新たなバズを生み出す!大阪音楽大学の学生企画『ビギバズ!』に板歯目、名無し之太郎ら注目の6組が登場

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『大阪音楽大学 ミュージックビジネス専攻 presents “ビギバズ!” -MINAMI WHEEL EDITION-』

『大阪音楽大学 ミュージックビジネス専攻 presents “ビギバズ!” -MINAMI WHEEL EDITION-』 写真=『ビギバズ!』提供(撮影:松本いづみ)

『大阪音楽大学 ミュージックビジネス専攻 presents “ビギバズ!” -MINAMI WHEEL EDITION-』2023.12.9(SAT)・10(SUN)大阪・阿倍野ROCKTOWN

12月9日(土)・10日(日)、大阪市にあるライブハウス・阿倍野ROCKTOWNにて『大阪音楽大学 ミュージックビジネス専攻 presents “ビギバズ!” -MINAMI WHEEL EDITION-』が開催された。このイベントは大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻の1年生が授業の一環として企画・運営するもので、2年連続2回目の実施。若年層をメインターゲットに据え、1日目は誰もが自由に歌い踊れるステージを目指し「今を歌え!」を、2日目は今とあの頃をつなぐという意味を込め「ネバーランドへの切符」をテーマに行われた。また、今回出演するアーティストも学生自身がピックアップ。そんな選ばれし全6組のライブは、大阪音楽大学の助手・難波孝と齋藤好花の進行のもと、各日「レッツ!」「ビギバズ!」の掛け声を合図に幕を開けることに。2023年の師走を盛り上げた2日間の様子を、出演順に紹介する。

■Day1・・・12月9日(土)

シトナユイ

イベントのトップを飾るのは、大阪音楽大学の卒業生。バンドを従え登場すると彼らのプレイで加熱しながら、やわらかくもあり粘度高めでもある歌声で「Groovin’ Weekend」などを歌い、独自の世界を広げる。観客も少しずつ揺れ始めて本人のアクションもより大きくなる。すると暗転し、今度はスローな「With」でムーディ&スリリングに。きらめくサックスの音や赤い照明も印象的で、続く「image」は滑らかな英詞や艶あるピアノで深い夜へと誘う。

と、ここで3日前にセルフリミックスを発表したばかりの曲で、かつてのつらい経験を思い出す時、自分を支える曲として作ったと話す「morning moon」を、「そういう(つらい)ことがある人にぜひ聴いていただきたい」と披露。その明るい曲調はミラーボールの乱反射と相まってフロアの彩度を上げ、バンドの演奏にも力がこもる。そして彼女はそんなバンドとライブができた喜びを語ると、ラストはアップテンポな「MUSEUM」の自由度高いボーカリゼーションでエネルギッシュな一面も見せ、クラップも起こしてご機嫌にライブを締めくくった。

猫背のネイビーセゾン

前日に自身の地元・神戸で初ワンマンを成功に収めた4人は、その熱狂を今日に持ち込み「NEON TETRA」などでスタートダッシュ。ツーマイクのラップもバンドの勢いも観客を沸騰させ、昨夜の様子も想像させる。ダンサブルな「DAN DAN DANCE」では井上(Vo.G)がハンドマイクに替え、天を指さし扇動。畳みかけるボーカルは体を突き動かし、人々がバウンドしてフロアが揺れる。

さらにワイパーも出現させ、岡(B)のコーラスも楽しげで、井上が指で作る銃も火を噴けば、MCでも人懐っこく。ネオンサインを模したイベントロゴついて「俺ら、ネオンロックバンドって(自身のことを)言ってて、ドンピシャやん!」(井上)とうれしそう。そして「ごく身近な監獄」で存分に踊らせておいて、後半戦突入の“アナウンス”に続く「偽り切ないな」で揺さぶりを。少し甘めの声と弾けるサウンドに観客も跳ね、「ないないな」のリフレインも耳に焼きついたら、「DOLE PLAYING」で着火して「かかってこいよ!」(井上)と「愛想のまちがい」を表情豊かに。ゴールまでハイカロリーに駆け抜け、終演後の拍手も大きく響いた。

板歯目

初日のトリを務めるのは、東京発の“爬虫類系”スリーピース。1曲目の「オリジナルスクープ」から切れ味鋭く、重みと狂気をメロディにのせていっきに覚醒させ、「dingdong jungle」と「地獄と地獄」へ。前方ではヘドバンも発生するが、ポップサイドもチラリ。どの瞬間も濃厚&濃密で病みつきになりそうだが、MCも独特。千乂(Vo.G)は「最後(トリ)にしてもらったからには頑張ろうと思います。失礼します」と、か細い声。演奏時との落差にも萌える。そして鳴り出す「夢の中」はまた違う表現。ジャジーにもノイジーにも、多彩なアプローチで繰り広げ、ボーカルは吠え続ける。

