シトナユイ 撮影=ハヤシマコ
昨年春、大阪音楽大学ミュージッククリエーション専攻を首席で卒業したシトナユイ。大学在学中に授業の一環でレーベルに送ったデモテープをキッカケに2021年にデビュー。クラシックやファンク、R&B、ヒップホップをルーツにした楽曲を、ハスキーかつソウルフルに歌い上げるマルチアーティストだ。卒業製作として作っていたEP『MUSEUM』はプロデューサーのヒャダインにもピックアップされるなど、今じわじわと注目を集めている。3月1日(金)、社会人になったシトナがリリースした2nd EP『TINY LAND』は、これまで見せようとしてきた「強くてカッコ良い女性」から離れた「等身大のシトナユイ」。なぜその方向性に至ったのか、新作EPについての話をたっぷり聞いた。アーティストとして表現する中で生まれた葛藤を乗り越えようと、現在進行形で進み続ける彼女の挑戦と変化を見届けたい。
意図せず選んだ道が全て活動に繋がっている
ーーシトナさんは小さい時からたくさんの習い事をされてきたそうですが、その中でも「音楽が好きだな」という感覚はあったんですか?
実は、特に音楽が好きってわけでも、めちゃくちゃ聴いてたわけでもなかったんです。最初は「周りの子が習ってるから」という理由でピアノを始めたんですけど、あまりにも下手すぎて親が心配して、「じゃあバイオリンにしよう」と変えて。それがキッカケでクラシック音楽に触れる機会が多くなり、劇伴、映画音楽に興味を持ち始めて音大に入りました。クリエイトしたり逆算して考えたりするのが好きなので、音楽関係の裏方や作曲する側になろうと思ったんです。ストリートダンスを3つほどやっていて、そこでずっとブラックミュージックを聴いていたので、私の根底にはブラックミュージックがあったということが、作曲を始めて表に出てきた感じです。
ーー習い事の中でも、続いたのはダンスだったんですか?
全部続けてたんですけど、特に続いていたのは音楽関係かな。あ、でもテニスもゴルフもやってました。私のやりたいものを習う代わりに、両親が勧めるものを1つ習わないといけないという交換条件みたいな感じだったので。将来のことも考えてプログラミングを習っていて、ホームページやアプリを作っていたのでPCに強くて。それもDTMでの作曲にすごく役立ちましたし、英語もそうです。色々経験してきて今に繋がりましたね。
ーー英語も習われていたんですか?
母がアメリカに住んでるんですけど、現地の友達は「日本人やからゆっくり喋ってあげよう」みたいなのがなくて、遠慮なくわーっと話しかけられるので、それで覚えました。難しいニュースや新聞は苦手ですけど、会話は得意です。
ーー英詞が多いのも納得です。全ての体験が音楽活動に活きているという。
「音楽をするからやろう」と思っていなかったことが、全部今のシトナユイに繋がったので、すごく貴重な経験をしてきたんだなと思います。
ーーオリジナルを作るようになったのは、大学の授業からですか?
そうです。課題で1週間に1曲提出しないとダメで、ポップスに限らず、演歌やハワイアン、たくさんのジャンルを作りました。職業作曲家を育てる学校だったので、CMで頼まれても作れるようにと。そこで幅広いジャンルをたくさん作ることが身につきました。
ーーシトナユイとして活動を始めたのは、大学何回生ですか?
大学2回生の時に送ったデモを今の事務所に見つけていただいて、それから活動を始め、コロナ禍になった瞬間にデビューしました。DJ HASEBEさんのフィーチャリング(「「Crying Over Moonlight feat.シトナユイ」)でデビューしたんですけど、最初から配信ライブだったので、ライブでお客様に直接会うのが、今もまだちょっと新鮮ですね。
ーー歌自体はいつ頃からされていたんですか?
高校が音楽コースでボーカル専攻だったんですけど、まさか音大に行くとは思っていませんでした。
ーーでも高校は音楽コースに進学されたんですね。
もう勉強をしたくなくて(笑)。音楽コースは試験が少なかったんですよ。周りはJ-POPばかり歌う子たちで、先生もJ-POPを教えるんですけど、私は声が通らないので、ずっと「下手くそ」と言われ続けてて。だから落ち込んでたんですけど、ある人にジャズやソウルの曲を渡していただいて、「絶対似合うから。ハスキーボイスがすごい魅力なんだよ」と教えてもらって、そのまま英語の曲にハマっていきました。
計算し尽くしたロジカルな楽曲作り
ーー曲作りは、どちらかというとロジカルにしていくタイプなんですか?
