2023年の溜まった疲れを吹き飛ばすサウナみたいなライブ!?緒方恵美「禊2023-ととのう-」ライブレポート

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撮影:佐伯 敦史

アーティストとしても精力的な音楽活動を繰り広げている人気声優・緒方恵美。そんな彼女の2023年を締めくくるライブ「禊2023-ととのう-」が、2023年12月23日に東京・神田明神ホールで行われた。彼女がハマっているという「サウナ」をコンセプトに、熱波ソングとクールソングの波状攻撃をファンにおみまいした、ユニークなライブの様子をレポートしよう。

ホールはさながら「聴くサウナ」?熱くてクールなエールロックのつるべ打ち!

年末&クリスマスイブ前夜ということもあって、参拝客や『ラブライブ!』聖地巡礼などでも賑わう東京・神田明神。そこに隣接されている神田明神ホールに、年の瀬を緒方恵美のエールロックで締めくくろうというファンが集結。オールスタンディングのフロアは満場のファンで埋まり、場内が期待の空気で熱くなる中で開演時間を迎えると、バスローブをまとった緒方恵美が、キーボード&バンドマスターの岩瀬聡志と共に登場し、大きな歓声が沸き上がった。

そしてキーボードの独奏と共に、スポットライトに照らし出された緒方が紡ぎ出したオープニングナンバーは「silver rain -piano ver-」。かつての恋人との日々を思い返して力へと変えていく歌を、切ない旋律と共に静かに力強く唄い上げていった。

撮影:佐伯 敦史

撮影:佐伯 敦史

「本日はサウナ緒方へようこそ」
そんな挨拶と筋肉柄のグラフィックTシャツ&オレンジのショートパンツという岩瀬の姿にツッコミを入れて笑いを誘いながら、オープニングMCがスタート。

冒頭の挨拶の通り、今回のライブのコンセプトは緒方がハマっている「サウナ」。熱い蒸気&ロウリュウのような熱波ソングと、火照った身体を冷やす水風呂のようなクールソングを交互にファンにぶつけて、サウナ→水風呂のようなローテーションでみんなに「ととのう」体験をしてもらい「サウナはライブに合う」ということを証明しようというユニークな試み。そんなサウナ気分のライブということで、黒のTシャツ&スウェットパンツにモノトーン柄のロングマフラーをまとった緒方を筆頭に、ラフなファッションのバンドメンバーも勢ぞろいして、いよいよサウナなライブの幕が開いた。

開始早々最高の熱波をぶつけるような激しい演奏と共に始まったのは、TVアニメ『GTO』主題歌「Driver's High」と、未来へと力強く生き抜くメッセージを込めた「Can't go back my mission」のロックナンバー2連発。拳を振り上げながら力強く唄い上げる緒方のボーカルに煽られて、場内はスタートからハイテンションな熱気に満ちていく。

熱波のごときロックの後は、心地よくクールダウンさせてくれる水風呂のようなナンバーがスタート。静かだけど力強いバラードで遙かなる旅への憧憬を唄った「RA・SE・N」、そしてなかなか会えなくても心で繋がっている仲間の尊さを唄った「Precious Shinin’Star」では、静かなピアノソロからだんだんとバンドの音が重なっていくなかで、緒方の力強く語りかけるような歌声がホールに響き渡る。そして最後はロングブレスからのピアノソロで締めくくられ、満場の拍手と歓声が場内を満たしていった。

「そんなわけで1セット目が終わりました。どんな感じですか?まだまだいけますか?そりゃそうだ!」
ライブ序盤の手応えを感じさせるような緒方の軽妙な挨拶から二度目のMCタイムに。ファンからのコーレスも交えたバンドメンバーの自己紹介コーナーや、「水風呂は最初にクビまでどっぷり浸かろう」など緒方オススメのサウナの楽しみ方指南などで盛り上がり、再びライブがスタート。

