写真左から:Sean Oshima、門脇更紗
3月3日にメジャーデビュー3周年記念のライブを好評で終え、前作ではラップパートを取り入れるなど新しい表現に挑戦し成長し続けるシンガーソングライター門脇更紗。ロックな生演奏とエレクトロな打ち込みを駆使するトラックメイクと独創的な曲作り、楽曲提供など、ジャンル無用のポップな作風で熱い注目を浴びるSean Oshima。同じ1999年生まれの二人が初めてコラボレーションを果たすのが、門脇更紗×Sean Oshima「愛燃やして僕らはゆく- The Happiest Melody -」だ。生まれも育ちも音楽性も異なる二人が生み出す絶妙のハーモニーの源はどこにあるのか? 注目の同級生対談、スタート。
――お二人とも1999年生まれなんですよね。更紗さんは7月。
門脇更紗:はい。何月ですか?
Sean Oshima:5月です。
――あとで、1999年生まれの特徴みたいなことも聞いてみたいなと思っています。まずは楽曲の話からで、「愛燃やして僕らはゆく- The Happiest Melody -」はタイトル通りにハッピーなバイブスに溢れた曲で、二人の持ち味がうまく混ざっていて、特にハーモニーが素晴らしいと思いました。男女のキーを合わせるのってけっこう難しいと思うんですけど、そこが調和していて、デュエットとして相性ばっちりだと思います。
門脇:ありがとうございます。
Sean:良かった。
――そもそもお二人は、どういう経緯で出会って、どんなふうに曲作りを進めていったんですか。
門脇:経緯は、音楽プロデューサーの佐伯youthKさんとよく私は制作でご一緒させていただいて、新しい曲の「うすっぺらい」(2月7日リリース)も佐伯さんがアレンジしてくださっているんですけど。去年私が“フィーチャリングで男性の方と歌いたいんですよね”という話をした時に、ちょうど佐伯さんがSeanくんと出会っていて、“こんないいアーティストがいるけどどう?”みたいな感じで紹介してもらって、今に至ります。それまでは接点がなかったので、“はじめまして”でした。
――それが去年のいつ頃ですか。
門脇:去年の夏ぐらいかな。夏服だった気がする。
Sean:焼き鳥、食いましたね。
門脇:そう。いい焼き鳥屋さんで、お蕎麦で締めて、みたいな。
門脇更紗
――更紗さんからの、Seanさんの第一印象は?
門脇:同い年だから、タメ口でいいかなと思っていたんですよ。でも“そこは敬語にしましょう”って言われて、だから今も敬語なんです。そういうところがしっかりされてる人なんだなと思いました。
Sean:深い意味はないです(笑)。僕も誰かとちゃんとコラボしたのは初めてで、やってみたいと思いつつも、“人と作るのは苦手そうだな自分”と思っていて、たぶん避けてたんですよね。
門脇:じゃあ、チャレンジだった?
Sean:そうです。ちょっとビビってました。
――Seanさんからの、更紗さんの第一印象は?
Sean:なんて言えばいいんでしょうね。後光?は違うか。同い年なのに こんなに汚れずに生きて来れる人がいるんだ!?と思いました。その印象はずっと変わらないです。
門脇:へえー(笑)。
Sean:僕の周りの99年生まれは、みんなもう腐り始めていて、フレッシュさがないというか(笑)。それと比べて、すごく良かったです。
――これはいいコラボができそうだと。
Sean:できそうっていうか、“俺も頑張んなきゃ”って、フレッシュさを思い出させていただきました。
――そんなスタートがありつつ。具体的な作業はどんなふうに?
門脇:本当に何もないところから、どういう曲にするか?みたいなことも、そんなに決めてなかったんですね。“掛け合いがあるといいよね”というのと、“明るい曲にしよう”というのはあって、たぶん途中の♪ラッパッパ、パラッパ、から生まれた気がします。
Sean:うん、そうですね。
門脇:そこから生まれて、ギターで作りつつも、Seanくんがピアノでコード進行を弾いてくれて、私がメロディをわーっと歌って“それいいじゃん”みたいな。“それをAメロにしよう、Bメロにしよう”とか言って合わせていって、歌詞はあとからつけました。
――それはスタジオか何かを借りて、その場で?
