ammoメジャーデビュー、ライブハウスから輝きを放ち続けてきた彼らが語る「これまでもこれからも」

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東大阪発スリーピースロックバンドammoが遂にメジャーデビュー。1月17日にメジャー第一弾として、全5曲の新曲からなる「re: 想 -EP」、そしてインディーズ時代の曲の再録、新曲を加えた「re: 奏 -EP」が同時リリースされた。これまで配信でのリリースはなし、時代に逆行するかの如くフィジカルでのリリースにこだわり、自分たちが憧れたカッコいいライブハウスのバンドたちを追い求めたスタイルで存在感を示し続けてきた彼ら。満を持してのメジャーでの一手に今何を想うのか、メンバー3人にammoのこれまでとこれからを存分に語ってもらった。

──皆さんのロックの原体験であったり、バンドを始めようと思ったきっかけはどういったものでしたか?

岡本優星(Vo.Gt):たまたまYouTubeで見つけた、GREEN DAYの「Basket Case」という曲に衝撃を受けて。それ以前からアコギは弾いていたんですけど、「Basket Case」がきっかけでバンドをやりたい、エレキギターを弾きたいと思うようになりました。

──「Basket Case」って、世代的にはだいぶ前の曲ですよね?

岡本:リリースされたときは生まれてないですからね。でも、純粋に「なんだこれ? カッコいい!」と思って、「高校生になったら絶対にエレキギターを買ってもらおう!」と決めました。

北出大洋(Dr):うちはおとんがギターを弾いていたので、物心ついたときには家にギターやベースがあって。ロックバンドを聴くってことも、わりと日常的でした。自分が最初にハマったバンドはONE OK ROCKで、ドラムは……最初はドラマーになりたかったわけではなくて、中3のときに音楽の好きな友達3人ぐらいでコピーバンドを始めて。最初、僕はベースだったんですけど、気づいたらドラムの奴が「俺、ベースやりたいから」と言い出して、成り行きで叩くことになりました(笑)。

川原創馬(Ba.Cho):僕はそもそも、バンドが何かもわかっていなくて、そんな状態で高校のときに友達に誘われて軽音楽部に行って。そこで友達がベースをやるって言ったから、じゃあ俺もベースやったら一緒にバンドもできるんやと思って、2人でベースを始めました。ほんなら、バンドにベースはひとりしかいらないってことがわかって(笑)。ベースも低音が鳴ること自体知らなかったし、ギターみたいな和音が鳴ると思っていたくらいやったけど、そこでベースを触ったらめちゃめちゃハマって、そのまま続けています。

──ammoは岡本さんと川原さんからスタートしているんですよね。

岡本: ammo結成前から高校の同級生で、同じ軽音部でコピーバンドをずっとやっていて。で、高校を卒業してオリジナルバンドをやってみようかって感じでammoができました。

──音楽性や届けたいメッセージについては、当初どんなことを考えていましたか?

岡本:ライブハウスでカッコいい、熱いバンドみたいなことをぼんやりとは思っていましたけど、サウンドとか歌詞に関しては始めた当初は明確なイメージがなかったかもしれないです。バンド歴を重ねるごとに、だんだん自分らの色ができていった気がします。

──では、ammoらしさが固まってきたタイミングは、皆さんいつぐらいだと思いますか?

岡本:いろんなことを試してきましたし、今もその途中というか……。

川原:俺は今回のEPかもしれない。ammoらしさが集約されている感が強いし。

岡本:これはammoだなって感じは、確かにしますね。「ammoってどんなバンドなん?」って人から聞かれたら、「これを聴いたらわかります」って感じの名刺がわりの1枚になったと思います。

北出大洋(Dr)

北出大洋(Dr)

──北出さんは2022年加入ということで、それ以前はammoのことを外から見ていたわけですよね。参加前はどんなバンドに見えていましたか?

北出:初めてammoを見たのは、僕が前にやっていたバンドと対バンしたときで、「めっちゃライブがカッコいいな」というのが第一印象。そこからYouTubeとかで曲を聴いたりしていました。

──では、ソングライターとしての岡本さんのルーツは?

