「これは僕らからの宣戦布告や!」εpsilonΦ初単独ライブ『εpsilonΦ LIVE 2024 – Overlord -』レポート

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(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

2024.03.03『εpsilonΦ LIVE 2024 – Overlord -』@大宮ソニックシティ 大ホール

2024年3月3日、εpsilonΦにとって初の単独ライブとなる『εpsilonΦ LIVE 2024 – Overlord -』が大宮ソニックシティ 大ホールにて開催された。
様々なメディアミックスを展開するボーイズバンドプロジェクト『from ARGONAVIS』。本作に登場する「砕けた欠片と愛憎が生んだ極彩色の不協和音」をキャッチコピーとした京都出身のテクノポップバンドがεpsilonΦだ。彼らにとって初の単独ライブとなる本公演はナビゲーター(from ARGONAVISプロジェクトのファンネーム)はもちろん、音楽関係者からも大きな注目を集める。果たして彼らはこのライブでいかなるパフォーマンスを見せたのか。その様子をレポートしていこうと思う。

(C)ARGONAVIS project.

(C)ARGONAVIS project.

ライブ当日、会場である大宮ソニックシティには多くのナビゲーターが集結。開演前から場内は高い熱気に包まれていた。手にはペンライトを携え、εpsilonΦの登場を心待ちにする人々。場内の期待感が極限に達したその時、場内に響いたのは電話機の着信音だった。

「プルルルル……プルルルル……」

会場にこだまする着信音。そこに楽器の演奏が合流していくと、それはいつしか“音楽”になる。そして、この“音楽”に呼び寄せられるかのようにεpsilonΦの面々がステージへと歩みを進める。明転、そして榊原優希演じる宇治川紫夕からこんな問いかけが会場に向けられる。

「弄ばれる覚悟は、よろしおすか?」

幕開けを迎えたεpsilonΦ初の単独ライブ。その一曲目を飾ったのは「Cynicaltic Fakestar」だった。開演早々にナビゲーターたちが大歓声を上げると、疾走感溢れるサウンドに宇治川紫夕が挑発的な歌唱を乗せる。さらに梶原岳人演じる二条遥が情熱的にワードを蹴り出すと、相反するふたりの歌声がマリアージュを生み出し、会場を魅了する。ナビゲーターたちは全力でペンライトを振り、場内に溢れる熱気を堪能した。
間髪を入れずに続いてのナンバー「re:play」が続く。立て続けに披露される疾走感溢れるナンバーに会場はさらにヒートアップ。ナビゲーターたちの発する熱気を反映し、宇治川紫夕、二条遥の歌声にも熱がこもる。会場は大きな一体感に包まれ、この上ないほどの熱気に包まれた。

「アハハハハハハ!!」

2曲を終え、歓声あふれる大宮ソニックシティに甲高い笑い声が響く。声の主はもちろん宇治川紫夕。彼が「僕らに会いにきたんやろ?」とナビゲーターに問いかけると、再び客席から大歓声が上がる。開演から十数分、εpsilonΦは会場の空気を見事に掌握して見せた。
ここからεpsilonΦのメンバー紹介がなされると、宇治川紫夕がポツリと一言、続いての楽曲を紹介する。

「ユメノアト」

宇治川紫夕が愉しげな歌声を会場に届けると、バンドメンバーがそこに演奏を合流させる。そこに二条遥の力強くもスピーディな歌声も加わり、唯一無二のマリアージュがそこに生まれる。場内は魅惑的な空気に包まれ、ナビゲーターたちを魅了した。
会場内にエレクトリックなサウンドが響く。ナビゲーターたちがこれに合わせて手拍子を送ると、スクリーンには次なる楽曲のタイトルが映し出された。

(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

「End of reason」

ノイジーなサウンドが会場に響く。そこに囁くように宇治川紫夕、二条遥が歌声を乗せると、会場は妖艶な空気に包まれる。ナビゲーターたちはこの空気に酔いしれ、大いに身体を揺らした。

「みんな、僕が遊んであげるわ」

宇治川紫夕のそんな一言から続いてのナンバーが走り出す。「Play With You」、ポップでありダーク、εpsilonΦにしか体現し得ないサウンドが会場を包む。そのサウンドに合わせて、キュートで退廃的な歌声を発する紫夕。その唯一無二なパフォーマンスは、ナビゲーターたちの視線を釘付けにせずにはいなかった。

(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

ここでステージ前方に乗り出したのはサポートメンバー・めんま演じる二条奏。彼が会場を煽ると、ナビゲーターたちは彼の先導に合わせて手拍子を送る。さらなる一体感が会場に満ちると、続いてのナンバーが走り出す。