撮影:佐伯 敦史

撮影:佐伯 敦史

「緒方のライブも二度目からクセになるから、クセになって帰ってもらえるようにがんばります。2セット目行くぜ!」

そんなゲキと共に始まったのは、絶望や誘惑を振り切って希望と共に立ち上がろうというメッセージを込めた「NEXT STAGE」。パワフルな重低音の演奏と共に、語りかけるように緒方は唄い上げていく。続いては一転スピーディーで叩きつけるようなメロディのロックで、自身が主演を務めたテレビアニメ『地縛少年花子くん』主題歌「No.7」を熱唱して、場内のテンションを熱く盛り上げていった。
そしてクールパートでは、都会の情景と共に遠く離れた大事な人を思うバラード「建設途中のビルの上から」をしっとりと唄い上げ、続いてリズミカルなイントロから重厚な演奏とボーカルへと繋ぎながら、自分らしさをさらけ出して生きていくメッセージを紡いだ「威風堂々」で2セット目のライブパートを締めくくった。

この2セット目はサウナ2回目に訪れるけだるさを表現したというトークから始まった二度目のMCでは、今日の朝は気合いを入れる為に朝サウナをキメてきたなどのサウナトークで盛り上がる。
そして次が最後のライブパートになると緒方が切り出すと、場内には「えー?」という残念げな声と共にホールを揺らすような地団駄が響き渡る!新型コロナ禍で声出しが禁止されていた時期に、Angelaのatsukoが発案した「ライブが終わってほしくない」というファンの気持ちを声の代わりに表現してもらうパフォーマンスが、緒方のライブではすっかり定番として定着しているのだ。

そんな声に応えるように、水の代わりに用意されたサウナー御用達ドリンク「オロポ」(オロナミンCのポカリスウェット割り)を飲んだりしながらの熱いサウナトークが盛り上がり、終わらせようとすると再度の地団駄にドラム・青山英樹がドラムロールを合わせ、「もっと喋って」コールも飛び出す盛況ぶり。
緒方もそんなファンの反応を喜びながらも「三度目で全てを出し切る」と最後のライブパートへと突入した。

撮影:佐伯 敦史

撮影:佐伯 敦史

ライブ3セット目は、人生という戦いの航海へと立ち向かう者達へのエールを重厚に唄い上げる「出航 -departure-」からスタート。続いて激しいドラムロールから間髪入れずに始まったのは、緒方も直井文人役出演した『Angel Beats!』から、Girls Dead Monsterの「Crow Song」。客席とコール&レスポンスも交えながら共に唄い、キーボード・岩瀬もショルダーキーボードと共にステージ前方に進み出て、緒方と共にパフォーマンスを繰り広げて場内が一体になって盛り上がった。
すぐさま緒方の歌い出しと共に始まった3曲目は「Byo-doでいきましょう」。緒方の歌声に激しいドラムとファンのコール&レスポンスが重なり、ショルダーキーボードソロのパフォーマンスなども加わって場内の熱気が上がっていく。そして終盤は緒方のアカペラで力強いボーカルが響き渡り、最後は全員で声を合わせて唄ってから「さあ飛び込めー!」と水風呂に飛び込むようにジャンプで締めくくった。

そして全員が水風呂に浸かったような心持ちで送るクールパートは、天へと召される愛する人への変わりなき愛を静かに力強く唄い上げるバラードナンバー「ENDLESS LOVE」、そしてピアノソロからリズミカルなメロディが重なり、仕事やしがらみに追われる日々の暮らしをハッピーで乗り切ろうと背中を押すエールソング「ハッピーの誕生」へとなだれ込む。全員でクラップを重ねたり腕を振り、共に歌声を重ねながら盛り上がっていく。そしてラストは、ステージから緒方がマイクを向けてみんなの声を拾いながらの「ラーラーラー」の合唱で一体感あふれる空気にみんながととのっていく。

