TETORA
TETORA & ammo & アルステイク presents "VS DAY vol.1"
2023.12.15 KT Zepp Yokohama
TETORA、ammo、アルステイクの共催によるライブイベント『TETORA & ammo & アルステイク presents "VS DAY vol.1"』が、12月15日、KT Zepp Yokohamaで開催された。
大阪のインディーズレーベル・Orange Owl Recordsに所属するTETORA、ammo、アルステイクは、これまでレーベル主催のイベントで対バンしてきたが、自分たちでスリーマンを主催するのは初。また、このスリーマンをZepp規模で行うのも初。それぞれが飛躍した2023年の締め括りに、3組はどのようなライブを見せてくれるのか。3組の熱演を見届けようと、会場にはたくさんのオーディエンスが駆けつけ、ライブのスタートを今か今かと待っていた。大阪のライブハウス・心斎橋BRONZEおよびTHE NINTH APOLLO代表の渡辺旭氏が、TETORAとともに2018年に立ち上げたOrange Owl Recordsは、ストリーミング配信が主流のこの時代に音源を配信リリースしておらず、現場至上主義を徹底的に貫いている。特に今年春以降は3組とも新曲をCDですらリリースしておらず、ライブで曲を磨くことにこだわった。ライブハウスでいい音楽が鳴っていれば、きっとそこに人が集まるはず。そんな可能性を信じながらの、2023年の集大成と言うべきスリーマンに、これだけの数のライブハウスラバーが集ったのだと思うと心強い。
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トップバッターはammo。「来たぞ、Zepp Yokohama! 大阪、ammo、始めます!」と岡本優星(Vo/Gt)が勢いよく宣言。彼の奏でるギターリフから1曲目「フロントライン」が始まった。川原創馬(Ba/Cho)も、北出大洋(Dr)も、初っ端から全開。熱いバンドサウンドに乗っかって、岡本が「どうなんだ、Zepp!?」と投げかけると、観客が拳や歓声を上げて返した。「俺らだけの時間だぜ!」と嬉しそうに演奏を重ねていく3人。「変化じゃなくて進化がしたいし、流行りじゃなくて時代になりたいと思ってます」と語ったあとに披露したのは、「生き様の歌」こと「CAUTION」だ。岡本がバッキングを鳴らしながら歌い始めると、《朝は来る》という歌詞をきっかけに川原、北出も合流し、逆光の照明がバンドの姿を照らす。大きな景色を描きながらも一歩一歩踏みしめるようなバンドサウンドが、ammoのバンド人生を想起させた。
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ライブ当日の12月15日がOrange Owl Records代表の渡辺氏とイベント制作会社Livemasters Inc.代表の岩下氏の誕生日であることから、birthdayにかけて『VS DAY』というタイトルがついた今回のスリーマン。ライブ後半に向けてのMCでは、岡本が「ライブハウスで戦ってきた人間への一番のプレゼントは、ライブハウスで戦ってきたバンドがこれまでを更新する瞬間を目の当たりにさせることだと思います」と意気込みを語った。ライブ後半では、みんな大好き2ビート曲「星とオレンジ」でダイバーを続出させ、「歌種」でシンガロングを巻き起こす。そしてラストは「好きになってごめんなさい」。情熱的なバンドサウンドと真っ赤な照明が記憶に焼きついた。
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アルステイク
2組目はアルステイク。「他人事」でライブを始めると、「どんどんやろうぜ!」と曲を次々と披露していった。先ほどのammoのライブからは溢れんばかりの気合いが伝わってきたが、ひだかよしあき(Vo/Gt)も、のん(Ba/Cho)も、あむ(Dr/Cho)も、ammoを超えようと燃えているのが音から分かる。これこそが、3組が競演を重ねる理由だ。MCでは、ひだかが「このスリーマン、当分ないらしいです」と切り出し、「この日が勝負みたいな日に、盛り上げ上手やっても意味ないから。Zeppフロアパンパン、それだけじゃ物足りないんですよ。ammoの心の中も、TETORAの心の中も、お客さんの心の中もパンパンにしたいと思います」と語る。
アルステイク
アルステイク
「進化とか時代とか、なろうとするよりなっちゃってた方がよくない?」と挑発的に言いながらの「チェリーメリー」、「拳の数、ダイバーの数じゃないかもしれないけど」と前置きしつつ、観客の衝動を受け止めるように鳴らした「走れ」&「光れ」、《お下がりのTETORAのハイエース》《賢くて上手な優星さんの事 羨ましい自分がなんか悔しい》と歌詞を替えた「心」と、ライブならではの熱い場面を生み出しながら、MCでは、初めてリリースをして自分たちのCDが店頭に並んだ時、「TETORA、ammoに次ぐOrange Owl Recordsの末っ子」と書かれたのが悔しかったと語ったアルステイク。その上で「今日は」を堂々と鳴らした。誇りを持って「Orange Owl Recordsの末っ子、アルステイクでした!」と叫んだラストシーンは多くの人の心に刻まれたはずだ。ammo、TETORAから受け継いだ“ライブバンドとしての血”に想いを馳せるステージだった。
アルステイク
TETORA
そして、トリはTETORAだ。1曲目は「本音」。上野羽有音(Vo/Gt)がギターを鳴らしながら歌い始めたあと、いのり(Ba)、ミユキ(Dr)がイントロで合流。3人揃って鳴らすバンドサウンドは大迫力だ。今日のTETORAはなんだかすごい。そんな高揚感とともに、観客が力強く拳を上げる。続く「言葉のレントゲン」の最中、上野が叫んだ。「来年8月12日、日本武道館でワンマンします!」。のちのMCによると、ワンマンではなく、仲間がいる時に発表したかったのだそう。フロアからはわーっと歓声が上がり、会場全体が明転になったラスサビでは最高に盛り上がった。
TETORA
曲が終わると「おめでとう!」という声があちこちから上がるが、ここでMCに入ったりせず、ライブはそのまま続いていく。未来にどんな予定があろうと、今この瞬間に賭けるのがTETORAの戦い方だからだ。「一昨年、小っちゃいライブハウスで始まったこのスリーマン。過去最大のZepp Yokohama、今日は今日。思いきり一等賞獲りに来ました!」と上野。そして有言実行。どの曲も熱量が高かったが、2023年12月に限りYouTubeで限定公開中の新曲「12月」は特にすごかった。スローテンポから始まり、気迫に満ちた間奏を経て、テンポアップして駆け抜けるように終わる。TETORAというバンドの生き方がここに凝縮されている。3組それぞれに良さがあるが、それでも誰もが「今日はTETORAが持っていった」と思っていたであろうタイミングで上野がこう叫んだ。「負けてきた数が違う。悔しかった気持ちの数が!」と。今最高に輝いているTETORAの姿はOrange Owl Recordsの希望そのもの。今回のスリーマンを経て、ammoもアルステイクも、さらにいいバンドになっていくだろう。最後には「Loser for the future」を大音量で鳴らし、全部出しきってステージを去った。
TETORA
この日のライブ中にはTETORAの武道館ワンマンが発表されたが、楽しみな予定が発表されているのはTETORAだけではない。ammoは来年1月にトイズファクトリーよりメジャーデビューし、3月にZepp DiverCity (TOKYO)でワンマンライブを開催。そしてアルステイクは1月に2ndシングル「ふたりの季節」をリリースし、3月に初のワンマンツアーを開催する。2024年も3組はさらなる活躍を見せてくれることだろう。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=稲垣ルリコ