新倉瞳(C)Takuya Matsumoto
新倉瞳のチェロ・リサイタル『“The Room” ~浪漫回想~』が2024年3月1日(金)TOKYO FMホールにて開催される。本コンサートのコンセプトや聴きどころを聞いた。
――TOKYO FMホールはクラシック音楽のコンサートではあまり使われないホールですが、ここを選んだのはどのようなコンセプトなのでしょう?
私はジャンルを問わず、色々な世界に飛び込み挑戦するたびに、長年にわたって取り組み、軸としてきているクラシック音楽にもその経験が還元されていることを感じています。そして同時に私は日頃からTOKYO FMさんの放送をよく聴いており、音楽番組でなくても様々な話題の中に音楽がいつも隣にある雰囲気が大好きで、自分の生き方に重ねて拝聴することが多いのです。そんなTOKYO FMさんにホールがあることを最近知り、たくさんの物語が交差するこの魅力的な場所で“クラシックど真ん中”なものを!というコンセプトのもと、ここで公演をすることにしました。
新倉瞳(C)Takuya Matsumoto
――そしてプログラミングも、前半と後半に堂々たる大ソナタがあり、その前に小品を弾く、という構成。このあたりはどのようなことを考えてのことですか?ベートーヴェンとラフマニノフではかなり対照的ですね。
コンサートを5分くらいの小品から始めると、会場に集まってくださった皆さまにご挨拶が出来る感覚になります。また、「さあ、これから一緒に旅に出ましょう!」と気持ちが引き締まる気がします。前半後半それぞれの大きなソナタへの大きな旅へ出る前の呼吸を、皆さまと一緒に整えたくてこのような構成にしました。そしてリサイタルのタイトル「浪漫回想」は、ロマン派の作曲家へ感謝を込めて名づけました。前半と後半に対照的なロマン派の作曲家の作品を置くことで、私なりの感謝やリスペクトを表現出来たらと思っております。
――新倉さんはチェロを演奏することで、日頃からお客さんにはどんなことを伝えていきたいと考えていますか?音楽は何を伝えられるのでしょう?
人によって、嬉しいことも悲しいことも本当に違うものですよね。そのどちらをも皆でシェアしていくことでみんなが幸せになれるのではないか、ということを日々感じています。 私にとって、そのシェアしていく方法が音楽であり、チェロであり……。 ですから「伝えたい!」というより、「一緒に幸せになりたい!」という気持ちが強いのです。
新倉瞳(c)KOHAN
桐朋学園大学音楽学部を首席卒業。バーゼル音楽院ソリストコース・教職課程の両修士課程を最高点で修了。これまでに毛利伯郎、堤剛、Thomas Demenga各氏に師事。在学中EMI Music JapanよりCDをリリースしデビュー。受賞歴も多数、近年では第18回ホテルオークラ音楽賞、第19回(2020年度)齋藤秀雄メモリアル基金賞 チェロ部門受賞。現在カメラータ・チューリッヒのソロ首席チェリストとしてスイスを拠点に幅広く活動。使用楽器は、宗次コレクションよりMatteo Goffriller(1710年製)を貸与されている。「新倉瞳Official Members "瞳の小部屋"」https://hitominiikura.fanpla.jp/