「音楽の話になると止まらない」神戸セーラーボーイズのダンスと音楽の要、中川月碧 x 細見奏仁が見せた追及心

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中川月碧、細見奏仁 撮影=高村直希

中川月碧、細見奏仁 撮影=高村直希

関西発の10人組ティーンエイジャー演劇ユニット・神戸セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)。初代神戸セラボのメンバーの魅力を掘り下げるべく、昨年9月からスタートしたリレー対談企画もついに最終回を迎える。最後を締め括るのは、公式YouTubeの『放課後ボーイズちゃんねる(以下、カボちゃ)』でMCをつとめるふたり。神戸セラボをまとめるリーダーで高校2年生の中川月碧(るきあ)と、作曲の才能も開花させ始めた中学3年生の細見奏仁(かなと)だ。神戸セラボに飛び込んだキッカケや、音楽の聴き方、物事を追求する姿勢など、多くの共通点がある中川と細見にこの1年間を振り返ってもらい、3月15日(金)からAiiA 2.5 Theater Kobeにて上演される『神戸セーラーボーイズ SF(セミフィクション)「Boys×Voice 403」』に向けた想いを聞いた。

中川月碧、細見奏仁

中川月碧、細見奏仁

曲の聴き方が同じで意気投合した、最高のふたり

ーーお互いの第一印象は?

中川:かなてぃ(細見)は元気な子。全員がとても緊張してる中、話し出してくれたおかげで、皆が仲良くなっていきました。

細見:元々すぐに話しちゃう性格なんです。作品を作っていく仲間でもあるし、年代も近いし、やっぱり友達になりたかったので、心を開いていった方が楽しいやろうなと思っています。

ーー前回の対談企画で、塚木芭琉(はる)くんが「かなてぃは1番中学生らしい」と言っていましたよ。

中川:そうですね。でも大人っぽい部分もあります。去年の7月から一緒に『カボちゃ』のMCをさせていただいているのですが、いつも対応力に驚いています。多才で、ちょっとしたトラブルにも対応してくれます。

細見:るきあくんはしっかり者で、僕がMCでわーっと喋り散らかしたのを全部包み込んで提示してくれる。最初は性格が真逆かなと思って近寄りがたいというか……それこそ仕事仲間感がすごくありました。でも、るきあくんはダンス、僕はピアノや音楽制作をやっていて、ふたりとも小さい頃からジャンルは違えど音楽を深掘りしてきた人生なので、最近は特に音楽の話になるともう止まらないです。

中川:お互いマニアックなので、他の人に共感されにくいことも話せる仲なんです(笑)。

細見:例えばダンスの音の取り方で「ヤバい」ところも、作曲での自分なりのオシャレポイントも、友達とは「うぇい! ヤバい!」って盛り上がれないんですけど、るきあくんには全部伝わるんです。だから嬉しくて。最初の印象が変わったというより「見つけちゃった」かな(笑)。

中川:お互い見つけちゃったな(笑)。

ーーおふたりはいつから音楽に触れ始めたのですか?

細見:4歳の時にクラシックのピアノを習い始めました。お父さんが作曲をしていて、DTM機材も家にいっぱいあるので、小5くらいからは作曲もやってます。僕が音楽にハマったのが、ゲーム実況のBGMで流れてるEDMやNCSというジャンル。ガツガツした重低音の曲が好きです。

中川:僕はストリートダンスをずっとやってきたので、動きを見て分析する癖は昔からついていました。中学生で新しいジャンルのダンスを始めた時に、音の深さまで分析するようになって。音の幅の後ろで取るのか、前で取るのか、どこの関節やアイソレーションを使うのか。細かいところまで分析して音楽を聴いているのですが、そこを共感できる友達はなかなかいません。でも、かなてぃは本当に好きなポイントが合うんです。

細見:最高です!

ずっと探していたものが、自信と安心に変わった(細見)

中川月碧

中川月碧

ーーおふたりが神戸セラボに入ろうと思ったキッカケは?

細見:僕は「どんなジャンルでもいいから音楽をしたい」という理由で芸能事務所に入って、演技や歌、ダンスのレッスンを受けていました。全部を活かせるミュージカルの道に進みたいと思っていたところ、神戸セラボのオーディションのお話をいただきました。

中川:僕もずっとダンスをやっていて、中学生の時にお芝居にも興味を持ち始めたんです。ダンスも歌もお芝居もできる演劇の道に進みたいと思って、神戸セラボのオーディションを受けました。実は映像の方にも興味があるので、いつかは映像にも挑戦したいなと思ってます。

ーー演技も歌もダンスも好きだったんですね。

細見:僕は正解がないものが好きなんです。歌もダンスも芝居も、色んなやり方があって深いんですよ。しかも神戸セラボは「10人の成長を見てください」という楽しみ方ができるユニットで、その魅力にも惹かれました。

ーーセミフィクションは等身大の皆さんを投影した公演ですものね。細見くんは過去に『THEカラオケ☆バトル』にも出演されていたからか、最初から堂々とされていたように感じられました。

細見:毎年あるピアノの発表会で、緊張の対処の仕方は学べていた部分があると思います。緊張を楽しんでる感じはありますね。(公演時のゲストキャストや観劇を通して)色んな舞台に立たれている方の姿を見て憧れるので、真似して真似して、技術を盗みまくって、それを「ドン」と出したろという心構えでした(笑)。

細見奏仁

細見奏仁

ーーこれまでに先輩から褒められたり、印象に残っている言葉はありますか?