岡本:自分の気持ちを歌詞やメロディに乗せてということは、the pillowsの山中さわおさんからの影響が大きいです。言い方が正しいかはわからないですけど、素直すぎずにひねくれた感じで、一筋縄じゃいかないところがすごくいいなと思って。10代の僕はまさにそういう歌詞にグッときて、何度も救われてきたんです。

──すべてをさらけ出すのではなく、一歩踏みとどまってここだけは見せないみたいな?

岡本:そういうミステリアスなところに惹かれて、僕もそういう曲を作ってみたいと思うようになりました。

──川原さん、北出さんはソングライターとしての岡本さんをどう評価していますか?

川原:優星が書く曲はどれも独特で、優星にしかないオリジナリティがあって面白い存在だと思いますし、素直に尊敬しています。

北出:優星の書く曲ってバラードでもアップテンポの曲でも、必ず「ああ、優星の曲や」っていう色があって。どの曲もammoっぽいというか、芯がブレていないなと感じます。

──「ammoっぽい」って抽象的な表現ですけど、皆さんの中で「これがあるとammoっぽくなる」という要素ってありますか?

川原:優星の声とメロディなのかな。優星の声って地声で歌っているようで、若干低めじゃないですか。高い声が出ないのが、逆によかったのかな(笑)。それがデカいのかなと思ったりします。

岡本優星(Vo.Gt)

岡本優星(Vo.Gt)

──おっしゃるように、岡本さんの声質やトーンは特徴的だなと思いますし、不思議な魅力が感じられます。バンドアンサンブルもシンプルなようで実は細かいフレーズが随所に散りばめられていて、すごく凝っていると思いました。

岡本:シンプルなバンド編成なので、僕はなるべく音を重ねたくなくて。その中でどう飽きずに聴いてもらえるかを考えると、アレンジは大事になってきますよね。ギターに関しては全然ですけど(笑)、ベースとドラムがとにかく凝っているのかな。

川原:ドラムもベースも、ベーシックなパートは僕がほとんど作っていて。ドラムは大まかな雰囲気を僕が作って、細かいところはお願いしているんですけど、それがうまいこと作用しているのかな。

北出:たぶん、ドラムフレーズを僕が全部作っちゃうと、やりすぎちゃうというか。「ドラマーが作った、ドラムがカッコいい曲」みたいになっちゃうところを、そうならないよういい感じに引き算してくれている。純粋に“いい曲”にしてくれているというか、そこがいいバランスを生み出しているんだと思います。

川原:僕は優星の作るメロディを一番大事にしたいんですよ。でも、今質問されるまで特に意識はしていなかったんですけどね(笑)。

──歌とバンドサウンドが一丸となって入ってくる感が強いから、そのへん意識的なのかなと思っていました。岡本さん的には、川原さんが考えてくるリズムトラックに対しては……。

岡本:全部最高なので、なんでもOKです(笑)。リズムに関しては僕はあまり詳しくないので、そこは信じて任せています。

──その信頼関係はどういったところから生まれたものなんでしょう?

岡本:やれることを、やれる人間がやるだけという。自分でできることは自分でやって、できないことは任せたと。そういう意味では、完全に分業です。

川原:優星は曲や歌詞を作れるから、そこに対して僕は信頼していますし。それに対して、僕が考えたリズムやベースラインを付けて戻すんだけど、たぶん優星が思い描いていたものとは違ったものになっていることもあると思うんです。でも、それに納得しちゃうというか、「これも面白いな」と受け入れてくれるところはすごいなと思います。

岡本:僕がやりたいことだけやるんだったら、別にソロでもいいわけなので。予想外というか自分の想像になかったものが届いたときが、僕は一番「バンドやってる!」ってテンションが上がる瞬間なんです。

川原:変ですよね(笑)。

──でも、それがammoの個性につながっているんでしょうね。ちなみに、ammoはこれまでCDで楽曲を発表し、サブスクなどでの配信は一切行っていませんでしたが、CDにこだわった理由は?

