2023.11.22(WED)『OMORI 3周年記念コンサート』【追加公演】@神奈川・ミューザ川崎 シンフォニーホール
アメリカのインディーRPG『OMORI』の3周年を記念したコンサートが11月22日、神奈川・ミューザ川崎 シンフォニーホールにて開催された。その14時公演の模様をレポートする。
アメリカのインディーゲームスタジオ「OMOCAT」が開発・発売した『OMORI』は、ユニークなストーリーや可愛らしい絵柄とは裏腹に、「死」や「うつ病」をテーマとしたサイコロジカルホラーとしての要素からくる恐怖体験など、独特の世界観を持つRPG。
2022年12月には販売本数が100万本を超える世界中にファンを持つ作品となっており、今月12月には発売から3周年を迎える。
『OMORI』の楽曲を3周年を記念して開催された本公演は、5月に行われた「MUSICエンジン第十一回演奏会『OMORI』」同様、トークなどは挟まずに楽曲を連続して演奏していくスタイル。
曲の演奏順はゲームの流れに沿っているので、休憩時間には「没入感ハンパない!」「またプレイしたい」といった声があちこちで漏れ聞こえるほどファンボルテージを上げていた様子。
コンサートは「Title」でスタート。「By Your Side.」、「A Home For Flowers(Tulip)」などで“ヒロビロ森”でのワクワクを掻き立てる。
続く“イセカイ”パートでは早くもあちこちで涙を拭うファンの姿が見られる一方で、ラジカセの登場にその後の展開を察してニヤリとする面々も。ほっこりとしたムードに包まれながら、キーボードなどの電子音も加わり演奏を盛り上げていく。
「Just Leave Me Alone」~「It Means Everything.」ではギターなどを中心にクールな音がかき鳴らされていく。
オーケストラのコンサート会場で、最初はちょっぴり遠慮気味に、しかしもう体が勝手に動き出す! という感じで、縦ノリでリズムをとりはじめるファンの姿が印象的だった。
スイートハート城あたりの演奏は、「Splintered Sweets In The Castle」などオーケストラ向きの音楽が続いて高揚感が増していく。
体温も少し上がったように感じたパート後には、オタマトーンで歌声を表現し、その後「World’s End Valentine」が流れるという原作愛の深さを感じる演出。
会場では笑い声や喜びの声があちこちから漏れ聞こえ、セットリストに大満足といった様子が手に取るように伝わってきた。
ここで前半は終了だったが、会場内に響き渡る拍手はまるでコンサート終了後のように盛り上がっていたのも印象的だった。
休憩を挟み後半の演奏がスタート。
原曲とは違った味わいを感じる「Thrifted Tchotchkes」やサックスにフィーチャーしたジャズテイストの「Jawbreaker」など、オーケストラの生音ならではの演奏を堪能。フライパンがパーカッションに変わり、原作の音色を再現するなど目でも耳でも楽しませてくれる演出が目白押し。
会場にすすり泣く声が一段と響き渡ったのは「By Your Side.」「Treehouse – Here We Are,Together Again」「See You Tomorrow」が奏でられるパート。
観客の感情を高めながら、コンサートはクライマックスへ。
「OMORI」「DUET」で切なさがいっぱいになり、「Wake Up」から「The Truth」あたりでゲームの思い出が蘇ったのか涙を堪えきれずに、顔を覆うファンの姿も。「Good Morning」で後半パートを締めくくり、ヴァイオリンの河合晃太氏が譜面台に載せた作者OMOCATのぬいぐるみによりご本人の音声メッセージが届くサプライズも。
サプライズはこれだけではなく、なんと来日中のbo en氏が「My Time」を歌唱するというファンにはたまらない演出もあり。
観客席にはゲーム開発チームのメンバーも明かされ、ファンに感謝を伝える場面も。
サプライズの連続に興奮状態のファンだったが、「ありがとう!」「Thank You」など、日本語と英語で感謝の言葉を伝え合い、会場は溢れんばかりのOMORI愛に包まれた。
演奏後に、興奮気味で感想を伝え合うファンの姿や、物販待機列の長さ、そして昼の部終了直後に見かけた夜の部の開場を待つ姿からも『OMORI』ファンの熱量をたっぷりと感じることができた。
取材・文=タナカシノブ