中川:2023年11月の定期公演vol.1『ロミオとジュリアス』『Water me! 〜我らが⽔を求めて〜』のアフタートークで、原案のMANKAI STAGE『A3!』(以下、エーステ)の演出をされている松崎史也さんとお話させていただきました。その時に演出の古谷大和さんと一緒に作っていた好きなシーンを褒めていただけて。BGMもない無音の空間でお芝居をするシーンなんですけど、無音はすごく怖い空間だし、「セリフを忘れたのかな」と思われるかもしれない。でもそこからどう動き始めるかにこだわっていたので、気づいていただけてすごく嬉しかったです。

細見:僕は定期公演で、今までやったことのないはっちゃけた役に挑戦しました。『Water me!』は、すごくテンポ良く話が進んでいく、完全なコメディーショーだったんです。演じたアラジンという役はめちゃくちゃ楽しいんですけど、新しい自分を見つけないとなりきれないので、めちゃくちゃ悩んだ役でもありました。だから古谷さんのアドバイスと僕なりの解釈も含め、関西の血を混ぜつつ頑張りました。そしたらエーステで三好一成として同じ役を演じられた赤澤燈さんがアフタートークゲストに来られた時に、「奏仁、ほんとに面白いよ」と言ってくれたんです。それがめちゃくちゃ嬉しくて! 「面白い」をひたすら突き詰めたので、達成感がありました。余韻にひたひたに浸りすぎたおかげで、千秋楽ではすごく良いものができました。「探し続けていたものがこれで合っていたんだ」という自信と安心に変わった瞬間です。

中川:本当に、赤澤さんとお会いしたその次の公演からさらに生き生きしていて面白くなったし、かなてぃの色も混ざりあった唯一無二のアラジンが出来上がってました。袖から見ていて、めちゃくちゃ楽しかったです。

細見:日替わりネタにも挑戦できて、演技をしている間が幸せでした。赤澤さんの演じたアラジンにもリスペクトも忘れず、自分なりのアラジンを見せたくて。古谷さんにも演出していただき、自分らしさを探すことができた公演だったと思います。

MCとして、お互いを助け合う

中川月碧、細見奏仁

中川月碧、細見奏仁

ーー結成から1年経って、成長したなと思うことは?

細見:僕の場合はトーク力。るきあくんも言ってくれてたんですけど、『カボちゃ』で対応力がついたかなと。MCは進行とまとめが役割じゃないですか。でも僕は、お喋りなのに自分でまとめられなくて「結局何が言いたかったっけ?」となるので、トーク力が欲しかったんですよ。舞台では、るきあくんやリスト(崎元)、ハルくんがよく喋ってくれるから、僕のポジションはガヤなんですけど(笑)。

ーー中川くんはリーダーでありMCの相棒ですが、どんなサポートをしようという気持ちでいましたか?

細見:るきあくんは綺麗にまとめてくれるので、それを頼って僕は「言いたいこと全部言ったろ」と思っています。あとマニアックな部分を受け取ってくれる安心感もある。信頼しています。

中川:僕は神戸セーラーボーイズのリーダーという立ち位置をやらせていただいているので、責任感はだいぶ強くなったかなと思っています。元々話すのが苦手なタイプだったんですが、MCでお話しさせていただく機会が増えて、最後は話がまとまるように、全体が綺麗に進むように気を付けるようになったので、やっぱり対応力がついたのかな。助け合ってる感じはすごくありますね。

ーー印象に残っているMCはありますか?

細見:印象に残ってるのは2月のバレンタインライブ(『神戸セーラーボーイズ シアター・ライブ in OSシネマズ神戸ハーバーランド 〜バレンタインライブ〜』)です。収録ではなく、お客様がいる前でふたりでMCをするのは初めてでした。しかも当日はリストが不在という。僕ら、リストにめちゃくちゃ助けられてる部分があるんです。

中川:リストは話の波を作ってくれるペースメーカーでもあります。僕はかなてぃが喋ってくれる安心感があったので、そんなに心配はしてなかったんですよ。でも10人が9人になると、やっぱりテンションや色がだいぶ変わっちゃうので、自分もバレンタインライブで成長できたと思います。