先に構成を考えて、紙に書き出したりします。Aメロ何小節、Bメロ何小節、曲の展開、何分以内でおさめた方がいいかなとか。最近リリースした曲も絶対2分台で作りたいと思って作ったり。あとはサブスクの時代なので、出落ちというか、出た瞬間から掴まないと飛ばされちゃうかなとすごく考えて、設計図を書いてから曲作りを始めます。
ーーそれは学生時代からの作り方ですか?
そうですね。職業作曲家を育てる学校なので、世間のニーズを探すのが自分でもクセになってて。「この曲はどこに当てたい曲か」というのを絶対に最初に考えて、プレゼンして曲作りを始めるので。今もそうやって作っています。
ーー逆に言うと「ここがウケるだろう」というところを狙って作っていけると。
そうですね。誰かをプロデュースする時も、あまりシトナユイを出さないでできますし。ただ、誰にでもウケる曲を私がやる必要はないと思っていて。例えば恋愛ソングにしてももう飽和しているというか、その市場に私が入らなくていいなというのも感じてます。最近バンドセットになったので、バンドセットの音色でできることはないか探りつつも、一部の皆様には刺さる曲を心がけて作ってます。
ーー過去のインタビューで「皆のシトナユイ像ができてきて、アーティスト活動もありかもと思った」とお話されていましたが、自分のシトナユイ像というよりは、周りのシトナユイ像が先にできた感じなんですか?
「本来の私が憧れていた私」を曲に落とし込んで発表していたんですけど、「シトナユイが強い女性で、恋愛の曲はあまり歌わない」というキャラクター性を、皆さんが素直に受け取ってくださったんだなというのはすごく感じます。
ーー「理想のシトナユイ像」みたいな企画書もあったりするんですか?
作りました。卒業制作で去年リリースしたEP『MUSEUM』は、本当に企画書を作って。何歳から何歳のターゲットで、私は「ガールズクラッシュ=女の子に憧れられるカッコ良い女の子」をテーマにして。だけど、私は武装で音楽で鎧を身にまとう、みたいな感覚なんです。私自身は結構性格もへにょへにょなので、音楽で武装すれば理想の女性に近づけるんじゃないか、そういうことを思ってやっていますね。
変化した「シトナユイ像」、葛藤を乗り越えるための挑戦
ーーどういうことが源になって、曲の種ができるんですか?
私自身のエピソードでまとめる時もあれば、何か物語を作って、それに合わせた曲を作る時もあります。今作は私自身のエピソードでやってみようと思って。これまであまり「等身大のシトナユイ」を作ったことがなかったなと。それこそ1曲目の「Coffee Time」は、私が起きてから寝るまでの日常の瞬間を切り取って、そこに美しい世界がある、どれを切り取っても私がリラックスできるCoffee Timeなんだよという、本当に私の成長日記を映し出した曲を作りたいなと思って作りました。
ーー前作『MUSEUM』とは違う方向性でいこうと思われたんですか。
バンドセットになって、作り込まれすぎたシトナユイになってしまってきてるんじゃないかという心配をした時期があって。元々は世界観に没頭してもらうとか、映画1本観たような気分になってもらいたいというコンセプトだったんですけど、そうじゃなくて、「等身大の、その辺にいる女の子シトナユイ」としての自分を書いてもいいんじゃないかと考えました。
ーー理想のカッコ良い女性よりも、等身大のシトナさんが出てきてもいいんじゃないかと。
身長が170cmあるとか思われちゃうぐらい、皆さんの中でカッコ良いイメージがついてきているので、あまりにもかけ離れてしまうのもなと感じたところではあって。昨年9月にシングルで「Groovin’ Weekend」をリリースした時、何が言いたいかはわからないけど、語呂が良いとか口馴染みが良いことを考えて歌詞を書いた時に1回吹っ切れて、色んなことに挑戦してみようと思いました。
ーー今はお客さんの反応を見ながら、「シトナユイ像」を模索しているフェーズですか?