撮影:佐伯 敦史

撮影:佐伯 敦史

「最後盛り上がっていこうぜ!」
そんなゲキと共に始まったラストナンバーは、ここ近年の大変なことばかりだった世の中を重ね合わせながら、それでもがんばって生きてここで出会えたことへの感謝とエールを唄った「Try Out, Go On」。曲中で何度も唄われる「オーレー!」のフレーズにみんながコール&レスポンスを重ね、アカペラからの「生きててくれてサンキュー」に大歓声が巻き起こる。そしてラストは全員で腕振り上げながら声を合わせ、パワフルなドラムソロからの「せーの!」という緒方のかけ声に合わせて全員がジャンプを決めて、心地よいライブの時間は幕を閉じた。

しかしまだととのっていないファン達から、すぐさまアンコールの声が上がる。そして数分後に緒方とギター・目木とーるがアコースティックギターを携えて現れて場内が沸き上がる。
そしてアコースティックギターのソロの旋律と共に始まったアンコールナンバーは「約束するよ」のアコースティックバージョン。スポットライトに照らし出されながら、共に暮らす恋人同士の思い出と生きる決意を情感込めて唄い上げ、後のMCで語られるが最近亡くした友人のことを思い出し、途中で歌が途切れる一幕も。それでも情感あふれる歌声が静かな場内に響き渡り、歌い終えると場内は大きな拍手に包まれた。

アンコールのMCでは、他界した友人のことや朗読劇などで「死」について考えさせられることが多いことを語り、大変な世の中だからこそ「どう生きていくべきか」「生きてる時間を楽しもうぜ」と場内と配信で同じ時間を過ごすファン達にエールを送った。

続いてインボイスの経理事務に苦労している話や「最後まで楽しんでいってください!もう終わりだけど!」とジョークを飛ばし、今回のライブ用に作ったサウナグッズの数々に込められた自分のこだわりを語って、いよいよライブも本当にラストへ。
「今日は気温が一桁台だからライブ後に外に出るとサウナ後みたいに気持ちいいのでは」と語り、改めてのメンバー紹介ソロパフォーマンスから、思い切って自由に解き放たれて生きようと語りかける「freedom」をコール&レスポンスやタオル投げパフォーマンスを交えて共に盛り上がり、続いて息が詰まりそうな世の中をぶち破っていこうというメッセージソング「Breaking Dawn」を、共に声を合わせて力強い歌声で場内を満たしていく。

ここでアンコールステージは終わったが、まだまだ緒方の歌を聞きたいファン達からの再度のアンコールに応え、緒方とメンバーが再び登場。
「今日は(サウナの話が盛り上がり)曲の説明全然してなかった、ごめんね!」と謝りつつ、今日来場と配信で参加してくれたすべてのファンに感謝の言葉を送る。そして今日のセットリストに連なったすべての曲が「今だからこその歌」として選んだことを語り、「無駄なことはないからみんながんばろう」「力が欲しい時はまた会いに来て下さい」と熱いエールを送る。

撮影:佐伯 敦史

撮影:佐伯 敦史

そして来年2月に予定されているファンミーティングの告知と共に、「最後の曲で嫌なモノ全部、神田明神に落としていこう。来年はいい年になるよ」というメッセージから、正真正銘のラストナンバー「僕を放て」がスタート。世間体や冷笑などを蹴飛ばして、自分を解き放って前向きに力強く生きろというメッセージを、パワフルなメロディとボーカル&シャウトで聴いているすべての人の力になるように唄い上げていく。そして「2023年の最後、メチャクチャ力込めて飛ぶよ!」からの全員でのジャンプを決めた。
最後は声援を送ってくれたすべてのファンに、メンバー全員手を繋ぎ掲げてからの一礼、そして緒方の生声での「メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!」の言葉で、年の瀬を飾る熱くてクールなライブは幕を閉じた。

サウナみたいなライブというコンセプト通りに、温かく癒されるような充実感を味わえた「禊2023-ととのう-」。2024年もどんな熱いライブで楽しませてもらえるかが楽しみになる年末の一夜となった。

取材・文:斉藤直樹 撮影:佐伯 敦史

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