無邪気な子ども心を持った、明石侑成と石原月斗

中川月碧、細見奏仁

中川月碧、細見奏仁

ーーSPICEでは9月からリレー対談企画を実施してきました。初回に戻って明石侑成(ゆうせい)くんと石原月斗(ゆえと)くんの印象を聞かせてください。

中川:波長が合うふたりですね。すごく良いペアだなと思ってて。

細見:それは間違いない。

中川:僕たちもすごく良いペアだと思ってるんですけど。

細見:それも間違いない。

中川:神戸セラボ内でもお兄ちゃん的な存在だけど、ふたりにも無邪気な子ども心があって、僕たちも一緒に楽しんでいます。ゆうせいくんはリストのおかげで殻が破れたね。

細見:ゆうせいくんは良い意味で、最年長らしくない最年長。いじられ最年長。

中川:でも僕たちの中高生らしさを1番引き出してくれてるのかな。皆いじるのが好きな年代だと思うので。

細見:ゆえとくんはアクロバットの印象がより強くなった。特にそれが目立ったのが11月の定期公演。9月の『いろいろドルフェス2023』でもバチバチに1回ひねりをキメてたんですよ。僕的にはゆえとくんが1番子どもっぽいと思うよ。

中川:無邪気代表です。天然なんですけど、1番我が道を行ってる。でも皆のテンションを底上げしてくれて、楽しい空気を作ってくれますね。

僕たち10人にしかこの空気感は出せない。唯一無二の作品(中川)

中川月碧、細見奏仁

中川月碧、細見奏仁

ーー過去の公演でいうと、12月公演のSF『Boys×Voice 312』では、細見くん作曲の楽曲「Special Holiday」を舞台上で披露されましたね。

細見:一生に一度あるかないかくらいの経験でした。実は神戸セラボが始まってから、自分が作曲して皆で作詞して、それを皆で歌ったら最高なものができるんじゃないかと相談していたんです。12月公演でついにお話をいただいて「うわーっ」とテンションが上がって、作ってみました。それこそるきあくんにめちゃくちゃ相談して。

中川:制作過程も見せていただきました。

細見:むちゃくちゃわかってくれるんです! クリスマスソングの作曲ということで、僕はクリスマスに洋楽のイメージがあるので、洋楽チックな曲を作ろうと。僕たちの合唱要素を取り入れるために、ゴスペルっぽさをイメージしました。皆もお客様も一緒に楽しめるものを試行錯誤して、掛け合いの部分を作ったり。メロディーラインはジャジーでオシャレにしてみてと、結構凝ってます。あと10人の良さを引き出したかったので、その人に合った声色の音程も使いました。例えばりゅうちゃん(髙橋龍ノ介)の<ケーキをちょうだい お願い>のラインは、りゅうちゃんがおいしくなる音程で、りゅうちゃんが言うと(ケーキを)あげたくなるようなフレーズを選びました。1つ1つの音に意味を持たせたかったんです。歌詞は皆にワードを出してもらって、それをぎゅっとしたんですけど、1つ1つに思い入れがあるからこそ、舞台上で歌う意味がすごくあったかなと思います。

中川月碧、細見奏仁

中川月碧、細見奏仁

ーーそこまで考えているなんて、プロデューサー視点ですね。3月に塚木くんが卒業されるということで、改めて次回公演のSF『Boys×Voice 403』はどんなものにしたいと思っていますか?

中川:1番は笑顔で送り出したい。ハルくんがやりきれるようにサポートもしたいです。思い出が詰まっているこの劇場で、この稽古場で、このメンバーでできることが本当にありがたい。皆が気持ち良くやりきれて、またそれぞれが次に進める良いキッカケになる舞台にしたいなと思ってます。6月から公演が始まってからそれぞれの絆が生まれてきて、今回は台本を読んだ段階から空気感が出来上がってて「あー、なんか僕たちの舞台だな」という感じがすごく強いです。前回の公演でも、最後は「僕たちって感じがするな」と思ったんですけど、今回に関しては初めから「僕たちにしかこの空気感は出せないな」と。唯一無二の作品が出来上がってきてると思います。

細見:今回は特にセミフィクションの良さが出てますね。セミフィクションは僕ららしいところもあり、フィクションの部分ももちろんあるんです。でも今回は「ほぼ実話だよね」みたいな。最初に台本を読んだ時から感情移入しやすくて、だからこそやりやすいんですけど、逆に言うとフィクションの部分が難しい。自分の役は自分の等身大だから、自分が1番わかってる。それを活かして良い作品にしたいです。あとはハルくんのためにも、最高のものを皆で作りたいなと思ってます。

ーー神戸セラボは先に進んでいきます。今後の展望や目標はありますか?

中川:神戸に限らず、色んな方に知っていただきたいです。皆で一緒にステップアップして進んでいきたいですね。

細見:自分は音楽が好きなので、音楽で引っ張っていきたいです。僕らにしかない色も歌声もあるので、合唱の素晴らしさを届けたいし、神戸の良さも伝えていきたい。いろんな色の音を奏でていけたらいいなと思います。

お互いを描いた似顔絵とともに!

お互いを描いた似顔絵とともに!

撮影の合間もぴったりくっついて、仲良くひとつのスマホで音楽動画を観ていた中川と細見。インタビューでも話は尽きず、深いところまで話し合えるお互いのよき理解者となっていることが伝わってきた。今後のふたりの相乗効果も楽しみだ。そして、似顔絵企画もこれにて完結。少しでも彼らの魅力が伝わっていたら嬉しく思う。

取材・文=久保田瑛理 撮影=高村直希

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