「シトナユイをプロデュースしている私」という感覚です。元々裏方志向が強くて、将来的にはプロデューサーも目指したいので、シトナユイで見れる世界を全部見てみたいと思って。行けるとこまで行ってみたいし、3月にはベトナムのフェスに出るんですけど、日本とは全然違う環境でどんな反応をされるかも気になるし、シトナユイで実験しているというのもありますね。
ーー今作『TINY LAND』ですが、テーマとしては「抜け出したいけど抜け出せない学生から社会人になって、様々な変化、葛藤を経験したシトナユイの日常が切り取られた作品」とありますが、「TINY LAND=狭い世界」と名付けた理由を聞かせてください。
私の曲にはシトナユイのシグネチャーサウンドみたいなものがあると自分で感じているんですけど、違うものに挑戦しようと思ったとしても、やっぱり「これはシトナユイのシグネチャーサウンドやな」って、良い意味でも悪い意味でも思われてるだろうなと感じていたんです。私がテーマにする物事も、新しく考えをインプットしてるつもりだけど、アウトプットしたら何かに似てしまう葛藤がすごくあって。「井の中の蛙大海を知らず」というか、この狭い世界で私が「この曲どう?あの曲どう?」と出してるだけで、もっと別の曲があるんじゃないか、という悩みがありました。
ーー悩まれていたんですか。
ライブパフォーマンスをするにしても、ひとりの時とバンドの時では振り幅もお客さんの客層も全然違ったり。そういうのを見て、「全然違う世界もあるけど、私ここにしかいれてないけど大丈夫かな」とすごく考えた時期もあります。
ーー悩んだ時はどうやって解決するんですか?
曲で解決することもありますし、最近はSNSで「自分を出した方がいいよ」と言われるようになって、出すようになりました。それで曲だけのイメージではない私を知ってもらえたらと。あとはシトナユイが作ってるからシトナユイの世界であって、誰かの真似をしているわけでもない、かといって憧れているけどそのまま要素を入れるのはダメだというような、自分の中での葛藤をなくせるかなと思って、発信を多くしていってますね。
ーー具体的には?
例えばストーリーズを上げるにしても、ライブのお知らせだけじゃなくて、「私もこういうライブに行くよ」とか「意外かもしれないけどこういう音楽を聴くよ」という日常を切り取っていくようにしました。
ーー結構周りの目が気になるんですね。
めちゃ気になります(笑)。自分のことを分析できないんですよ。人のことを見て「この人こうしたらいいのにな」とか「あの子にはこういう曲が合うな」とは思うんですけど、自分のことは1番自分が客観的に見れない。良いところも周りが褒めてくれたことだし、どんなシトナユイが求められているのか、すごく周りの言ってることに左右されますし、原動力でもあります(笑)。
ーー理想のシトナユイ像はカッコ良いで決まりかけたけど、そこをまた広げていくというか。
そうですね。サビだけすごいキャッチーで、耳に残って広がっていくけど、前後のところはすっごい音楽好きの人しか「うわ、渋い」とならない、みたいなイメージです。広がるための最低限のことはしてるけど、他のこだわりを見せていくことに最近はこだわって曲も作ってて。学校でも教えられたんですけど、CMの15秒で流れるのは大体サビで、そこで掴めないと意味がないけど、逆にサビが顔だから、それ以外ではどんなこだわりを出してもいいと言われたことがあって。それでいってみようと思って、だんだんサビのメロディーメイクにこだわっていくようになってますね。
これまでに見せたことのない「シトナユイ」を楽曲に投影
ーー『TINY LAND』は今お話いただいた感覚で作っていかれたんですね。
シトナユイの曲ってちょっと暗いところで鳴ってそうじゃないですか(笑)。「Coffee Time」を作る時には、全く別のものを作ってみようと思って、情景もお昼で、爽やかで春っぽいイメージを考えながら歌詞を書き始めました。ジャンルも80年代を意識してるんです。シンプルなビートを組んだり、トラック数も少ないんですよ。自分をアレンジャーと思ってるところもあるので、アレンジにすごくこだわりたい気持ちもあるんですけど、歌詞をストレートに伝えたり、皆さんに毎日聴いてもらうという目線で見たら、やっぱりシンプルな方がいいんじゃないかと考えたりして。初めてのことに挑戦した曲だと思います。
ーー「Coffee Time」のこだわりは?
