ってきますし(笑)。
――生意気ですね(笑)。
生意気ですよ。でも、あいつらの一言が僕の人生に響くことがよくあるんです。変態紳士クラブは2年以上正式な活動をしていないので、待っていてくださる人がおるのかなと。VIGORMANが問題を起こしちゃった時は、人生でけっこうつらい時期でしたね。でも、ああいうことがあったけど、俺らの音楽は別に変りないので。「Let's get together again」というタイトルですし、僕らなりの意思表示やと感じてもらえたらいいのかなと思っています。
ソロ名義のものに関しては、人生の中であと何回出せるのかわからないです。やっぱりパワーを使い過ぎるので。
――今作の制作期間を振り返って、改めて感じることはありますか?
この半年くらいは“やらないと死んじゃう”みたいな状況でした。だからこそ完成させられたっていうのもあると思います。
――音楽を作るというのは、やはりGeGさんにとって何にも代え難いことですか?
はい。1stアルバムを作った時はお金が全然なくて、“これでミスったら終わりだ”という感覚だったんです。母親に“30歳を越えて飯食えないなら音楽をやめて”って言われていましたから。29歳半くらいの頃に音楽で生活できるようになったので、あのギリギリの気持ちが大事やったというのも改めて感じます。今はあの頃と全く同じ感じです。やっぱり音楽を作るのに必要な僕のエネルギーなんやと思います。今回、ほんまは18曲くらい作っていましたからね。みんなに“そんなに長いアルバム、聴かれへんわ”って言われて、10曲に絞りましたけど(笑)。
――(笑)。作品をどんどん形にしていきたい気持ちは強いですか?
どうでしょう? ソロ名義のものに関しては、人生の中であと何回出せるのかわからないです。やっぱりパワーを使い過ぎるので。今回も半年くらいアルバムのことしかしていなくて、気がついたら冬になっていました(笑)。もともとはキャンプや海水浴とかに行く方なのに、そんなことをしようとも思わないくらい戦いの連続でしたからね。
vol.2の打ち上げの時の動画を観たら、僕は大号泣していました(笑)。今回はどうなるかわからないですけど。すごい一日になるのは間違いないですね。
――来年の1月20日に開催する『メロメロライブ~GeG’s Live Set~vol.3』は、久しぶりに開放的な空間を楽しめる機会になるのかもしれないですね。
そうですね。このアルバムを出してライブをするのが再スタートみたいな感じもしています。いろんなことがずっと止まっていたので。今は皆さんにお会いできるのが一番楽しみです。
――GeGさんがプロデュースした楽曲のみで構成されるライブですから、出演者はおそらくかなりの数になりますよね?
はい。過去最大規模の会場ですし、過去最大の出演者数になります。こういうライブはオリンピックみたいな感じで、時々しかできないですよ。会場の日程が決まってから出て欲しいみんなに電話したんですけど、全員いけるってなって、奇跡やと思いました。(笑)今後、一生観られないようなライブになることは間違いないです。これだけの面子でやるのは簡単なことではないので。
――大阪で開催したvol.1とvol.2の時と同様、今回も出演者はシークレット?
はい。毎回そのスタイルなんですよね。もう3回目なのである程度想像がつくとは思うんですけど(笑)。こんな豪華なライブはなかなかないと心の底から思っています。友達だらけなので、打ち上げを今から楽しみにしながら準備を進めています。vol.2の打ち上げの時の動画を観たら、僕は大号泣していました(笑)。今回はどうなるかわからないですけど。すごい一日になるのは間違いないですね。
――GeGさんの現時点での音楽キャリアの集大成のライブにもなるでしょうね。
おっしゃる通り集大成になると思います。“いつまでもやると思うなよ”と書いておいてください(笑)。自分はちゃんと裏方としてやっていきたいという気持ちもあるので。メジャーに行かないとメジャーみたいな動きができないって嫌じゃないですか? 自分の周りのアーティストが好きなので、40歳くらいまでにそういうやつらを支えられるようになりたいと思っています。
――ライブの全編がバンドスタイルなのも楽しみなポイントです。
僕がプロデュースしているバックバンドでG.B.’s BANDってのがいて、メンバーも年齢は様々なのですが、僕が今日本で一番信頼してるミュージシャンに集まってもらってます。変態紳士クラブ、Hiplin、VIGORMAN、WILYWNKAなどもワンマンなどでも演奏してる本当に凄腕のミュージャン達ですので楽しみにしててください。
――出演者が多いですから、バンドのメンバーは長時間にわたってステージで演奏を続けることになりますね。
“トイレはどうしたらいいですか?”っていうことになっています(笑)。その点も考えつつセトリを組もうと思っています。もうほぼ決まりつつあるんですけど、一発目からすごくいいですよ。僕は音源では80%くらいしか完成させないんですが、それを100%にするのがライブなので、全曲をライブアレンジし直します。DJスタイルでただ音源をかけるようなライブは全然好きじゃないんです。
――その他に何かお客さんに期待していただけるポイントはありますか?
動画の収録もするんですけど、360°オーディオで収録します。それはライブの後に聴いてもらえるお楽しみですね。ライブに来るお客さんには「Merry Go Round」のサビをぜひ練習しておいていただきたいです。大合唱していただきたいポイントがあるので。
――2024年の活動の起爆剤にもなりそうなライブじゃないですか?
はい。このライブをやって、そこからは止まらへんつもりでいます。VIGORMANは去年ああいうことになってライブが全部中止になったので、絶対にリベンジをさせます。変態紳士クラブも今回のアルバムでこういうタイトルの曲を作ったので、さらに新曲を用意しています。変態紳士クラブはもともとお祭りユニットやったので、お祭り感はこれからも抜けないでしょうね。“1年に1回くらいおもろいどデカいことやりたいよね?”って話しています。変態祭りですね!
――今後の活動を支える力も、今回のライブで得られると思います。
そうだといいですね。みなさんの力に支えていただいているので。これからも僕に元気玉をわけでください(笑)。東京の人だけやなく、日本中の僕の音楽を聴いてくれているみなさんにライブに来ていただけると嬉しいです!
取材・文=田中大 撮影=大橋祐希