門脇:そうです。けっこう何時間もかけてやりました。私もその形は初めてで、めちゃくちゃ楽しかったです。でも歌詞はちょっと恥ずかしいから、“大体こういう方向性で考えよう”ということだけ決めて、一旦持ち帰って、次に会った時に“この歌詞いいね”とか言って、繋げていきました。
――そういうやり方なんですね。面白い。
門脇:普段とは作り方が違うから、めちゃくちゃ勉強になりました。スタジオでフリー素材の音源を流して、“この音、面白いじゃん”みたいなところから作っていって。そうやって、ただただ楽しいなぁって考えたことが意外とそのまま入っていたりとか。
Sean:海外のラッパーみたいな感じですよ、やり方としては。一日目でワンコーラスできたもんね。
門脇:それが 3日ぐらいあったんですよ。でも初日にベースはできていました。
――リフレインのところはゴスペルっぽいし、リズムはモータウンサウンドみたいな感じもあって、いろんな要素が入っている。やっているうちに自然に組み上がっていった感じですか。
Sean:最初に渋谷の焼き鳥屋 で、門脇さんが『ハイスクール・ミュージカル』を好きと言っていて。
門脇:『ハイスクール・ミュージカル』っていう、ディズニーのミュージカル映画があるんですけど、それが好きということもあって、男性のボーカルの方と一緒にやりたいというのはずっと思っていて。
Sean:それにしようぜという話は特にしてなかったけど、僕もたぶん、自然にあったんでしょうね。
――確かにミュージカルっぽい華やかさはありますね。歌詞のイメージはどこから?
門脇:歌詞の説明をするのは難しいですね。二人で持ち寄ったところがあるので。
Sean:メッセージとしては、無数にあるよね。
門脇:聴いてハッピーな気持ちになってもらえたらいいなというのはあって、だけどただ楽しい気持ちだけじゃなくて、葛藤しているところも表したかったり。
――たとえば一行目の《5回目のスヌーズでずっと始まらない日も》は、誰が?
Sean:これは僕ですね。二行目は佐伯さんです。
――全員の共同作業なんですね。更紗さんが書いたところは?
門脇:《放課後のスクールでずっと語り合った夢が》とか、たぶん私ですね。あとCメロの《選んだ道をまた》のところも。タイトルになったサビの《愛燃やして僕らはゆく》のところは、Seanくんが持ってきてくれた歌詞です。
Sean:大変でしたね、歌詞を考えるのは。
門脇:個人的に好きなのが、サビで《離さないから》を繰り返して、最後だけ《離さないでいて》になるところ。歌っててもあそこが一番いい。Seanくんが最後は《離さないでいて》にしようと言って、それめっちゃいい!って。
Sean:最後だけ変えるのは、わりと、あるあるな作詞法ですけど。いいよね。
――更紗さんの《放課後のスクール》のところは、何か具体的なシーンが浮かんでいたんですか。
門脇:なんでこれになったんだっけ。
Sean:スヌーズとスクールで韻を踏みたかったから。
門脇:そうだそうだ。それで出た歌詞でした。
Sean:スクールってカタカナで言うのがいいよね。
Sean Oshima
――《愛燃やして僕らはゆく》。このキャッチーなフレーズはどこから?
Sean:スタジオに集まって歌詞を発表する日があって、でも前日まで2文字ぐらいしか書けてなくて。とりあえずスタジオに入って、僕はいつも歌いながら歌詞を作るんですね。それでサビを歌っている時に“~ゆく”が出て来て、それに繋がるものを作っていった感じです。そのやり方、けっこう多くないですか?
門脇:英語っぽく歌ってみて、あとで日本語にするとか。まず母音が出てくるから。
Sean:そうそう。
門脇:《愛燃やして僕らはゆく》が出た時は、すごいキャッチーだと思いました。
――この場合の愛って、男女の愛とはちょっと違いますよね。もっと大きいものというか。何と言えばいいんだろう。
門脇:それについては、ここ(門脇&Sean)でもまだしゃべったことがないんですけど。個人的には、自分の人生の愛を燃やしていくというストーリーになっているんじゃないかな?と思っているんですけど。
Sean:セルフラブってことですか。
門脇:うん。
Sean:いいっすね。本当に人それぞれだと思うんですけど、俺にとっては“好奇心”かな。ちょっと、恋愛とフォーマットが似てるんですけど、“好き=欲しい”じゃないですか。好きだったら、手にしたいじゃないですか。やりたいことがあるとか、知りたいことがあるとか、頑張りたいことがあるのなら、それは自分の“好き”だから、誰に言われなくても自分で“欲しい”という気持ちになる。それが好奇心じゃないかなと思います。自分の場合は。
――そして歌詞の最後は《まだ君でいいんだよ》。リスナーに向けて励ますようなあたたかい言葉ですけど、どんな思いで出た言葉ですか。
Sean:さっき門脇さんが言ったセルフラブの文脈ですよね。自分で自分を無条件に愛してあげて、ということだと思います。
――いい歌詞です。そもそもお二人って、自分をそのまま歌詞に出しちゃうタイプか、物語を作るタイプか。どっちだったりします?