岡本:自分たちが憧れたカッコいいライブハウスのバンドたちは、みんなそうやってきたので、自分たちも同じようにやっていただけなんです。だから、こだわっていたという感覚は自分たちにはないんですよ。好きなバンドと同じことをやって、どんな気持ちになるか知っておきたいと思っただけなんです。

川原:これが普通やと思ってやってきたんですよ。

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──そんなammoは今年1月、初のデジタル作品『re:奏-EP』とTOY'S FACTORYからのメジャーデビュー作品『re:想-EP』を同時リリース。近年はメジャーとインディーズにそこまで大きな差を感じませんし、インディーズでもヒットを飛ばすアーティストも少なくないです。皆さんはこれまで、メジャーに対してどういうイメージを持っていましたか?

岡本:憧れは特になかったですけどね。ただ、メジャーにしかできないことは間違いなくあるはずなので、自分が必要だと感じたときにそばにいてくれたらいいなとは、ずっと思っていました。

北出:メジャーデビューしたいとは漠然と思っていましたけど、何か明確な理由があるわけじゃなくて、売れるためにはそういうもんかな、大きくなりたいんやったらメジャーなのかなと。そこまで深く考えてなかったですね。

川原:僕もバンドをやるなら、どうせならしたかったですけど、別に今すぐメジャーデビューしたいみたいなことは特になかったので、いつかしたら面白いなぐらいでした。ただ、周りがわかりやすく喜んでくれましたね。おとん、おかんにも「まだインディーなん? いつメジャーなん?」みたいなことを言われていたので、親孝行ですかね(笑)。おばあちゃんもおじいちゃんも、メジャーデビューが一番わかりやすかったみたいだし。

岡本:区切りとして大きいですよね。

川原:ステップアップ感がありますし。

──では、最近「自分、メジャーデビューしたんだ」と感じる瞬間はありましたか?

岡本:まったくなくて。

川原:今のところ。

北出:ないです。

岡本:(取材現場のケータリングに)サンドイッチがあるなとか、そういうところは以前と違いますけど(笑)。

北出:あと、撮影があるときは衣装を用意してもらえるので、そこは全然違いますね。

──ammoの音楽を広く届けるために協力してくれる人の数が格段に増えて、それこそこういう取材やプロモーションのチャンスが増えたことも大きな変化ですよね。

川原:そうですね。ただ、ammo自体は積極的に何かを変えられるようなタイプのバンドではないし、「やるぞ!」と意気込むタイプでもない。自然に進化していくタイプなのかな。

川原創馬(Ba,Cho)

川原創馬(Ba,Cho)

──『re:奏-EP』と『re:想-EP』についても話を聞かせてください。インディーズ時代の楽曲をリメイク中心の内容と新曲中心の内容という2作を作ろうというアイデアは、どこから生まれたものだったんですか?

岡本:これはレーベルの方から提案していただいたもので、めっちゃ面白いなと思って決めました。今までCDオンリーでやってきたから、配信の最初の打ち出し方に関しては慎重になっていたところもあったので、再録曲を配信するのは一番綺麗な形かなと思って。

──『re:奏-EP』に収録された再録曲は、YouTubeで400万再生を超える「寝た振りの君へ」をはじめとする代表曲ばかりです。

岡本:ライブで人気のある曲が中心です。4曲選ぶのも、みんな同じような曲を挙げてきたので、すんなりと決まりました。

──オリジナルに忠実に録り直すのではなく、随所からバージョンアップ感が伝わり、中にはキーが変わっている曲もあります。

岡本:ライブ感はかなり意識しました。ライブで育ってきた曲たちなので、それをそのままの形で封じ込められたらなと。

川原:でも、こだわればこだわるほどレコーディングに時間がかかってしまって。いつもやっていることをそのままやればいいだけなのに、レコーディングに慣れてきたタイミングでもあったので、こだわれる余裕も出てきたのかな。

──北出さんはライブでは叩いていた曲ばかりですが、レコーディングに関しては初めてですよね。

北出:そうですね。なので、前の音源を聴いて「自分だったらこう叩くのに」と感じたことを、この再録では反映させました。それでこそ新しく取り直した意味があるんじゃないかな。

──ご自身の中で、一番自分らしさを出せた曲はありますか?

