角巻わため、2ndライブ「わためぇ Night Fever!! in TOKYO GARDEN THEATER」のオフィシャルレポート公開
1月31日、ホロライブ4期生の角巻わためが東京・東京ガーデンシアターにて、2度目のソロライブ「角巻わため 2nd Live『わためぇ Night Fever!! in TOKYO GARDEN THEATER』」を開催した。2年以上前の1stソロライブから大きく成長した彼女を象徴するかのように、広い会場は満席で開始前から視界いっぱいに黄色のペンライトが光り輝いていた。2024年1月10日発売の3rdアルバム「Hop Step Sheep」の新曲を引っ提げての公演となり、全曲オリ曲で武道館ライブをしたい、と語っていた彼女は夢を着実に叶えてきている。
1曲目は「愛昧ショコラーテ」。ロック調のギターリフにあわせて響き渡る、観客席からの「Wow OH! Wow OH! OH!」のコール。左手を高く掲げて現れた角巻わためは「みんなもっと声出せるよなぁ! みんなの声聞かせて!」と叫び、会場を盛り上げた。
1stライブのときは、マスク着用、声出しNGだった。大声で彼女に声援を送ったファンの盛り上がりは、今まで溜め込んだ想いをぶつけるかのごとく熱を帯びていた。マイクを会場に差し出し、耳に手を当てて声を聴いていた角巻わためは「ありがとう、もっと歌って!」とファンを煽る。1曲目早々に、彼女は会場とのグルーヴを完成させた。
2曲目「Now on step」で角巻わための前に出てきたのはドラムセット。おもむろに角巻わためはバンドにあわせてドラムを叩き出す! 椅子から降りて今度はエアギター。キュートさ満開のエンターテイナーとしての素質を十分に感じさせるステージだ。
空気をガラッと変えるように3曲目の「きっと」が入り、エモーショナルさが会場に溢れた。角巻わためは情感強めの歌も得意としている。序盤のこの3曲は、ハッピー感とロック性、両方の表現が得意な角巻わための歌唱力を知るのにもってこいな入門編的作品だ。
MCパートで彼女は、ちょっといたずらめかした顔で「新しいアルバムは、聴いてくれた?」と会場に尋ねてきた。もちろんみんなの答えはYES。その後もバンドメンバー紹介や、ペンライトのウェーブなどを繰り返しながら「気持ちいいー!」と叫ぶ角巻わため。コールアンドレスポンスができる今回のライブを、心から楽しんでいるようだった。
ステージ演出として歌詞が表示されていたのも今回の特徴だった。みんなでそろって声を出したいという角巻わためは「ステージに表示されるコール、言葉、歌詞!一緒に歌ってください!」と呼びかけていた。この言葉の思いはしっかり伝わり、終始会場は一体となって角巻わためと共に歌っていたのが印象的だ。
4曲目「Beautiful Circle」はポジティブな思いをつづるポップソング。メロディはしっとりしているものの、スピーディーで激しめなこの曲を、てきぱきとしたダンスを交えて歌う角巻わための姿は、見ていて元気になれるものだった。
5曲目の「Happy day to you!」は、角巻わため作品の中でも屈指の人生讃歌だ。生きる日々そのものが幸せであるというテーマを、角巻わためは直球で表現。「生まれてきてくれてありがとう!」という歌詞にあわせて、角巻わためからの愛を表現するように大量の風船が観客の上に降り注ぐ。「来年も再来年も一緒にここで笑ってお祝いしよう」という歌詞にこめられた思いは、ライブも配信も含めた、彼女の常日頃からの願いでもあるのだろう。ハイトーン・ロングトーンのボーカルは、祈りのように美しかった。
ここで会場に入ったのは「ギリギリわるくないわため」シリーズの新作映像。自身のチャンネルでアップしている、数々のいたずらを撮影した短い動画シリーズだ。それにあわせて登場したのが、ストリート系衣装を身にまといサングラスをかけて腕を組んだ角巻わためと、わためいと(角巻わためのファン、羊の姿をしている)たち。「ジンギス団ラップ」でかっこよくてちょっとダーティな角巻わためのスタイルを披露した。「HEY! HO!」の掛け声にあわせ、会場もゆれる。
