Billyrrom、ゲシュタルト乙女、TETORA、Czechoが心斎橋PARCO3周年を祝福ーージャンルも国籍も越えた音楽イベント『PARCO MUSIC JAM』レポート

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『PARCO MUSIC JAM』Billyrrom

『PARCO MUSIC JAM』Billyrrom 写真提供=心斎橋PARCO(撮影:norico uemura)

『PARCO MUSIC JAM』2023.11.25(SAT)大阪・心斎橋PARCO

11月25日、大阪・心斎橋PARCOにある多目的ホール・SPACE14で音楽イベント『PARCO MUSIC JAM』が開催された。本イベントは心斎橋PARCOのオープン3周年を記念したイベント『PARCO CHAOS JAM』のひとつで、10日間にわたって館全体で音楽やファッション、グルメにアートと、30を越えるイベントを展開。大阪・心斎橋エリアを昼夜問わず盛り上げてきた、ごちゃ混ぜでカオスな10日間のハイライトともいえるライブ模様をお伝えしたい。

『PARCO MUSIC JAM』に出演したのは、Billyrrom、Czecho No Republic、TETORA、ゲシュタルト乙女の4組。”JAM”の名にふさわしい、ジャンルも国籍も飛び越えたアーティストばかりだ。MCには芸人&”フテネコ”でおなじみのイラストレーター、芦沢ムネトが登場。会場となったSPACE14はライブハウスとはまた違った多目的ホール。ライブスタートは昼の15時で、開演までMCのトークやお酒を楽しみながら思い思いの時間を過ごしていた。

Czecho No Republic

トップバッターのCzecho No Republicは1曲目からキラーチューン「Amazing Parade」でカラフルかつダンサブルなナンバーで観客をご機嫌にしていく。タハカシマイ(Vo.Syn.Cho)の炭酸がパチパチと弾けるような爽やかな歌声がすっと頭の中を駆け抜け、脳内がクリアになっていく。観客のギアがガラっと変わり、会場があっという間にライブ空間へと様変わり。続く次曲も「MUSIC」と、お馴染みのナンバーをドロップ。砂川一黄(Gt)が綴る癖になるメロディライン、山崎正太郎(Dr)の軽快なビートが観客を大いに揺さぶっていく。

実はこの日のステージが年内大阪最後のライブだという彼ら。ジャンルミックスなライブイベントということもあり、彼らのステージを初めて目にする人も多いなかで、「自分たちの音楽、等身大の音を鳴らせたら。(今日は)ステキなアーティストばかり。一日、良い日になると思います。心開いて一緒に楽しみましょう!」と、ともにイベントを、音楽を楽しもうと言葉を懸ける。「ファインデイ」はその言葉の通り、武井優心(Vo.Ba)のリフ、心晴れやかにしてくれるメロディがとても印象的であっという間に会場を多幸感で満たしてしまう。

タカハシ、武井によるツインボーカルは甘酸っぱくてドキドキさせるハーモニーも素敵だけれど、ポップチューンな「No Way」、艶感を増したメロが印象的な「Everything」と、ライブ後半からの勢いをつけたステージでの2人のグルーヴィな歌声にも目が離せなかった。「Firework」ではタイトルのままにタカハシのシンセが花火を打ち上げるドキドキ感を演出していて、弾けるようなビートに観客も手を掲げて音に応える。

「いくつになっても忘れちゃいけない気持ちがある。それを曲にしたい」と、現在絶賛新曲制作中だという彼らは、来年早々にはライブで新曲のお披露目をしていきたいと意気込みを語ると、ラスト「好奇心」で逸る気持ちをぎゅっと閉じ込めたアッパーなサウンドで駆け抜け、ステージを後にした。

TETORA

いつものように円陣を食み、いつものように「大阪、心斎橋、TETORAです」と丁寧にバンドの名前を告げ、フロアの視線を一点集中させる。地元中の地元、心斎橋を中心に活動するバンド・TETORAは今回のイベントにうってつけの存在だ。バンドの存在を知らしめるべく、瞬発的かつ熱量高いステージを見せてくれるかと思いきや、この日の1曲目に選んだのはミドルナンバーの「告白」。上野羽有音(Vo.Gt)はハスキーボイスで感情豊かに、丁寧に歌いこんでいく。じわりと鼓動を打ついのり(Ba)のリズム、詞世界を心の奥底に染みこませるミユキ(Dr)のビートが浸透度を高めていく。

「3ピース、3人だけの音。心斎橋育ち、うちらがTETORAです。刺すよりも染みこむようなライブをします」。生粋のライブハウスバンドがライブハウスではない、まるで講堂のような立派な多目的ホールでライブをするときにどうすれば、観客の心を掴めるか。彼女たちの答えがこの日のセットリストに込められていた。「ハテナ」「贅沢病」「言葉のレントゲン」、いつも以上にダイレクトに、真正面から言葉が届けられていく。アコースティックではなく、ロックバンド然としたサウンドで存在感を知らしめていく3人。

「PARCOでライブできるなんて思ってもなかったです」、上野がこの日のステージに懸ける思いを語った。「PARCO」は全国で展開するファッションビルで、日々全国のライブハウスを巡っている彼女たちは遠征先の色々な都市の「PARCO」を訪れたという。なかでも活動拠点である心斎橋は別格。買い物や食事を楽しんだのはもちろん、音楽活動で悔しい思いや嬉しい思いをしたのもいつだってこの心斎橋だった。そんな思い出のある土地、建物でこの曲が歌えてうれしいと、「ずるい人」へ。溢れる感情は抑えない。いまこの瞬間にしか出せない音で感情を溢れっ放しにさせ、真っ直ぐに想いを綴り、熱量を高めていく。ラスト「わざわざ」、ギターをかき鳴らし、嘘のない感情を音に代えむき出しにしていく3人。「今日だけの歌でした」、その言葉通り、一期一会、瞬間々々を大切にするライブバンドの心意気をたっぷりと見せつけてくれた。