聴けば聴くほど耳心地が良くなっていく、浮遊感のあるメロディーにこだわっていますね。
ーーオートチューンも使われていますね。
80年代を表現するにあたって、ただ当時のものを再現してるだけにならないように色々試しました。ドラムの音色を打ち込みにしたり、最近のシンセを使ったり。でもそれで80年代をフィーチャリングしてるとあまり感じられなくて。ということは、残るは私の声だけだと思ってオートチューンを使ったら、現代と80年代をミックスできました。
ーー「Coffee Time」で制作活動の喜びが感じられる一方で、「Blue Monday」は逆に苦しみが表現されていたりするのかなと。
「Blue Monday」の歌詞を書いた時は、本当にコロナ禍で。「月曜が辛い」って社会人の感覚じゃないですか。実際に私が書いたのは、コロナ禍で授業が全部リモートで、先生も90分の授業を60分で切り上げて、30分資料見てバイバイみたいな感じで、「これ音楽学んでるのかな」と思って授業が憂鬱だったんです。家にずっといないとダメだし、どこにも遊びに行けないし。そういう気持ちがあって書いた「Blue Monday」です。これも強い女性像というよりかは、今まで見せたことのないキャラクターを作っています。ラップパートで「平日は毎日一生懸命働いてるのに、土日全然休めないし、イケメンとも遊べないし」みたいな、海外の女性歌手がラップしていそうなことを入れてみたり。歌詞も遊んで、やったことのないコード進行をしたりして、実験的でもありますし、私がやってみたかったことを詰め込んだ曲でもあります。
ーー歌詞は学生の時に書かれたんですね。
学生の間に歌詞だけ溜めてた時期もあって。歌詞を書くのがすごく苦手なのに、曲を作る時に歌詞がないと書けないという悪循環だったんですけど、本当に100個ぐらい溜めたことがありますね。
ーー個人的に<music goes same way as my feel=音楽は私の気持ちと同じ>という歌詞が印象的でした。これは例えば、明るい気持ちの時は明るい曲ができるということですか?
冒頭の<That rhythm playing just in my mind>は幻聴というか、「ずっと口ずさんだり耳に残ってるな。今日はこの曲ばっかり流れてるな」みたいな時のことを言ってます。<music goes same way as my feel>は、音楽と私の気持ちが同じ方向にいっているというので、頭の中で、気分が暗い日には失恋ソングばかり流れてきたり、明るい日にはファンクばかり聴こえてきたり、私の実体験や皆が思ってるだろうな、みたいなことを書いてます。
ーーあと面白いと思ったのが、内省的な歌詞だけど、落ちサビで外に問いかける歌詞があって。自分以外の世界もあると認識している。シトナさんの曲は、落ちサビがキーになっていますよね。
最後盛り上げるために全く別のことを入れたいと思って、その落ちサビを作りました。
「一皮剥けたことを見せたい」成長日記のような1枚に
ーー「THEATER」も同じような感覚を感じて。この曲は本当に映画のような構成になっていますね。
私、映画『マトリックス』が好きで、『マトリックス』を曲にしてみたんです(笑)。映画の世界が自分の世界というか、今見ている映像も映画を観ているというテーマです。『マトリックス』って、自分が実際に体験してることじゃなく、全部頭の中で起こってる映画で。映画に人生をなぞらえて、映画の場面もサウンドトラックで盛り上がったり盛り下がったりするのかとか、映画の外に世界があると思っているのかとか、哲学みたいな難しい歌詞になってるんですけど、自分の中では『マトリックス』のテーマ曲です(笑)。
ーー視点がどこにあるのかなというのは、色々解釈がありそうだなと思いました。
人生をひとつの映画に捉えて感じているという歌詞ですね。
ーーサウンド的にはクラシックの要素も入ってるのかなと思いました。
アフリカンアメリカンにちょっと憧れて、ヒップホップっぽい強いブレイクもあるけど、サビは一言しか言わないという構成にこだわっていたり、ビートがめちゃくちゃシンプルだけど叩き方が強いとか。クラシックとヒップホップを混ぜられないかと試行錯誤した曲ではあります。でもビジョンがすぐに見えたので、結構パッと作った曲ですね。
ーー難産の曲もあるんですか?
デモにするまでは結構簡単なんですけど、「これが売れ線か売れ線じゃないかと言われたらわからへんな」みたいなのがあったりするので、それをアレンジで変えていく作業が大変な時はありますね。
ーー売れ線を作ろうという気持ちはいつもお持ちなんですか?
やっぱり1枚のEPに「この曲を1番推してます」みたいなわかりやすい曲がないと、聴いてもらえるチャンスもないと思うので。「この曲をリード曲にしましょう」と決定した時に、ちょっと無理かもと思って作り直したりもしますし、「計算と合わない、どうしよう」みたいな時は、色んな人に聴いてもらってアイデアを探ったりします。
ーー今作で言うと、リード曲はどの曲になるんですか?