北出:「フロントライン」ですかね。テンポが上がっているというのはもちろんですけど、それ以上にビートで疾走感を表現できたと思います。

──一方、新曲で固められた『re:想-EP』。こちらにはそれぞれタイプが異なる5曲が収められています。

岡本:今手元にある新曲の中で5曲選ぶとしたら、これだなと。曲順に関してもみんなほぼ同じで、スッと決まりました。

川原:マジでこれしかねえだろ!っていう、最強トップ5です。

北出:まさに。

──「何℃でも」をリード曲に選んだ理由は?

岡本:実はリード曲候補になる曲が足りないから、新しく書いてきてとスタッフから言われて、最後にできたのが「何℃でも」なんです。しかも、レコーディングギリギリぐらいのタイミングに。ammo節をしっかり入れつつ、メロディはキャッチーで強いパンチラインも用意されている、一発聴いただけで気になっちゃう曲を意識して書きました。

北出:「もう1曲欲しい」と言われていたことは知っていたので、そこで追い込まれてこんなにすげえ曲ができたんだと。単純にすげえなと思います。

──川原さんは、いつものようにアレンジを考えていくわけですよね。

川原:はい、いつもどおりに。マジでドラムとベースを作るときは……特に考えすぎることなく、曲を聴いた瞬間に自分の中に浮かび上がったイメージをどんどん形にしていくというか。そういう意味では、リード曲だからいつも以上に気合いを入れようとかそういう感じでもなく、「こうきたらこれしかないやろ」みたいな感じでやっていきました。だから、特別変わったことはしていないです。

北出:めっちゃ速いんですよ、創馬がドラムを打ち込むスピードって。優星から「新曲です」とデモが送られてきて、その日のうちには創馬が打ち込んだデータが届くので、僕はそれを聴いて……いつもどおりの感じで叩きました(笑)。

──メジャーデビューだろうが何だろうが、「いつもどおり」で気張ってない感じがいいですね(笑)。

川原:それ以外できひんっていう。

北出:気合い入れろ、と言われてもわからんし(笑)。

川原:そうそう(笑)。

──その自然体が聴いていて気持ちいいのかな。

岡本:ああ、力みすぎてない感じが。

川原:気張りたくても気張れないんです(笑)。そのままやるしかないですし、それで一番いい形に仕上がるので。今の最大限を出すために毎回同じことをやっているだけなので、今の最高がこれです。

岡本:一番カッコいいやり方だと思います。

──最初に「ammoらしさが固まってきたタイミング」について質問したら、川原さんが今回のEPと答えましたが、その理由がここではっきりしましたね。

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──この2作を携えて、3月3日にはZepp DiverCityでのワンマンライブを行います。

岡本:過去最大規模ですね。

川原:でも、曲作りと一緒で気張れないです(笑)。いつも最高のライブをやっているので、それをやるだけだし、それしかできないと思います。

北出:考えたら、たぶん空回りするだろうし。

岡本:なので気張らずに、最高の3月3日にする。それだけです。

──「気張らない」って、何気にいいキーワードかもしれないですね。

岡本:これまで力んで失敗した経験もあるので、自然体でいられるのが一番カッコいいのかなって。そこにこの5年間を通じて気づけたので、それをしっかりZeppで証明したいと思います。

──では、この先こんなことができたらいいなという目標はありますか?

岡本:Zepp DiverCityをちゃんとやり切れたら、次は武道館ができるようになるまで頑張りたいです。

──皆さんの世代でも、武道館は特別な場所なんですね。

岡本:やっぱりロックバンドなので。僕はそれこそ高校生のときにMy Hair is Badの初武道館を観に行っているので、そういうのもあって武道館には一番憧れがあります。

北出:せっかくメジャーでやらせてもらえるので、バンドとしてどんどん大きくなっていきたいなというのはあります。もっと大きい会場でライブもしたいし、CDもいっぱい売れてほしいし。

川原:でも、ここって決めちゃうとそこで満足しちゃうと思うので、そういう目標を超えてもなお、どこまでもデカくなり続けたいです。

取材・文=西廣智一 撮影=大塚秀美

[ re:想 – EP ] 全曲ティザー映像

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