門脇:私は作っていくタイプですね。たとえば本とかからインスピレーションを受けたことを自分ならどう書くかを考えるんです。そこに自然と私の考え方や経験のかけらも交わりながら言葉選びで自分らしい作品していくというかんじです。今まで書いた曲で、門脇更紗が主人公の曲は上京した時期に書いた「東京は」だけだと思います。
――作家的な感受性ですね。Seanさんは?
Sean:どうなんでしょうね? でもみんな、半々だと思いますよ。
――フィクションとノンフィクションのバランスは、アーティストごとに違うから、面白いところですよね。ちなみに「愛燃やして僕らはゆく」の歌詞には、どのくらい素の自分が入っていますか。
Sean:この曲には、あんまり入ってないかもしれない。
門脇:私もそう。選んでいる言葉は私らしいけれど。
Sean:やっぱり自分一人の作品ではなくて、二人で作るものだから。お互いに肩の力が抜けて、いい意味で責任感が普段よりちょっと薄れて、自分が言いたいことというよりは、“曲が言いたがっていること”を二人で探り当てていったような感覚ですよね。
――あらためて、歌詞もサウンドも全部取りまとめて、初めての共同作業でどんな手ごたえを得たのか?というと。
門脇:めちゃくちゃ良かったんじゃないかなと思います。一緒に歌うと声質の違いとか、ぶつかっちゃうこともあると思うんですけど、Seanくんとの歌声の相性がすごく良かったし、ぜひたくさんの人に聴いてもらいたいと思います。
Sean:いわゆるデュエット曲は初めてなんですけど、とりあえず思いつく限り、デュエットでできることは全部やったかなという感じです。ハモる、ユニゾン、追っかけとか、色々やりましたね。門脇さんも色々言ってくれて。
門脇:Seanくんは、楽器の面でもいろんなことをやってくれました。
――たくさんの人に届きますように。ここからは同年代トークをしてみたいんですけども、どんな世代ですか、1999年生まれの傾向って。
門脇:どんな世代なんですかね。
Sean:まず人口が少ない。あんまり知り合いにいなくないですか?
門脇:確かに99年って、同世代のアーティストでもそんなにいないかもしれない。一個上とか一個下が多いかも。
Sean:僕は99年生まれには決定的な印象があって。……陰湿なんですよね。
――あら。何かあったんですか(笑)。
Sean:この間、地元のライブハウスでよく一緒にライブをやっていた同い年のやつと電話した時に、一個上、二個上って、なんて言うか、“昭和のハッスル感が抜けきってない感じがするよね”って。昔悪いことしてた俺、とか、サッカー部の部長と付き合ってた私、みたいなのがかっこいい価値観みたいな。
――それは何とも言えないですが(笑)。
Sean:悪いこともしちゃうよ、みたいな感じ。その境目が1999年生まれかな?と個人的に思っていて。みんないい子ちゃんなんですよ、99年生まれって。先生の言うことは聞く、悪いことはしない、みたいな。
門脇:私、先生に“お前らの学年が一番やりやすいわ”って言われた。
Sean:でしょ? 俺も同じセリフを言われた。
門脇:一個上はけっこう悪くて、一個下は一個下で、ミニスカート系が多かったんですけど、私たちの学年は学校をやめる人数も少なかった。(Seanとは)全然違う地方だけど。都会でしたっけ?