また「ちっちゃいカマキリ」からは再度狂暴に。ハイスピードな音の奔流に飲まれて前後不覚。多くの拳が突き上がる壮観な光景も生まれ、最終はさわやかに「オルゴール」と思わせるも、当然一筋縄ではいかず、ドキドキさせながら踊らせてついに終幕……となるはずが、なんと予定外のアンコールで「Ball & Cube with Vegetable」を。会場はたっぷり沸き、ヒリヒリさせつつ沈める全9曲は終了。見る者を圧倒するアクトに、来年3月のワンマンツアーも楽しみになるばかりだ。


■Day2・・・12月10日(日)

大翔

2日目の会場を目覚めさせるのは、関西から東京ドームを目指す大翔。バンドとともに現れると、先月リリースのEP「かいぶつ」に収めた「Monster Dance Hall」から、「社会的インテリジェンス」へ。ミラーボールが回るなかの吐息まじりのボーカルはどこか妖艶でもあるが、感情を激しくぶつけてドスもきかせる場面はドラマチック。また、ゆったりとセンチメンタルに「瘡蓋」を奏で、ピンスポットライトの下で言葉をつむぐ姿でも観客を釘づけにする。

そして、「苦悩とか自分の良さと向き合ってみようと思って作った曲を」と、次は「スタートライン」。みずみずしいロックで自身と近い若い世代にエールを送れば、ステージに向かって手が伸びる。しかし暗転後は、ムードを変えてエモーショナルに「ツミカサネ」をセレクト。ミュートのあとの大サビでグッと胸を締めつけ、とどめには「これからも人の夢を応援できる曲を作っていきます」と誓って「しゃぼん玉」を。手拍子が起こり、広がりあるサウンドとメロディに思わず拳を上げる人も。伸びやかな歌声は全員の背中を押すようだった。

灯橙あか

マルチクリエイター集団・WHITEBOXの一員としても活動する彼女は、舞台に一人で立ち、今回唯一の弾き語りで勝負。冒頭、イベントに携わる学生たちを労い、感謝を伝え、「(学生の)気持ちを受け取って歌いたいと思います」と、まずは自身が学生の時に作ったという「ピーターパン症候群」を。耳心地いい声は徐々に変化し、小さな体からは想像できない熱量。目を閉じて言葉を丁寧に届ければ、うなずくようにして聴き入る人も。

続く「煙草とオレンジ」では、映画的に恋の物語を描いて共感を集め、学生からリクエストされたという「今夜死にたいと思った。だから歌いたいと願った」では、「これさえあれば大丈夫……の、これさえにこの曲がなったら」と言葉を添え、体とボーカルを弾ませる。まくし立てるシーンも経て、エンジェルラダーに似た照明のなかで聴かせる「ここでしか泣かない」は、ウィスパーからの叫びでエネルギーを解放。そして最後は「今日の私が一番綺麗」のメロディで温め、「私が私を輝かせる」の力強い宣言で清々しい幕引き。拍手もじわりと沸き起こった。

名無し之太郎

北海道からの刺客が2日間の大トリ。現役大学生4人から成るギターレスバンドは、光を受けて闇に姿を浮かび上がらせ、純真全開の自己紹介をはさんで「ドライブ」の美しいボーカルやピアノなどで早々に魅了する。舞台上を行き来し手を振り歌う林(Vo)に観客が手拍子でこたえ一体感も生まれると、今度は「嘘つき」の表現力豊かな歌とプレイで大人のひと時に。会場の空気も色を変えるが、やはりMCとなれば元気いっぱい。

ついそのギャップに引きつけられるも、次の「向日葵」はわずかな寂寥もまぜて雄大な情景を映し出し、熱を秘める「かわたれ」は北の大地を思わせるスケール感をまとってダイナミック。そこには演劇のようなインパクトも。一方、10月に配信開始となった彼らの初オリジナル曲「融界」はロック、ジャズ、歌謡と自在にジャンルをまたいでアッパーかつ華やか。体も自然とリズムを取るが、時間は迫り迎えるフィナーレは「我儘」。トリッキーながらも小気味のいい横ノリは、彼らの無限の可能性を感じさせ、これぞ“ビギバズ!”といった新しい才能との邂逅を実感させた。きっと誰もが来年の『ビギバズ!』を待ち遠しく思ったに違いない。

なお、今公演はFM802主催のライブサーキット『MINAMI WHEEL 2023』との連携に加え、コンサートプロモーター、プレイガイド、メディアといった各所のサポートを受けるなど、さまざまなプロとの施策が取られた。学生自身も「#ビギバズ」のタグで自ら選曲した出演者の映像をSNSで紹介したり、会場ロビーに感想や意見を書き込むための色紙を設置したりと、いくつものプロモーションを実行。事前準備から当日まで、日々学んだ成果を発揮する貴重な機会となった。今後も大阪音楽大学では随時イベントを計画しているので、詳しくは同校のHPやSNSでチェックを。

写真=STAFF撮影

写真=STAFF撮影

写真=STAFF撮影

写真=STAFF撮影

Day 1 出演者&学生 集合写真

Day 1 出演者&学生 集合写真

Day 2 出演者&学生 集合写真

Day 2 出演者&学生 集合写真

取材・文=服田昌子 写真=『ビギバズ!』提供(撮影:松本いづみ)

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