次にゲスト登場。「Reaper vs. Sheep -Ouen ver.-」で華麗なラップを歌うのはホロライブEnglishの森カリオペだ。ふたりは2022年9月24日に発売された「Reaper vs. Sheep -Ouen ver.-」「Reaper vs. Sheep -Kenko ver.-」で共演している。森カリオペはMCの中で、自身のソロライブに角巻わためが出演してくれたことについて触れ、今度は自分が応援しに来たことを伝えた。アーティスト仲間としての絆が見えた瞬間だ。ラッパーとして活躍中の森カリオペに対し、ハッピーな日本語ラップで対抗する角巻わため。ファッションもラップもかっこよく甲乙つけがたい。と同時に、姉妹のような仲の良さが感じられて、多幸感あふれるステージだった。
森カリオペを迎えるにあたって、コラボバージョンにアレンジした「mayday,mayday feat. Mori Calliope」が披露される。メタルロック要素強めの楽曲で、ふたりのボーカルのパワーはアクセル全開。会場にはレーザーが飛び交い火花が飛び散るど派手なパフォーマンスだ。このときふたりと一緒にタオルを回すことができた観客は、なにものにも代えがたい一体感を体験できたことだろう。
ここで自身の配信でお披露目されたWNF衣装で再度登場。白を基調とした、引き締まった大人っぽさとふんわりしたアイドル的かわいさがミックスされたデザインの衣装に、ファンは大喜び。その姿で9曲目「What an amazing swing」のリズミカルなエレクトロスイングに合わせ、大人っぽいダンスと歌声を披露。特にチャールストンスタイルのステップはとても華麗で、エンターテイナー角巻わための姿がより印象に残る一曲になった。
10曲目「WataMeister」はゆったりした4つ打ちハウスミュージック。大人びた角巻わためは、前半のいたずらっ子モードから、包容力のある頼れる存在へと雰囲気を変えた。眠れない夜に名前を思い出してくれたら素敵な夢に招待する、という羊のあたたかさを織り込んだ歌詞を、彼女はまるで観客に手を差し伸べるような表現で歌っていた。先ほどまでの曲で熱くなった心を、心地よく安らかにしてくれる、見事な構成だ。
11曲目「sweet night, sweet time…」はしっとりめのポップソング。こちらも夢と夜をテーマにした作品で、夜を楽しむ羊としての彼女の軽やかさが表現されていた。角巻わためがターンをすると映像がキラキラまばゆく光るなど、映像が振り付けとリンクする演出が入っており、まるで彼女が会場に魔法をかけているかのようだった。
穏やかな流れにあわせて、アコースティックバージョンの「Holidays!」が歌われた。ギターの音色にあわせ、角巻わためは星型タンバリンを叩きながらの歌唱を披露。楽しそうに揺れながら歌う彼女の声と姿は、癒やしそのものだ。
そのゆるやかなテンションのまま歌ったのは13曲目「君色ハナミズキ」。「やっぱ、君に会いたい 一分一秒、分け合いたい」という愛のこもった歌詞をあたたかく繊細に歌う彼女。一分一秒をわけあった観客にとって忘れられない光景になっただろう。
ここで「ラスト3曲なの」と告げると、会場からは「えーっ!」っという嘆きの声が響いた。お茶目な彼女が「もう一回はじめからやっちゃう?」というと、バンドメンバーもジョークに乗って1曲目の「愛昧ショコラーテ」のイントロをちょっとだけ演奏する、というワンシーンも。
「デビュー前から今までのことを綴った楽曲です。わための挑戦をみんないつも見守ってくれたよね? 今もそう。本当にありがとう! 次の曲はそんなわためにとってすごく大切な曲です」
と伝えて披露した曲が、14曲目の「My song」。この曲がいかに角巻わためを知る上で重要かを理解しているファンは多かったようで、イントロがかかった時点で会場から興奮の声が一声にあがった。角巻わためが自分自身に向き合い、心をむき出しにして夢を追いかける楽曲だ。
15曲目「RAINBOW」では角巻わためは再び笑顔に戻り、拳を振り上げ会場を盛り上げる。会場からはコールがあがり、クライマックスに向けて一体感はどんどん高まる。
そして最後16曲目の曲は、ポルノグラフィティ提供の楽曲「Fins」。「みんな歌ってー! 声聞かせてくださーい!」。曲が静かに始まると会場はペンライトで真っ青に染まる。