ゲシュタルト乙女

ジャンルレスなラインナップがそろった『PARCO MUSIC JAM』だけれど、ゲシュタルト乙女は国境を超えての出演ということもあり、ライブ開始前から注目度が高かった。日本語詞で歌う台湾のロックバンドとして、ここ数年は日本国内でも知名度を高めてきた彼女たち。日本でのステージも慣れたもので、この日も「生まれ変わったら」から、するりと観客の心に入り込んでいく。円やかなメロディの中にもパリっとしたドラムのビートが絡み合い、何とも言えない浮遊感が漂っている。次曲「空気」は前曲で作り上げた世界観からさらに湿度を増した音世界が流れ、心地よさが高まっていく。リラクシンな空気というか、肌に密着し安心感を覚える、そんな音に心癒される。前回の来日ツアーからサポートのリズム隊メンバーも変わり、現体制では日台含め初のステージというが安心感はひと際大きい。

自己紹介ではMikan(Vo.Gt)流暢な日本語で「お笑いが大好き! お笑いや寄席でも使われるステージに立てたのがうれしい! コンビではなくバンドで出て良かった」と挨拶。さらに、パルコ3周年を祝し、台湾華語での「誕生日おめでとう」の発音を観客に指南。和気藹々とした空気を演出すると、新曲「窓」へ。メンバー編成の変更後初のシングルで、colormalのボーカル・イエナガがアレンジを担当したことで注目を集めた同曲。煌々とした照明を背後に受け、センチメンタルに、でも想いは強く綴られた楽曲で観客の視線を集めていく。

この日のステージは心斎橋PARCOの地下2階にある「心斎橋ネオン食堂街」でもライブ中継を実施。個性豊かなショップがそろうなか、お酒や食事を楽しみながらライブも観られるという贅沢な空間ということもあって、昼酒を楽しみながらスクリーンを見つめる人の姿も数多く見られた。さらに、イベントの合間には同フロアにあるファッション雑誌が主催するマーケットや、北海道物産展を訪れたりと、ライブハウスではなく、ファッションビルならではのイベントを満喫する観客の姿もあった。

「人はそれぞれ好きなものがあって、憧れや目標に向かって日々頑張っている。みんなと一緒に歌を歌うことで、いつもの日常が少し救われたと感じてもらえたらいい。そう思って音楽を作っている。いまこの場所にきてくれてありがとう」「日本と台湾の架け橋になれるように頑張る」と、集まった観客へ感謝の想いを伝えると「人生ゲーム」でコール&レスポンスを楽しんだり、終始ステージを満喫。ラスト「Dreamaholic」まで、心地よい音楽に境界線はないと改めて思わせてくれる、素敵なパフォーマンスで魅せてくれた。

Billyrrom

イベントのトリを務めるのは東京発、6人組音楽集団・Billyrrom。ファンクにソウルにR&Bに、ジャンルレスなサウンドが魅力の彼らはこの日のラインナップに適役すぎで、1曲目「Defunk」からドラマチックなファンクサウンドを打ち鳴らし、豪快なスタートダッシュをかけていく。緩急をつけた音色はガチャガチャと賑やかしくて、ずっと気持ち良いところをついてくる。これは楽しくなるぞ!初っ端から期待の高まるサウンドが鳴り響く。Mol(Vo)が「(いつもとは違う)あんまりないステージに緊張している」と緊張した表情を見せつつも、「Danceless Island」では美しいファルセットを聴かせ、観客を躍らせる。

ライブハウスや野外のステージでの経験はあるものの、イス席、しかも多目的ホールでのステージは初めてだという彼ら。新鮮さがありつつも、音の響きが楽しいとイベントを満喫している様子。Rin(Gt)の個性あるギターフレーズが際立ち、Leno(Key/Syn)がそこに華を添える「Noidleap」では、夜感たっぷりなグルーヴィなサウンドでフロアを揺らす。続く「Eyes to the Mirror」ではビターなサウンドの中に色香と艶をまとわせ、観客を心酔。Taiseiwatabiki(Ba)、Shunsuke(Dr)のリズム隊は終始ご機嫌なリズムでフロアを揺らし、曲と曲のつなぎ目を融解させ、観客をどっぷりとバンドの世界観へと落とし込む。初めて彼らのライブを観る人も多いなかで、バンドの多彩さを次々に見せつけていく6人。バンドのイメージを固定させない、表情がコロコロと変わるサウンドに驚かされてしまう。

「Narrator」からはYuta Hara(DJ/MPC)がバンドの生音の中に鋭利な存在感を放っていく。ラスト「Magnet」ではMolが吠えた途端、バンドのグルーヴも一気に上昇!バンドサウンドの上をすべるようにDJのスクラッチが駆け抜け、ギターがさらに唸りを高める。ぐんと上がりきった会場の熱量はそのままアンコールへと繋がるが、「Babel」ではその高まった熱を穏やかに和らげるジャジーなサウンドで締め、「みなさん良い夜を」と、ステージを後にした。

タイトルのままにカラーの異なるアーティストが楽しませてくれたこの日。一介のファッションビルに留まらない、カオスなイベント三昧だった『PARCO CHAOS JAM』。来年の4周年はどんなテーマで楽しませてくれるのか期待が高まる。

取材・文=黒田奈保子 写真提供=心斎橋PARCO(撮影:norico uemura)

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