「最狂で最高の君へ贈ろう 終わらない終わらない It’s Showtime!」

会場に鳴り響くポップなダンスチューン、続いたのはもちろん「Sake it L⓪VE!」。音に乗り、身体を大いに揺らすナビゲーターたち。会場はダーク、しかしハッピーな空気に包まれた。
ここに続いたのは、魅惑的なサウンドが魅力の楽曲「I’m picking glory」。サウンドに合わせて緩急ある言葉運びを見せる宇治川紫夕、その巧みなフローはナビゲーターを魅了せずにはいない。ナビゲーターたちの目と耳を奪うと、そのパフォーマンスは一発の銃声で締め括られた。

「まだまだいけるか大宮!!」

一時の静けさが訪れた会場に、二条遥のシャウトがこだまする。力強いロックサウンドで奏でられたのは「Egoistic才Φ」。そのストレートな歌声がナビゲーターたちの耳に直撃する。その熱さに魅了されない人はいなかった。

「Heroic!」

二条遥が続いてナンバーを宣言する。響き渡るダンサブルなサウンドにスピーディな歌声が乗る。そこに生まれたグルーヴは会場を大いに揺らさずにいない。華麗に舞うペンライトの数々が、その場に生まれた熱気を大いに可視化していた。

暗転するステージ。ここに二条奏による独白が始まる。双子の兄・二条遥に対する歪んだ感情が赤裸々に語られると、この独白はこんな一言で締め括られた。

「兄貴には俺しかいない。世界でたったひとりの弟だから……。」

二条遥の叫び声が会場に響く。続いての楽曲は「オルトロス」。煽るようにベースを爪弾かせる二条奏、それに合わせて悲痛な歌声を絞り出す二条遥、彼らを煽り立てる宇治川紫夕。3人の歪んだ関係性がまじまじと伝わる一幕。一瞬たりとも目が離せないパフォーマンスがステージ上で展開され、ナビゲーターたちを虜にした。
さらにここに「光の悪魔」が続くと、ナビゲーターたちからは大歓声が沸き起こる。これまで余裕たっぷりのパフォーマンスを見せてきた宇治川紫夕が、自らの腑を晒したような悲痛な歌声を奏でる。その姿は見るものを釘付けにせずにはいない。曲の締めには宇治川紫夕の笑い声が会場中に響き、会場を怪し気な空気で包んだ。
鳴り響く雨音、ステージに落ちる青い光、刻まれる秒針。そして始まったのは「レゾンデートル」。
宇治川紫夕の胸中を剥き出しの言葉で表現した本楽曲。そのメッセージを感情いっぱいに歌い上げる彼の姿は、見る者の視線を掴んで離さない。力強くも生々しいパフォーマンス、ナビゲーターたちはその様子を固唾を飲んで見守っていた。

(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

「これは僕らからの宣戦布告や!」

紫夕の力強い一言が会場にこだまする。大旗を手にラストナンバーを高らかに宣言する紫夕。その曲のタイトルは「Overlord」。
力強いロックサウンドが響く。宇治川紫夕と二条遥が熱い想いを歌声に乗せて発すると、そのメッセージは聴く者の心を熱くする。力強い歌声で会場を圧倒すると、εpsilonΦの面々はナビゲーターたちからの拍手を受け、ステージを後にした。

会場に響き渡るナビゲーターたちの拍手。それはいつしか手拍子に変わり、アンコールへと昇華されていく。ナビゲーターたちの期待に応え、εpsilonΦの面々がステージに舞い戻る。次の瞬間、会場に響いたのはこんな一言だった。

「オーバードライブ」
「新曲だ! 好きに踊れよ!」

宇治川紫夕と二条遥、ふたりの言葉に先導されるようにダンサブルなナンバーが響き渡る。グルーヴィに言葉をはめていくふたり。そのアッパーでノリのいいサウンドはナビゲーターたちを大いに揺らし、会場中を席巻した。

ここで改めて、宇治川紫夕と二条遥を演じてきた榊原優希と梶原岳人からの自己紹介。改めてここからは演じない、素の自分でステージに立つことが語られると、ふたりは和気藹々としたやりとりを見せる。その和やかな空気はナビゲーターたちの胸を打った。
続けてバンドメンバーの紹介がなされると、ステージ上にいない本ライブの重要人物が呼び込まれる。彼の名は藤井健太郎、二条遥のギター演奏を担当したサポートメンバーだ。ステージに6人が揃うと、改めて本公演のラストナンバーが走り出す。
披露したのは「Cynicaltic Fakestar」。本パフォーマンスの中では、アンコール前には見ることが叶わない梶原岳人とめんまの絡みや、梶原岳人と藤井健太郎の絡みも見ることができた。そのパフォーマンスはナビゲーターたちを魅了せずにはいない。最後には大歓声が巻き起こり、本公演は好評の中で締め括られた。

(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

(C)ARGONAVIS project. Photographer:白石達也

見事なパフォーマンスで初の単独ライブを走り切ったεpsilonΦ。彼らの活躍からは今後も目を離すことができない。彼らの次なるステージも必ずチェックしよう、そう思わせるステージだった。

取材・文:一野大悟
 

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