Sean:ド田舎です。
門脇:私もけっこう田舎なので。
Sean:はっちゃけない、はっちゃけられない、パッとしない(笑)。よく言えば、みんな優等生でいい子ちゃんで、悪いことはしない。
門脇:何かあるんですかね、99年生まれと2000年生まれの境目には。
Sean:あるんじゃないですか。でも2000年生まれは、けっこうはっちゃけてる子が多いんですよ。だから99年生まれだけに何かがある。
――音楽はどうですか。二人が聴いてきたものに共通点はありますか。
門脇:私はそれこそ『ハイスクール・ミュージカル』とか、ディズニーチャンネルをずっと見ていて、マイリー・サイラスが好きでした。小学生の時に、ギターを始めるタイミングでYUIさんが好きになって、そのあとはテイラー・スウィフトですね。ディズニーとか、英語の曲が好きだったから、ダンスミュージックも聴いたりしていて、高校に入った時も、特色化と言って、英語に特化したクラスだったので、給食の時にかかるのが全部洋楽で、特に誰が好きということでもなく、洋楽はよく聴いていました。
Sean:僕は広く浅くです。一番好きなのはONE OK ROCKです。
門脇:そうなんだ。けっこうロックですね。
Sean:そう。中高はそういう音楽にどっぷりで、いわゆるスクリーモとかハードコアをずっと聴いていました。
――今やっているスタイルとはだいぶ違う気もしますけど。どのへんで変わったんですか。
Sean:ソロを始める時に、下北沢のrpmというセッションライブハウスみたいなところへ、何にも詳しくないですけど、“ジャズが好きだったらかっこよさそう”みたいな感覚でよく見に行っていて。そこでミュージシャン同士で仲良くなる人が多くて、自然と影響を受けたみたいです。
――じゃあ、あえて音楽的共通点を探るとすると……。
Sean:テイラーはうちの母親が大好きで、家でよく流れていましたね。あと、アヴリル・ラヴィーンとか。
門脇:アヴリルは私も聴いていました。ライブにも行ったし、YUIさんのライブも2、3回、あと家入レオさんのライブもよく行っていました。共通点か……小学生の頃、何してました?
Sean:サッカー部でした。あと、ピアノ教室に行ってました。
門脇:ピアノは、長くやっていたんでしたっけ?
Sean:長くやっていたんですけど、一向にうまくならずにやめました。
門脇:めっちゃ一緒だ(笑)。10年やってたけど、楽譜読めないです。感覚的な感じです。
Sean:同じです。そこが共通点ですね(笑)。
門脇:あと、小学生の頃はKARAとか少女時代がめちゃくちゃ流行ってました。今はいろんなアーティストさんがいますけど、二択でKARA派か少女時代派かみたいな感じ。あと東方神起も。
Sean:いわゆるK-POPが日本で人気になり始めたのが、その頃じゃないですか。
――今の子供たちはJ-POPもK-POPも洋楽も、隔てなく聴いている感じがしますよね。音楽性のジャンルを含めて。お二人とも、そういうカテゴリーは気にしないタイプに見えます。
門脇:そうですね。
Sean:我々とか、我々より下の世代は、あんまりジャンルの話はしないですね。だから、音楽の先輩がジャンルの話をしだすと、わかんないですってなる。それは、自由に音楽をつまみ食いできるようになったからじゃないですか、我々が。サブスクとかYouTubeで。
門脇:うんうん。確かに。
Sean:昔はCDで、アルバムで聴くことしかできなかったから。そこらへんは、我々の世代の共通点ですね。
――ありがとうございました。最後に、それぞれの今後の予定を聞きます。Seanさんは初のワンマンライブが控えていますね。3月23日、渋谷・Spotify O-nestにて。
Sean:冷やかしに来てください。合唱隊がいます。その後の予定は決まっていないですけど、変わらずに、好きなようにやっていくと思います。でもコラボが楽しかったので、またやりたいですね。
門脇:やりたいですね。“次はめっちゃバラードやろう”って誘ってます。
Sean:だんだん人を増やしていきます? 次はここにもう一人来て、みたいな。
――友達の輪を広げましょう。更紗さんは、3周年記念ライブのあとは?
門脇:また新しい曲をレコーディングするのも決まっているので、それも広げていけたらなと思います。あと、去年の秋ぐらいからまた路上ライブを始めて、元々路上ライブをやっていたからやっぱり楽しくて、それものんびりやっていけたらなと思っています。まずは健康第一、マイペースで。
Sean:それ、大事ですね(笑)。
取材・文=宮本英夫