「いつかは大きなソウルになるかな 僕という輪郭を強く強く描くの」という歌詞のとおり、今回のライブでの角巻わためは、堂々としたステージを見せ、アーティストとしての輪郭をはっきりと感じさせてくれた。その力強さはまるで「Fins」のMVに出てくる、海をゆうゆうと泳ぐクジラのよう。彼女を照らす観客のペンライトの光は、まるでクジラのまわりを泳ぐ無数の海の生き物たちのよう。無数のシャボン玉が浮かんだ会場は、角巻わためと観客の合唱が響く海となった。
アンコールが会場に響き渡った後に、突如映像が流れた。それは今日1日をダイジェストにした映像だ。待ちきれず踊る人もいれば、ぬいぐるみを抱いている人もいる。「Happy day to you!」で降ってきた風船に触りながら笑顔でいっぱいになっている人たちの姿も流れている。ほんの少し前にあったことを客観的に映したVTRが流れる中、文字が浮かび上がる。
「私の詩は止まない」
アンコール1曲目は「Everlasting Soul」。角巻わための曲の中でも特にパワー強めな曲だ。熱唱という言葉がふさわしい彼女の歌い方は、会場の温度をアンコール前よりもさらにあげる。
「クソザコ回線から、本当にこんなに(会場を)埋められるようになるなんて思いもしませんでした!」角巻わためはデビューしたばかりのとき回線が弱く、配信が止まりがちだったことをホロライブのメンバーとファンが「クソザコ回線」とネタにしていじったことがあった。「クソザコ回線卒業!のうた」という動画もアップしているほどだ。今思えば、そのやりとりも仲間やファンとの愛だった。こつこつと視聴者との関係を育み続け、自分の技術を磨き続けてきたことが、東京ガーデンシアターを埋め尽くす現在につながっているように感じられる。
エモいことは言えない、と明るい雰囲気を振りまき続けてきた角巻わため。ギターロック「Go my way」では、「かき鳴らせー!」という角巻わための一声により、会場中がエアギター奏者で埋め尽くされた。ポジティブさMAXなこの曲は、角巻わための声の響きも一段とパワーアップ。腕を高く掲げて「まだやれるそんなもんじゃないだろう!」という歌詞で、自身と会場を鼓舞した。
そしてラストは「夢見る羊」。会場に打ち出された銀テープが舞う中歌われたこの曲も、聞く人を力強く、そして優しく応援する歌だ。後半、感極まったかのように声が震える瞬間もあったが、彼女は限界でも泣かなかった。笑顔を貫いた。この姿勢こそが、アーティスト角巻わための道なのだろう。
曲のラストで「一緒にずっと歩いて行こう同じ未来へ」と歌った後、角巻わためはくるりと背を向ける。観客と同じ向きに視線をそろえ、前を指差したのだ。その背中は、ファンのわためいとと共に並んで未来に向かって歩んで行く、という決意表明のように見えた。
いつもはほんわかしたおしゃべりとお茶目な性格が印象的な角巻わため。しかし彼女は表に苦労を見せない根性のシンガーでもある。デビュー当時は毎朝歌動画をアップしていたり、最近ではオリジナル曲MVを頻発していたりと、歌への情熱にあふれていた。この燃えたぎるアーティスト精神と普段のほわほわエンタメ精神の両方が、今回のライブでは人を惹きつける魅力として開花していたように感じられた。
また角巻わためは緩急の表現がうまいアーティストだ。特に彼女の「緩」は独特で、静かというよりも、穏やかな性格をそのまま歌でも出しているような自然さがある。一方で「急」の部分は強烈な熱量で歌を響かせる。努力を重ねてきたことでたまり続けた情熱を観客に注ぎだしているような、バランスのいい熱さだ。今回のセットリストは自身のこの緩急の味を最大限味わえるように、引き立てる構成になっていた。
途中で角巻わためが、さらっと「3rdライブ」という言葉を出したことで、観客は大盛りあがりになった。とはいっても実はまだ決まっていない。ノリで言っただけだ。ただこの言葉は冗談で終わらせるつもりもないようで、角巻わためは「もっともっと頑張るからさ!」ととても前向き。
最高の盛り上がりを見せた2ndライブは、まだまだ通過地点。次なるマイルストーンに向かって、彼女は全ての思いを前に向けて既に歩み始めているようだ。
取材・文/たまごまご @tamagomago
写真/Takashi Konuma
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