「Coffee Time」なんですけど、今までの曲調とは違うものを詰め込んでる曲なので、「Blue Monday」や「THEATER」はスパイス的な存在ですね。
ーー「morning moon remix」は2021年7月の1stシングルをリミックスしたもので、昨年12月にシングルとしても配信リリースされています。約2年経って再びこの曲を世に出そうと思ったキッカケは?
元々の「morning moon」は私なりにアレンジにこだわって、場面展開がコロコロ変わる曲だったんですけど、私にとってはお守りみたいな歌詞なので、もう1回皆さんに歌詞を聴いてほしくて、メロディーが目立つようにアレンジをシンプルにして作り直したんです。あとは「morning moon」以外の曲を並べた時、たまたまですけど、「ここに「morning moon」が入ったら『TINY LAND』として完成するな」とすごく思って。井の中の蛙を表現する1番最後の一手としていいんじゃないかと考えたのがキッカケです。
ーー歌詞にも<狭い世界>と入っていますもんね。そして「Coffee Time」に続いて、歌詞に<コーヒー>が使われていますね。コーヒーを飲みながら曲作りされているんですか?
コーヒー飲めなくて(笑)。
ーーあ、飲めないんですか!? では<嫌いなブラックコーヒーを一杯 飲めたら世界が変わった気がした>というのは、実際に飲んだわけではないと。
大人になることの比喩表現です。強くてセクシーな女性の表現のひとつにお酒があると思うんですけど、私お酒も飲めなくて、コーヒーが飲めたら大人になれるなという幼稚な考えがあって。コーヒーは大人のアイテムのイメージです。
ーー等身大のシトナさんを表現しつつも、やっぱりそこは理想像も入るんですね。
そうなりたいという理想もあるんです。
ーー改めて今作はどんな1枚になったと思われますか?
新しいシトナユイじゃないですけど、一皮剥けたことを見せたいなと思った作品で、シトナユイの成長途中の成長日記みたいな感覚で皆さんに聴いてもらえたらなと思って。これから海外のフェスに出演したり、色んな人と関わるようになって、どう変わっていくんだろうって、楽しみにしてもらいたい作品でもありますね。
ーーどう変わっていくのかは自分でもまだわからない。
はい。「Cofee Time」で「こんな明るい曲歌えるんや」と思ったぐらいなので(笑)。自分の可能性に期待してるEPですね。
ーー自分の可能性を広げながら活動されていくと。
英語ができる長所も十分に活かしていきたいですし、私自身がアイコンとして広められる音楽があったらいいなとすごく思ってます。
ーー4月17日(水)に下北沢ADRIFTで、19日(金)に大阪CONPASSでリリースライブがあります。
もともと「シトナの日」としてやろうと決めたんですけど、一緒に盛り上げてもらうのは誰がいいかと考えた時に、ナナジュウハチさんは1回対バンしたことある方なんですけどアイデアがすごくて。例えばサイダーをプシュって開けた音で1曲作ってみた、みたいな。面白くてセンスが光ってて、憧れがあります。xiangyuさんも対バンしたことがあるんですけど、例えばタイのプーパッポンカリーについて歌ったり、ドトールのミラノサンドの曲とか、世界観がぶっ飛びすぎててめちゃくちゃ好きで。全然違うジャンルですけど、シトナユイを好きな方だったら絶対好きだなという2人をお呼びしたのが東京公演で。大阪はblend houseという徳島の4人組のバンドを。去年の夏にデモを聴かせていただいて、もう良すぎて。すごくメロウで雰囲気がいい。お砂糖ボイスです。一緒に出てもらいたいと去年の夏から決めてて。徳島でお仕事しつつ活動をしてるんですけど、レコードを出したり自分たちで色々企画して、プロデュース能力が高い。私も初めてライブを見るんですけど、すっごく楽しみにしてます。
ーー東京の前売りチケットは417円という安さで、学生さんも来やすいですね。
インパクトは残したくて。気軽に友達と行こうよと言える環境を作りたくて。初見でも絶対面白いので、お試しでも見てもらいたいですね。
ーーバンド編成ですか?
どっちもバンドです。ライブアレンジの研究を重ねて。メンバーは皆私の友達で、空気感もすごく面白くて。音源では絶対に聴けない世界観というか、アドリブバトルをしたり独特のグルーヴも出して、シトナユイをさらにカッコ良くしてもらってます。ライブセットは本当に絶対に1回見ていただきたいですね。
取材・文=久保田瑛理 撮影=ハヤシマコ